勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
舞台に描かれた召喚陣から次々と召喚される魔族。
それらが一斉に、俺に襲い掛かってくる
「エクスアームズ07『カーニバルミサイル』……!!」
イレヴンが先手を取っていた。
魔族を殺すために造られた彼女の全身から、魔族特攻のミサイルが幾筋も放たれ、周囲に弾幕を生む。
それらが召喚する魔族を次々と迎撃し、俺を守るが……しかし数が多すぎる。
一掃できてない。爆死していく傍から次々と魔族が召喚されている。
「ちっ……!! イレヴン!! 攻撃任せる!! 俺はサザンカさんと実況のおねーさん退避させる!!」
「マスター!? ……ッ、いえ、そちらはお願いします!! 私は目の前の敵を!!」
こうなってくると俺に打てる手はなく、下がるしかない。
予選の時のような集団戦とは全く違う状況だ。100を超える魔族が無限に召喚されてるこの状況で、舞台の上に居続けるのはムリだ。全身が武器のイレヴン以外は。
今もドリルブラスターで腕を廻し、周囲からとびかかってくる魔族を次々と屠るイレヴンだが……このままではこちらに余波が来る。イレヴンだけでは捌き切れなかった魔族が襲ってくる。
そうなると何がヤバいって、気を失って倒れてるサザンカさんと戦えない実況のおねーさんだ。
俺一人ならいくらでも逃げ回ってやるのだが、しかし人の命を見捨てて逃げるほどゲスになった覚えもない。
デカパイ美人の二人を失ってたまるものかよォ!!
「んむっ……! やっぱサザンカさん鎧重っも! 実況のおねーさんも逃げて!! 今すぐ!!」
『ほえええー!?!? なんですこれ何が起きてるんですー!?』
「魔族が襲ってきてるんだよっ!! いいから逃げ……」
「っマスター!! 対処を!!」
サザンカさんを何とか担いで舞台を降りようとしたところで、しかしやはりイレヴン一人でこれだけの数を押しとどめるのは難しかったようだ。
イレヴンの背後から召喚された何匹かの魔族が、こちらに向けて襲い掛かってくる。
俺はそれに振り返り、今背負ってるサザンカさんとその後ろの実況のおねーさんを守るために『捌き斬り』の構えを取る。
10体程度なら意地でもなんとかしちゃるわい!! とヤケになりつつも再びデコピンを向けたところで────状況が一変する。
「ギィヤアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
「おわっとォ!?」
今の断末魔は、俺に襲い掛かろうとして迫ってきていた魔族のものだ。
唐突に俺の目前に凄まじい収束率の魔力砲が斜め上からブチ込まれて、俺に向かって襲い掛かってきていた魔族の群れが塵となった。
急な援護。
それを放たれた方向に目を向ければ……そこは貴賓席の方から。
身を乗り出すようにして、デカパイ美女が手に嵌めた指輪から魔法を放ってくれたようだった。
なんかあの顔見たことある気がする(確信)。
貴賓席にいるってことは王族関係なんやろけど……でも俺王族の顔一人も知らねぇんだよな。
さらに、続いて状況はどんどんと変化していく。
『───魔族が闘技場内に侵入したッ!! 冒険者よ、戦える者は前に出よ!! 民を守るのだ!! 魔装具を持つ者は魔族を討ち果たせ!! 誰一人として被害を出すな!!!─────これは王命であるッッ!!!』
声のする方に顔を向ければ、実況のおねーさんを片腕に守るように抱きしめながら拡声魔道具を使い叫ぶ国王様……ディストール=オーディンがいて。
その手には豪華な飾りのついた剣があり、そしてこの異常事態にいの一番に貴賓席から飛び出して、魔族が溢れるこの舞台に乗り込んだらしい。
すっげぇ。王様が一番前線に出てるよマジかよ。
「────なればこそ!!! 我ら冒険者が力を振るうは今この
王命にいの一番に応えたのは、妹さんと一緒にカトルの応援で来てたはずのヴァリスタさんだ。
客席のてっぺんから舞台に飛び込んできて、魔族が集団でまとまっている所に剣を振り下ろして大爆発を起こした。あんな技も使えるんだ。
「───ロック、無事か!?」
「イレヴンさんっ、私も手伝うよ!! こんな時の為に魔装具ゲットしたんだから!!」
「お前ら……」
そしてサザンカさんを背負う俺の傍に飛び込んできたのは、カトルとティオの二人。
この二人も試合前だというのに……いやもうそんなことは関係ねぇか。
あたりを見れば、警備に回っていた冒険者もそれぞれが避難する観客たちの護りに回っている。
その中でも魔装具を持つメルセデスさんやノックスさんは、観客席に飛び込んで来ようとする魔族を次々を討ち果たしている。流石金級。
他にも金級銀級を問わず、観戦していた冒険者たちが無限に溢れる魔族たちをどうにか客席まで向かわせないと必死に押しとどめている。
さっき俺を庇ってくれた貴賓席の方からは、王族だろう男性も女性も飛び出して、それぞれ魔族を討伐している。あの人たちつっよ。
国王の一喝で。
まるで国が一つになったかのように、魔族に抗っている。
「……くっ、とにかく数が多い!! これほどの数……もし幹部級まで来られたら……!!」
だが、それでも一網打尽とはいかないようだ。魔族に囲まれているイレヴンが周囲を一瞬で血煙に変えつつも悪態を零す。
魔装具持ちの冒険者の絶対数が足りてないのだ。
無限と思われるほどに召喚されてくるこの魔族どもを次々と皆が切り伏せているが、空を飛ぶ魔族もいて……いつかは溢れてしまうだろう。
そうしたら最悪だ。避難はまだ済んでいない……観客席にいるだろう孤児院のみんなも、ノインさんも、カプチーノさんたちも、他の人たちも危険にさらされる。
この召喚を何とかして止めなければならない。
だが、どうやって?
魔法に詳しい者なら止められるのだろうか。舞台自体をぶっ壊しちまったら駄目なのか?
いや、でも最初に俺を庇ってくれたあの魔力砲のダメージでも舞台に描かれた魔法陣は消えてない。魔法力を弾くような力が働いているのか。
どうしたものか。
俺には何ができるのか。
どうする。どうすればみんなを守れる──────
「────展開。『
だが俺のそんな葛藤は余りにもあっさりと晴らされる。
舞台を逆さに包むように、観客席全域に……俺がかつて張ったとされる魔法防壁よりもさらに高密度な魔力による防壁が、結界のように展開された。
この魔力の源は───あの人だ。俺の勘がそちらの方を感じ取る。
そこは観客席の最上段。
孤児院のガキたちに囲まれるように中央に立つシスター・ミルが、祈るように手を組み、魔法をくみ上げているのが見えた。
その横にはリンが……なんだろ、シスターの体にちょっとなまめかしく全身を絡めるように抱きしめている。
あれは……リンがシスターに魔力供給をしてるのか。
体を触れ合わせれば魔力を相手に分け与えられるってマルカートさんが言ってた。多分、リンがそれをやって、そしてリンの底知れない魔力を使ってシスターが全域に防壁を張ったんだ。
ナイスすぎる。これで少なくとも観客席への被害は考えなくてよくなった。
「むぅ……これほどの防壁を張れるとは。見事だ、流石はかつて『四傑』と呼ばれた冒険者よ」
その様を見て、近くで魔族をズバズバ切り捨てまくってる元気な国王様がなんか呟いてた。
えっそんなに強かったの昔のシスター? ってか国王様シスター知ってたの?
でもそんな事勢いで話しかけられねぇしな。なんてったって国王様だ。無礼打ちされたくない……ん?
シスターがいたパーティが四傑って呼ばれてたってことは?
じゃあそのパーティに一緒にいたはずの、
「────
次の瞬間。
舞台のど真ん中に、一筋の流星が突き刺さった。
とんでもない衝撃で周囲の魔族をブチ飛ばしながら突き刺さったその流星は、巻き上げた埃を祓いながら身を起こした。
間違いない。トゥレスおじさんだ。
「ッ、親父!? なんでここに……」
「ぬるいぞカトル。この程度の召喚陣は一息で術式を読んで潰せ」
「……召喚が、止まった? トゥレス、貴方どうやって……?」
「簡単な話だ。これを仕組んだ奴らがいた……観客席にいた下手人は全員意識を失わせた。その後に召喚陣を強力な魔装具の一撃で穿ち貫けば術式が崩れる。……残党を潰すぞ」
やっぱこの人もとんでもない実力持ってたんかい!!
いや雰囲気でそんな感じはしたけどね! でもシスターもこんなすごい魔法使えるなんて全然教えてくれなかったし!! すっごい気になるわこの人たちの昔の事!!
と、まぁ少し思考に余裕が戻ってくるくらいには……形勢が逆転した。
守護防壁に囲まれて逃げ出せない魔族。召喚陣からの闇の魔素も止まったので一気に力を失ったのがありありと見て取れる。
そして今や舞台の中には、魔装具を装備した金級クラスの実力者ばかり。
王族の人たちもそれぞれ魔族に相対していたが、それぞれが並々ならぬ実力で。
そして王様本人もバリッバリ元気で。
勝ったわ。
「ふむ。流石である……20年前よりその力は全く衰えていないようだな、『万極』のトゥレスよ」
「よせディストール……いや、今は国王様か。古い二つ名だ、ガキに聞かせるもんじゃない。ただの杵柄だ」
「ふ。……その剣、今大会の褒賞として準備した魔剣であろう」
「借りたぞ。すぐ返す」
「そうしてくれ」
何やら国王様までトゥレスおじさんの事知ってるようで。すごい気安い会話が近所のおじさんと国王様の間で交わされてるのちょっと面白いな。
まぁでも話はあとで聞こう。
なんでこんなことになったのかとか、下手人は誰だったのかとか、貴賓席から俺を助けてくれたあの人ノインさんに似てね? ってこととか、リンがちゃんと孤児院のみんな守れて偉いって事とか、トゥレスおじさんとシスターと国王様の過去の関係とか、色々……ホンット色々聞きたいことはあるけれど!!
今はとにかく。
「では形勢も逆転したところで────滅びろ魔族ッ!!」
この場にいる魔族をぶっ殺してやれみんな!!(他力本願)
そして数分後。
そこには最高キルスコアを稼いでなお五体無事で、やり遂げた顔をしたイレヴンと。
それぞれが疲労の色を見せつつも、民を守り犠牲を一人も出すことなくこの襲撃を凌ぎ切り、汗を輝かせる冒険者たちの姿があった。