勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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58 ぽっと出のヒロインは闇落ちする法則

 

 

 午前中の試合も終えて午後の試合。

 シミレさんが出る第5試合、カトルが出る第6試合、アルトさんが出る第7試合があったのだが。

 

「普通にみんな勝ち抜いたな」

「お見事でしたね」

『みゃあ』

 

 フツーにみんな勝利しました。

 シミレさんはアサシンだからタイマンどうかな……と思ったけど普通にスピードで勝って凌ぎあいで勝利。相手の必殺技を見事に回避して流れ掴んでた。

 カトルは魔剣イルゼにチャージした魔力を使って超強力な一撃でまたしても場外勝ち。アイツの範囲攻撃ズルいな。

 アルトさんは予選で苦労した分、ストレートに押し勝った。大盾とランスをバランスよく扱えるから総合力が高い。バランスのいいアルト選手。

 まぁここまでは読めた展開よ。次からはそれぞれが当たることになるしな。

 準々決勝では俺とサザンカさんが、シミレさんとカトルが当たることになる。どうなることやらで。

 

「しかし明日戦う相手と一緒に食べるご飯の味といったら。美味っ!」

「確かに奇異な状態でござるな……拙者も立ち会う相手と立ち合い前にここまで落ち着いた時間を過ごすなど初めてでござる。それでも居心地が悪くないのはロック殿の人徳故か」

「マスターが全く気にしていないですからね。逆に大物と言う事にしておいてください」

「ごはんおいしい!! おかわり!!!」

「うむ、リン殿は本当によく食べるでござるな。大きく育つのでござるよ……はい、どうぞ」

「ありがと!!」

「ママみを感じる」

『みゃあ』

 

 そして夜もこれまで通りサザンカさんも普通に俺んちに泊めるというね。

 当然だわな。別に明日戦うっつったってそれでギスる理由ないし。勿論お互いにお互いの戦略とかには触れず、いつも通り過ごすだけだ。

 ホントにこう……もうずっと俺んちにいてくれねぇかなぁサザンカさん……!!(渾身)

 リンもシスターとは別に新たな母性に触れてなんか甘えんぼな所も出て来てるし。大和撫子の見本になってもらいたいもんですよホント。

 だがこのデカパイママが鬼のような実力を持つ赤カブトなんだから人間わからんもんよね。どっちも好き。

 

 そして夕飯を食べ終えてお風呂も上がって。

 風呂あがったらリンがおねむになったのですぐに爆睡。俺ら大人組はしばらく晩酌でそれぞれの試合内容とか語り合ってたが、次第にミャウが眠そうに舟をこぎ始めた。

 

『みゃあ……くなぁ……』

「ミャウも眠そう。そんじゃ明日も俺らが第一試合だし、勝ちぬいた方は準決勝もあるから早めに寝ちまいましょっか」

「そうでござるな。夜も更けて居り申す。……ではお休みなさい、ロック殿、イレヴン殿」

「はい。おやすみなさいサザンカ」

「おやすみなんしょ」

 

 そのまま俺らもお布団へ。

 デカパイ美女二人に囲まれた夜なんだけどな。まぁここは俺も冷静よ。

 サザンカさんの体を狙うのは闘技大会が無事に終わって国に帰る時の寂しさが募る時でええ。その時に全力で口説くことを心に決めている。

 ワンチャン一夜の想い出くらいならあると思ってるから。サザンカさん結構甘えられたら断れないタイプだと見てるから……。

 

「まぁその前に明日俺が死なないようにしなけりゃならんのだけど」

 

 部屋に戻り日課を済ませて、ミャウが潜り込んでくるベッドに横になり天井を眺める。

 明日のサザンカさんとの試合、多分勝てないだろう。イレヴンが出来る限り頑張ります……とは言ったが、あの構えを取られた時点でおおよそイレヴンが取れる手段では対抗できない。

 無茶すれば……とも思うが無茶する場面でもないしな。勝利の栄光は確かに惜しいが、結局のところ俺たちの主目的はイレヴンのレベルアップだ。

 大会に至るまで、そして大会中の予選や本戦でもその目的は達成できたと言えるだろう。なら無茶をして命をベットしてまで勝ち上がろうとは思わない。

 俺らが本気を出すのは魔族相手に誰かを守る時なのだ。

 

「ってなわけでおやすみミャウ」

『みゃ……フガァー……』

 

 既に眠りこけてるミャウをお腹の上に抱いて、俺もぐっすりと惰眠を貪った。

 明日もいい日になるといいね。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「なんでや」

 

 朝。目が覚めて最初の言葉がそれだった。

 いつもと同じ早朝に目が覚めたが……なんか起きた瞬間から僅かな違和感。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ……マジ? なんで? 今日? 今の時点で……?」

 

 前にセントクレアちゃんが襲われた時の絶対ヤバい! って感じの勘と比べると随分と弱い反応である。下手すればただの勘違い中二病マンになりそうなくらい微妙な反応。

 今日の試合に反応してんのかな……? 確かにサザンカさんと真面目に戦えば命の危険もあるもんな? でも降参する選択肢を取るって決めたぞ俺? どうなってんのじーさん??

 

 とりあえず自宅内、みんなの安全を確認するために俺は足音を殺して自室を出る。

 家の中の気配を、呼吸音を耳を澄まして聞く……が、リンのいびきもイレヴンの静かな寝息も問題なく聞こえている。

 廊下を歩きがてら音を立てずにそれぞれの部屋の扉を開けて中を観察してみるも、特に荒れた形跡や侵入者など無し。問題なかった。

 

「ええ……? じゃあ何この勘……えー?」

 

 そして玄関を出れば、これまでも毎朝見ているようにサザンカさんが俺より早く起きてて、庭で剣の鍛錬をしていた。

 手入れをした大太刀を構えて前後にゆっくり振るあれね。今日もサラシに巻かれたデカパイ感謝。

 ……みんな無事だな。特に俺んちに危機が迫ってるとかそういう話ではないようだ。

 

「む、お早うロック殿。今日も良き天気になりそうでござるな」

「おはよーさんです……サザンカさん、どれくらい前から起きてました? なんか変な事起きなかった?」

「ん? 拙者が起きたのは四半刻(30分)ほど前でござるが、特段なにも……なんぞ気になる事でも?」

「あ、いや。何も無ければいいんです」

 

 俺より先に起きたサザンカさんに聞いても特に異変はなし。

 なんやろ……何もなかったって事なのかな。でもまだ微妙に勘は反応してんだよな。止まらん。

 やっぱ試合でなんかあるか? ホント俺の勘ってこう、何が理由で何が危ないのかがその時にならないと説明がつかないのが使い勝手悪いわ。

 これに何度命を救われたか分からないからじーさんに文句はないけどね。もうちっと扱いやすい力になりゃいいのによ。

 

「まぁそん時になればわかるか」

 

 鍛錬中のサザンカさんの邪魔はせずに朝食の仕込みをしながら呟いた。

 じわじわ響くタイプの勘は、その時が近づけばさらに警鐘が強くなってきてどうすればいいかが何となくわかってくるもんである。

 油断はせずに、その都度勘が響く通りに動けばいい。

 最終的には悪いようにはならんわ。なりそうならその前に勘が叫んでくれるやろ。

 

「ってなわけで今日は何が起きるかわからないのでみんな気を付けるように!」

「マスターの勘にはこれまでも何度もお世話になっていますが……思いのほか扱いづらい特異能力なのですね。曖昧が過ぎます」

「ふむ。勘が聡いというのは生き延びるためには大切なものでござるからな。それでロック殿はこれまでも生き延びてきたのでござるな」

「んー……? わたしもなにかする?」

「わかんね。けどまぁ……なんかヤバいってなったらリンは孤児院のみんなを頼むわ。その前に何とかなると思いたいし、何もないのが一番だけどな」

「わかった」

 

 朝食の場で俺の勘になんか妙な響き方をしてるのでみんな気を付けて! と一応の注意喚起。

 サザンカさんには俺の勘の事をしっかり説明してなかったので何ともな受け取り方だったが、イレヴンとリンは首を傾げつつもちゃんと注意してくれるとのことだ。

 まぁ多分今日の試合に係わる事だとは思うんだけどさ。サザンカさん相手なら命の危険を感じ取ってもおかしくないしな。勿論勘がヤバいって試合中に響き出したら降参します。

 それで何もなく終われば一番。もしそうならなければ……その時にどうにかするだけだ。

 

「よし。そいじゃ出発しますか!」

「うむ。今日も良き戦いを」

「力の限り戦いましょう、サザンカ」

「ふたりともがんばれ!! どっちもかってね!」

「どっちかしか勝てないうえに俺がカウント外」

『みゃあ』

 

 一抹の不安は響きつつも、腹ごしらえをしてこれまで通りに闘技場へ向かうのであった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さてここは控室。

 今日はこれまでのような一日に8試合やりますよっていうタイムテーブルではなく、準々決勝4戦と準決勝2戦だけの試合数が少ない日だ。明日は決勝戦だけなのでもっと短くなるけど。

 それゆえ、第一試合のスタートも若干昨日までの日程よりも遅れてたため、控室にいる時間が長かった。

 受付でサザンカさんと別れて、俺とイレヴンは闘技場の東側にある控室に入って試合までの時間を過ごしていた。

 

「……それで、マスター。今は勘の方はどうなっているのですか」

「や、特に変化はない……かな。じんわりとなんかヤバい感じはしてるんだけど、それが何なのか、どうすればいいのかっていう方の響き方はしてないっていうか……言葉にするのムズいな!」

「危険は迫っているという事であれば、やはりサザンカとの試合、なのでしょうか。……サザンカがマスターの命を積極的に狙ってくることは無いと思うのですが」

「そうなんよね。だからこそこんな弱い感じなのかなーとも思ったりして。イレヴンの身に何かヤバい事が起きる……ってことなのかな? 魔力炉心がやられちまったりとか?」

「どうでしょうか……私の魔力炉心は人間でいう心臓の当たりに位置していますが、あの居合斬りによる胴薙ぎではたとえ直撃しても胴体から真っ二つになるだけで、時間をかければ再生できます。胸部を狙われない限りは死ぬことは無いと思うのですが……」

『みゃ……みゃ……?』

 

 結局ここに至るまで俺の勘もなーんも響かん。

 何かが起きてから響くパターンか? 事前に気配察知することもあるんだけどな。セントクレアちゃんの件は多分それだったんだけど……今回がどうなってんのかマジでよくわからん。

 ううむ。もやもやするなぁ!

 仕方ないんでミャウをモフモフしながらもサザンカさん相手の対策についてイレヴンと相談することにした。

 昨日は試合後ずっとサザンカさんと一緒だったからひそひそ話も出来なかったしな。

 

「とりま初手はカニバミサイルだよな。遠距離攻撃でドリルスティンガーキャノンに次いで攻撃力が高いのあれだし」

「ええ、私もそう考えています。初手で居合斬りの構えを取られたら大変厳しいですが、蜻蛉の構えであれば煙幕を生みつつ雪崩式にミサイルを放てますし、そこからの追撃もいくつも択が作れますので。密着して鎧越しにインパルスニードルを放つのが最もサザンカの体力を削れるのですが……」

「インパルスニードルだとサザンカさん貫いちゃわんか?」

「彼女の体力を考えれば即死には至らないでしょう。防御貫通のスキルですから通常のドリルブラスターよりも装甲が厚い相手には有効なのです。密着すれば大太刀の攻撃も振りにくい。問題はそこまで近寄れるかと言う話で」

「ヴァリスタさんの本気の速度に並ぶもんなぁ……俺もサザンカさんの隙を作るために動いた方がいいかなぁ?」

「いえ、今回の試合ではそれだけはやめておきましょう。サザンカの力と速度で大太刀を振られてマスターが万が一直撃した場合、居合斬りでなくとも一撃で死ぬ危険がありますので……うかつに飛び込んだりはしないでくださいね、お願いですから」

「そっか……そうかもな。んー、じゃあ後ろで一生懸命応援してるわ」

「それでお願いします。正直に言えば私もサザンカに勝てるかは自信がありません。魔族相手であれば属性の有利もありますので今ならばヴィネアでも瞬殺できるくらいの力は有していると思うのですが……対人戦だといかんとも」

「んー……今からなんか新しいスキル解放するか? いい感じに対人相手に有利なのとかない?」

「……それも悩みどころなのです。この試合で有効なスキルを解放したとして、私の本懐である魔族討伐に有用なものかと言うとアレでして……折角のスキルポイントですから魔族討伐に有効なスキルを伸ばしたくて。私自身に対人特攻を付与するようなスキルもあるのですが取得ポイントがかなり重いので。その分を魔力炉心の性能上昇に振った方がまだマシですね」

「なるほどなぁ。……んじゃまー、当初話してた通りダメもとで行くか。イレヴンがアカンってなったら降参するから。出来る限りの所まで頑張るっていう方針で」

「ええ。悔しさはありますが、サザンカの実力を認めましょう。最強の冒険者の実力を見て、勉強させてもらうと思えば」

「せやな」

 

 まぁ色々話したけど結論は勝てなさそうだったら降参しようね、と言う事で決まった。昨日話した通りです。

 さぁここまで意思をはっきりさせたんだからもう勘のほうも落ち着くか……と思ってたんだけどな。でもまだ反応してんな。

 どういうことだ……まさか誤作動だったりして?

 とか思ってたその時だ。

 

「─────は? ……ヤバ」

「マスター?」

 

 唐突に警鐘が強くなった。

 ガンガンとなるような警鐘で……これは……()()()()

 なんで!? 王都内だぞ!? 結界の中だってのに……嘘だろ!?

 

「え、まずい。魔族が近くにいやがる」

「ッ!? マスター、方角は!?」

「向こう……のほうだ!! やべぇ……行くぞイレヴン!!」

「はいっ!!」

 

 こうしちゃいられん。

 いきなり、急に俺の勘はすぐ近くに魔族がいると囁き出した。

 今は第一試合に備えて観客もいっぱい集まっている……こんなところにバアルやヴィネアのような広範囲を破壊できる力を持つ魔族なんかが現れたらヤバすぎる。

 一気に意識は切り替わり、ミャウを置いて俺たちは控室を飛び出した。

 既にイレヴンは袖をまくり戦闘モードだ。

 何があってもいいように全身の武装を解除しながら俺に続く形で駆ける。

 

「こっち……って、なんでこっち!?」

「え……っ、そんな……!?」

 

 俺の勘が示す道。

 それは、明らかに闘技場の舞台の方角を向いていて。

 つまり今、舞台に魔族が存在しているのだ。

 

 だが────闘技場に響く観客の声は悲鳴ではなく歓声であった。

 通路を駆け抜け、係員の制止を振り切って大きな歓声が響く方向に走る。

 どんどん歓声が大きくなって。

 そして通路を抜けた先の舞台には。

 

「───────」

 

 サザンカさんが、兜と面頬を外し、闇に染まった目で此方を睨んでいた。

 

 

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