勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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28 またしてもロマン特盛にしてしまいましたことを心よりお詫び申し上げます。

 

【side ティオ】

 

 

 湖の精霊からの下賜を受け、私は魔族への反撃のために湖から飛び出した。

 セントクレア様が怒りのままに注ぎ込んだ、湖に滞留していた魔力のほとんどが私のツインダガー……いや、魔双剣【セントクレア】に籠められている。

 魔法を扱う私だからこそ理解できる桁外れの魔力。自然が生み出す魔素の奔流。

 これを常人が手にしたら、一瞬で魔力酔いしちゃうくらいの量があって。

 

 けれど、私の体にはこれがとても馴染んで。

 今ならなんでもできそうな気がして。

 

「なんで生きてるのよ!? お前たち、何をした……!?」

 

 狼狽する魔族を高い位置から見下ろして、私は双剣に籠められた魔力を全身に回して攻撃の準備に移る。

 それで周囲を感じ取れば、すぐそばでイレヴンさんも何やら覚醒(めざ)めを果たしたらしく、先程とはまるで違う属性の魔力をその身に纏いながら、優しくロックを抱いていた。

 二人の呼吸を感じ取れば、間違いなくロックも息をしている。

 生きている。

 

 よかった。

 ふっ、と安堵から零れる笑顔を浮かべて。

 そして私は……目の前の魔族を撃退するために、魔力を練り上げる。

 

「くっ、もう一度魔力砲でッ……!?」

「加速魔法───」

 

 加速魔法(アクセラレーション)を紡ぐ。

 普段は上限を倍速で抑えてる。それ以上加速するとすぐに魔力が枯渇するから。ずっと魔力を消費し続ける燃費の悪い魔法だから。

 長く継続させるのが難しい。私はそれなりにキープできるけど、シミレさんなんかは一瞬の突撃の時だけ使うようにしている。

 

 でも、今はそんな縛りは気にしなくていい。

 双剣と完全に共鳴できている私なら、その迸る魔力でいくらでも上限を超えられる。

 だから。

 

 

「────『アクセラレーション・ティオファルディグ(t i o f a l d i g t)』ッ!!」

 

 

 ()()()

 音すら置き去りにする速度領域に踏み込んで、魔族に向けて突撃。

 双剣を両手に構えて───超々々々高速の回転斬撃で切り刻んでやるッ!!

 

「がッ、速ぁ!?」

「だぁーーりゃりゃりゃりゃりゃーーーーーーーーッッ!!!」

 

 一瞬で魔族に肉薄し、魔双剣の回転連撃で切りつける。

 相手も団長の隙を穿てるほどのスピードタイプ。でも、今この瞬間は私の方が速い。

 両手の爪で私の斬撃を捌こうとしてるみたいだけど、無駄だよ。

 その上から無限に切り刻むし、反撃だってはじき返してやる。

 

「くぅっ……近寄る、なっ!!」

「やああああっ!!」

 

 爪の上から連撃に連撃を重ね、勢いで押す。押せる。効いてる。

 バアルの時は弾かれちゃってた攻撃だけど、今は間違いなく刃が通っている感覚がある。

 魔族の幹部だけあって相当耐久力も高いようだけど……このまま押し切れる!!

 

「なます斬りになれぇーーーーっ!!」

「かあぁっ……お前ぇっ!! 舐めるんじゃないわよッ!!」

 

 と、しかし魔族の周囲をぐるぐると回るように切り刻んでいたところで、魔族が全身から魔力を爆発させて抵抗した。

 この勢いで一度ベーゴマのようにはじき出されるが、まだ回転は止めていない。そのまま再び軌道を修正、魔族に吶喊しようとして。

 けれど、あちらもそれは分かっていたようで、魔力を脚に溜めて……思いっきり跳躍して、空に逃げた。

 

「ったく厄介ねぇ!! 全力の『デス・ネイル』で頭の上から貫いて────ッッ!?!?」

 

 けど、それは隙だ。

 地上のように踏ん張れる地面がない。魔力操作で空も飛べるのかもしれないけど、地上よりは間違いなく初速は落ちる。

 その隙を狙って……イレヴンさんが飛び込んでいた。

 

「エクスアームズ03『ダイブブースター』……!!」

「なぁっ!? お前も空飛べるの!? そんな人形見たことないわよ!?」

 

 イレヴンさんの両足の形が変形している。

 足首のあたりからふくらはぎ辺りまで、何かしらの機械が飛び出していて、そこから魔力を放出させて空を飛んでいるみたい。

 かなりの飛行速度で迫っている。ロックは……離れたところに置いてきたのかな。その時間があったから今来てくれたんだね。

 これには魔族も驚いたみたいで、空中で距離を離すように逃げるけど……今のイレヴンさんには、遠距離攻撃の()段もあった。

 それは、文字通り手で行う攻撃で。

 

「エクスアームズ05───『ドリルスティンガーキャノン』ッ!!」

 

 超高速回転させてる腕の肘から先を、魔族に向けて……わぁ!? ()()()()()()()()!?

 やっばぁ! カッコいいなぁあれー!!

 

「うっそ何それ!? ……ぐっ!! このっ、腕!! 光属性!? ホーミング!? 貫通力ヤバっ…………ガ、アアアアッ!!」

 

 持ち前の素早さで何とかその腕を受け止めた魔族だけど、なにせ高速で回転する腕部の質量を持った超高速の砲弾だ。勢いを止めきるに至らず、思い切り押されてる。

 でも、その腕が胸を貫く寸前に無理矢理軌道を逸らされた。姿勢を崩して思いっきり上に向けて投げ捨てるようにして捌かれた。

 

 ───直後。

 

「がはァ────ッ!?!?」

「……腕は、()()あるんですよ?」

 

 重ねるようにイレヴンさんが放っていたもう片腕が今度こそ魔族の胸を貫く。

 斜め上方向から放たれたそれは、ムダにデカい脂肪の間に思いっ切りブッ刺さり、その衝撃で魔族を再び地面に叩き込むことに成功した。

 腕が手首まで突き刺さっており、間違いなくダメージは甚大で。

 

 そして、私が待っていたのはこの瞬間。

 

「やぁーーーーっ!!」

「ごボッ……おっ、まえらぁぁ!!」

 

 回転力を堕とさずに土煙を上げて地上に堕ちた魔族に急接近。

 今度は切り刻むのではなく、ここまで高めた回転の威力を一撃に籠めて!!

 

「───『ツインエッジ・ティオクロス』ッ!!」

「ッ…………!!」

 

 速度をすべて籠めて十字に振り抜いた双剣は、ガードしようとする魔族の爪ごと切り裂いて、その腹にX字の鮮血を生む。

 迸るように血が弾けて、魔族が倒れた。

 

 ……勝った。

 勝った、よね?

 

「───油断しないでティオっ!! まだ消滅が始まっていませんっ!!」

「えっ!?」

「……ちぃっ!!」

 

 だが、魔族とは私の想像以上にしぶとかったようだ。

 胸に穴を開けて、お腹を掻っ捌いたのに、まだ死んでなくて。

 こちらの気の緩んだ一瞬を狙い……血塗れの手をこちらに向けて、魔力砲を放ってきた。

 

「くっ!!」

「ティオ!!」

 

 一瞬遅れて身構えるけど……でも、私はまだアクセラレーションを解除してない。

 思い切りバックステップして距離を離し、双剣を交差して構えて防御姿勢も取る。

 たとえさっき放たれたような威力の魔力砲を撃ってきても、今は私の回避の方が速い。イレヴンさんも飛べてるし、凌げる……と、考えて。

 でも、向こうが撃ってきたのは違うモノだった。

 それは確かに一度見たことがあるもので、でも私達には効かなかったもの。

 ロックが対処してしまったもの。

 

「っ、眩しっ……!」

「閃光魔法……!?」

 

 魔力をスパークさせて放つ目くらましだった。

 視覚まで加速させて時間を間延びさせていた私にとってこの光は逆に効いた。一瞬以上の光量を目で受け止めてしまった。目が眩む。

 しまった。油断した……いや、でもイレヴンさんは対処してくれているはず。

 目が見えなくても今は自然の魔素を通して周囲を知覚できている。不意打ちされても対処できる。

 もう一度双剣を握る手に力を籠めて敵の反撃に備えたところで、しかし魔族の取った行動は意外にも。

 

「お前たちっ!! 顔を覚えたからね!! 次は絶対に殺してやるからっ!!」

「おのれっ……待てッ!!」

「待てって言われて待つアホがいるわけないでしょうがー!! アーホ!! ポンコツ!!」

「マスターみたいな物言いをやめろ!! 魔族如きがっ!!」

 

 撤退、だった。

 今この瞬間に限っては膨大な魔力を使える私と、覚醒したイレヴンさんの二人を相手をするのは敵わないと悟ったのか、その声色は怒りに震えながらも躊躇いはなかった。

 気配が一瞬にして遠ざかっていく。眩んだ眼を無理矢理開けば、イレヴンさんが地上に降りて脚から車輪を生んで走って追っているが……全力で逃げる魔族の方が速い。追いつけない。

 私のアクセラレーションで追えば行けるか……いや、魔力がどこまでもつか。遠くまで追いかけて、殺し切れなくて魔力を枯渇してしまえば今度はこちらがヤバくなる。

 やられた。

 私が油断してしまったことで、魔族を逃がしてしまう。

 

「─────逃がさん」

 

 だが、そんな私の後ろから。

 魔族を追うイレヴンさんを追い越すように。

 ()()()が───逃げる魔族の背に向けて放たれた。

 

「グッ────ゲハァッ!! ……死にぞこない、がっ……!!」

 

 怒りの魔力が丹念に籠められたその一射は、背を向けて逃げる魔族の背に確かに中る。

 血を吐き散らし、遠目に見ても大きくふらついたように見えた魔族だが……しかし、そこで。

 

「……くっ、転移魔法か……!!」

 

 追いついたイレヴンさんの目の前で、スッと姿が消えてしまった。

 死んで粒子になったのではない。そういう消え方ではなかった。

 転移魔法……のようなものだろうか。転移陣を使ったときに似てるような消え方だった。

 

 でも、私はその矢を放った人のほうにどうしても意識が行ってしまう。

 

「っ……()()っ!!」

「すまん、ティオ、イレヴン……私が最初に油断したのが全ての敗因だ。あれで全員が浮足立ってしまった……」

 

 最後の一撃を放ったのはメルセデス団長だった。

 振り返れば、そこには胸の中心に穴を開け、血を零したままの団長がいて……でも、しっかりと脚を地について立っていた。

 生きていた。

 よかった……けど、どうして?

 私がさっき、湖に吹き飛ばされる前に倒れた団長に治癒魔法をかけていた時は……間違いなく心臓が止まってたのに。

 

「メルセデス……先ほど、貴女は心臓を貫かれていたはず。大丈夫なのですか」

「ん、ああ……流石に、相当……ダメージはあるがな。()()()()()()()()()()()()()。そちらの心臓一つで体を動かすのに時間を食った……それで湖に叩き落され、目が覚めれば風魔法に守られていた……という、な。不甲斐がなさ過ぎて穴があれば入りたいよ」

「でも、無事でよかったです!! ……あっ、そうだ!! 他のみんなは!?」

「そちらも無事だ。あの謎の風魔法に守られていた。私が水中から上がる前にマルカートに全員の救出を命じている。そら、向こうだ」

 

 団長に心臓が二つあるなんて初めて聞いた。けど……それなら確かに、いつもタフなのもわかったかも。何はともあれ、無事でよかった。

 そして団長が指さす先を見れば、マルカートさんが水中で魔法を駆使してみんなが溺れる前に救出していたらしく、水辺にみんなが集められてるのが見えた。

 マルカートさん、シミレさん、アルトさん、あと溺れたのか口から水を噴水みたいに噴いてるソプラノさんと……リンちゃんも無事で。

 あとはロックだけど……それも、一番遠い向こうの方に横たわってるのが見えた。契約してるイレヴンさんがあれだけ暴れられてたんだから、あっちも無事なはず。

 

 ……全員生きてる。

 セントクレア様も、湖の中にいるって言ってたから死んでない。街の守護結界も破られてない。

 

 トドメはさせなかったけれど。

 私たちは、なんとか襲撃を乗り切る事が出来た。

 

 

 

 

『───いやなんで逃がしてんのよっ!? 殺せっていったでしょー!? ツメが甘いっ!! 後でお仕置きです!!!』

「うえぇっ!?」

 

 急に剣が精霊様の声で喋ったぁ!?

 えっもしかしてインテリジェンスソードになってますかこの双剣!?

 

 

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