勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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54 そろそろきな臭くなってくる頃合い

 

 はい。

 ティオの後は続けてシミレさんが出場する第十一試合が始まります。

 

「シミレさーん! 頑張ってー!!」

「素早い動きで相手を翻弄するんですシミレさんッ!! 左右に揺らそう身体を!! 回避と攻撃とおっぱいぶるんぶるん効果狙ってッ!!!」

「このおバカぁー!」

「へぶっし!」

『みゃあ』

「絶対言うと思った。……シミレのグループは金級冒険者はいないけど、王都以外から来た冒険者が多いから実力が読めないのよね。赤カブトみたいな猛者もいるかもしれないから油断は禁物ね」

「獣人タイプの冒険者が多いようですね。彼らは種族的に肉弾戦や近接格闘に長けた者が多い」

「獣人の踏み込みは極まると脅威でござるからなぁ。シミレ殿もスピードには自信ありとみたが、さてはて」

 

 舞台に登場するシミレさんに熱い声援を送ってティオから頭をはたかれつつ、戦う相手を見るが……その半分以上は獣人の冒険者だ。犬とか猫とかいっぱいおる。ほぼ男。

 獣王国『グランガッチ』からの参戦だろうな。王都と友好協定を結んでいる。森に近い所にある国だ。

 向こうにもギルドはあるので冒険者等級は王都と同じ基準だが、それでも金級のような実力者ばかり参戦に来ているってわけでもないらしい。

 シミレさんもアルトさんと同様にここ最近の特訓で伸びてる。獣人相手への気配遮断は嗅覚や聴覚を誤魔化し切れるかが難しい点だが……さてはて。

 

『それでは第十一試合!! レディー……ゴーッ!!!』

 

 実況が試合開始を宣言する。

 シミレさんは……気配消したな。俺らの目からは見えてるけど、普通の観客や舞台にいる冒険者からはシミレさんが見つけづらくなっただろう。

 アサシンの面目躍如って所かな。バックスタブによる一撃ダウンを狙っていくようだ。

 

「シミレさんならアクセラレーションで加速も出来るし……今の所すごーいって感じの相手もいないよね?」

「そう見えるね。獣人同士でやりあい始めたけど俺の目で全然追える。囲まれなけりゃ全然いけるなシミレさんこれ」

「ずるいわよねー、アタシなんて金級3人相手に神経すり減らし続けてたってのに。クジ運恨むわ」

「…………ふむ……?」

「…………?」

『みゃ……』

 

 舞台全体を眺めつつティオも俺も感じた所感。

 獣人冒険者がそれぞれ近くの相手を狙い始めて、誰か一人が集中して狙われたりってのもなくて乱戦の様相を見せ始めたが……その中でも突出した誰かってのはない。

 文字通り銀級の実力って感じかな。ティオやカトル、サザンカさんから見れば全然御せるレベルの相手だろう。俺もあの程度の攻撃なら捌き切れる。

 そんな乱戦の隙を縫うようにシミレさんがするすると動き回り、一人ひとり背後から隙をついて先日ネレイスタウンで購入したツインダガーでぐさり。獣特攻ついてるから威力バツグン。

 命を奪うような急所は狙っていないが、首筋ががら空きなら峰で首トンして意識を落とし、そうでなければ装備の隙間を縫ってずぶり、って感じだ。

 ダガーに痺れ毒も塗ってたっぽいな。一撃入れて反撃させるようなミスもせず、順調に一人また一人と戦闘不能にさせていく。

 

「順調だよー! 残り人数が半分を切って……けどシミレさんまだノーダメージだー!」

「ああ。こりゃいけるな? まだシミレさんの居場所や動きに気付いてないヤツもいるし……魔力も無駄遣いしてないから切り札のアクセラレーションも全然ブッパできる」

「そうね。安心して見てられるレベルになって来たかしら。グランガッチの冒険者ってタフな人が多いって聞いてたけどそうでもないわね」

 

 そのまま順調に試合が進んでいって、俺とティオとアルトさんが勝利の確信をし始めたところで、しかし。

 

「……妙でござるな」

「……やはりサザンカもそう思いますか」

『みゃあ』

「ほっ?」

 

 武芸者のサザンカさんとイレヴンが謎の匂わせ発言を繰り出してきた。

 なんや。変なフラグ立てないでくださいよンモー!

 

「え、サザンカさん、イレヴンさん……何かおかしい所でも?」

「シミレは特にまだ何の攻撃も受けてないようだけど……?」

「いや、シミレ殿の事ではござらぬ。……余りにもあの場にいる獣人らが脆いと思ってな。ここから見る限り、まだまだ粘れただろうに早々に倒れている」

「シミレの一撃ならともかく、他でそれぞれやりあっていた獣人の冒険者たちが余りにも諦めが良すぎるように見えます。無理はしないという判断にしても……妙です」

「んー? ……つまりわざと負けてるような感じがあるってのか?」

「……そんなことあるかしら? せっかくの大会なのに勝たなくていいって思ってたって事?」

 

 話を聞けば、なんか獣人たち本気でやってなくね? ということで。

 んんん。そうなんやろか。こっから見下ろしてても別にそこまでおかしいそれは見えてないんだけどな。フツーに戦って、フツーに一撃入れられて倒れてって感じに見えるんだけど。

 命のやり取りの経験豊富なサザンカさんと、高性能なイレヴンだから察せる何か……が、あの場にあるということなんかな。

 

「……そういや他の試合でもグランガッチの冒険者は勝ち上がってなかったっけ」

「そういえば……そうね、確かに。赤カブトを除けば他は全部、王都の冒険者が勝ち上がってたわね」

「私の試合じゃ満遍なく切り刻んだから覚えてないけど……他の試合でも早い段階で負けてたっけ、獣人の冒険者さんたち」

「ええ。今回のように複数の獣人が混ざった試合だからこそ顕著にそれが見えました。なぜなのかはわかりませんが……」

「単純に冷やかしだったりしたんかな? 参加したっていう箔が目的だったり?」

「それが目的だって、普通は最後まで戦うくらいはしない? サザンカさんみたいな圧倒的な殺意と相対して降参するっていうならまだしも」

「拙者のアレそう捉えられていたのでござるか……」

「……よくわかんね!!」

『みゃあ』

 

 まぁここで結論が出る様なものでもないからどうでもええ!!

 実際シンプルに諦めが良かっただけの可能性もあるし! 俺の勘に響いてないから俺やその周りに今すぐ危険が及ぶようなそれでもねぇし! 静観!

 

『さあ戦いも終盤っ!! ここまで生き残ったのは3人……いや4人だ!! 気配を消しながら一人ひとり仕留めていたシミレ選手がさらに一人仕留めて姿を現したっ!! 最後の勝負っ!!』

 

 そんな話してたら試合も終盤になっていた。

 残る二人に相対するシミレさん。2対1になりかねないシチュエーションだが、ここまでしっかり力は温存できている。

 必殺のアクセラレーションを唱えて、数倍の加速を伴った突進からの双剣捌きで見事に残る二人を下し、無事に予選突破となった。

 

「……ちょっと気になる点はあったけどとにかく無事勝利!! おめでとーシミレさーん!!」

「うむ、シミレ殿の戦いは誠に見事。多人数を相手にあれ程巧みに捌けるのは周りが良く見えていた証左でござるな」

「これでケンタウリスは全員突破。クランの面子保てたってモンね」

「決勝にどんどん潤いが増えて俺も胸が熱いよ……女子とばかり当たってくれねぇかな……」

「マスターはすぐそういう事言う。隣にいつでも私と言う潤いがあるでしょうに」

「……ん? え、イレヴン? 貴女マジ……?」

「ふむ……ほぉ……?」

「なんですかアルトもサザンカも」

「えっ急になにこの雰囲気」

「ロックがアホだっていう話だから気にしなくていいよ」

『みゃあ』

 

 シミレさんの勝利を祝ってたらなんか女性陣が変な顔してイレヴンの顔見たり俺の顔見たりしてくる。何この雰囲気。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さてこれで午前中の試合も終わって、有名な歌劇団による演劇なども行われつつ、今日は孤児院のガキたちと一緒に屋台めぐって飯を食べたりもして。

 そんでもって今日の後の注目すべき試合は最終戦、第十六試合のカトルが出場する試合だったのだが。

 

『それでは予選最終戦ッ!! レディィィ……ゴーーッおおおおおお!?!?』

 

「うわぁ」

『みゃあ!?』

「きゃっ!? すごい音……!」

「カプチーノ様、大丈夫ですか?」

「カトル……やりましたね」

「なんと、あれほどの剣戟を!」

 

 またカプチーノさんたちと一緒に観戦してたんだけど、カトルがやりやがった。

 俺たちみたいに試合会場の中央に位置して暁剣イルゼを肩に構えてたんだけど、試合開始直後に思いっきり魔力を籠めて凄まじい速度で回転斬り。

 火炎の魔力を纏ったイルゼが剣閃の勢いを爆発力に換えて、全方位に衝撃波をぶっ放した。

 威力も高いが何よりも衝撃力が高い。ダメージ狙いと言うよりは吹き飛ばして場外を狙った一撃だろう。

 それを舞台の中央で放ったもんだから、周りにいた冒険者全員がそれを受けてしまう。

 咄嗟に跳躍して回避しようとしたものもいたが範囲が並大抵ではない。そこまで高度が出る前に空中でぶつけられてさらに吹っ飛ばされていた。

 防御に回った者も、ダメージを軽減はできていたが衝撃までは殺せない。吹っ飛ばされる。攻撃して相殺でもしないと厳しいな。

 俺の捌き斬りならワンチャン……あとはサザンカさんなら衝撃を堪え切れるか? イレヴンもドリルブラスターで衝撃を受け流してダイブブースターで抵抗すればギリギリか。

 

 まぁなんだ。とにかくずっりぃ全力の一撃で、カトルが全て決めてしまった。

 他の21人の冒険者は全員場外まで吹き飛ばされて。決着である。

 

『なっ、なっ、なんとッ!! 3秒!! ヴァリスタ選手の最速記録を超えてカトル選手が一撃で勝負を決めてしまいました!! あの師匠にしてこの弟子ありっ!! 規格外の力を見せつけた予選最終試合勝者!! カトル選手ーーーーーっ!!!』

 

 この圧倒的なスピード勝利には会場も大盛り上がり。

 大会が始まって以来の最大の声量の歓声がカトルに捧げられる。

 

「カトルくん、おめでとーーー!!」

「カプチーノさんもよう喜んでおる」

 

 カプチーノさんの耳が大丈夫かなと心配したけどこの人も大声で応援してたから大丈夫そうだった。

 カトルがちらりとこちらのほうを向いてぐっとこぶしを握って来たので、俺はパーで手を振って返してやった。俺の勝ち。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 はい。予選も終わってさらに翌日、とうとう本戦が始まります。

 朝8時に会場の舞台に再び集う冒険者たち。

 しかし今回そこにいるのは俺含めて17人だ。イレヴンがいるので端数が出るね。

 この後抽選のくじ引きが行われて試合が始まる流れとなっている。

 

「三日目は本戦リーグの初戦8回全部やるんだよなー」

「誰と当たることになるか……ところでマスター、抽選を勘で選べたりします?」

「やろうと思えば。つってもその後引く人の順番とかまでは分からんから二回戦から誰と当たるかまではわからんけどね。やりたい人とか希望ある?」

「そうですか。でしたら、しいて言うなら第一から第四試合のどれかで戦いたいですね。勝ち抜いて明日の準々決勝になった際に連戦になりませんから。マスターの負担を減らせます」

「了の解」

 

 くじ引きが始まる前にイレヴンとちょっと打合せ。

 予選の順番にくじを引くことになって、予選第一試合で勝利した俺が勿論一番最初にドローすることになるわけで、ぶっちゃけ俺の勘で誰と当たるかは選び放題なんだけど。

 ただまぁ俺も絶対に当たりたい相手ってのは特にない。

 女性と当たるかー……とは考えたけどよく考えたらこの本戦の場にいる女性がイレヴン除くとケンタウリスのティオ、アルトさん、シミレさん、そしてサザンカさんの4人だけだ。

 見知った顔しかいねぇ!!(渾身)

 勿論勝ち上がる途中で戦うことになりゃそれなりにガチでやるけどさ。わざわざあたりに行って潰しあう事もないやろ。

 相手は選ばなくていいか。初戦でヴァリスタさんとかサザンカさんに当たったらそれはそれで。

 ただまぁイレヴンから希望が合った通り早い段階で戦うようにはしておくか。

 つまり第一試合だな。

 

『────では早速っ!! 順番にクジを引いてもらいましょうっ!!』

 

 大会運営の司会進行お姉さんの合図があって、俺から順番にドローとなった。

 大きな箱に腕を突っ込む。ごそごそ。一番どこかな。これだな。

 

「ハイ一番!」

『まずロック選手が引いたのは一番!! 予選と同じ一番に入りました!! 名前だけでも一番になりたいという欲望の表れか!!』

「司会進行のお姉さんからの当たりが強い」

「予選試合の合間にいつもの調子で口説いてたマスターが悪いと思いますね」

 

 とりあえず俺は予定通りに一番を引いて、第一試合に入ることになった。

 そしてその後も続々抽選会が進み、決まった組み合わせが以下の通り。

 Aが左、Bが右でイメージしてくれ。あまり縁がない人はモブ扱いにしてあるけどそれぞれ実力者です。

 

 

 

【Aグループ】

 

 1  ロック

 2  モブ

 

 3  サザンカ

 4  ヴァリスタ

 

 5  モブ

 6  モブ

 

 7  モブ

 8  ティオ

 

 

【Bグループ】

 

 9  モブ

 10 シミレ

 

 11 カトル

 12 モブ

 

 13 モブ

 14 アルト

 

 15 モブ

 16 モブ

 

 

 

 はい。

 二回戦がどうあがいても絶望なんですがそれは。

 

「マスターもうちょっと勘を働かせられませんでしたか?」

「知らんがな」

 

 ヴァリスタさんが勝ち上がってきても強いし。もしサザンカさんが勝ち上がってきたらヴァリスタさんより強いってことで更に強いし。

 いやぁ……しんどいなコレ。

 まぁ俺の勘に従った結果だから俺が嘆いちゃいけないんだけどさ。

 

「これはまた素晴らしい籤運(くじうん)でござったな……ふふふ……昂ってしまう」

「ロックくんが懇意にしていた赤カブトが初戦か! 実に壮絶な戦いとなりそうだっ!!」

 

 すでに二人ともバッチバチだし。怖。近寄らんとこ。

 





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