勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「……これで集まったか。遅いぞ、ディストール。随分な重役出勤だな」
「すまぬな、トゥレス。これでもこの国の王であるからして、やらねばならぬ些事が多いのだ」
なぜかお馴染みの部屋になってしまった王城の大会議室にて。
最後にディストール王が入ってきたことで、最終会議に参加するメンバーが全員揃った。
王様相手に軽口を叩くトゥレスおじさんが、大型映写魔法投影板の前に設置された司会台の傍に佇んでいて、どうやら会議の司会を務めてくれるようだ。
なおトゥレスおじさんの隣にはもはや秘書か何かですか? って雰囲気すら漂うキャリアウーマン風のアイムが資料を片手に手伝っていた。
その後ろではワンさんが楽しそうにニコニコしている。
ワンさんどんな気持ちで笑顔なんすかそれ今。
わからん……俺の勘でも……。
「とうとうこの日が来てしまったな。勿論本番は明日とはいえ……早くも緊張で喉が渇きを覚えるようだ」
「分からなくもないよ、ヴァリスタ殿。昨日を休みにしたのは今にして思えば英断だったな……世界の命運を決める戦いが迫る中では、想像以上に精神の疲弊が大きかった。ゆっくりする時間がどれほど有難かったか」
近くの席に座っていたヴァリスタさんとメルセデスさんが何やら仰々しくお話していた。
現在、いくつも円卓が並ぶ会議室の中で、おおよそ集まりは4つのグループに分けられている。
まず一つ、ロック一家。俺んちで暮らす嫁さんたちと俺とミャウ。
もう一つはクランケンタウリス。ティオはこの円卓に座っている。
もう一つ、王族の義兄義姉たちが座っている円卓。ノインさんは俺のところだけどね。
最後の一つにヴァリスタさんとカトルと、ヒルデガルドさんにルドルフさん。ギルド長であるウォーレンさん、ギルド代表でノックスさん。
そのほか、壁際の椅子には各機関の代表者とか識者とか、そんな感じの人たちも集まってて。
はえーすっごい。
なんだかすっごい真面目な会議みたいになってるじゃん。
「すっごい真面目な会議なんですよマスター」
「こいつ耳に直接……」
アホ面晒しながら周囲眺めてほえーってなってたらイレヴンから内心を読み取られて耳打ちされた。
テレパシーでもよかったと思うんですけど。(名推理)
ネェちゃんだけじゃなくってイレヴンにまで俺の心の内を読み取られたら俺のプライバシーが無くなるんですけど!
まぁ元から無いようなものだけど。人に隠すようなものが何もない人生を送ってますから。
「さて、では会議を始めるぞ。人類の行方を決める決戦に打ち克つためのな」
俺は最後まで眠らずにこの会議を終えられるだろうか。(真剣)
※ ※ ※
「まず……今日の議題はこの順番だ」
トゥレスおじさんがそう全体に語り掛けて、隣に立つアイムに指示をすると、アイムが手に持った資料に魔力を通した。
するとその魔力が何やら魔法を紡いでいるらしく、壁一面に設置されている映写魔法投影板、いわゆるモニターに大きく文字が表示される。
そこには、こう書かれていた。
『①・現在の魔王城の位置と今後の見通し』
『②・世界各地で発生している
『③・魔王城突入にかかる攻略と対策』
『④・魔王城攻略中の王都の防衛戦線』
ふむ。
俺に関係してるのは…………全部だな!
「早速始めるぞ。まず議題①。現在の魔王城の位置についてだ。アイム」
「はい」
国王の挨拶とか決起のお話とかそういうのは一切抜きに、必要な事だけ入れてスムーズに会議進行するトゥレスおじさん。らしいわー。
んでアイムが指示を受けて再度モニターを更新する。
次に表示された画面には、世界地図が大きく映っていて……そして、その上で魔王城がどんなルートでどれくらいの速度で動いていたか、一目で分かる様な図が書き足されていた。
「おお……! これは……!」
「わかりやすい!」
『みゃ』
「何と理路整然とした図解だ……地理学に精通してなければこれほどの物は作れまい」
「万極のトゥレス……その二つ名の通りの男か」
周囲に座るモブ識者たちが絶賛するその図解。うちのリンもわかりやすいとコメントしています。ミャウもよう鳴いとる。
でも確かに、ものすごくわかりやすい。無駄な情報一切なし、必要な情報が目で見て理解できるように、しかも精密さも兼ね備えた完璧な図解だ。
俺でも分かるもん。最初に発見されたところがあそこで、一日で大体あれくらい動いてて……んで今だいたいあのあたり。明日の昼の15時ごろにちょうど王都の中心に辿り着く様な速度で進んでいる、と。
「魔王城の動きは見ての通りだ。このままの速度で移動するならば、明日の15時……の、一時間前には王城から視認できる位置にあるだろう。もし王城に直撃する形で高度を降ろしてきたならば、阻止できなかった場合には王都オーディンの土地の70%は吹き飛ぶ試算だ」
「……恐ろしい話だな」
「その前に魔王城に侵攻、魔王を討伐して魔王城の浮遊を止めて、被害のない場所に落下させる。突入組にはそれが求められている。…………ロック」
「んっホエッ?」
さてそんな図をみんなで吟味している中で、大体の位置を脳内に刻み込みつつ、まぁ何とかなるやろ……と俺が思っていたところで、しかし急にトゥレスおじさんが俺を名指しして声をかけて来たもんだから驚いた。
えっ何。俺そんななんか頭のいい発言できませんよ?
「……俺の出来る限りで魔王城の位置を調べはしたが、結局のところ、最大の問題がまだ解決していない」
「ん。とゆーと?」
「魔王城が視認できていない事。魔王城にアクセスできていない事。……この二つの大問題を、結局解決出来なかった。俺の考えうる限りの事は試したのだが……」
「はぁ……」
トゥレスおじさんからその後も簡単な説明を交えて語られた内容は、魔王城を実際に目で見て確認できていない事。
湖や海面の満潮とか、風向き、雲の位置、動植物の反応で間違いなくその上空に直径1km以上の大きさの人工物が浮遊しているのは観測できているのだが、しかし目で見てそれが確認できない。
魔王による高度な隠蔽の魔法が使われている……と元魔王軍将軍であるアイムの見解もあるが、飼いならした鳥やワイバーンを使って、魔王城があると推測される位置に突貫させても全く無反応であるという事で。
「迫る危機に備えてはいる。お前の勘が導いた切っ掛けから魔王城の位置を把握し、戦力を整え、民を避難させ、備えてはいる。しかし、俺が出来る限りではここまでしか調べがつかなかった」
「多分世界中の誰よりもスムーズに事を運んでいると思いますけどねトゥレスおじさん」
「不甲斐ない限りだ。だからお前に問う。ロック────」
結局のところ、魔王城が近づいているという事実に対して、乗り込む手段が決戦前日になっても確定していない。
リンがドラゴン形態になり、その背に乗って突入……という前提でいるが、突入先が見えていないというのは、確かに極めてまずい状況ではある。
でも大丈夫。
「
「
俺の勘が、行けると感じているから。
察している。
決戦の鼓動、とでもいうべきか。
俺が、俺たち魔王城突入組が、魔王軍の残党のデカパイ達と、フなんちゃらとバなんちゃらとか言うカス二人と、そして魔王ダブレスちゃんと決着をつける事を……俺の勘が察している。
という事は、俺たちは魔王軍と戦うという事だ。
魔王城に潜入するという事だ。
そのように勘が囁いている。
必ずそうなる。
まぁどうやるのかはまだ分かってないんだけどね!!
俺から求める勘じゃないからさこれさァ! 唐突にじわじわ響くタイプのアレね!!
だから多分その時になったらどうにかなるんだろう。多分。恐らく。
そんなノリで今日まで生きてきました。明日も明後日もこのまま生きていきます。
「……ふ。そうか。安心したぞ。お前に太鼓判を押されるほど心強い物はないからな」
「あまり信頼を頂きすぎても恐縮しちゃってェ……」
「馬鹿を言え。お前ほど俺が信頼している男もいない。ワンと再び出会わせてくれた男なのだからな」
「やーだもーマスターったら隙あらばメロつきアピールするんだからーっ! 心奪っちゃって申し訳ないなー! 私もマスターとまた会えてよかったですよ! たは↑ーっ!!」
「そうだな。この幸福を明日を超えても抱え続けて生きていこう」
「ワンさんのアクセルがかかり始めたぞ~」
「ノロケ始めましたね」
「俺のコメントないなった」
そして隙あらば好き好きアピールを繰り出すワンさんとそれに律儀に応え続ける愛妻家のトゥレスおじさんのメロドラマが始まってしまって、みんなから苦笑が零れて、会議室内の空気が弛緩した。
そうそうこんくらいの雰囲気。俺こんくらいの雰囲気大好きです。
真面目な話をするからって雰囲気まで固くすることないからね。のんびり柔らかく話し合いましょうよ。
「……では、魔王城への突入については、最終的にはロックの判断を尊重する。突入組には悪いが、決戦当日に王都から飛び立ってからは、ロックの指示を仰ぐように」
「了解です。私たちはマスターの判断に従います」
「ケンタウリスも異論はない」
「私もカトルも全く問題はないさ!」
「私もだ」
「全幅の信頼が重い」
突入組の皆さまからも『まぁロックなら大丈夫だろう』みたいな雰囲気で見られて快諾を頂いてしまった。
信頼度がカンストしているみたいですね。なんでこうなっちまったんだろうね。
「では、魔王城についての議題はこれでいったん終了だ。次の議題に移る」
そんなこんなで会議はまだまだ続きます。