勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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29 噂されるとくしゃみ出る文化ってどこから生まれたんやろ

 

 

【side ???】

 

 

 そこに在るのは一つの円卓。

 漆黒に塗りつぶされた六角形の円卓に六芒星の紋章が浮かび、その周囲にいくつかの人影があった。

 そしてそのうち席に座っていた一人の傍に……転移魔法により、何者かが呼び寄せられる。

 

「───げっは!? ごほ……ッ、ここ円卓!? ってことは……助かったわ~……!!」

「全く。ヴィネア、貴様はいつも独断が過ぎるぞ」

 

 呼び寄せられたのは満身創痍の魔族幹部、ヴィネア。

 つい先ほど、ロックら一行にズタボロにされて致命傷を与えられ、命絶えるかと思われた瞬間に、彼女の上司である六大将軍の一人、幻魔将アイムに呼び戻されたのだ。

 彼ら魔族の中でも最上位の力を持つ六大将軍には、自分の部下をいつでも手元に呼び寄せる魔法がある。人間界には流通していない技術である。

 

「『テオヒール』。……さて、何があったか皆の前で説明してもらうぞ、ヴィネア」

「あ、有難うございますアイム様! 私はつい今しがた、人間どもの街に襲撃をかけたのですが……!!」

 

 部下の命の波動が急激に弱まったため呼び寄せたが、想像以上の重傷だったため回復魔法をかけて、その上で何があったか聞き出すアイム。その整った容貌には顔には怒りと、ある種の興味が生まれている。

 幻魔将の問いに嘘偽りなど出来るはずもない。己の恥辱を他の将軍の前で晒すことになろうとも、ヴィネアは己の身に起きた出来事について自分が語れる限りのことを赤裸々に話した。

 

「湖の街ネレイスタウンの近くにある温泉がお肌にいいって言う噂を人間たちの酒場で人間たちが気持ちいいって話しているって噂を私の使い魔が変身したネズミが聞き取ったのを一晩かけて私に伝えてくれたのを私が寝起きの時に聞いて、その街に興味が湧いて飛んでったんですけれどその途中でワイバーンを何体か倒していい素材も落ちてそれが嬉しくなって、湖の街に到着するまでに群れを一つ潰してその素材もあとでアイム様にお渡しするつもりなんですけれど、湖の街に近づいたらやっぱり今の時代の人間もちゃんと街の近くに光の魔法で作られた街を守る広い範囲に広がっている守護結界が光属性で闇属性を持つ魔族である私の闇の魔力と相性が悪くて、だからその結界を破るための手段として街の近くの湖にいるとされている湖の精霊を殺して精霊の守護を使って起動している守護結界を解除するために湖の精霊がいるとされる湖の近くにある石造りの祭壇に向かったらちょうど湖の精霊の祭壇に湖の精霊がたまたまいてくれたのでそのまま襲撃してもう一息で殺せるという所で冒険者にその姿を見つけられて、セントールが一匹と竜人のガキが一匹と人形が一匹と後は命無き者の冒険者が数人いたんですけれどその中の一人が赤毛の男の子で割と顔がタイプだったんですけどそいつが私のセントールを殺すために全力で踏み込んで隙を突いた攻撃を叩き込んで心臓を貫いた後に逆襲してきた尻のデカい女を迎撃するために私が爪を伸ばしたらカウンターを仕掛けてきてそれが何故か魔装具もないのに魔力障壁を破ってきて魔装具はセントールしか持ってないはずなのに私に少しダメージが入ってそれに驚いて話を聞いたらバアルが接触したノックスって言う金級冒険者だったんですけどそこから私が反撃の為に頭を使ってフェイントを仕掛けて全力で魔力砲を放って全員チリにしたんですけど湖の中に叩き込んだ後に塵にしたはずの冒険者共のうち人形と貧乳の女が光の柱を登らせた湖から登ってきてその理由が全然わからなかったんですけどもしかすると湖の精霊があの二人を蘇生したのかもしれないって私は感じて、でも湖の精霊はその前の魔力砲で間違いなく倒したはずなのになんで死んでないのか本当に分からなくて、しかもそのうち貧乳の方が何故か魔装具まで手にしててその魔装具に籠められている魔力が尋常じゃない量で、そのとんでもない量の魔力をあの貧乳女はあろうことか自分の速度バフに全部乗せるとかいうアホなことしてたんですけどそれで私のスピードを上回られてぐるぐるすごい勢いで回転して目を回さないのかとか普通に突撃してきた方が攻撃しやすいんじゃないのかとか色々考えながら迎撃してたらちょっと不覚を取ったからさらに不覚を取ったりしないように魔力放出で空に逃げたんですけどそこで赤毛のノックスっていう少年を助けた人形がどこに彼をおいてきたのかはわからないんですけど人形も空を飛んで来て私に肉薄して、でも空中移動の速度なら私の方が流石に上だったから貧乳女とのスピード勝負には負けたけど人形との勝負には勝てると思って空中で優位を取るために一度距離を離して人形の腕の回転刺突を避けようとしたら人形の腕が外れてロケットパンチが飛んで来て私の胸に突き刺さりそうになったから自慢の胸に傷が付いちゃいやだと思って両手で掴んだんですけど光の魔法の属性を乗せられた攻撃って魔族には特効で本当にレアな属性なんですけどそれが私が掴んだ人形の腕にまとわりついてて貫通力が凄くてつき抜けちゃいそうになったので受け止めるようにしないで上に受け流してスタイリッシュにしのぐことができたと思って安心してこれでようやく反撃して人形と貧乳女を殺せると改めて構えようとしたところで追撃のもう片手のロケットパンチがまた私の胸を狙って飛んで来てあの人形巨乳嫌いなのかなとか思ったんですけどそのもう一発のほうはもう私の防御が間に合わなくて直撃しちゃって胸の間に手首まで埋まって魔核心臓ギリギリ逸らすことに成功したんですけどそれでも相当なダメージを私が受けちゃってあれはアイム様に思いっきり折檻を受けた150年前のアレを思い出すくらいの痛みでとうとうそれで私は空中から地上に叩き落されたんですけどそこで貧乳女がそこまで貯めていた回転で最後のとどめを刺しに来ていやお前その瞬間までずっと回ってたのかよとかちょっと思ったんですけど結局その一撃も地面に縫い付けられてた私が回避するにはちょっと時間が足りなくてスピード自慢の私と言えども胸にドリル腕が突き刺さった状態だと中々捌けなくてやっぱり一発目を受け止めようとしたのが失敗だったとその時脳裏によぎったんですけど貧乳女はそれまで見せていた回転斬りによる連続攻撃じゃなくて勢いをツインダガーに乗せた十字斬りでとどめを刺しに来てそれもなんとか私が致命傷を回避するために身をよじって腹に叩き込まれるところで何とか命は長らえたんですけど流石にダメージが大きいし向こうはまだまだ余力があってここでやられるのは私の主であるアイム様にも悪いし後でバアルに何言われるか分かったものじゃないのでそこで全力で逃げることを選択して湖にあいつらを叩き落す前にノックスに使った閃光魔法を使って目くらましをしたうえで私の自慢のスピードを活かして魔力放出で加速して逃げようとしたんですけどそこで心臓を貫いたはずのセントールが何故か生きててそいつが持ってる魔装具の神弓で私の背中を狙って撃ってきてそれが魔核をかすめちゃってこれは本当にまずい死んじゃうと思って誰か助けてと心の中で叫んでいたらアイム様に助けられました……!!」

原稿用紙5.75枚分(2300文字)も喋る必要あった?????」

 

 戦闘においては抜群のセンスを持ち、容姿にも恵まれ、使い所を間違えなければ相当な戦果を挙げる部下のヴィネアではあるが、おつむだけが唯一残念である。

 長ったらしいうえに理路整然の欠片もなくその場で自分が感じたこと、思ったことを羅列されるような言い回しをつらつらと並べられて、アイムは持病の片頭痛が悪化する感覚を覚えた。

 

 ……とはいえ今この場にいるのはヴィネアを除いて全員が将軍クラス。

 言葉の端々から、何が起きたかはおおよそ理解した。偉業と言えるだろう。

 

「湖の街……精霊セントクレアのいる湖で間違いなかろうな」

「150年前にもあそこは人間どもの拠点でしたね。あそこの精霊は魔装具を生み出せる……あれに力を与えられた命在る者は数知れません」

「未だに精霊が現存しているのが信じられねぇなァ。命在る者はとっくに消えたんだろ? これまでの偵察でも一人も見つかってねェって話じゃねェか、よくスタンピードが起きてなかったもんだぜェ」

 

 破壊将ベルゼビュート。

 竜帝ニーズヘッグ。

 獣皇フォルクルス。

 

 6大将軍の集う場である円卓の席のうち、3つの席を埋める各将軍がヴィネアの話をかみ砕き、彼女が狙ったとされる場所についての私見を述べる。

 彼ら将軍が再びこの世界に現界したタイミングは違えど、既にその身にまとう魔力は全盛期、150年前のそれに近づきつつある。この空間に力のないものが立ち入れば、その圧だけで心臓を止めてしまうであろう重苦しい空気が生まれていた。

 そして、彼らの言葉にアイムが頷き……改めて現状についての確認を進める。

 

「我ら魔王軍が再び人間界に攻め入る際の懸念は、やはり魔装具を持つ冒険者の存在です。ヴィネアが狙った対象自体は決して間違えておりませんね、魔装具を作り出せる精霊を滅ぼしに行ったのですから。理由と手段と過程と結果はどうかと思いますが」

「我が部下のバアルの写し身が戦ったという人形……それとヴィネアが戦った人形とは同一で間違いないか?」

「はっ、間違いないかと思われますベルゼビュート様! 近くに、バアルが言っていたノックスという冒険者がおりましたから!! ロックという名前ではないから間違えるんじゃねーと本人は言っていたので名前を訂正しておいてほしいと! そうバアルに言伝するように言っていました!!」

「絶対ェ騙されてるよそれお前」

「私の部下が愚かですまない……だが、そんなヴィネアでも一撃は叩き込めているし、バアルの写し身でもカウンターを狙われて不覚を取ったとのことだが決してダメージを入れられない相手ではない。危険度は集団で魔装具を使う金級冒険者よりは落ちると見た方が賢明か」

「分からんぞ。バアルはその少年に執着を持っている……意外とそのような小石が全てをひっくり返すものだ。現在の世界で唯一、人形の主であるという事も油断ならん要素だ。ロック=イーリーアウス……注意は引き続きしておくべきであろう」

 

 魔王軍の使命である、人類抹殺。

 そのための準備を水面下で行うために、各国の現状や現代の世界の冒険者の実力、危険度を調査するのが現在の魔王軍将軍の仕事であった。

 いずれ起こす再びの人魔大戦において、今度こそ勝つために。

 以前のように不覚を取らないために、万全の準備を。

 

「……ところでよォ、まだ将軍だって魔王サマだって、全員が目覚め切ってねェよなァ。この4人だけでこのままやっちまうつもりかい? 魔王サマ怒るよォ……?」

「フォルクルス、貴様は結論を焦り過ぎる。確かに現時点でも我ら4人が全ての部下を引き連れれば敗北は無かろうが……そうして油断して負けたのが前回の大戦なのだ。今は残り二人の将軍の帰還と……魔王様の復活を待つ。鼓動は徐々に大きくなっている……もう間もなく魔王様は目覚めるであろう」

「ふむ……残る二人の将軍もここに戻れば、さらに魔族領全域の魔素を高めることができます。魔王様の復活も早まるとは思いますが……あの二人、今どこで何をしているのか……」

「ケッ。アイツがいりゃどうすりゃいいかもわかったのによォ」

 

 しかし、万全に備えるために足りないピースがいくつかある。

 まず一つ、魔王の覚醒。150年前の大戦で受けた傷が大きすぎて、まだ目覚めに至っていないのだ。少しずつ()()の鼓動は大きくなっているものの、未だに眠り続けたままで。

 

 そして、もう一つ。

 6大将軍のうち、2人がまだ復活していない。

 大広間の円卓、そこにある2つの空席……4番目と、(ロク)番目の席に全員が視線を向ける。

 

「敵のレベルを吸い魔力に換える特殊体質を持つ『吸血姫ベルベッド』と、そして……」

「未来を観測する第三の目を持つ『全知万将アブソリュート』がまだ戻らぬ、か」

 

 吸血姫ベルベッド、全知万将アブソリュート。

 対象のレベルを吸い取り魔力へと変える常識はずれな力を持つベルベッドがいれば、対軍戦闘では余りにも有利を取れる。広範囲の敵のレベルを下げることができるからだ。以前の大戦でも彼女は相当な戦果を挙げており……しかし、生還は果たせなかった。死因は不明だ。

 そしてもう一人、アブソリュートは未来を視る。先読みの力は万象に通じ、この先に何が起きてどうすればいいのか、その答えを視ることが出来るのだ。人間どもの未来を読む力でどれほど魔王軍が助けられてきたか。だが他の将軍と比べると戦闘力は一歩劣り、それにより前大戦では一度死亡している。

 

 この二人が、まだ復活していない。

 二人とも……いや、どちらかでもこの席に戻ってくれば、それは魔王軍の勝利を確実なものにするだろう。

 

「……急いては事を仕損じる、か」

「人間どものコトワザだねェ。だが思い立ったが吉日って言葉もあるぜェ?」

「我らは魔王軍です。魔王様が目覚めて、その意志を確認してから動くのが正道。目覚めを待ちましょう……今は、魔王様が目覚めたときに落胆されないように情報収集と軍備の増強を行う事です」

 

 今はまだ魔王軍全体が動く時ではない。

 その中でも要注意人物は早めに仕掛けてもいいかもしれないが、戦争を仕掛けるには早い。

 そのような結論に至り、その日の将軍会議は終わりを迎えた。

 

 

 

「さて。ではヴィネア、貴様はこれから折檻だ」

「えぇー!? ちょっと待ってくださいよ新鮮な情報をゲットしてきたんだから褒めてくれてもよくないですかアイム様!?」

「ダメだ。何度言っても貴様は本当に学ばんなくっそ……!!」

 

 その後、ポンコツ幹部が拷問にかけられたのだが、それはどうでもいい話である。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

【side ロック】

 

 

『……プニャッシュ!! プナァーッシュ!!』

「ぶぇっくしょん!? ぶへっ……え、なに!?」

 

 思いっきり近くでくしゃみの音がしてはね起きたら俺の顔の目の前でミャウがめっちゃくしゃみしてた。

 顔周りべったべたやんけ!! 思わず俺もつられてくしゃみしちまったわンモー!!

 

「あ、起きた! ロックが起きたわよみんな!!」

「む、起きたか少年……!」

「マスター……!! よかった、ご無事で……!!」

 

 そして周りを見てみれば……え、なんかケンタウリスの皆さんとかイレヴンとかティオとかリンがめっちゃ俺の方を心配そうな目で見てくるやんけ。

 なんだ?? ここはもしや天国か???

 天国ならワンチャンここでハーレム形成してもええんか????

 

「えっ何ここハーレム? 俺いつの間にかハーレム完成してた?? なんでみんなまだ服着てんのおかしくない???」

「黙れマスター」

「起きて一言目がそれなのは実に少年らしいな」

 

 思いっきりしかめっ面を作ったイレヴンがハンカチで顔をガシガシ拭ってくれた。

 痛ァい!! 優しくしてェ!?

 






~登場人物紹介~

■破壊将ベルゼビュート(1席)
ムキムキマッチョな男性タイプの魔族。部下が優秀で助かっている。

■幻魔将アイム(2席)
おっぱいおっきい女性タイプの魔族。部下の一人が大変おばかなので苦労している。

■竜帝ニーズヘッグ(3席)
おっぱいおっきい女性竜人タイプの魔族。魔族領の竜種を統べる王。基本的に全裸。

■吸血姫ベルベッド(4席)
おっぱいおっきい女性タイプの魔族。ただ一人生き残っている吸血鬼の末裔。現在行方不明。

■獣皇フォルクルス(5席)
ライオン頭のよくあるタイプの魔族。タフネスなら6大将軍の中で一番。かませ臭すごい。

■全知万将アブソリュート(6席)
少年のような姿の魔族。額にある三つ目の瞳が先読みの力を持つ。現在行方不明。
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