勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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42 どうすんだよこのテンションの低さ

 

「はーーーーーーーぁ…………」

『クソデカため息やめてください。魔力供給量落ちてますよマスター』

『みゃあ』

 

 イレヴンバイクにまたがりながらも思わずめちゃんこ大きなため息をついてしまう俺。

 だって仕方ねぇじゃんよ……驚くほどテンション上がらねぇんだからよ……。

 

「まぁロックはテンション上がらねぇよなこのメンバーだと」

『女性が私とイレヴンしかいませんからね』

「らしいっちゃらしいけどな。そこまで嫌がるかねお前」

「ハッハッハ! カトルから聞いた通りの少年なのだなロックくんは! 面白い男だ!」

 

 バイクの隣、それぞれ自力でついてくる今回のパーティメンバーに目を向けて、やっぱりため息が零れる。

 まず幼馴染のカトルとイルゼ。こいつらはイルゼから放つ炎の奔流のバーストダッシュを連発してついてきてる。

 そしてその隣、愛馬のダットくん(4歳・牡馬)に乗って並走するノックスさんと、飛行魔法で涼しい顔して飛んでついてくるヴァリスタさんがいて。

 

 ────男しかいねぇ!!!(魂叫)

 

 イルゼがいるからギリギリ生きてるけどさぁ……これでイルゼがいなくてさらにイレヴンまでいなかったりしたら自刃するまであるわマジで。

 何故俺がこんなパーティを組んでしまったのか。

 まぁ理由はシンプルでパーティ誘われて断らなかったからなんだけどな。

 

 昨日、ノインさんから闘技大会の噂を聞いてからのこと。

 大会が始まるまではやっぱレベル上げだな! とイレヴンとも方針を固めて、夜はカレーでリンがご満悦になり、そして迎えた翌日。

 早速朝からギルドに顔を出して、良い感じにレベリングできそうな近場の依頼を探していたところでノックスさんに声をかけられたのだ。

 

 曰く、先日カトルとヴァリスタさんが討伐した魔族の幹部『べリム』について、どうやら死ぬ前に近隣の集落や村に立ち寄っていた可能性があるってことで。

 小さい集落や村にはギルド本部が無い所もあって、手紙や早馬とかでやり取りするにせよ向こうが万が一にも壊滅してたら便りや救援が遅れる可能性もあるし力の無い者を派遣して殺られてもだしで、早急に調査の必要が出てきたと。

 んでその調査にイレヴンの機動力と俺の勘が欲しい、という話であった。

 

 まぁ俺に声をかけた理由は分かるよ。

 俺ら二人は万が一魔族と相対したときに戦える力を持ってるからな。これが魔装具なしの他の冒険者だと対抗できない。だからいの一番に声をかけたんだろう。

 ヴァリスタさんとカトルはまさしく先日討伐した英雄なわけで心配いらない。

 んで調査を主導するのはノックスさんということで。このメンバーでの探索になっちまったのだ。

 

 かなり参加は悩んだけどな。なにせメンバーがメンバーである。男しかいねぇ!!

 しかし考えてみれば、ノックスさんにはリンに飯奢ってもらった恩もあるし、ヴァリスタさんにも奢ってもらった恩もあるし、カトルはまぁイルゼもいるし幼馴染だしってことで俺としては断りづらい立場。

 イレヴンは冒険が終わってからそれぞれのメンバーと模擬戦してレベリングに協力してくれれば、という条件を出してた。みんなイレヴンの力には興味があったようで快諾されちまってさらに断る理由が無くなって。

 聞けば俺らの機動力なら特段問題がなければ日帰りで終わりそうという話でもあったのでやむなく承諾しちまったのだ。

 

「だっっっrrrるぅ……」

『すさまじい巻き舌』

『みゃあ……』

 

 そして必然として生まれたのがこのテンションである。

 

 普段ならね? そこまで俺も文句言わねぇよ?

 でも前の冒険が女子に囲まれて文字通りハーレム状態だったじゃん。みんなとも仲良くなれたしさ。割と人生の春だったのよ。

 そこからこのむさくるしい面子に切り替わると辛ぇ。

 悪い……。やっぱ辛ぇわ……。

 カトルは女顔だしヴァリスタさんも中性的な顔つきで女性人気も高いけどむっさいおっさん筆頭のノックスさんの顔が辛ぇわ……。

 

「ものすげぇ失礼なこと考えてるだろロックお前そのツラ」

「微妙に何考えてるかわかっちまうのが幼馴染の辛さ」

「ふむ? ノックス殿に何か思う所があるのかなロックくん。彼もまた優秀な金級冒険者だ、戦力としては十二分だと思うがね」

「お前さんに言われると恐縮しちまうよ。10代で金級に昇格してさらに金級冒険者の中でも最上級の腕前。才能のないオッサンには眩しいぜ」

「謙遜されるなノックス殿。私は冒険者とは力でも名声でもなく、どれだけ誠実に仕事を成すかで評価されるものだと考えていてね。ノックス殿はその点、誰よりも仕事に誠実で真摯だ。敬意を抱くよ」

「よせやい、くすぐってぇ」

 

 なんかノックスさんとヴァリスタさんがお互いに褒めあってるけどどこに需要あんだよこの絵面(真顔)。

 少なくとも俺にはねぇわ。げっっっそりだわ……華が足りねぇよなぁ華がなぁ。

 今からでもイレヴンの変形キャンセルしてグランドスピナーで走ってもらうか?

 イレヴンのお尻追いかけて走るなら俺みんなに追いつける自信あるしさぁ! やるか!?

 

『まぁ……これから向かう先の村には女性がいるでしょうし……もしかすれば助けを求めている方もいるかもしれません。無辜の市民を助けてこそ英雄と呼ばれて、きっとモテるようになりますよロック』

「んー…………あんま勘に響いてないからどこもヤバそうな感じにはなってないと思うんだけどね。まぁでもやることは確かに真面目な仕事だもんな。仕方ねぇなぁ……やる気出すかぁー……」

『魔獣を討伐するのもレベルを上げるのも大切ですが……人々を助けるのも立派な仕事ですよマスター。しっかりやり遂げたらご褒美あげますから』

「よっしゃ全力で行くぞォッ!! 性欲ッッ!!!」

 

 イレヴンからご褒美をくれるという言質を取ったので俺は一気にやる気マックスになって魔力注ぎ込んでバイクを加速させた。

 遅れるんじゃねぇぞカトル!! ノックスさん!! ヴァリスタさんッ!! 一気に回るぞ集落も村もォォ!!!

 

「本気出すと速いな!? ちょっ……このー! イレヴンさんに負けるかっ!!」

「ほう! 素晴らしい加速だ!! これがメルセデス殿にも負けず劣らずと噂のバイクかっ!!」

「ちょっと待てぇ!? ダットが付いていけねぇぞこのスピード!? もうちょい速度落としやがれバカロック!?」

『本当に相変らずですねロックは』

『苦労してますよ私も』

『みゃあ……』

 

 爆走するバイクを追いかける形でみんながそれぞれ速度を上げる。

 やだ男に追いかけられても全然嬉しくないわ! 早くこの仕事終わらせよ!!

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 はい。

 なんの盛り上がりもなく調査は進みます。

 

 ・

 ・

 ・

 

「おやおや、このような辺鄙な村にまでようこそいらっしゃいました。……ここ最近? いえ、特段何事も起きておらず平和そのものです」

「ふむ、それは重畳! 最近は魔族の出現報告が挙がっていてな、万が一があれば村を捨ててでも逃れてほしい! 通信魔道具を置いていくのでもしもの時には使ってくれたまえっ!!」

 

「わっ……わー!? キャー!? カトル様!? ヴァリスタ様までいらっしゃってるわ!? さ、サインくださいっ!!」

「ごめんなさい、一応調査中なんです俺ら……そういうのはまたいずれでいいです? ごめんねおねーさん」

 

「いや……特に魔族が出たりとか魔獣に襲われたりってのは起きてねぇよ。平和なもんだ。なに、なんかヤバい話があるのかい?」

「ああ、この近くでクソ強い魔族が出たって話でよ。まぁそいつはこの二人が討伐したんで一先ずは平気かもしれねぇが……何があるかわからねぇから通信魔道具は置いてくんで使ってくれや」

 

 ・

 ・

 ・

 

 村に行って話聞いて、何もなかった事確認して、ギルドから譲り受けた通信用の魔道具を置いてって、周囲の防護柵とかが壊れてないか調べて、特に問題なくて次の村に行って、同じ流れを繰り返して。

 たまにカトルとヴァリスタさんが村娘たちにちやほやされて。俺とノックスさんは何も言われなくて。

 イレヴンに色目使ってくる村男には俺がシメてやろうと思ったけどそれはイレヴンに止められて。

 近隣の全集落の無事を確認して帰路について。うん。はい。

 なーんも起きてねぇ!!

 本当に調査だけで終わっちまったよ。何事も無さ過ぎてイレヴンもご褒美くれなかったよクソー!

 いや村が無事だったのは何よりだし必要な仕事だったのは分かるけどね。ぶっちゃけ暇だった。

 戦闘もないしスムーズに進みすぎて一日がかりの仕事の予定が夕飯前に王都に帰ってこれたよ! ただいま!!

 

「ふぃー。ダットの脚でもイレヴンに追いつくのは大変だったな……お疲れさんダット」

「私はまだ本気を出してはいませんけれどね。ですがこの子も中々の健脚でした。また一緒に走りましょうね、ダット」

『ブルル……』

『みゃあ! みゃっみゃ!』

「ダットくんの背中気に入ったんかミャウ」

 

 王都に帰ってきて馬屋にダットくんを返すノックスさん。ダットくんもよう嘶いておる。

 道中休憩とかもあったけどミャウがダットくんの背中気に入ったらしくてよじ登って、ダットくんもほんわかな顔してそれを受け入れてた。和みましたね。

 もしかしてミャウは馬の背中好きなんかな? メルセデスさんの背中にもよく乗ってたし。猫の嗜好はわからん。

 ひとまず今日はここでお別れです。ダットくんの背中からミャウを取り上げてフードにin。ギルドに報告に向かいますわよ。

 

「一先ず何事もないのは何よりであった! 通信用の魔道具も村長に渡せたし、これで緊急用の連絡手段は作れたというわけだな!」

「どの村もワイバーン便飛ばせば30分から一時間で着ける距離ですもんね。もし魔族に襲撃されても避難しつつ連絡してくれれば生存率はだいぶ上がるはず」

「……ふと思ったんだけど各村に転移陣とか置けねーんスかね? ダンジョンにすら設置できるんだから王都と転移陣繋いじまえばいいのに」

「アホですかマスター。その転移陣を使って逆に魔族や魔獣が王都に攻め込んで来たらどうするんですか」

「あぁ……そりゃそうか。確かに」

「そもそも転移陣ってのは魔素の濃い所じゃねぇと組み込めねぇんだよ。ダンジョンにだけ作れるのはそういう理由だな。王都とか他のでっけぇ街とかでもたとえ魔素があっても守護結界に使っちまうからそれぞれの街を繋ぐような転移陣は今の時代には作れねぇんだ」

「ほえー……ん? 今の時代ってことは、昔は転移陣があったんスかノックスさん?」

「ああ。150年前の冒険者飽和時代はそれこそダンジョンがバンバン出るほど世界中の魔素が濃かったらしいからな。その頃はデカい街を繋ぐ転移陣があったんだってよ」

「へーえ」

 

 ギルドに帰りながら他愛ない会話を紡ぐ。

 どうせ村とか街とか守ったり交易したりするなら転移陣で繋いじまえばよくね? ってのをふと思いついたんだけど、ノックスさんが説明した通りで今の時代はそれ出来ないんだって。

 できればもっと交易とかも楽になるしファストトラベル出来て人の行き来も増えると思ったのに。世の中上手くできてないわね。

 

 そんな話をしているうちにギルドに到着。

 ヴァリスタさんとノックスさんが今回の調査にかかる報告を済ませて、当然これは公式の依頼なのでほぼついてっただけの俺とカトルにも多少だが報酬は出るのでそれの計算をして分配して……というところだったのだが。

 そこでたまたまレアな人物に出会うことになった。

 

「ん……おや、ロックか。久しいな」

「あ、()()()()()()()。……ご無沙汰しています」

「!?!?」

 

 カトルがヴァリスタさんと話してて、俺がイレヴンと一緒にカウンター前で報酬を待っていたところで、外からギルドに入って来た壮年の男性。

 彼はこのギルドの長、ウォーレンさんだ。

 50歳くらいで恰幅の良い服装をしているが、無駄のない肉体をしている。相変らず雰囲気ある人です。

 そして俺にとっては恩のある人でもある。丁寧な口調で返事して頭を下げる俺の姿にイレヴンがびっくりしている。

 なんじゃい。俺だって茶化す相手は選ぶわい。

 ウォーレンさんは別ってやつ。ノックスさんとは恩のレベルが違うんじゃい。

 

「いいさ、元気そうで何よりだ。……その女性が噂のアンドロイドか」

「はい、先日の銀級昇格試験中に見つけまして……イレヴン、ご挨拶。ギルドマスターのウォーレンさんです」

「あ、はい。イレヴンです、初めましてウォーレン。……その、マスターとはどのようなご関係なのですか?」

「ああ、初めましてイレヴン。なに、大した関係でもないさ。語るほどのことでもない」

「仰る通りですね。あんま気にせんでええよイレヴン」

「……? まぁ、はい。マスターがそういうのであれば」

『みゃ……』

 

 恩のある相手だけど親しいかと言われたらそうでもない。なんだろな……ちょっと微妙というか。

 ただまぁ少しは気にしてもらえてはいるのかな。イレヴン関係が何も言われてないのは多分ギルド長がなんか手を回してくれてる可能性もあり寄りのありけり。

 まぁええやろ細かい事は。イレヴンが気にする話ではないですね。

 

「しかしここで会うのは珍しいですね。普段はギルドマスター室にいるか、王城に打合わせに出ているかだと思いましたが。何かあったんですか?」

「マスターが普通に敬語使ってる……ええ……?」

「ふむ。ちょうど王城での用を済ませて戻ってきたところになる。一つ大きな打合せがあったものでな……明日にはギルドを通じて周辺国の全てにお達しが行くだろう。お前も無関係ではないかもな。……では失礼する」

「お疲れ様です。……お達しかぁ」

「マスター……」

 

 ウォーレンさんが俺相手だからこそ少し緩めてくれたのか、情報を零していった。

 デカい催し。王族からのお達し。

 そう聞けば思いつくのは一つだ。俺はイレヴンと視線を合わせて心当たりを共有にする。

 そしてその心当たりはやはり現実となった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 ────翌日。

 

「ロックおっはよーっ!! 聞いた聞いた!? 聞いてー!? すっごいよ!? 大会だよー!!」

「ギルドで話があったんだけどさ!! 闘技場で闘技大会が20年ぶりに開催されるんだってよ!! 絶対参加するぜ俺!! ロックたちも参加しようぜ!!」

 

 自宅でのんびり朝食取ってたらまた幼馴染たちがビッグニュース片手に飛び込んできやがった。知ってた。

 お前ら何かあったら毎回俺んちに飛び込んでくんのやめろ??

 

 





~登場人物紹介~

■ダットくん
牡馬。4歳。ノックスの所有馬。
かなり走る馬だけどメルセデスには及ばない。ぷにぷにのお鼻とのほほんとした顔がチャームポイント。

■ウォーレン
王都のギルドマスター。51歳。元金級冒険者で今も鍛錬は欠かしていない。
ロックとは縁があり多少気にかけているが情けまではかけない。
ロックはウォーレンを上司以上恩人未満くらいで考えている。
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