勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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39 彼女の体には男の欲望のすべてが籠められている。情熱を秘めた肉体……

 

「レベルが上がりました……」

「えぇ」

『みゃあ』

 

 聖堂を後にして、イレヴンの様子を見に庭に出て来た俺の顔を見つけたイレヴンの一言目がこれであった。

 ええ。ガキたちとの組手でレベルが上がるんかお前。そんなレベル上がりやすいんか。

 

「この孤児院の子たち強い……強くないです? いえもちろんこの高性能アンドロイドである私が後れを取るとかそういう話ではないのですが、銅級冒険者としてなら十分やれるポテンシャルをお持ちでは……?」

「あー、そこはシスターの教育方針だな。最低限王都付近に出てくる魔獣に勝てるくらいには体育の時間で鍛えてもらってんのよ」

「えっへん!!」

「毎日いっぱいきたえてるもんな!! でもイレヴンさんもすっげー強かったー!!」

「私の魔法が通じないなんて……悔しいです!」

「これで……あれだろ!? えっと、えくすあーむず? っての使えるんだろ!? イレヴンさんつえー!! かっけー!!」

「ロックにーちゃんより全然つよーい!!」

「ザコだもんなロック兄ちゃん」

「ロックお兄ちゃんは避けるだけだもんねー」

「やかましいわねお前らー!」

 

 聞けばイレヴンもガキたちの強さに驚いてたみたいだ。

 まぁね。シスターの教育方針として「まず一人でも生きていける力をつける、そうしないと他人に優しくできない」ってのがあるから。俺もティオもその辺は厳しく躾けられていた。

 だからこそティオは王都でも最速最年少の銀級昇格なんてしてるわけで。今孤児院の庭でそれぞれ休んでるこのガキたちも強くなってるよ。

 なお俺は孤児院時代にサボりまくってた健康優良不良少年でした。

 まぁ俺に戦う力はいらないから……逃げる力と危険を察する力でのらりくらるタイプだから……。

 

「……私が模擬戦を含む戦闘で戦う相手から得られる経験値は、マスターとのレベル差で計算されます」

「ふーん。どゆこと?」

「マスターはこの子達と比較しても一番レベルが低いのではないかという危惧が」

「聞きたくなかったな……」

『……みゃ……』

 

 そうだったんか……レベルが上がる感覚はここ数年味わってないからもしかしてと思ってたけどやっぱりそうだったんか……!!(落涙)

 もう才能の限界にブチ当たってんの俺? 悲しくない?

 まぁでも魔族の攻撃とかは避けられるし別にレベル不足で困ってるってところはないからいいか。何度でも言うけど俺シーフだし。前衛で戦うタイプじゃねぇし。

 イレヴンが強くなるんならそっちの育成に全力でええやろ。他力本願。

 

「私に入った経験値は共有されるので、あれほどの強敵と相対してきてマスターのレベルが上がってないのもおかしな話なのですが……まぁマスターですもんね。まともな冒険者と比較してはまともな方々に失礼ですね」

「俺に失礼な件」

「ふふ。ところで……ミルとしっかりお話は出来たのですか? ティオはまだ戻ってきていないようですが」

「ああ、そっちは大丈夫。……色々話して、納得できた。今は二人で昔話でもしてるんじゃねえかな」

「そうですか。円満な納得があったのならば……よかった」

 

 なんか俺のレベルおかしいな? ってイレヴンが危惧してたけど俺も俺のことをよくわかっていないのです。

 ってかなんか……護りの指輪が変質したり謎の風魔法を使えたり……俺マジでなんか変なのかな? 自分でも疑問を抱く程度には最近なんか色々起きてるわ。イレヴン見つけたのもそんな感じだし。

 まぁいいかぁ!! イレヴンとリンとミャウとみんながいる日常が送れていればそれでええ!!

 基本的に楽観主義です。何とかなるやろ多分。

 

「ねーねーイレヴンさん!! わたし、エクスアームズっていうの見たーい!!」

「リンちゃんが、一緒に冒険したときに凄かったって言ってた!!」

「あ、俺もみたーい!! 見せてー!!」

「見せて見せてー!!」

「みーせーて!! みーせーて!!」

「みーせーて!! みーせーて!!」

「アッハイ。そうですね……その、マスター。どうしましょう」

 

 そしてガキどもに聞こえない程度の小声でティオの件も大丈夫だったよって伝えてたところで、無限の体力回復を見せて元気いっぱいのガキたちが今度はイレヴンの武装を見たいと囃し立て始めた。

 これにはイレヴンも困り顔。子供の元気さに押されてるイレヴン可愛いですね。

 

「見せてやっていいんじゃね? 俺は前にネレイスタウンの湖畔でメルセデスさんたちとやった模擬戦で大体見せてもらったけど……おもしれー武装ばっかりだったしな。こいつらも喜ぶだろ」

「……かしこまりました、マスターがそうおっしゃるのであれば。では、皆さま少々離れてください。危ないですからね」

「わー! えくすあーむずだー!!」

「きっと腕からビーム出るんだぜビーム!!」

「ビームはまだ機能が解放されていないので出ませんね」

「いずれは出るんか?」

 

 エクスアームズの紹介にOKを出す。アレ見てるだけでも面白いしな。ロマンの塊ってやつ。

 でもまぁ全部の機能はまだ解放されてないってことで。真のマスター登録をしてかなりの武装が解放されたが、今後レベルアップによる振り分けで更に解放される武器もあるらしくて。

 ぶっちゃけどんなふうにイレヴンを強くするのがベストなのかはさっぱりわからん! この辺は臨機応変に対応していくか。今日レベルが上がった分も必要になったら使おう。

 

「では、ご覧ください」

 

 イレヴンの武装紹介が始まった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 ■01 ドリルブラスター■

 

「このように……肘から先の腕部が回転します。両腕共に回転が可能。これは私以前の全てのアンドロイドにも搭載されている基本機能ですね」

 

 イレヴンの武装の一つ目だ。

 肘から先を回転させるアレ。仮マスター登録の状態だとこのデフォ武装しか使えなかった。

 ただまぁ攻撃力は十分に高いし汎用性もある。主力武器だね。

 

「わー!! かっけー!!!」

「すごーい!! ギュルギュルしてるー!!」

「それでパンチ!? パンチするの!?」

「貫手だぜ!! ドリル一本突きだー!!」

「両手で……はッ!! ……と。このように魔獣に突き刺すような使い方をすることもありますね。必殺『ツイン・ドリルブラスター』です」

「かっこいいー!!!」

「つよいー!!」

「まじゅうはいちげきだった。でもわたしのブレスのほうがつよいもん!!」

「リンねーちゃんのアレはズりぃよ」

「シスターにも院内じゃもう撃っちゃ駄目っていわれてるもんね……」

 

 必殺技のツインドリルブラスターも紹介してガキたちも盛り上がっておる。

 対抗心を発揮してリンが咆哮(ブレスキャノン)を自慢するけどアレはチャージと弾数制限があるから安易に比較はできませんね。

 

 

 ■02 トランスフォーム■

 

「全身を変形させる機構ですね。様々な変形機構が存在しますが、現在はバイクへの変形のみ実行可能です。『トランスフォーム』!!」

 

 俺が最初にレベルアップで解放した機能だ。

 バイクにだけ変形するのかと思ってたけど他にも開放すれば色々変形機能あるんだってさ。

 ガキ共の目の前でいつもの変形を見せて質量とか色々無視してバイクに変形するイレヴン。相変らずかっけぇバイクだ。

 

「うおー!? えええー!? おかしいだろそれー!?」

「サイズが……サイズがおかしい……!!」

「のりものになっちゃったー!?」

「は? カッコよ……こんなカッコいい乗り物ズルいでしょ……」

「走れるんだよね!? のりたーい!!」

「私も乗ってみたい……!!」

『マスターが運転して複座に乗れば走れますが……しかし流石に敷地内では狭くて危険ですからやめておきましょうか。転倒の危険もありますしね。もっと大きくなってからにしましょうね』

「俺の背中に乗る条件は女子であることなので男子は一生乗せてやんねー!!」

「なんだとー!?」

「カス!! ロック兄ちゃんカース!!」

「バーカ!! 死ね!!」

「リンちゃんが乗れたのってそういう……?」

「生きててごめんなさいって謝れ!!」

「無限に口が悪い」

 

 男子がめっちゃ石投げて来たので上半身だけで回避する。

 なんや。基本的にイレヴンの背中には女子しか乗せんぞ。カトルが既に乗ってるけどあれは間にティオを挟んだからギリ許す。

 後ろ乗る時はついでにデカパイだとさらに嬉しいのですくすく育つのだぞ女子組よ。

 

 

 ■03 ダイブブースター■

 

「脚部の膝下に埋め込まれているブースターを解放して、短時間の飛行やキックの威力を増す勢いをつけることができます。このように……ふっ!」

 

 本マスター登録して解放された機能だ。ヴィネアとの戦いでも使ったんだって。

 スピードはそこまで早くはないけど、短時間なら空を飛べる。またキックを出す時に蹴り脚のスピードを足したり、相手にケリを叩き込んだ後に吹き飛ばしたりできる。

 空気を圧縮して放ってるらしい。よくあれで姿勢制御できるよな。

 

「おおー!? イレヴンさん飛んでるー!!」

「すげー!! ふくらはぎがシャキーン!! って変形した!!」

「空飛べるのいいなー!!」

「飛行魔法ってすごい難しいもんね……魔力一杯使うし」

「むむ!! わたしもとべるもん!! ていやー!! まてーイレヴンー!!」

「ちょっ……リン!? 貴女ほど縦横無尽に飛び回れるわけではありませんから!! 掴もうとしないでください!?」

「ふむ。やっぱ空中戦闘じゃリンの方が上か」

「リンおねーちゃんの翼、べんりだよね……」

「尻尾もすごい威力だもんなー。竜人ってすげー」

 

 ライバル心を刺激されたかリンも羽を広げて飛びあがり、逃げるイレヴンを捕まえた。

 飛べるってのは間違いなく便利なんだけどな。冒険者でも飛行魔法を修めている人は少ない。マルカートさんなんかはかなり飛べるらしいけど。

 だがそんなイレヴンでも流石に生まれついて羽根を持ってるリンには敵わないようだ。空中でキャッチされて空中デカパイ百合が広がっていた。眼福。

 

 

 ■04 インパルスニードル■

 

「肘と膝に埋め込まれているトゲですね。いつでもこうして出せまして、貫き穿つことができます。相手が硬ければ硬いほど貫通効果が発揮されますね。近接戦闘でドリルブラスターと組み合わせて使用する形です」

 

 今朝の膝枕の時に肘から出してた金属製のトゲだ。めちゃくちゃ鋭い。キラン! って音が鳴りそうなくらい研ぎ澄まされてる。

 あれ膝からも出るんだな。膝蹴り肘打ちが必殺武器になるって感じか。殺意の塊なのが魔獣、魔族用の武器って感じある。人間には使えないなありゃ。

 

「かっこいい!! かっこいいけど……」

「……ドリルブラスターでよくない?」

「つらぬくならドリルブラスターの貫手でよいのでは……?」

「ドリルブラスターなら回転力もある……」

「しゃていも肘より長い……」

「膝蹴りでトゲが突き刺せるのは用途ありそうだけど。肘にトゲがあるのは過剰積載と言えなくもない……」

「マスター。あの子たちすごい正論でイジメてきますマスター」

「日々のシスターの教えの賜物ですわね」

「むー。わたしもツメのばせるもん!!」

「リンのそれはミャウの爪と同じ仕組みなんか?」

『みゃ?』

 

 しかし子供たちからの反応は微妙だった。

 まあ言っちまえばただのトゲだからな。確かにドリルブラスターがある以上貫通力って所で被るかも。

 多分ドリルブラスターでも貫けない硬い魔獣相手にパイルバンカー気味にぶち込む用途なんだろう。ダンジョンの壁とかも壊せそうだし悪くはないけどな俺としては。

 リンも竜人の特徴として爪を鋭く伸ばせる。切れ味も中々だしそも竜人なんで力が強いからひっかきが武器になるけどお前体ちっさいから間合いがな。

 

 

 ■05 ドリルスティンガーキャノン■

 

「次は自信がありますよ。マスターに向けて撃ちますのでよく見てくださいね」

「ご主人様を殺すつもりか」

「ドリルブラスターの回転から……エクスアームズ05───『ドリルスティンガーキャノン』ッ!!」

 

 回転させた腕が凄まじい勢いで俺に向かってぶっ飛んでくる。なぜ狙った?

 まぁ撃ちますよと言われて構えて放たれた攻撃くらいなら流石に余裕で捌けるわ。

 捌き斬りのタイミングも見えたけどそれやったらイレヴンにダメージ返っちゃうから今回は回避を選択。

 

「っしょらーい!」

「ん。流石ですねマスター。ホーミングはしてなかったとはいえお見事です」

 

 ゴキブリみたいに姿勢を落としてドリル腕を回避。背中の上を抜けていく腕だけど音と風圧がすっごい。これが一番火力が高い攻撃だね。

 なお放った腕は遠隔操作可能。マッハを超える速度で放ったけどちゃんとコントロールされてイレヴンに戻ってきてガチャコっと腕に嵌め直された。便利。

 

「ウワーッ!! ロケットパンチだー!!」

「ちげーよ回ってるからドリルプレッシャーパンチだよー!!」

「いや!! 撃つときに回転を溜めてたからターボスマッシャーパンチと言っても過言ではないよ……!!」

「かっけー!! ロケットパンチさいこー!!」

「ロックにーちゃんもあれよく避けられたな……」

「避けるのだけは一番上手だよねーロックお兄ちゃん」

「動きはキモいけどね」

「うん、キモい!」

「ロックはキモい……?」

「この俺の回避に最適化された動きの素晴らしさがなぜ分かってもらえないのだろうか」

「見た目が悪すぎますマスター」

『みゃあ』

 

 このドリル腕は子供たちからの評判も上々だった。わかるよ。わかりみが深い。

 やはりロボットもサイボーグもアンドロイドもドリルとロケットパンチは必須の技能なのだ。それはロマンという名の真理。異論は認めん。

 なぜか俺の回避行動は相変らずディスられてた。泣くぞ。

 

 

 ■06 グランドスピナー■

 

「これは高速移動用の装備ですね。バイク変形のように搭乗者の魔力を必要とせず、私一人で走らせることができます。長距離移動の場合はバイクの方が速度も効率も良いですが、これだけでも速度は結構出せますよ」

 

 イレヴンのふくらはぎ辺りがダイブブースターとは異なる変形を見せ、かかとあたりから後ろに伸びるように可動式のパーツが生えて、その先っちょに小型のタイヤが付いている。

 んで足の両横にもタイヤが出てきて、あれで地面を滑走して走る。スピードはバイクのフルスロットルには敵わないが、普通に両足で走るよりは全然速い。小回りもそれなりに効くようだ。

 

「むっ!! なんとも味わい深い兵装……!!」

「ギュイイイイイイイ!! って音が鳴るローラー移動いいよね……」

「いい……」

「ターンピックは? ターンピックは冴えてるの?」

「イレヴンさんの肩は赤く塗らねぇのかい……」

「未だに続編あたりでみんな空飛び出したの許せねぇんだよな……ワイヤーとローラーダッシュだけで戦って欲しかったよな……」

「さくがの都合とか色々あったんだよきっと」

「ガキどもがなんか変な電波受信してる」

「おとこのろまんとくもり……」

『みゃあ』

 

 ガキ共もこのむせるようなロマンの塊には味のあるコメントを返してきたな。

 わかる……俺も初見の時めちゃくちゃむせたから分かる。ダイブブースターで空も飛べるけどなんならこのスピナー一本でずっと地面走っててほしいもん俺。

 インパルスニードルで地面穿ってターンとかしてほしいよね。そういう方向の機能解放あったら躊躇わずやるわ俺。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 はい。

 一通り武装を紹介してガキ共も盛り上がったところでシスターとティオも戻って来た。

 しっかり顔を洗ってきたみたいですね。泣きはらした目じゃあガキ共も驚いちまうからな。

 シスターはまた深くヴェールを被り直していつものにこにこ糸目フェイスに戻っている。

 

「お待たせしました。みんな、イレヴンさんに失礼なことはなかったかしら?」

「うん!! すげーんだよシスター!! イレヴンさん俺たちがみんなでこうげきしてもかるがるさばくんだよ!!」

「わたしの魔法、あたらなかったの。ためてから、狙いをつける時間が長いって教えてもらった……」

「あとね、あとね!! いっぱいへんけーしてすげーんだ!!」

「腕がドバー! って飛ぶんだぜ! ロケットパンチだった!!」

「ローラーで走るし! 空も飛ぶし! イレヴンさんかっけー!!」

「あーあのローラーダッシュカッコいいよねー。分かるなぁ……私も初めて見た時感動したもん」

「え、ティオおねえちゃんもイレヴンさんのえくすあーむず、見たの……?」

「うん! この間一緒に遠征したときにね!」

「ねーねー、ティオねーちゃんとだったらどっちが強いの!?」

「イレヴンさんじゃねー? ティオねーちゃんの攻撃だとイレヴンさんの防御抜けないだろー!」

「ティオねーちゃん素早いからイレヴンさんの大ぶりの攻撃だと当たらないんじゃない?」

「もしティオと戦うことになれば私の圧勝は間違いありませんね。やりませんが」

「相変らず自分への自信凄いねイレヴンさん!?」

「そもそもすでに勝負はついてるだろ。良く見ろギガス、二人の胸元を……圧倒的戦力差だろ?」

「バカロック死ねーっ!!!」

「ぐへっし!!」

「ロックはいつもばか……」

『みゃあ……』

 

 その後アイリに回復魔法をかけてもらってから、時間もいい頃だったので俺もティオも孤児院でお昼を一緒にいただいていくことにした。

 久しぶりに食べるシスターの料理は、なんだか懐かしい味がした。

 

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