勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「サザンカさーん! 予選突破おめでとっす!!」
『みゃあ!』
「おお、ロック殿にイレヴン殿か。うむ、有難う。正直な所不完全燃焼でござるがな」
「お見事でしたよ。なんとも凄まじい刀の振りでした」
「テレるでござるな。褒められることが国では少なかった故……それにロック殿たちもお見事な予選勝利でござったよ」
「どもっす!!」
予選第三試合が終わった後、俺たちは勝利の祝福の為に選手用の退出通路に向かい、サザンカさんを出迎えていた。
ノインさんにはお世話してる相手に挨拶してくると伝えて別れた。ノインさんもこの後予定があってもうすぐ帰らなければならないと言ってたのでちょうどいいタイミングだったかもしれない。
でも本戦はちゃんと俺の試合応援しに来てくれるって言ってた。嬉しすぎて絶対勝つわ俺。イレヴンに頑張ってもらいましょ。
で、まぁこうして無事サザンカさんとも合流出来てお互いに予選突破を祝いあう。
俺がここで捕まえないとこの人絶対迷うもんね!!!
美人でデカパイで強くて料理も出来て完璧な俺のお嫁さん(妄想)なんだけど方向音痴だけがチャームポイント。一人にさせるの怖。
「一人だとまた迷うでしょうから一緒に行動しましょうねサザンカさん。屋台とかめぐりましょうよ!」
「む……そうでござるな、ご厚意に甘えよう。ロック殿はその歳で本当に優しいな、甘えてしまっている……恥ずかしい限りでござる」
「なーに言ってんすか! こっちこそご飯作ってもらったり目の保養になってもらったりでお世話になってますから! 永遠に俺んちにいてくれてもいいですからね!」
「すぐ欲望マンになる」
「ははは……流石にそこまで厚顔ではござらんよ。では次の試合を観覧しようぞ」
「ういっす!」
『みゃあ!』
サザンカさんと同行する了解も得たので3人でまた移動。観客席に戻り、以降の試合を眺めることになる。
この後は午前中ラストの試合で第4試合があり、お昼休憩が入って午後は楽団の演奏発表会があってから第五試合にアルトさん、第八試合にヴァリスタさんが出るはずだ。
んで明日も午前4回、午後4回の予選があって、第十試合でティオ、第十一試合でシミレさん。最後の第16試合でカトルが出るな。
俺の知ってるメンバーだとこんな感じ。まぁカトルの試合は見なきゃだから結局ハナからケツまでいるようですね。
さて、そうして観客席でいいポジションを探して歩く。
先程凄まじい試合を見せた赤カブトであるサザンカさんを連れ歩いてるからかめっちゃ視線が向くしめっちゃ人波割れるな俺の前。こういうのちょっと気分いいですね。
美女を二人も侍らせてるんだぜ今の俺はよ……! なぜかサザンカさんが合流してからイレヴンが手を繋いでくれなくなったけどよ! まぁええ!!
「……少し、腹を割った話をしてもよろしいでござるか?」
「ん。なんでしょ」
しかしそうして歩いている中でサザンカさんから急な話題提起が。
なんやろ。
「俺に惚れてしまったので結婚してほしいって? もちろんOKですよ?」
「違うでござるな? ポジティブが過ぎるでござるなロック殿?」
「素面でこれを口に出来るからマスターはマスターなんですよね」
『みゃあ……』
「ンーンン」
「もう少し真面目な話でござるよ。そう……この国に来てよりお世話になっているロック殿へ、ひどく申し訳ないお話でござる」
茶化したところ見事にツッコミを貰ったが、しかし話は真剣なものと見て俺も真面目な顔に戻る。
「ロック殿。─────本選で拙者と当たった暁には、降参してほしい」
「……ほほぉ? 急に面白いお話っすね?」
「サザンカ。それはどういう意味ですか……?」
「や、いや、勘違いをさせたくはない……言葉足らずで申し訳ない。純粋に……そう、恩人であるロック殿を、この手にかけたくはないという想いでござる」
そしてサザンカさんから零れた言葉は、まさかの言葉。
八百長とか嫌いそうなのになんや……と思ってたら、これはどうやらサザンカさんなりの弱音のようだった。
「予選のような状況ならばともかく……一対一で相対すれば、拙者も手加減などと言う器用な真似は出来ませぬ。本気で太刀を振るいましょう。結果として、相手の命ごと刈り取ることもありましょう。これまでに拙者が幾度もそうしてきたように」
「……ヒノクニの文化ってやつスか」
「武芸者の真剣勝負が盛んな国……だとは聞いたことがありますが」
「左様。故に……ロック殿ともし本戦で当たれば。拙者はそなたの命を握ることになる。それが怖い。強力な防具などがあれば兎も角、ロック殿は軽装なので一撃で殺してしまうかも……いや今更ではござるが
「久しぶりに聞いたねこのツッコミ」
「身を固めるとマスターの良い所が全部殺されてしまうので……」
「本当に数寄者でござるなロック殿は。……しかし、拙者の言いたいことを分かっていただけたでござろうか。ロック殿には本当に多くの恩を頂いている。その借りはせめて拙者の賞金をすべてお渡しすることでお返ししようと考えているでござる。ロック殿には愛娘たるリン殿も、ティオ殿ら懇意にされている
俺の事を恩人だと思っているからこそ、殺したくないと。
……確かにな。あの威力を見てると多分俺が直撃したらズンバラリと真っ二つになって死にそう。
一瞬で死ななければマルカートさんとかソプラノさんとかが回復魔法スタッフとして常に舞台傍にスタンバイしてくれてるのできちんと装備を整えてる他の冒険者なら命を永らえる事は出来るとは思うけど。
多分俺は死ぬ。
さて、じゃあ俺はこれになんて返事をするべきなのかって所だけど。
イレヴンも色々言いたいことはあるだろうけど、俺の返事を待ってくれている。
ここで俺が下手に「じゃあそうします!」って答えたらイレヴン怒りそう。
まぁ言うつもりもないけどな。
ってか、俺としては……
「俺、勝つつもりだったんですけどね。サザンカさんにも」
「……マスター……」
「む、いや。決してロック殿とイレヴン殿の実力を疑っているわけではござらぬが、しかし……」
「いやまぁ当たり前なんですけど俺だって死ぬつもりなんて欠片も無くて。もし本気でヤバいなってなったら降参も選択肢には常に入れとくけど……でも、ここで『じゃあ降参します』なんていうのもさ。まだ俺の力だってイレヴンの力だって全部サザンカさんに見せてるわけじゃないんだし。野暮でしょ」
「……そう、おっしゃられるか。ロック殿は……」
「俺やリンの事を想って言ってくれたのはホントに嬉しかったです。きっとサザンカさん常に真剣勝負やってる人だろうに、事前に忠告してくれた。似合わない事してくれたんだと思うんすよね。……でも俺も一応冒険者だからね、どっかでくたばったとしてもそれは己の責任。恨み言なんて言いっこなしです。……って俺がもし死んだらティオとかリンに伝えておいてくれなイレヴン」
「嫌です」
「何でよ」
「そもそもマスターは私が護りますから。貴方は死なせません」
「愛が重いぜ。……ってわけで。まずは全力でぶつかりましょうよサザンカさん。その結果俺がヤッベ! ってなって降参するかもしんないし、そもそも当たる前にどっちかが負けるかもしれないけど。でも、今ここで俺らの勝敗を言葉で決めちゃあつまんないでしょ」
フツーにサザンカさんにも勝つつもりだったからね! ここで降参するなんて言うはずもないもんね!!
いやもちろん降参はしないとか絶対勝つって話じゃねぇよ? わからんし。
今はまだ勘に響いてないけど、これ死ぬわって勘が叫んだら速攻降参する選択肢はあるし。
けどまだ戦うかどうかも決まってねぇからなぁ! 本戦は予選突破者で改めて組み合わせ決めるから決勝まで当たらない可能性だってあるし!
だから実際にぶつかってからそういうのはお互いの判断で決めればええ!!
と言うのを俺なりにかみ砕いて伝えた所、サザンカさんも深く頷いてくれた。
わかってくれたかな。変な遠慮なんてしなくてええんやでって事。
「……いや、大変な失礼をした。拙者の傲慢でござったな。全く、時が許せば腹を切りたい」
「切腹するくらいならその前に俺の童貞を優しく貰ってください」
「クソマスターがよ」
「拙者恥ずかしながら
「その事実だけで俺は明日も笑顔になれる」
「真面目な話をするときすぐに下ネタに走ろうとする癖やめませんかマスター?」
「……いや、本当に申し訳がありませぬ。ロック殿の優しさに甘え過ぎていた……そうさな、ロック殿も立派な
「そーゆーことで。どっちが勝っても負けても、勝負の結果に何があっても恨みっこなしでいきましょ」
「うむ。……有難う、ロック殿」
「感謝されることなんもないっすわ。俺が勝っちゃうかもしれんしね」
『みゃあ』
「……ふふ、そうでござるな。いや、野暮な話でござった。忘れてほしい」
「忘れちまうくらいにそのデカパイで俺を抱きしめてくれるって……?」
「言ってねぇよクソマスターがよ」
「ははは! 流石にこの身は安売りできぬが……うむ、では今日の夕飯もせいぜい腕を振るわせてもらうでござるよ」
「ヤッター! サザンカさんの作るごはんめっちゃ美味しいから好き!!」
「リンも喜びますね」
よしよし。サザンカさんも俺のスタンスをしっかり分かってもらえたようで何より。
デカパイに包まれるという俺のあわよくばはNGだったけど美味しいごはん作ってもらえるなら言うことないですわ。
帰りはリンと合流していっぱい食材買って帰ろっと。いいお米いっぱい買っちまいますかァ!!
「お、第四試合もうすぐ始まりそう。喉渇いたんで屋台でなんか飲み物買ってきて飲みながら見ましょうよサザンカさん!」
「そうでござるな。飲み物か……こちらで美味な飲み物などはござるかな?」
「俺のお勧めがありますよ! 炭酸飲料ってヒノクニにもあります? 飲んだことある?」
「炭酸……ふむ、知識としてはあり申す。ヒノクニでは平野水と呼ばれる湧水がしゅわしゅわする水として有名でござるが……飲んだことはござらぬなぁ」
さて話もひと段落したところで、もうすぐ始まりまそうな第四試合を前に飲み物を買い歩くことにする。
屋台いっぱいあるからね。せっかくだし俺の好物をサザンカさんにも味わってもらおう。
こんくらい平和がええねん。戦いの場ではガチだけどそれ以外ではノーサイドでいきましょ。
「……ふむ! このスパークリンクオレンジなる飲み物、面白い! 喉がぱちぱちするでござる!」
「面頬外さずにどうやって飲んでるんだろ」
「器用なことをしますね」
面頬つけたまま飲んで女性らしい声で悦んでるの見ると色々バグるな。この人可愛いなぁ。
その後はサザンカさんも一緒に闘技大会を楽しんだ。平和だね。