勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
闘技場内をイレヴンとサザンカさんと共に散策しつつ、みんなの試合を観戦する。
まず第五試合、アルトさんが出てる予選だ。
これはティオとシミレさんと合流して一緒に応援した。
「がんばれーアルトさーん!! 負けんなーっ!! ブッ刺せー!!」
『みゃあみゃあ!!』
「アルトのほかに金級が3人……ですが、私と訓練を共にする中で彼女もレベルが上がっています。一斉に攻められるような事がなければ十分にチャンスはありますね」
「わぁー!! アルトさん後ろ後ろーっ!! っと気付いたー!! やったーナイスぅーっ!!」
「…………悪くない。金級同士で牽制しあって、周りもそれを警戒しながら……アルトの大盾ならば不意をつかれなければ堪え切れる」
「ふむ、アルト殿は守護に長けているのでござるな。大盾の扱いが実に巧い」
実力者がめっちゃ多い第五試合において、しかしアルトさんも負けてない。
イレヴンがレベル上げに協力してもらってた時に当然にしてアルトさんも実力を磨いてた。ティオほど銀級の中で飛びぬけた実力ではないにせよ、特に守備という面なら金級相手でも互角以上に立ち回れる。
ってか実際、金級と銀級で圧倒的な実力差があるってわけじゃない。
前にヴァリスタさんも言ってたけど、金級に昇格する人はギルドへの貢献率や名声とかも関わってくるからな。色んな仕事が出来るって所とかでも評価されるし。
だからカトルやティオなんかは筆頭として、実力に長けた銀級が金級冒険者よりも戦いにおいては上……っていうケースは往々にしてあるものだ。
相性差とかもあるしね。マルカートさんなんかは使える補助魔法が多い代わりに物理攻撃に弱いっていう面もあったりして。適材適所ってやつ。
さて試合に戻り、今回の予選ではアルトさんのほかに金級が3人いるが、逆にこの人数が良かった。
アルトさんとタイマンにならず、2対1で攻める事も出来ず、どうしても他の金級2人を意識しなければ戦わなければいけない人数であること。
アルトさんも試合が始まってからしばらくは守りを固めて、他3人の金級冒険者がお互いに消耗しあうのを待っていた。勿論他の選手に対しても同様だ。
そして15分くらい経過し、金級それぞれがダメージと疲労を蓄積させた段階でアルトさんがとうとう攻めに回る。
「スピアチャージだー!! 行けーっ!! やれーっ!! おっきいお尻が眼福ーっ!! もっと突き出し」
「目だ」
「ぐわあああッッ!!」
「バカロック!! でもいいタイミングの攻めだよ、金級3人の均衡がこれで崩れる! 乱戦になれば……!!」
「あとはスピアチャージをどのタイミングで誰に放つかですね。体力も十分残っている……展開次第ですがいけるかもですね」
「粘るでござるなぁアルト殿は。うむ、最後まで自棄にならず勝機を待って……見事なものでござる」
大盾を引いてもう片手に持つぶっといスピアを突き出し突進するアルトさんの必殺技『スピアチャージ』を金級冒険者の隙をついて放つ。
あの突進攻撃は攻防一体の必殺技だ。リーチが長くて反撃が難しいから撃ち得……なのだが、放った後に少々隙がある。
しかし今回はその隙を突かれる前に、均衡が崩れた金級冒険者同士での食い合いが発生していた。
ダメージを受けた一人に残る二人がとどめを刺さんと攻撃したのだ。これはアルトさんにとってはかなりチャンスと言えただろう。
我慢し続けて流れを引き寄せたわけだ。これで残る二人に対しても体力差で優位を取れる。
その後も掴んだ流れをアルトさんがそれを離さず、巧みな防御による粘りと二人の隙をつく攻撃で金級冒険者をちくちくとスタミナ勝負に持ち込み、そしてとうとう制した。
溌剌な彼女らしくない泥くさい削り合いになったが……汗だくの満身創痍であったとしても、最後まで舞台に立っていたのはアルトさんだった。
『決着ゥーーー!! 最後まで焦らずに粘り続けた見事な戦いッ!! 第5試合の勝者はクラン・ケンタウリスのアルト選手ですッ!!!』
「うおおおお!! アルトさんやったー!!! 偉い!! 汗だくのお顔が素敵っ!! 輝いてますよーーー!!!」
『みゃあ!!』
「やったやったー!! アルトさんすっごぉい!!」
「…………やったな、アルト。これはオレも負けてられんな……」
「お見事でしたね。己の強みを活かした立ち回りが見事でした」
「金級の御三方もそれぞれアルト殿に引けを取らぬ強さであったが、気を付ける相手を間違えてしまったでござるな。あの大盾を削る労力を考えてしまったか……いやアルト殿、お見事也」
観客全員からの大歓声に、槍を突き上げてアルトさんが答えるのだった。
※ ※ ※
はい次。
本日最後の第八試合、ヴァリスタさんが出場する試合の観戦ですね。
これはケンタウリス組と一度別れて、観戦に来てたヴァリスタさんの妹であるカプチーノさんとメイドのカノンさんと一緒に観戦することにした。
勘のままに探し回ってたらカトルと一緒に観戦してたわ。カプチーノさんは人ごみの中で大丈夫か心配だったけどその辺りちゃんとカノンさんが介助してた。有能メイド。
とりあえずあいさつしたところ、カプチーノさんにミャウの提供を求められたので今は彼女の腕の中。気に入ってくれたらしい。
「本日最後の試合で王都一のヴァリスタさんが出る試合だから歓声がすっげぇや。カプチーノさん大丈夫です? 五月蠅くない?」
「ええ、音の取捨選択は得意なの。心配してくれてありがとうロックくん」
「開会式時点でカノンさんが連れて来てくれてて、俺とヴァリスタ師匠の試合だけは観戦しに来てくれてるんだよ」
「成程。であれば明日もこの時間にはまたこられるようですね、カトルが明日の最終試合ですから」
「ええ。……ところで、そちらの……身長の大きな方は?」
「最近俺と同棲を始めたサザンカさんです」
「事実ではあるが誤解を招きすぎでござるな? 拙者はサザンカと申す。ヒノクニより大会に参加するためにこの国に参った」
「まぁ、遠方からはるばる! 私はカプチーノといいます。ヒノクニの事とかも聞いてみたいですね」
『みゃあ』
騒音問題大丈夫なんかなと思ったけど流石にカプチーノさんもその辺はこれまでの人生でも経験があってちゃんと克服していたようだ。
で、サザンカさんを紹介したりしていたところで選手たちが舞台に入場して来て、その中でもヴァリスタさんが出てきたときには一斉に観客席から歓声が上がった。うるっせ!!
「あ、ヴァリスタさんこっち見てる。手を振ってあげましょカプチーノさん」
「そうね。頑張ってね、お兄様!」
「……めっちゃ師匠がやる気出してる」
「満面の笑みですね。これは期待が出来るでしょう」
「ふむ、身に着けた装備も過度な装飾はなく性能を求めた造り……あの
「サザンカさんから剣気漏れてる」
しかしそんなヴァリスタさんがこちらを見た際にカプチーノさんが手を振って応援の言葉をかけたところでヴァリスタさんのやる気が最高潮に。
これは負けないだろうなぁ。流石に周りの冒険者とも実力が違いすぎるだろう。
『それでは本日最終試合────はじめっっ!!』
実況のお姉さんが銅鑼の音とともに試合開始を宣言した。
次の瞬間。
「ッ……速い……!!」
「おぉ! なんたる踏み込みか!!」
「師匠ガチったなーありゃ」
「目の前の冒険者の群れに飛び込むヴァリスタさんが瞬く間に5人の冒険者を魔剣ジュワユーズで横薙ぎに振るって吹き飛ばすッ!! その速度から生じる衝撃波により5人が憐れ吹き飛ばされて場外へ!! そこに飛んでくるマジックアローだがステップで華麗に回避ッ!! その勢いのまま闘技場内を駆け抜けるヴァリスタさん!! さらに3人が剣戟の餌食となり気絶ッ! まるで舞踏のような流麗さを見せる動きだしかしそこに大鎌使いの金級冒険者デッドリー氏が薙ぎ払いによる広範囲攻撃を仕掛けるがこれを何と片足で鎌を踏み下ろすようにガードした! そのまま鎌の柄を踏み台に跳躍して頭上の至近距離から魔法攻撃だアレは閃光魔法! 気絶!! 着地の隙は飛行魔法で低空を飛んで消したうえでさらに3人に各種属性を混ぜた魔力砲を放ち場外へ!! ここで残る冒険者たちが次々とヴァリスタさんに向かい攻撃を放つがそれを上体の動きだけで回避!! どこまで見えているんだあの人は!! 最後の乱戦になるが一人また一人とジュワユーズの錆となっていくぞまた一人吹っ飛んだッ!! 最後にトドメは必殺の回転突き『ベルンハルト・ドラッヘ』ッ!! 見事にラスト一人を場外まで吹き飛ばして試合終了ッ!! この間僅か20秒ッッ!!!」
「私の為に早口の解説ありがとうロックくん」
『みゃあ』
ヴァリスタさんがガチの本気を見せて瞬殺した。
俺との試合もサザンカさんの試合もそうっとうスピーディに終わったんだけどそれだって1分はかかっている。サザンカさんは降参を待ってた時間もあったけど。
しかしまぁそんな記録もすべて過去にしてしまう瞬殺っぷりだった。本気のヴァリスタさんこえーや。
「あ、師匠がこっち見てますよカプチーノさん」
「ほんと? お兄様、おめでとー!!」
「めっちゃ喜んでるわヴァリスタさん」
「25歳とは思えぬはしゃぎよう」
「若干ロック殿とも似ておるなあのテンション」
優勝候補が勝利して一日目の行程が終了した。
※ ※ ※
「おいしい!! サザンカのごはんおいしい!!」
「はは。いっぱい作ってあるのでどんどん食べてくだされよリン殿」
「明日は俺もサザンカさんも戦わないから気楽でいいな。あ、この味噌汁
「この味に舌が慣れると大変ですよマスター」
「何とかしてサザンカさんを我が家に引き留められないだろうか」
「はは……」
※ ※ ※
闘技大会二日目。
今日の試合の見どころは第十試合のティオ、第十一試合のシミレさん、第十六試合のカトルってところ。
他の試合も有名な金級冒険者が戦うんでどっかでジャイアントキリングしてないかとか色々チェックする必要がある。
「ふむ……これまでの様々な冒険者の戦いを見て感じるが、王都の冒険者は皆しっかりした防具を身に着けておられるな。質も良い。ヒノクニにはなかった文化でござるな」
「そうなのですか? ヒノクニでは防具はそれほど重要視されていなかったのですか?」
「拙者の赤備えは別として……皆かなりの軽装であったのでござるよ。その分重くて強い刀を装備して、という考えの者が多かった。己の膂力を鍛えずに強い武器を振るおうとした結果そうなったというか、防御を考えぬ攻撃全振りの者が多かったというか……」
「ちぐはぐな事してんすねぇ。パワー不足で防具を固められないなら俺みたいに回避特化にしないと中途半端すぎるでしょうに。武器で重さ増したら意味ないでしょ」
「ロック殿の仰る通りでござる。血の気が多いのでござるよヒノクニの武芸者は……そういう意味ではロック殿は潔くて大変結構」
「私という万能の武器がある以上、マスターはとにかく攻撃から逃れられれば……ですからね。そういう意味でも私たちは悪い組み合わせではなかったですね」
午前中の試合を観戦しながらサザンカさんと話したけどヒノクニでは防御を捨てて攻撃全振りにしてる奴が多かったらしいです。
ワンチャン狙いの奴らが多かったって事なんかな。攻撃全振りはいいと思うけどそれで機動性を失うのはどうなんやろか。
先に一撃当てればいいという世界だったのか……ってかそんな中を潜り抜けて来たサザンカさんすげぇな。
まぁそんな話などもしつつ、しかし当然にしてお互いの戦略は漏らさないようにして。
第九試合を終えて第十試合、ティオの予選が始まる時間になって俺たちはケンタウリスの二人と合流して可愛い妹分を応援することにした。
つってもシミレさんも次の試合なんで準備に向かったからアルトさんだけだったんだけど。
「ティオがんがへー」
「雑か。もうちょっと真剣に応援してあげなさいよアンタの妹分でしょ」
「いやまぁアイツなら負けへんやろし……実力への信頼と申しますか」
「信頼しているとしてもしっかり応援してあげましょうねマスター。ティオが悲しみますよ」
「うむ。妹のように想っている
「ってか何? 逆に言えばアタシの時は実力信じてなかったってワケ?」
『みゃぁ……』
「苦しい立場に立たされている」
ティオは銀級の中でも飛びぬけた実力を持ってて、かつ今回の予選には実力のある金級が混ざってない。
というわけでアルトさんの時よりも安心して見れるしまぁティオだしなってことで雑に応援してたらデカパイ女子組から白い目で見られてしまった。
仕方ねぇなぁ全力で応援してやっかぁ!!!
「すゥーーっ……ティオがんばれェェェーーーーッッ!!! ミル孤児院の希望の星ッッ!!!! お前が将来の大英雄だーーーーーッ!!!! 魔族を退けたその実力を見せつけてやれェーーーーー!!!!!!!」
「うるっさ!?」
『みゃあ!?』
「マスターそんなに大きな声出せたのですか……」
「はは、元気で良き也良き也」
そりゃもう絶叫したり号泣したりで喉は鍛えておりましたから。
大声が舞台にも響いたようで、俺の方を見て顔赤くしていーっ!って顔でティオが返してきた。可愛い。
さてそんなこんなで試合が始まった。
『……おおっとーーーー!? ティオ選手が速くも回転開始っ!! これが噂のアクセラレーションスピンソーサーだっ!!! 回る回る回るっ!!』
そして開始早々回転し始めるティオ。
十八番にして必殺の得意技だ。加速魔法をかけて全力で回転し、両手の魔双剣『セントクレア』で切り刻む攻防一体の構え。
攻撃力はこれまでも見せていた通りだが、実は防御にも長けている。
ちょうど今、実力者たるティオを狙って複数人から魔法や弓による遠距離攻撃が一斉に放たれたが……。
『迫りくる攻撃を滑るように移動して回避っ! それでも迫る攻撃はなんとはじき返すっ!! あの回転の中でどれほど周りが見えているんだティオ選手っ!?』
遅い攻撃は移動して回避できるし、生半可な威力の攻撃は魔法物理問わず双剣で弾き落としてしまうのだ。
特にあの双剣は魔力を籠めてるから常に魔法剣状態。デバフ効果のある霧なんかも切り払う事が出来る。
んでもって超高速でベーゴマのように迫って切り刻むし、多少のダメージが入っても自分で回復するし、魔力量は種族差もあって常人の数十倍でさらに常時魔力回復もしてる。魔法での遠距離攻撃も扱える。
一撃で動きを止められるような技を持たない相手なら何人でも関係ないわ。勝ったな。
「こう……上から見ていると本当にベーゴマ勝負のようですね」
「あの発想はヒノクニにはござらんなぁ……あちらで用いられる武器は主に刀か槍か弓。二刀流という発想はあれど刃渡りの短い双剣で回転し続けて攻防を兼ねて……移動も水魔法により滑るような軌道で読ませぬとは。いやぁ面白い」
「いい調子よティオ!! 最後まで油断するんじゃないわよっ!!」
『みゃあ! みゃあああ!!』
「回転する時にティオの髪が螺旋を描くの俺結構好き」
舞台にいる他の冒険者を次々と切り刻んでいくティオ。
もちろん殺すまではやらないが、魔族のヴィネアにぶち込んだような強い一撃を放つのではなく回転を殺さずに複数回切り刻んでダメージを与えてダウンを取っていく。
それも相手の周囲を回転しながら切り刻んでるので常に高速で動いてる。
ホントベーゴマみたいな動きだな上から見てると。見てて面白いわありゃ。観客も大喜び。
『さあ残り3人だっ!! 瞬く間に撫で切って2人! 1人!! 最後まで勢い止まらず撫で切ったぞティオ選手っ!! 噂に違わぬ実力だ!! これが王都最速昇格の銀級冒険者!! クラン・ケンタウリスのティオ選手が見事に予選突破だーーーーっ!!!』
見事に予選突破をしたティオがゆっくりと回転速度を落とし、長い空色の髪をふわりと遊ばせて、停止してからスカートをつまむカーテシーで一礼。
その振る舞いに、観客全員からの大歓声が浴びせられたのだった。