勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
その後、俺とイレヴンは闘技大会に向けて色々積み重ねていた。
「……故に、魔法を過不足なく使用するためには、才能か知識、そのどちらかが必要となります。魔力は人も獣人も魔獣もすべからく持っていますが、その魔力量は人により異なる。また、魔力の素である魔素への適合率も才能によるものです。努力で伸ばせないわけではありませんが、生まれ持った素質が大きい。魔法使い関連の職に就けるか就けないかは才能が大きく関与すると言っていいでしょう」
「ヘェ」
「しかし、才能だけで全てが決まるわけではありません。魔法を覚える、行使する……ここには正しい知識が求められます。わたくしなどは知識をつけることで魔法を十全に使えている側と言えるでしょう。また、シミレのように近接戦闘を主にしながら加速魔法のみを補助として使うような場合も、知識でカバーできる例でしょう。何か一つを覚えたいとすればそこまでの知識は必要ではありません。ですが高度な魔法をいくつも使いこなすとなれば、それを覚えるための勉強は必須と言えるでしょうね」
「ホァ」
「しかし何事も例外がありまして……ティオ、彼女だけは私が知る限り例外でした。魔力操作をする、魔法を覚える、魔法を行使する……それらのセンスが抜群に優れていた。魔素への適合力も極めて高く……しかし、その理由は先日ようやく納得が行った所です。無論、
「すんませんマルカートさんのおっぱいの事しか考えてませんでした」
「目でございます」
「グワーッ!! 目がしぱしぱーッ!!」
『みゃあ……』
「これは乾燥させる魔法『ドライバースト』でございます。火属性と風属性を上手く混ぜ合わせればこのような魔法も使えるということです。勿論出力は最小ですが」
今日はマルカートさんに魔法の知識を教えてもらっている。
先日ヴァリスタさんのお家で模擬戦してから一週間が経過して、闘技大会が始まるまで残り一週間となった。
もちろんこれまでにヴァリスタさんだけではなくノックスさんやケンタウリスの皆さんに組手などもしてもらい、またカトルとティオを呼んで近場で冒険してズンバラリと魔獣狩りなどもして、イレヴンのレベルをかなり上げることができている。
多分30以上は上がった。上がり過ぎだってイレヴンに言われたけどまだまだやるぞい。
そんなわけで今日もケンタウリスのクランハウスに来ており、外の修練場ではイレヴンがティオ、アルトさん、シミレさんら大会参加メンバーと訓練をしているところだ。
対人戦闘の経験を積めているのは有難いな。そして百合祭りも有難い。
ちなみにメルセデスさんとソプラノさんは大会運営のほうでお仕事ですって。お疲れ様です。
さて、しかし順調にレベルが上がる中で、先日一つの不安要素をイレヴンが指摘してきた。
あくまで今回の闘技大会に参加してるのは俺である。イレヴンは俺が使う道具という扱いで。
つまり俺が倒れたら当然にして敗北となりますよね、という話をされて。そりゃそうやなってなった。
場合によってはイレヴンは俺を守りながら戦わなければならないシチュエーションなどもあるだろう。
よっぽどの相手じゃなければ俺も自慢の逃げ足でなんとかなるだろうが、しかしそのよっぽどが集まるのが闘技大会なわけで。
俺も男相手には油断も隙もなく相対するだろうが、仮に相手がデカパイ痴女だとしたら隙を晒さない自信は無い。多分吶喊する。
なのでイレヴンから、私もマスターをお守りしますがマスターも出来る限り自分を守る技術を鍛えてくださいね、とお願いされたのだ。
なもんで俺が思いついたのは前にヴィネア戦で気絶した俺が使ったとか言う風魔法。
あれがみんなを守ってたらしいから、アレが使えるようになれば便利じゃね? と考えた。
なのでちょうどよく魔法の扱いに長けるマルカートさんがケンタウリスにいたので魔法について教えてもらいたいとお願いしたらOKしてくれた。有難い限りであった。
まぁ話の内容がシスターに教えてもらった内容よりも難しすぎて眠気をおっぱいで相殺しながら聞くことになったのだが。おっぱい。
「まったく……ロック様の方から魔法について教えてほしいと言われたので簡単な基本から教えて差し上げておりますのに。ティオが言っていた通りです。本当に座学が嫌いなのですね、ロック様は」
「これが仮に男に教えられてたら1分で寝てる自信がありますね!」
「威張らない。……さて、では本題に入ります。ロック様、貴方は既に前の遠征での魔族との遭遇戦の際に凄まじい精度の風魔法を行使しています。あれは『
「そーなんすか、へぇー……いや、なんせ使った側が全く記憶がないもんで」
「あの魔族……ヴィネアが放った魔力砲の威力は並大抵の防護魔法を破る威力でした。仮にあの場で私が冷静なままで、ロック様と同じように
「えっ」
んでまぁ例の魔法の話になり、しかしそこでマルカートさんから意外な言葉が漏れた。
俺があの時に発動したらしい
「しかしロック様はあの場にいた全員を見事に守り通し、さらに水中で溺れないように呼吸までできるようにして、自分が意識を失っても維持し続けた……エルフであるティオと比較しても明らかにそれ以上の、異常なる出力です。…………はっきり申し上げましょう。ロック様、わたくしは貴方が
「…………」
「イレヴン様を見つけたことが貴方のその異常な出力の原因なのか、それとも他の要因があるのか……わかりませんし、詮索をするつもりもございませんが。ロック様、少なくとも貴方には何かしらの異質な才能があることをまずご自覚なさってください」
マルカートさんが吊り目気味の瞳をさらに鋭く細めて、俺を射抜くように見つめて来た。
彼女の話す内容。俺が何故か、部分的にはティオすら超える魔力量を使えていた、異質なるものという話。
それを聞いて、俺は──────
「───ってことはやっぱ俺には英雄の血が流れてるってやつっすかね!? 危機に陥った時に力に目覚めてカッコいい所見せつけて女の子にモテちまうなーっ!! かーっ!! 俺の才能が怖いわーっ!! 闘技大会で優勝しちまうわーっ!! 俺の勇姿を見せつけちまうわーっ!! うっひょーっ!!」
「ロック様が筋金入りのバカで本当に僥倖でございました。決して悪には染まらぬだろうという安堵がわたくしの心に生まれております」
『みゃあ……』
めっちゃテンション上がって有頂天晒しちまうよなァ!!
でもなんかマルカートさんに呆れた感じのため息つかれた。なんで。
いいじゃん俺ってすごいんでしょ!? 褒められる経験があんまりないんでマルカートさんみたいなしっかりした人に褒められるとすっげぇ嬉しいんすよ!!
こりゃ魔法も極めちまうかなぁ俺なぁ!! シーフなのに魔法も使えるとか主人公みたいじゃん!! よっしゃやる気でてきたー!!
「ロック様に座学に適正はない事も理解しましたので、今日は既にできている魔力操作から一歩進んで……魔力を編み込んで魔法として行使する、その工程を覚えていただくことにいたしましょう。自分の意志で
「お願いしますッ!!」
そしてマルカートさんも俺に合わせて柔軟に指導方針を変えてくれて、とりあえず過去に無意識で出来たことを今度は自分の意志で出来るようになりましょうということになって。
マルカートさんにデカパイ感謝を込めて頭を下げて、俺も真剣に魔法を使えるようになろうと心に誓った。
※ ※ ※
「才能がカスでございます」
「ひどい」
そして2時間ほど訓練場で試行錯誤してもらった後にかけられたセリフがこれである。
そんなに……? そんなに俺ダメだった?
割とマジに真剣に取り組んだつもりだったんすよね? セクハラとかも全然しないくらい真剣にマルカートさんの話聞いて色々試してみたよね……?
「何なのですかロック様は……? 確かにクソみたいな掛け声からの魔力は凄まじいものがございます。まるで底を見通せない水瓶のような魔力量……だと言うのに、それが全く魔法に結べておりません。どんなに魔力の扱いが下手な者でも魔力をそのまま物理的衝撃に変換する魔力砲くらいは放てるというのにその気配が一切ない。信じられないくらい魔力のコントロールがヘタクソでございます」
「所々トゲのある言葉が出てきてマルカートさんの怒りを感じられる」
「ああ……頭がおかしくなりそうです。魔力を魔法に変換する才能というのもあって、10の魔力を使って5の威力にしてしまう者もいれば、20の威力に出来る者もいて……しかしどんな人間でも1は出せるのです。ですがロック様は0。自分で自分の魔力を魔法に変換できないなど……本当に信じられない」
「ぐぬぬ! でもマルカートさん! そういうのは魔道具使えば何とかなるって教えてくれたじゃないスか! やってみましたよね!?」
「ええ、ですのでわたくしの持つ一般的な魔道具……いわゆる杖やメイス、もしくはロック様が装備しているような護りの指輪に代表される防具……そういったものも試してみました。ですがすべてダメでした。なんなんですかロック様は」
「俺にも分からん……」
色々やってみたんだけど成果ゼロだった。
前にノインさんがやってくれたように……といってもあそこまでエッチな感じじゃなかったけど、マルカートさんが魔力を魔法力に変換する感覚を教えてくれて、その通りに自分なりにぐぬぬって力を籠めてみたけどぜんっぜん魔力が魔法にならなくて。
んで杖とか色々借りてそれに魔力籠めてやってみろ、って言われて。護りの指輪にそうしてるように魔力を籠めてみたんだけど、それも全然なんも起きなかった。
えぇ……? なんなの俺……?
「普通、杖をもって魔力籠めれば魔力砲は出るわよね。大した威力じゃないけどアタシだって弾は出せるわよ?」
「…………相変らずワケが分からないな、お前」
「シスターが魔法の才能ないって言ってたけどほんっっっとうに才能ないんだねロック。でもそうなるとあの風魔法はホントになんだったの? イレヴンさん心当たりある?」
「いえ。例えアンドロイドと本契約を交わしたとしても、通常は本人の魔力や魔法の扱いに影響は出ないはずなのです。確かにマスターと通してある魔力経路から日頃より魔力を受け取ってますがそれは微々たる量ですので。私の動力は自前の内臓魔力炉で99%以上賄っていますから」
『みゃあ……みゃ……』
模擬戦の休憩中にそんな俺を見てみんなから色々ツッコミを入れられる。
俺にも……俺にも分からないんですよ!! 何なの俺ェ!?
イレヴンと契約してるのが唯一他人と違う点だけどイレヴン曰くそれも特に関係してないらしいしさァ! 実際風魔法使ったこともあるしなんか切っ掛けとかがあれば出来るのかも知れないけどさぁ!!
これはあれか? もしかしてもう取り外せなくなったこの呪いの指輪がそうしてんのか?
マジで湖の騒動以来この指輪外せなくなってるしよ……これ以外に原因が思い当たらないんだけど。俺今後一生魔法使えずに過ごす感じ?
まぁそれで困るかどうかで言ったら困らないんだけど……魔力を注ぎ込むのはできてるからイレヴンバイクは動かせてるしそれで何とかなるんだけど……。
「ロック様には申し訳ありませんがわたくしはこれ以上お力にはなれないようです。考えられる限りの手段を試してみたのですが……」
「いえ、なんかこっちこそごめんちゃいです……すっげぇ親身にしてもらったのに何の成果も得られなくて。……あ!! お詫びに肩揉みますよ肩!! きっと肩こり大変でしょうし!! シスター相手によくやってあげてたんで得意なんですよ肩揉み!!!」
そしてとうとうマルカートさんが音を上げてしまった。まぁ誰が悪いかって言ったら俺が悪い。
マルカートさんは頑張ってくれたんや。その想いに応えなければなるまい。
だからお詫びを兼ねてマルカートさんの肩を揉ませてもらいたいのですが構いませんねッ!! 下心全開ッ!! 引かぬ媚びぬ顧みぬッ!!
「あら、それは大変有難う存じます。本当に肩こりは毎日の悩みで。クランの皆でお互いに解しあっているのですが、これがなかなか……」
「えっ。アッハイ」
「ではよろしくお願いいたしますね」
でもなんかマルカートさんが本当にキツそうな顔して自分の肩を揉みつつOK出してきたから逆に拍子抜けした。
おかしい……ここはいつもみたいに変態ってディスられる流れではないのか……??
んで外に備え付けのベンチに座って背中を見せて来た。そこまで大変だったのか。
……なんか……普通に揉むか。
「んっ……あら、本当に、お上手…………あ゛ぁ゛~……そこです……そこぉ……お゛ぉ……」
「想像以上に凝っててびっくりしている。……その、やっぱ大変なんすね」
「それはもう……あ、ロック様、もう少し首に近い所も……それ゛ぇ゛っ゛……!!」
俺が絶妙な力加減でマルカートさんの肩を揉んだらめちゃくちゃいい反応が返ってきた。肩コリって意味で。
すっげぇ凝ってる……シスターもデカパイなのでかなり大変で、その辺は孤児院時代にマジでいっぱい肩揉んだんで得意だという話は嘘ではない。肘とか掌底とか使ってぐりぐりやれます。
いやしかしこれ……大変そうだなホントに。前衛で戦う職じゃないから運動量も少ないだろうしこりゃきついわ。
なんかマジで大変そうだから性欲とか飛んでっちゃった。ほぐれて気持ちよくなってくださいねマルカートさん。
「……気持ちよさそうね副団長」
「私は肩コリってまだ経験したことないなぁ……まぁずっと経験しないのかもしれないけど……」
「ティオの目が曇ってしまった。ちなみに私もアンドロイドなので肩コリとかは無縁ですね」
「…………死ぬほど羨ましいぞイレヴン。………おいロック。オレにもやれ」
「アタシもいい? ちょっと試したいわ」
「もちろんっすよ任せてくださいよォ!! 皆さんの肩回りブルンブルンにしてやりますよォ!!」
『みゃあ』
結局今日は魔法覚えられなかった。
けどまぁケンタウリスのみんなの肩を揉めたし実りのある時間ではあったな!!(結論)
イレヴンには悪いけど結局今できることでやってくしかなさそうですわね。
回避全振りのシーフだよ俺はどこまで行っても。不器用マン。
※ ※ ※
『パパに私以外の魔道具なんて使わせない』
『パパに私以外からの魔法なんて使わせない』
『パパが本当に危ない時には必ず助けてあげるから』
『パパには私だけいればいいの』
『パパ大好き♡』