勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
トゥレスおじさんの俺に任せておけ宣言に、これで会議の議題の二つ目も〆やな……って俺が感じていたところで、しかし。
「待ってくれ、トゥレス。お主のその説明だけでは、少々不安が残る」
「ん……ディストール。これ以上に、何か?」
「何か、ではないわ。確かにお主が王都を護ってくれる……これほど心強い事はなく、お主らならば守り通してしまうのだろう。しかし、それでもギルドを介して冒険者に通知、連携をしなければならない事もあろう。この会議の議事録も歴史に残るものだ。王都防衛戦について、もう少し詳細に説明を頼む」
「そうか。なら仕方ないな……アイム」
「はい」
ディストール王が流れに惑わされずに肝心な所にツッコミを入れて、トゥレスおじさんもため息を一つ付きながら、説明を再開した。
うん、まぁね。ディストール王が言ったからじゃないけど、よく考えたらまだまだ説明しなきゃいけない事あるよね。
敵の数と、どっちの方角から攻め込んでくるのかは今の説明でわかったけど、それだけじゃあね。
ギルド代表のウォーレンさんもノックスさんも、ディストール王の援護を受けてほっとしたような表情だ。流石にちょっと説明が足りませんでしたね。
いやまぁトゥレスおじさんならなんとかなるやろ! って信頼はマックスなんだけどね。
一応どんくらい強い魔獣が来るのかとか、その辺ね。
さて、そうしてアイムがさらにモニターに図解を表示させた。
次に表示されたのは、主に王都に襲撃してくる魔獣の種類とその姿で。
「……どの魔獣も、既に観測され図鑑にも記載のある種族なので、魔獣それぞれの説明は省く。おおよそスタンピードの際に発生する魔獣のほぼ全てが勢揃いといった具合だ」
「流石に水生生物はいないようだな。陸路か空を移動できる魔獣のみに限られるか」
「ああ。そして、それら魔獣のレベルだが……おおよそ平均値としては、レベル120から150と言ったところだ」
「──────ッッ!!!」
魔獣のレベルをトゥレスおじさんが口に出した瞬間に、会議室全体に唐突に強い緊張が走った。
それを聞いた王族、冒険者、関係者たちのそのほとんどが戦慄を覚えている様だ。
戦慄してないのは主に俺。と、リンとノワールさんくらいか。それ以外みんななんかビビってる。
えっ。なんかビビる事ある?
「……最大でもレベル150なんでしょ? 全然弱くない? ここにいるメンバーで俺を除く全員が余裕で勝てるレベルでは?」
「何てことをほざくのですかマスター」
「えっ」
なので気楽にそんな見解を零したところ、イレヴンからめっちゃ咎められた。
「あ~……そっか~、ロックくんってこれまで全然魔獣のレベルとか冒険者のレベルとか気にしないで過ごしてましたもんね~。一番気にするところなんだけどな~普通は。ロックくんまともじゃねぇからな~」
「ロック少年……そのような認識でよく今まで冒険者をやってこられたな」
「お兄ちゃんもしかしてすっごいバカだったの?」
「お前シスターに何教わって来たんだバカロック」
「ものすごい勢いで責められていて本気でびっくりしてます今俺」
そのまま周りのみんなから総スカン食らったよ!
えっ何でぇ!? 別にそんな、俺そこまでおかしなこと言ってないよね!?
今までだってレベル200の頃のフォルクルスとか討伐してたし! 魔族ってみんなそれくらいのレベルなんでしょ!?
ここにいる突入組メンバーはレベル200の限界突破してるわけで、それ以外の冒険者だって騎士団だって流石に200は超えなくてもレベル150の魔獣に苦労しないんじゃないの!?
だって俺でも倒せるんだよ!? おかしくない!?
「……ロック、君には改めて伝えるまでもない事だとは思うのだが」
「えっ何ですウォーレンさん」
「我が王都のギルドにて登録、管理している冒険者のうち、この場にいる者を除いて……全ての冒険者およそ1500人の平均レベルは、およそ5~60と言った所だ」
「────はっ?」
「銅級冒険者のレベルは平均すれば3~40程度、銀級で5~60程度。金級冒険者は流石に80を超える者が多い」
「ついでに言うとレベル100を超えてんのは50人もいねぇからな。レベル100ちょうどの奴まで含めたら150人くらいはいるけどよ、俺みたいな」
「え? ノックスさんレベル100だったの?」
「普通はそうなんだよ! そこが普通の冒険者の限界なの! レベル100の壁を超えられるのは一握りの才能を持ったヤツだけで、お前ら突入組の冒険者とか王族の皆様方のほうが希少なの! レベル12で止まってるようなヤツはお前だけだけど!!」
「ええ……えええ……??」
『みゃ……みゃみぃ……』
知らなかったそんなの……。(素)
えぇ……マジ? そんなに低かったの冒険者のレベルって?
ホントに知らなかった。
これまでに俺が冒険者になって……いや気配でこの人強いなー弱いなーなんてのは感じ取ってたけど、しっかりレベルまで聞いたりすることってあんまりなかったしな。マナー違反みたいなもんだしさ。
それにそういう話になったとして自分のレベル12を伝えるのが恥ずかしいし。自分からレベルを聞くことってほとんどなかった。
でもまぁ冒険者を管理しているギルド側はギルドカードを通じて冒険者のレベルも把握していて、統計で行くと……レベル60が平均値って。
低い! と思う!!
レベル12の俺が言えた義理ではマジでないんだけど!!
そりゃ魔獣の平均レベル150って言われたらビビるわな!! そんなのが100万体くらい攻めてくるんだもんね!! ごめんね!!
「確かにロック少年とはそうしたレベルの話は詳細にはしたことがなかったが……参考までに話そうか。以前、ロック少年たちと一緒にネレイスタウンに行ったじゃないか」
「あ、はい。そっすね、ケンタウリスのみんなと一緒に」
「あの時私たちで討伐したボスのギガントクラーケンのレベルが120程度だったろうな。私がレベル140、ティオがレベル138、マルカートがレベル112で、残る3人はレベル100の壁を超えられていなかったのだ」
「えっ。あのクラーケンの強さでレベル120なんだ。んでみんなそんな……そんなレベルだったんすね」
「ああ。その後、恐らくはレベル200に近かったであろうヴィネアと接敵し、撤退させたことで、ケンタウリス全員がレベル100の壁を超えた。レベル200の壁を超えた時と同じ……100の壁を超えたモノとの戦いで経験値を得たことで、成長したというわけだ」
「ほえー……あれ、でも闘技場で戦った時はケンタウリスの皆さんもうだいぶ上澄みって言うか、相当レベル伸ばしてましたよね?」
「そうだな、そこから先で一気にレベルが伸びたのは、我々全員がイレヴンと模擬戦が出来たおかげだ。異様な経験値効率で稼げたからこそ、ティオを中心にメンバー全員のレベルが伸びて、先日の第三次人魔大戦でレベル200の天井を叩いて、ここ数日の特訓でさらに限界を超えて……という具合でな」
「なるほどー」
「話を戻すと、つまりレベル100を多少超えた程度のメンバーでしかなかったケンタウリスでも、王都でトップクラスのクランとして名を馳せていた。君の想像以上に、一般の冒険者たちはレベル上げに苦慮しているという事だ」
「なるほどなぁ」
会議はトゥレスおじさんが進めつつも、小声でクランケンタウリスの長であるメルセデスさんから色々話を聞いていた。
一般の冒険者から、トップクラスの実力を持つアイドルクラン……と言われていたケンタウリス。
ティオが加入する前から有名だったが、その頃はレベル100にも達していないくらいの実力だった。それでも強いと言われていた。
ネレイスタウンの一件を経て、その後もイレヴンと模擬戦しまくっていたことで、モリモリレベルを稼いだというのが事実で。
つまり、そういったイベントを経ていない一般冒険者は、そもそもレベルを上げるのも命がけで、普通のダンジョンに普通に潜って、ってだけだとレベルなんてそうそう上がるものではないという事で。
こないだの魔族との大戦争でも前線で実際に戦えたのは魔装具所有者だけだったわけで……レベルが全然足りていないと。
大ピンチじゃんッッ!!!(無知の知)
「え、ヤバくないっすか!?」
「だからヤバいんですって。マスターは変な所で知識が足りないのですから」
「いや、別に大した事態ではない。今回は魔族が相手ではないのだから、やりようはいくらでもある」
「トゥレスおじさんが急に英雄に見えてきた」
「ウチの旦那は昔っからちゃんと英雄ですよー? このワンちゃんのマスターが英雄じゃないはずがないんですからねー!」
「む。ワン、それを言うなら私のマスターも英雄ですよ? トゥレスと違い、既に実績をいくつも挙げています」
「マスター自慢で張り合わないでもろて」
今更ながらそのヤバさに気付いて大声を上げてしまい、イレヴンに窘められてしまったが、しかしトゥレスおじさんは相も変わらず余裕の表情だ。
この人自分が出来ると判断したことは事も無げに完遂する人だからな。余裕があって有難い……。
その後にちょっとワンさんとイレヴンでマスター自慢が始まったのでそれは俺とトゥレスおじさんで諫めつつ。
トゥレスおじさんが話を紡ぐ。
「結局のところ、レベルが100を超えていない冒険者は前線で戦う戦力に数えられないとして……じゃあレベル100を超えている冒険者なら魔獣の群れと戦えるのか、と言えばそれも否。ならば答えは一つ」
「その答えは?」
「────圧倒的な実力を持つ者が、個の力で各方角から来る魔獣の群れを全て滅ぼせばいい」
トゥレスおじさんがその言葉を言い切るのと同時に、アイムが再度モニターの画面を操作し、王都防衛戦の殲滅作戦を説明する。
そこには、東のキュリオス平野、北の山脈、南西の岩盤地帯に、それぞれ駒が配置されていた。
「最も数が多い東方面の魔獣は、俺とアイムで叩き潰す」
「お任せください」
「北の山脈、山林地帯にはルドルフが罠を張る。全て千切れ」
「ほほ。腕が鳴りますな」
「そして南西、こちらはワンと…………もう一人の
「────え?」
最後の言葉に。
俺は、耳を疑った。
そして同時に────会議室の扉が開き、一人の女性が入って来た。
それは、俺とティオとカトルがよく知る、
「──私が出ます」
「「「シスター!?」」」
俺たち幼馴染組の叫びが、会議室に木霊した。