勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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27 ダブル・リブート

 

 

【side マルカート】

 

 

 ────意識を取り戻した。

 

(っ!? 生きてる……!?)

 

 その事にまず驚愕を覚えました。

 先程の魔族との戦闘……ヴィネアと名乗る魔王軍の幹部との戦いにおいて、私たちパーティは全滅した、はずなのです。

 圧倒的な実力差。メルセデス様の防具を貫通して一撃のもとに心臓を貫く威力と速度。そして私たち全員で対抗しても及ばぬほどの闇の魔力の奔流。

 メルセデス様が最初に狙われ、心臓を貫かれてしまったことで、私も気が動転してしまい……金級冒険者として恥ずかしいことながら、ただメルセデス様の体を案じるしかできなかったのです。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それでも回復魔法をかける事しかできませんでした。

 ケンタウリスのメンバー全員がそうだったのでしょう。ティオもアルトもソプラノもシミレも、団長がやられたことの衝撃と魔族の恐怖に、碌な抵抗をすることができませんでした。

 リン様だけは諦めずにブレスも放ちましたが、ボス級のクラーケンにも通用したそれは魔族には一切ダメージが通りません。魔装具がないためです。

 

 ただ、ロック様とイレヴン様のお二人だけは魔族への対抗手段を持っていました。

 しかしイレヴン様は力及ばず、ロック様も一撃はダメージを入れて警戒させるほどの奮迅をなさいましたが……それで油断を削いだヴィネアがフェイントを駆使し、本命の広範囲魔力砲を私達に放ちました。

 放射状に放たれた闇魔力の奔流。

 全てを呑み込む一撃でした。私たち全員の命も、庇うように後ろにいた精霊様も、祭壇も、全てを呑み込み焼き尽くす一撃。

 私が咄嗟に防御魔法と強化魔法を唱えましたが、魔術に長ける私であるからこそ理解しました。抵抗し得るものではないと。

 

 そして、私たちパーティは全滅した。

 

 そのはずなのに、今私は意識を取り戻している。

 

「なに、が……」

 

 状況を把握するために周囲を見渡します。

 どうやら私は……いや、私たちはあの魔力砲に呑まれて湖まで弾き飛ばされたようです。

 ですが、五体は無事。水中で周りを見渡せば、先に沈みゆく祭壇の瓦礫のほかに、パーティメンバーも私と同様に水の中におりました。

 

 そして、さらにある事に気付きます。

 

魔法防壁(バリアー)が張られている……?」

 

 私の周囲を、まるでシャボン玉のように風魔法で包み込んでいました。

 それは命を護る様に。この魔法が先ほどの闇魔力の奔流から私を護ったという事なのでしょうか。

 もちろんそれは私だけではなく、周囲にいる他のメンバーも同様です。全員が風の球に包まれ、呼吸すらできるようになっていて。

 これほどの魔法はそう簡単にはできないはず。何よりもあの魔力砲すら耐えるほどの防御力を生み出すには甚大な魔力を必要とします。

 ですがそれがいま確かに私達を守っているのが現実です。

 もしや精霊様によるものでしょうか? 湖の精霊様が最後の力を振り絞って……?

 

(……ならば)

 

 現状を把握し……私の心に一縷の希望が生まれます。

 魔族の渾身の一撃を凌いだ。ならば向こうも消耗しているはず。

 これでイレヴン様かロック様が無事であるならば、私が今度こそ全力でバフをかけて……と、作戦を練り直すためにこの戦いのキーとなる二人を探そうとして、より精密に周囲を探ろうとして、しかし。

 そこで私は眼にしたのです。

 

 

 ──────ふたつの覚醒(めざ)めを。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side ティオ】

 

 

 許せなかった。

 何も力になれない自分が。守る事の出来ない自分が。

 

 私が冒険を始めたのは、みんなを守る為。

 護るだけの力が欲しかった。

 守られてばかりじゃなくて、守りたかったから。

 支えられてるだけじゃなくて、支えたかったから。

 

 ロックが孤児院を卒院するときに、そう自分に誓ったのに。

 未だに私は何も守れてない。

 

 前の冒険の時にも、魔族を前にして私だけは何も出来なくて。

 この街に来てからも、私は守られて、助られて、支えられてばっかり。

 再び魔族と相対してもなお、私には力がなくて。

 

 悔しい。

 悔しい。

 悔しい。

 

 この悔しさだけは、たとえ死んでも絶対に消えることはない。

 力が欲しい。

 みんなを、ロックを守る為の力が!!

 

『───起きて』

 

 声が響いた。

 私の周囲全てから響くような声が。

 その声に応じて目を開ける……目が開く。生きている。

 私の周りを、風の防護魔法が護ってくれている。

 

 ああ。

 なんだかこの風、とても懐かしい───

 

『───起きなさいティオ!! 起きろっつってんのよ!!』

「うわっ!?」

 

 しかしそんな懐かしさに想いを馳せる暇もなく、精霊様に思いっきり叫ばれて私ははっきりと意識を取り戻した。

 すぐに状況を把握。あの魔族の一撃で湖まで弾き飛ばされたようで今は水中。でも怪我はほとんどない。

 私を覆ってるこの風のバリアの密度がとんでもない事になってて、それであの魔力砲を受けても無事だったのだろう。

 

『起きたわね!? よーしとっととあのクソ魔族に一泡吹かせるわよ!! 魔装具を鋳造(つく)るわ!!』

「はっ、はい!! あの、さっき精霊様やられてましたけど大丈夫だったんですか!?」

『私は()()精霊なのよ!? 湖全部干上がらせでもしないと死ぬわけないでしょ!! 外部出力用に作ってた体よアレは! あの魔族バカだから気付いてなかったけど!! 私の本体はこの湖すべてです!!』

「な、なるほど……!! だから私達もこうして守ってくれたんですね?」

『いやそれは知らないけど』

「えっ?」

『ってかそんなことはどうでもいいわよもう!! とっとと武器を取り出す!!』

「え!? あっ、いえ、はいっ!! お願いします!!」

 

 精霊様にどうしても聞いてみたい疑問をぶつけてしまい、それぞれ答えてもらったが……しかし状況は切羽詰まっている。ゆっくりなんてしていられない。

 あの魔族がとんでもない敵であることは間違いない事実で、たまたま今生き延びてるだけ。私達が生きてるのに気づいて追撃、なんてされる前に……私が対抗する力を得る。

 

 魔装具にする武器……愛用のツインダガーを腰から取り出す。

 先程メルセデス団長の治療を行うために一度腰に仕舞っておいてよかった。もし手に持って魔族に相対してたら、衝撃で取りこぼしちゃってたかも。

 その双剣を頭上に掲げる。魔装具への進化を果たさせるために。

 

『私の鋳造(つく)る魔装具は自然由来の魔力を籠めるから扱うのにコツがいるわ。けど貴女の体はあのメンバーの中でも()()()()()()()()。だからもう()()()()()()()()()()けどちゃんと扱いなさいよティオ!! 常人が使ったら発狂するレベルまでこの恨みを武器に注ぎ込むから!!』

「なんて!? 今なんて言いました!?」

『うるさーい!! あの魔族バカの癖に強いから渾身の一振りを作ってやるっつってんの!! つべこべ言わずにちゃんとぶっ殺してきなさい!! オラ死ねクソ魔族ーーーッッ!!』

「風情のかけらもない!!」

 

 祭壇と湖をめちゃくちゃにされた恨みで精霊様がすごいこう……荒ぶられていた。

 精霊の怒りと表現するにはちょっと雰囲気がロックすぎるけど。二重の意味で。

 でも、その力が本物であることは分かる。私の周りにある湖の水、それらすべての魔力が一気に励起する感覚があり───精霊の導きによって私のツインダガーに注ぎ込まれる。

 持っている手が震えてしまうほどで。

 

 でも。

 確かにその魔力は、異様なまでに私の体に馴染んで。

 

 

 ─────まるで、体がこの魔力を覚えているとでもいうように。

 私は自然と、魔装具から注ぎ込まれる魔力を体に満たしていた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side イレヴン】

 

 

 不甲斐なかった。

 魔王を、魔族を殺すためだけに生まれた私が、魔族に後塵を拝している現状が。

 

 力が及んでいない。

 まだ私は目覚めてから一か月も経っていない……などというのは言い訳にもならない。

 私は魔族を滅ぼすために存在し、魔王を殺すことこそが全て。

 私が成すべきことができていない。

 私が私でいられない。

 

 不甲斐なかった。

 前の魔族との戦いの中でも結局はマスターに庇われ、捨て身のカウンターで隙を生んでようやく撃退した。

 今回の戦いでもマスターに隙を作ってもらったのに、その機会(チャンス)すら逃して。

 

 言い訳は幾らでも湧いてくる。

 出会ったマスターが命在る者ではなかった。命在る者が存在しない。私と十全に繋がれる冒険者がいない。レベルが上がった際のスキルツリーの解放を間違えた。レベル上げが足りなかった。逃げることを考えるべきだった。もっと味方が強ければ───

 

 ────全部ただの言い訳だ。

 足りなかったモノはただ一つ、私の覚悟。

 既に魔族が現れていることが分かっているのに、すぐにでも力を求めなかった私の甘さ。

 マスターと共にいる日常に満足を覚え、微温(ぬるま)湯に浸ってしまった。

 

 魔族を滅ぼすための覚悟を。

 今私が出来る事をすべて果たす覚悟を。

 己の身を全て捧げる覚悟を。

 恨まれる覚悟を。

 

(────)

 

 目を()ける。

 まだ私は壊れていない。活動に支障はない。

 周囲を見れば、私たちパーティメンバーが皆水中に叩き込まれているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がみんなを守っていた。

 

 すごいマスターだ、と改めて想う。

 命在る者でもこれほど膨大な魔力はそうそう持てない。少なくとも私の情報データベースには性欲を魔力に変換するような冒険者は聞いたことがない。

 しかもそれを無意識で操れるような……そう、まるで英雄のような少年に、私は見つけてもらったのだ。

 

 覚悟を決めよう。

 私を見つけてくれた彼に、私の全てを捧げる覚悟を。

 この先起きる魔族との争いに、彼を巻き込む覚悟を。

 

(────マスター)

 

 周りを探して、見つけた。赤い髪の少年。

 彼自身も魔法防壁で体の周囲を覆っているが、意識はまだ戻っていない。

 それも当然かもしれない。あの瞬間、誰よりも前に出ていたのはマスターだ。

 彼自身が最初に魔力砲を受け止めたことで、後ろにいたパーティメンバーへの被害を軽減したのだろう。

 

 まだ生きている。

 相当なダメージが入っているのはマスター登録している私にも共有されているが、しかしそれでも生きている。

 なら、まだ私は彼のものでいられるという事だ。

 

 彼に近づく。

 私を包む魔法防壁を保ったまま、脚からの魔力噴出で勢いをつけて水中を移動し、ロックに近づく。

 それぞれを包んでいたシャボン玉が触れ合い、二つが一つになって、私は彼のすぐ近くに。

 

 覚悟を決めたのだ。

 ロックを、私の本当のマスターにする。

 

【Temporary master registration authority will be temporarily deleted】

【Continuously executes master registration mode】

 

 一度ロックの仮マスターの登録を削除。

 登録システム再起動。

 ロックを本当のマスターとしての登録を試みる。

 

 だが、命無き者にアンドロイドが全てを託しマスター登録を結ぶことは本来はあり得ない。契約するための楔が足りない。

 だから、繋がりを深めるためにもう一つ手順を踏む。

 本来は命在る者をマスターとして見初めたのち、魂の(エンゲージ)リンクまで結ぶ際の契約工程を初回登録時点で履行する。

 

【Do you permanently approve Rock=Eeliaas as a true master?】

「はい。……と、貴方なら応えてくれるでしょう? 私のロック(マスター)

 

 私はそっと気を失ったままのロックの頬に手を添えて、瞳を閉じて。

 眠る彼の唇に、唇を重ねた。

 

【────Approved】

【Anti-Monster Combat Androids『Ⅺ』】

【Full activation】

 

 

 ─────魔力回路完全励起。

 

 魔力炉心稼働率上限解放。50%ゲインを記録。

 武装ロック順次解除。全武装に()()()エンチャント。

 マスターからの魔力供給率───限界超過計測不能。

 

 ─────『Ⅺ』・再起動(Re:boot)

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side ヴィネア】

 

 

「……おかしいわね」

 

 最大まで高めた魔力で、全てを吹き飛ばしてやった。

 ノックスとか言う面白いガキも、クソザコアンドロイドも、魔装具もってたセントールも、精霊の本体も、他の奴らも、祭壇も、すべて巻き込んで。

 私が放った魔力砲により、目の前から先には何も存在せず、えぐり取られた地面とその先に湖が広がるだけで。

 全部吹き飛ばしたはず……なんだけど。

 

「街の守護結界がまだ壊れてなくない? どういうことよ?」

 

 まだ街の方には忌々しい聖気が感じられる。

 魔族や、魔獣が最も嫌う光の魔力だ。光属性の魔法は個人では基本的に使えなくて、なんか精霊と契約してそれ専用の魔導器を街に設置して……ってやって人間がセコセコ作ってるやつが、まだ破れてないように見える。

 おかしいわ。精霊をぶっ殺せば結界も破れるって思ってたのに。

 精霊が本体じゃなかったのかしら。でも祭壇ごとぶっ壊したからどこに隠れてても出てくるわよね?

 もしかして湖に逃げ込んだ? その可能性はまだあるか。魔力砲をぶっ放した後は私もその中がどうなってるか見えたわけじゃないし。

 

「やあねー、湖に潜ると濡れちゃうじゃない。やだやだ……」

 

 仕方なく私は精霊を探すために湖の中を探索することにした。

 服が濡れるのがすごいヤダ。いい素材使ってる服なのに。とはいえここで脱ぐのもアレだしとっとと精霊見つけて街を滅ぼさないと……と、湖に向かおうとしたところで。

 急に異変が起きた。

 

「っな!? に!? 何なのよ!?」

 

 水面から、唐突に二つの光の柱が上がる。

 

 一つは水の魔力を帯びて、まるでこの湖全てが牙をむいたかのような

 一つは光の魔力を帯びて、まさしく私たち魔族の天敵となるような。

 

 そんな謎の現象を経て、湖よりせりあがるように二つの影が浮かんでくる。

 シャボン玉のような風の魔法に包まれたそれ。

 そこに見えるのは三つの人影。

 

 両手に輝く双剣を持つ、水色の髪の少女と。

 ご主人たる赤髪の少年を両腕に抱えた、銀髪のアンドロイド。

 

「……え、嘘?」

 

 確実に全員殺し切れる一撃を放ったはずだったのに。

 なんで生きてるの───という問いは口から零れなかった。

 

 怯えた。

 竦んだ。

 

 湖から上がり、私を見下ろす二人の女の目が迫真に語っていた。

 

 

 ──────殺す、と。

 

 

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