勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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第三章 闘技大会
37 情報が洪水のように訪れると色々零れるものもあるよね。例えば


 

「おっぱい」

「朝一の発声がそれでいいんですかマスター」

 

 朝食の準備をしながらふと思い出したことを口にしたらいつの間にか食卓についていたイレヴンが鋭く突っ込んできた。

 いいじゃん。どれだけ口に出しても幸せになる単語だぜおっぱい。おっぱいは全てを救済するから。

 

「ってか俺思い出したのよ。遠征中はケンタウリスの皆さまに囲まれてハーレム計画ずっと練ってたから忘れてたんだけどさ」

「何の話ですか」

「遠征を無事に終えたらおっぱい触らせてくれるって言ってたよなぁ……? マスターが心征くまで揉んでください♡ って言ってたよなぁ!?」

「ああ……そんな話もありましたね。心征くまでと言った覚えは欠片もありませんが」

 

 そして思い出すイレヴンとの約束事。

 ケンタウリスの皆さまに直接的なセクハラを働かずに遠征を終えることが出来たならおっぱい触っていいって約束してたのをバッチリ思い出しました。これがおっぱいという言葉の力だ。この言葉には不思議な力がある。

 朝食も作り終えたので早速イレヴンのおっぱいを揉みしだこうと近づいていく。

 

「まさかとは思いますがマスター、条件を達成していたと思ってたのですか?」

「だって俺まだ童貞だよ……?」

「性行為の有無を目標にするな愚か者。十二分にセクハラな発言をしまくってたじゃないですか。……結果的にケンタウリスの皆様が適切な距離感を覚えて、ある程度マスターに対して信頼もいただけたようでそこは何よりではありますが、流石にあれで胸を自由にさせるほど私の体は安くはありません」

「ちぇー!! 知ってたー!!」

 

 相変らず身持ちが固いわねンモー!

 まぁ知ってたけどな。ケンタウリスのみんなに何もしなかったぜ! と胸を張れるほどではないのは俺もわかってる。誰が悪いかって言ったらドスケベ祭りなケンタウリスの皆さまが悪いとは思うんだけど。

 言ってみただけだよ言ってみただけ。もしかしたらワンチャンあるかなって思ってたけどやっぱなかったわ。

 

「……ですが、まぁ」

「おん?」

「セクハラ面を除けば……マスターも、マスターなりにご活躍をされていたことは間違いなく。これで何もご褒美を与えないというのもマスターのやる気を削いでしまうかもしれません」

「おお……?」

「なので……膝枕を、一分くらいであれば。してあげてもいいですよマスター」

「ソファに座れ」

「今かよ」

 

 しかしそこでまさかのイレヴンからの妥協案が提示され、俺は即答でリビングにあるソファを指さした。

 膝枕だって膝枕!! やだ……デカパイお姉さんに膝枕されるのなんて初めて……ではないな(真顔)。

 ガキの頃シスターにやってもらった記憶がある。あの頃は性の目覚めがまだだったので大人しいもんだった。

 だが……今は違う!(ギュッ)

 相棒の太ももの柔らかさをマスターとしてはしっかり把握しておきてぇよなァ!?

 

「はぁ……まぁいいですけど。変な所は触らないでくださいね…………どうぞ」

 

 しかしここでも素直に話を聞くイレヴン。

 ソファに座り直して、ぽんぽんと己の太もも、インナーの上からいつも着てる例の服のスカート風になってるあたりを叩く。

 ……えっ。

 何だ素直だな急にどうした?? お前そんな素直なやつだったっけ?? なんか狙ってない???

 わからん……これはもしかして罠なのかもしれない。

 まぁいいかぁ!!!(欲望)

 

「おっじゃまー! ……あっ、ちゃんと温かい。ぬくもり……」

「飛び込んでこないでくださいよ危ないなぁ。一分ですからね……どうですか、私の太ももは」

「ママみを感じてるのか驚くほど性欲が湧いてこないことに本気で驚いてます。ママ……」

「孤児院出身のマスターにそう言われるとなんて返したらいいか分からないです」

 

 シスターに膝枕してもらった時と同じくらいなんか……落ち着くな膝枕。えっちな気分に全然ならんわ。

 太ももに頭から突っ込んでからちょいちょい位置を変えてみる。イレヴンの顔を眺めようとしたら視界の9割が下乳で埋まってた。すごい光景。

 こう……インナーの上からひらひらして胸の下が広がる形の衣装だから下から眺めるとすごいというか。

 でも後頭部に感じる柔らかい感触が俺に性欲を生ませようとしない……何故だ……。

 

「……マスター。私がここまで体を許しているのですから、ちゃんと私を強くしてくださいね」

「こだわるねお前も。安心しろって、魔族を滅ぼせるくらい強くなってもらって、んでとっとと平和を勝ち取って俺の女になるまではマジで頑張るから」

「マスターの女になる予定は今後もありませんが。ですが、よろしくお願いいたします」

「おー。とりま今日は遠征疲れ抜きだから冒険はなしで、午前中はティオと孤児院に行って、午後は図書館行くけど……明日はさっそくギルドでいい感じの依頼探そうぜ。今度はソロでダンジョン潜るか」

「お任せいたします。どんな戦闘でも、今度こそマスターをお守りしますから」

「期待してるぜ」

 

 後頭部と視界それぞれ幸せの塊に挟まれつつも、今後の俺らの動きについてそのようにプランを固めた。

 とりま今日は遠征から帰ってきた疲れもあるし冒険はなし。昨日の宴会の後にティオと別れ際に約束してたから午前中は孤児院へ。

 なおあの後の宴会だが、リンがとうとうギルドの食糧庫に底をつかせていた。ヴァリスタさんは泣いていたがまぁどうでもいい事だろう。男の涙には興味ねえ。

 んでもって今日の午後は図書館へ。イレヴンも改めて調べものしたいって言ってたしちょうどええ。帰りにまた冒険の為の食料とか道具とか買い込んで翌日からの冒険に備えることにしよう。

 

「ふわぁー……むー…………ん。おはよぉー……?」

『みゃぁぁ……ふみゃ……みゃ?』

 

 したらそこでリンとミャウが起きて来た。ミャウは俺のベッドで爆睡してたがリンとタイミングが被ったかな。

 ソファにバッチリ膝枕されてる俺とイレヴンの姿を見てなにしてるの? って感じの顔である。

 今はね、お互いの愛を確かめ合っているところだよ。

 

「降りろマスター大至急」

「あれ、テレてんの? ウケる」

「肘がいいですか?」

「グッドモーニンッ!!」

 

 そして膝枕を見られて照れたイレヴンが照れ隠しに肘をこちらに構えて……なんかシャキン! と音を立てて肘からトゲが生えてきましたわよ?

 怖。速攻起きたわ。

 コイツ色んな所の武装が解放されたからな。一通りは見せてもらったけど面白い体してて飽きない。下手に茶化すと即死DEATH。

 

「よし、んじゃ今日もご飯食べて元気に行きますか。リンは先に孤児院行っててくれな、顔出すから」

「おー! あさごはん! もりもりはかせ!!」

『みゃあ!』

「食事は行儀よくしましょうね、リン」

 

 こうしていつも通りの騒がしいロック家の一日が始まったってわけ。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さて朝食も終えてリンを見送って、俺んちにティオが訪ねて来た。

 

「おはよ、ロック! イレヴンさんも!」

「おはー。……」

「お早うございますティオ。では向かいましょうか」

 

 いつも通り元気に挨拶……してるように見えてちょっと緊張してんなコイツ。

 イレヴンには分からないレベルかもしれないが、いつもふわふわしてる髪の毛がなんかこう……ふわふわ感が足りない。

 まぁこれから自分の出生の秘密を聞きに行くって所なんだ。普段通りにいろってのが無茶な話だね。

 

「うりうり」

「にゃあー!? 何!? なんで急に髪の毛もしゃってきたのロック!? 折角朝セットしたのに!?」

「マスター……女の髪で遊ぶのは万死ですよ?」

「ごめりん」

『みゃあ……』

 

 なんで空気を和らげるためにティオの髪にふわふわを足したらめっちゃ冷たい目で見てくるじゃん。少し悲しい。

 まぁ特に準備する物とかもないので俺たちは孤児院を目指して歩き出す。

 

「ケンタウリスのみんなも昨日だいぶ呑んでたよなー。今朝は平気だったん?」

「あー……シミレさんが二日酔い酷そうだったね。あの人お酒残るから……逆にソプラノさんはあれだけ呑んでたのにけろっとしてたよ」

「おや。人は見た目に寄りませんね」

「ソプラノさんはウワバミであったか。ギャップすげえなあの体躯で」

 

 どうでもいい話をしながら街中を歩く。今日も王都は平和ですね。

 ご近所さんや顔見知りに挨拶しながら歩いてると、孤児院なんてすぐに到着する。遠目に建物が見えてきた。

 それが目に見えてから、ティオの心音が少し早くなってんな。シミレさんほどじゃないとはいえ俺もシーフ。近くを歩く幼馴染の心音のテンポくらいは聞き取れらぁな。

 

「……さて。ティオ、大丈夫か?」

「……うん!」

 

 俺らにとっては見慣れた孤児院の門扉が、今のティオにとってはダンジョン最深部のボス部屋の扉のように見えているだろう。

 背中をぽん、と優しく叩いてやり、共に門をくぐって敷地内へ。

 午前中のこの時間は授業の時間だ。孤児院では子供たちが大人になった時に社会生活が送れるように座学、運動、社会勉強などをしっかりと教えてくれる。

 まぁその有難みを知ったのは12歳で卒院した後だったけどね。当時の俺はよく寝てたり脱走して青空眺めてたりしたもんよ。ティオは優等生でした。

 

「時間的にはもう休み時間だが……お、出てきたな」

 

 そしてちょうど休み時間になり、元気よくガキ共が孤児院から溢れ出してきた。

 

「わー!! サッカーしようぜサッカー!!」

「今日こそネオドライブシュートを決めてやるぜー!! ……ってあれ!? ロックにいちゃんだー!!」

「ティオねえちゃんもだ!! イレヴンさんもいるよ! どしたのー!?」

「……ふふっ、おはよー! みんな今日も元気いっぱいだねっ!!」

「おはよう、ティオおねえちゃん……」

「うわー! ロックにーちゃんミャウちょーだいちょーだいちょーだーい!!」

「くらえロックにいちゃん!! らいじゅーシュートォッ!!」

「人に向けてボールを蹴るんじゃねグボボーッ!!」

『みゃあっ!?』

「マスターがやられた……」

 

 今日も騒がしいわねガキ共ー!!

 何でコイツら15分くらいの休憩時間なのに全力で遊べるんだろうな……いや俺もガキの頃は遊んでたけど。子供の頃の時間感覚って特有のもんだよな。

 ティオに飛びついてくる年少女子組とイレヴンに挨拶する男女年中組、そして男子年長組は俺に向けて必殺シュートを放ってきてそれを俺は甘んじて受け止める。ロックくん吹っ飛んだーっ!!

 その衝撃でびっくりキャッツ! してフードから飛び出したミャウは猫好きのカシム(8歳・女)に捕まった。あとはみんなのおもちゃです。

 

「あら……どうしたのかしら、二人がこんな時間に来るなんて珍しいわね」

「……あ。シスターにみんながくること、いうのわすれてた……」

「んなこったろうと思った。……おはよう、シスター」

「あ……お早うございます、シスター」

「ええ、おはよう……何かあったのかしら?」

 

 そして普段以上に騒がしくなった庭にシスターとリンも出てきて、リンが俺たちが来ることを伝え忘れてたことを零した。知ってた。朝飯に夢中であんま聞いてなかったもんな。

 まぁ別に怒るって程でもない。今日俺たちが用があるのはシスターだけだ。

 この後は休み時間が終わったらお昼までまた授業だろうが……シスターにそこで教鞭を振るってもらうわけにはいかない。

 俺たちの雰囲気でシスターも何か察したようだ。そりゃそうだわな。この人が俺とティオをずっと育ててくれたんだ。雰囲気の違いで分かるよな。

 

 ……話を聞かせてもらう。

 なので。

 

「うっし!! そんじゃ休み時間の後は体育に変更な!! イレヴンが臨時講師っ!! みんな! 今日の組手はイレヴンが相手してくれるぞ!!」

「え!? ちょっとマスター!? 全くそんな話は聞いていませんが!?」

「おー!! イレヴンさんとバトルだー!!」

「強いのー? イレヴンさん強いのー?」

「ロックにいちゃんのあいぼーだぜ? きっとすごいつよいんだぜ!」

「シスターよりもつよいかなぁ? 楽しみー!!」

「わたしの魔法で勝てるかな……?」

 

 とりあえず強引に授業予定を変更。イレヴンに面倒を見てもらうことにした。

 この孤児院では体力強化の一環で組手も行っている。最低限王都付近にでる魔獣とは戦えるようにって言うシスターの指導方針である。俺らの身のこなしの基礎はここで学んだところあります。

 イレヴンならまぁ大事はないやろ。エクスアームズ使わなければちょうどいい戦力差だと思いますね。

 

「…………そうね。ごめんなさいねイレヴンさん、少しだけ子供たちをお任せしていいかしら。みんなもイレヴンさんにあまり無理はさせないようにするのよ」

「あ、はい……が、がんばります。あまり自信はありませんが」

「頼んだぞイレヴン。ミャウもいっぱいみんなと遊んでやってな」

『みゃあ!!』

「うし。……じゃあシスター、ちょっと」

「……話が、あります」

「ええ。応接室……いえ、聖堂にしましょうか。きっとあそこが相応しいわ」

 

 ガキどもはイレヴンに任せて、俺とティオはシスターに引き連れられて孤児院の一番奥、こじんまりとした聖堂へと移動する。

 特段宗教色が強い孤児院ではないが、院長が修道女やってるのもあって聖堂も併設されている。クリスマスにはミサなんかも開いたりする場所だ。

 

「……変わんねぇな、ここも」

「……」

「……」

 

 そこまで広くはない聖堂に久しぶりに足を踏み入れる。

 記憶にあるそことなんら変わらない聖堂内は、長椅子がいくつかと司祭用の祭壇と……そして、奥になぜかある懺悔室。

 この作りに疑問を抱いたことはなかったが、しかし改めて大人になってから思う事がある。

 なぜ孤児院に懺悔室があるのだろうか?

 罪を犯すのは大人だ。子供は過ちを犯すがそれは罪ではない。孤児を育てるという崇高な使命を持つ孤児院に、この部屋だけが余りにも浮いているように感じられる。

 

 特に、今は。

 

「…………さぁ。ロック、ティオ……話というのを聞かせて」

「ん。……ティオ」

「うん」

 

 中央の通路を挟んで、左右の長椅子にシスターとティオがそれぞれ座り、その間で俺が一歩下がって立ち、二人の話を聞く。

 この孤児院の始まりの3人。まるで神父様の気分になって来た。キャラじゃねぇよなぁ。

 

「……先日、魔装具を手に入れました。ネレイスタウンの近くにある湖の精霊、セントクレア様から下賜いただいて……そして、セントクレア様が、湖の魔力を十全に扱える私の事を────エルフだと言ってたんです」

「───ッ」

 

 シスターの心臓がドクンと大きな音を立てた。

 この反応……やっぱり知ってたな。

 

「教えてください、シスターは……私がエルフだと知ってたんですか? なんで私の耳は普通の人と同じ形なの……? なんで教えてくれなかったの……?」

「…………」

「……答えて!! シスター・ミル!!」

 

 想いを零すように言葉を紡ぐティオに、シスターが顔を伏せる。

 垂れる髪とシスターヴェールにシスターの表情は隠れて、ティオが思わず声を荒げた。

 

 ……責めたいわけじゃないんだ。

 理由を聞きたい。その想いは、俺もティオも一緒だ。

 なぜ。

 そのクエスチョンに、アンサーが欲しいだけなんだ。

 

「…………」

 

 長い沈黙……のように感じられた。

 しかし、シスターもとうとう覚悟を決めたのだろう。

 ゆっくりと顔を上げるシスター。普段は微笑んで閉じられている瞳が、覚悟を表すように見開かれていた。

 

「……全てを話す前に、貴方たちに見せなければならないものがあります」

 

 そう言って、シスターが己のシスターヴェールを脱いだ。

 ヴェールに包まれていた緑の長髪が解放され、重力に従い修道服の上に垂れる。

 普段はあまり見ない姿だ。いつもシスターはヴェールを被っていた。

 ガキの頃に一緒に入ってたお風呂でも、大きめのバスキャップでいつも髪を纏めていたし。かなりの長髪でふわふわのボリュームだから大変やろなと思っていたけど。

 

 ……そして。

 ()()を見た瞬間に、俺もティオも息を吞む。

 

「────!!」

 

 シスターが髪をかき上げるように両手で持ち上げて、晒すように見せつける。

 見せつけたのは、己の耳。

 

 ───()()()()()()()に、おぞましいほどの無数の傷跡が刻まれていた。

 

 

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