勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「ほんじゃ午後もしっかり勉強するんやぞリン。夕飯はカレーの予定です」
「カレー! やったー! がんばる!!」
「お邪魔しました、ミル」
「いいえ、こちらこそ子どもたちが大変お世話になりましたイレヴンさん。また遊びに来てくださいね」
「またねーイレヴンさん!」
「つぎは負けないぞー!」
「ティオねーちゃんもロックにーちゃんもまたなー!!」
「みんなまったねー!!」
お昼ご飯を食べ終えて、シスターやリン、ガキたちと挨拶して孤児院を後にする。
もちろんお布施は忘れない。俺もティオもこないだの遠征で稼いだ分から何割かシスターに廻して、ついでに買ってきたお土産も渡していく。
俺はコマとかのおもちゃを、ティオは女の子向けにアクセサリーとかを買ってやってたらしい。喜んでくれるといいね。
「今日はありがとねロック。私に付き合って貰っちゃって」
「全然かまへん。なんもしてねーしな俺。雑に茶化してイレヴンに子供の面倒見るの任せて飯食べただけだわ」
「ううん。私も、シスターも……あの場にロックがいて一緒に聞いてくれたから、落ち着いて話が出来たんだと思うの。だからやっぱり……ありがとう、お兄ちゃん」
「テレるぜ」
帰り道でティオにお礼を言われるが、逆に恐縮するまでありますね。マジで何もしてねーからな俺。
ティオの件はシスターが抱えていたもの、ティオが悩んでいたことが一つ整理できて結果としていい方向に前向きに転がったので俺も内心ではほっとしている。
たまに出てくるティオのお兄ちゃん呼びにわしわしと頭を雑に撫でて返してやる。
むふーって顔になる俺の妹は可愛いぜ。
「それじゃ、私はケンタウリスに帰るね。今回は私の魔装具探しでみんなに手伝ってもらったから、これからは恩返ししないとね!」
「今後は魔装具を整えることをケンタウリスの目標としていましたものね。頑張ってくださいね」
「俺の力が借りたかったらいつでも呼んでくれな」
「うん! じゃあまたね!」
『みゃあ!』
そしてティオとも別れる。もしシスターとの話の結果でメンブレしちまってたら今日一日くらいは傍にいてやるかと思ってたけどその心配も無くなったしな。
ケンタウリスは団長含めてみんな若い世代で、エルフに対する偏見ってのもかなり薄い。ネレイスタウンでの戦闘後も本当にこれまでと変わらない距離感でいてくれたのを見ていたから心配はいらないだろう。
ケンタウリスの皆さんティオを頼みます!
クランハウスに歩いていくティオに手を振って見送り、そして俺らは午後の自由時間となった。
このあとにやることは決まっている。図書館に行って読書タイムだ。
「魔族の討伐に関する記録があれば目を通しておきたいですね。どのように討伐されたかなどの情報があれば対策にもなります。それと……マスターの指輪の変質についても調べておかねば。これから予想される魔族との戦いに備えなければいけません」
「余りにイレヴンが真面目すぎて異世界転生チートさんの小説読み行こうとしてる俺ががんばってないみたいじゃん」
「がんばれよマスターも」
『みゃあ』
何読むのか聞いたらめちゃくちゃ殊勝な言葉が返ってきて少々恐縮してしまいます。
俺にとって図書館って異世界転生チートさんの作品読みに行く所という認識だったからな。テンション上がるなぁって感じの気分で行くところだったんだけど。
イレヴンは真面目ですね。頼れる女。
※ ※ ※
そんなわけで図書館にやってきましたわ。
「いらっしゃいロックくん。イレヴンさんも」
「おっじゃまー。相変らずお綺麗ですねビブリオティックさん!」
「お邪魔します。今日も色々調べものをさせていただきます」
司書さんであるビブリオティックさんにご挨拶して入館。イレヴンはさっそくビブリオティックさんにお目当ての本がどこにあるか聞いている様だ。
もちろん俺はお目当ての異世界転生チートさんの新刊がある棚を目指す。これを読まねば俺は心によくないものを残すから……俺の生きる理由だから……。
「うっへへ新刊あるかなあるかなー……おっ! おぉ……おっほ……♡」
そして本棚の前に来た瞬間に歓喜の声を零してしまった。
なんてこった……この短期間で新刊が三冊も出てやがりますよォ!?
うわーマジか! マジか嬉しいな!! めっちゃ執筆意欲上がってるじゃん異世界転生チートさん!! こりゃ熱いぜ……マジか。余りにも有難いの極み……!!
これはもう拝もう。俺はパンパンと音を立てないように気をつけつつ柏手を打って頭を下げて、そして新刊を手に取って読書に潜るために近くの机に向かう……と。
「あ。ノインさん! 来てたんすね!」
「こんにちわ~、ロックくん。うふふ、もうすぐ来る頃かなぁって思って待ってました~。頭まで下げてたから何かと思いましたよ~?」
そこでさらに俺の大天使と遭遇した。ノインさんが眼鏡越しににっこりこちらに笑顔を向けてくれる。可愛い。すき。
これは待たせちゃいかんな……速攻で新刊読み込んで感想戦に移らねばなるまい。
ノインさんの隣の席に座る。どうやらノインさんは異世界転生チートさんの昔の作品を読んでたみたいだね。過去作読み返すのもいいよね……俺もガキの頃何周もしたわ。
「早速読んじゃうんでお時間貰っていいスか? 一時間くらいで読み終わる……はず!」
「あら~、全然急がなくて大丈夫ですよ~。今日は夜まで予定ないですし、じっくり読みこんじゃってくださいね~」
「あざます! では早速うへへのへ……!」
「その間ミャウちゃんお借りしてますね~」
『みゃあ?』
俺のフードからミャウが取り出されていく。こいつは女子特効みたいなところあるからな。
ミャウで癒されててくださいよノインさん。その間に俺は読みふけっていますので。
そして堪能する読書の時間。
好きな作品の新刊読んでる時ってなんでこんなに楽しいんだろうな……マジで時間が流れるの一瞬だよね。
あの凄まじいオチからの続きがまたこう……物語を再構築して新しいワクワクが作り上げられて行くのがさ……いいよね……。
「……うふふ。やっぱり可愛いですね~」
隣のノインさんが時々小声で何か呟いてるようだが、しかし俺の集中の99%は本に注がれてるのでスマンが反応できません。もうちょっとだけミャウを可愛がってやってください。
今いい所だから……めっちゃ盛り上がってるから……!
嘘だろ意気揚々と登場したフラグありそうな新キャラが何の意味もなく死んでる……!! と思ったら復活してまさかのそんな展開!? 王道の展開から外してからのガッツリフラグ拾い上げての爽快主人公無双!! からの!? これはもう完全栄養食ですよ!! 完全メシッ!!
「……本を読んでいるときのマスターはこんな顔してるんですね……」
「……この時が一番可愛いと思います~……」
その後も夢中で新刊を読みふけり、賢者タイムのような達成感で最後のページをめくり終えて本を閉じる。
するといつの間にかノインさんの逆隣りにイレヴンも来ていたようで、美女二人に挟まれる図になっていた。
デカパイオセロ。俺もデカパイになるんか?
「ふぅ……えがった……」
「堪能してくれたようでなによりです~」
「待たせてすんませんでしたねノインさん! イレヴンも調べものは終わった?」
「ええ。当時の魔族の将軍や幹部の情報はある程度得ることができました。マスターの指輪については情報は出てきませんでしたが……」
「あら~、ロックくんの指輪……例の護りの指輪ですよね~? 何かあったのですか~?」
「その辺も含めてまずはカフェ行きましょっか。図書館ですしあんまり話してもね」
新刊をしっかりと借りてアイテムボックスに収納して、積もる話はカフェに移動してからとした。
まずは感想戦からだよなぁ!? 対戦よろしくお願いしまぁす!!
※ ※ ※
「いやぁ……あのシーンはマジでやむを得ない事情がありましたよねぇ……事情が!」
「あの時点では主人公に覚悟が足りませんでしたよね~。確かに言う通り、核の10や20が準備出来れば沈められたかもしれませんもんねぇ~」
「んでそっからの敵の煽り方ですよマジで! あの感情と理性のぶつけ合いっていうか……余りにも高度な心理戦の応酬ね!! 味わい深かったって感動したぁ……」
「それな~! 一度謝罪を挟んでからの全力の煽り! あれは最高ですよね~! ひっどい内容の話なのに余りにも貫きすぎて逆にスッキリするまであります~!」
「あそこまで綺麗に主人公が論破される作品も中々ねぇんじゃねぇかな! 響く慟哭……」
『みゃあみゃあ』
「…………流石に少々興味が出てきましたね、二人がそこまで熱く語っておられると」
「お前も読むんだイレヴン。なんなら新刊から読んでも今ちょうど新章突入したからすんなり読めるぞ」
「ロボット物にシフトしたと思ってからの何だこの話? ってなった所を乗り越えられるとすごい面白くなりますよ~、おススメです~」
「そうですね……一先ずアルトから貸してもらった女性向け小説を読み終えたら読んでみましょう」
「ああ、そういやアルトさんから持ってる本借りてたな。あの女性に人気の……」
「まぁ。もしかしてアレですか~? 一巻の冒頭の展開が悪名高い貴族の長女に生まれてしまって周りからの目が酷い所から始まるっていう……」
「そのような話でしたね。成り上がる途中で少々ご都合主義な部分もありましたが、これがなかなか面白くて」
「やっぱり~! あれは私も読んでますよ~! じゃあイレヴンさん、最新刊まで読み終わったらイレヴンさんも感想戦しましょう~!」
「ええ、その時はぜひ」
いつものカフェでいつもの注文をして、カフェオレを味わいつつミャウは女子組に提供して、穏やかな雰囲気で感想戦を繰り広げていた。
ホントに新刊のたびに面白い話が出てくるからたまらんですわよ……今回の話は人を選ぶ部分もあるなと思ったけどのめり込めたらマジで話が深かった。いいものを読ませてもらいましたわ。
んでイレヴンも最近はちょっと本を読み出したのもあって、その本をノインさんも読んでたらしくそちらでも感想戦を求めていた。ホントに本の虫だなこの人。そんなところも愛らしい。
んでもってある程度感想戦が落ち着いたところで俺は一つ思い出した。
そういやネレイスタウンでノインさんへの御土産も買ってたわ! ちょうどいいから今渡そ!
昨日の時点でカトルには例のアクセサリー渡したし、孤児院のみんなにも今日渡せたし。
これで買って来たお土産配布コンプリートだわ。早く渡せてよかったよかった。
「そういえばノインさん。こないだネレイスタウンに遠征してきたんすけどそん時ノインさんにお土産買ったんすよ」
「えっ? ……私にですか?」
「ええ、よさげな物見つけたので。……こちらです。どうぞ」
「お、おお~? ありがとうございます~……急でびっくり。ここで開けてもいいですか~?」
「もちろんいいすよー。でもマジで大したものじゃないんでそんな期待はせんでもろて」
「女性にプレゼントを渡してからその評価はどうなんですかマスター」
お土産屋で色々漁っていた時にちょうど見つけて、ノインさんの髪の色と一緒だったからこれええやん!! ってなって買った押し花の栞だ。
なんて花だったっけ……アガ……アガパンなんちゃらって店員さんが教えてくれた。花は全く詳しくないけどノインさんの髪の色と一緒の花だし見た目可愛いかったからこういうのなら女の子喜ぶやろ!! と思って買ったところはあります。
そして簡易な包装を丁寧に破れないように開いたノインさんがその栞を手に取って、一瞬驚いた風に目を開いてから、にっこりと柔和な微笑みを浮かべた。
「やだ~、すっごい可愛い栞じゃないですか~! こういうの男の子に貰うの初めてで……嬉しいです~!」
「めっちゃ喜んでくれるぅ! 大した金額でもなかったし恐縮!? 恐縮してしまうというか! いつも本読んでるから似合うかなーとか単純な気持ちで選んだだけなんですけれど!」
「その気持ちが嬉しいんじゃないですか~。うふふ、大切にしますね~? ありがとう、ロックくん」
「あっはい。……なんかテレる」
「喜んでもらえてよかったじゃないですかマスター。私から見てもセンスのいいプレゼントだと思いますよ」
「ケンタウリスのみんなに相談した甲斐があったってもんだわマジ」
とりあえず喜んでもらえたようで何よりですわ。お気に入りの小説の話してる時くらいニッコニコですわ。
そんなに喜ばれると……2000Gくらいで買ったのがなんか……申し訳なくなってくるな!
絶対お偉い感じの立場の方であろうノインさんにこんな安物でええんかな……とか悩んでた所はちょっとありました。まぁ喜んでもらえたならええやろ。
「あら、ケンタウリスというと……王都でも有名な女性だけのクランですよね~? ロックくん、そんな有名な方々と遠征されてたんですね~?」
「あ、そーなんすよ。これが中々色々なことがあってェ……」
「死線を潜り抜けてきましたからね。特にマスターは」
「へぇ~! 私、そっちの話も聞きたいですねぇ~。ロックくんはハーレム作れましたか~?」
「んー。まぁそれなりに……? 感覚的には親愛度70%超えたみたいな……!?」
「へぇ? ……本当ですか?」
「誇張しないでくださいマスター」
『みゃあ』
そして話の流れは俺らの遠征に向いた。
俺の冒険の話も割と聞くの好きだからな。今回は行きから帰りまで色々あったから熱く語ってあげるとしよう。この俺のハーレム物語を……!!
「そう……話はまず俺の体を求められてケンタウリスのクランハウスに呼び出されたところから始まって……!!」
「求められてたのはマスターの勘ですしゴミみたいな扱いでしたよねあの時」
「え~? どんな風だったんですか~?」
「その時たまたま一緒にいたリンもついてくことになって、合計9人と一匹の大所帯で行くことになったんすよね。団長のメルセデスさんと行きの道中でイレヴンバイクと競走したりして……」
「メルセデスが負けず嫌いでしたね」
「王都最速のセントールさんでしたよね~? あの人綺麗ですよね~」
「向こうについてから高級な宿で何故か俺だけ個室を与えられて……その理由は分かりますよね!!」
「マスターが唯一の男だからだよカスがよ」
「一人寂しく夜を過ごしたんですねロックくん~」
「夜な夜な俺の部屋に女性陣が訪ねてきてェ……!!」
「確かに私は一度訪ねましたしリンが寝ぼけて部屋間違えてマスターの布団に潜り込んだことはあったけどケンタウリスのメンバーは一度も訪れてねぇよ」
「私がもし一緒だったらいっぱい感想戦出来そうだからお邪魔したかもしれませんね~」
「到着して翌日にティオの魔装具の情報を探したんすけど俺の勘で速攻で情報仕入れて。みんなもその辺りから俺を見る目が変わってきたかな……」
「それはまぁ事実ですね。勘だけは本当にすさまじいですからねマスターは」
「へぇ~! すごいですね~! 流石はロックくんです~!」
その後もイレヴンの合いの手という名のツッコミが入りながらも詳細に俺らの冒険について語り、ノインさんも一つ一つコメントしてくれながら楽しんで話を聞いてくれていた。
VSヴィネアのあたりで一度全滅して、その後俺にキスしたイレヴンが覚醒してティオと一緒に撃退したあたりの話をしたときはめっちゃノインさんのテンション上がってた。この人も好きだねこういう話。
「────で、まぁ昨日帰ってきて。割とケンタウリスの皆さんとは距離縮まったかなって感じですね。後は魔族の動きがマジで活発になってきてるんでそれに備えようって話になって」
「私達の場合は、特に私が魔族討伐に特化したアンドロイドですから。私のレベルを上げることで魔族に不覚を取らないようにしたい……と考えている所なのです」
「なぁるほど~……レベリングですか~。だとしたらちょうどいいタイミングかもしれませんね~」
「え?」
さて一通り話し終えて。
今後は俺らはイレヴン育成のための経験値稼ぎに向かう見込みであることを伝えたところで、ノインさんがふと匂わせる発言を零してきた。
ちょうどいいタイミング? なんぞ?
「いえ~、ちょっと
「イベント?」
「ノイン、それはどのような?」
「ええ~。どうやら20年ぶりに復活するらしいんですよ~────