勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
魔族襲撃を終えて闘技大会が一時中止になり、いろんな後処理とか調査とか進んた後。
サザンカさんがなんかずっと申し訳なさそうにしてたので無理矢理手を引っ張っていつも通り俺の家に泊めて飯作ってもらって風呂入ってもらって。
でもやっぱり気分がすぐれない風ですぐに部屋に入って行ってしまったのでイレヴンに様子見に行ってもらったりした翌日の朝。
「ぐっもに」
『ミャフー……ミャッフナァー……』
いつも通り早朝に目が覚める俺。と胸の上で鼻提灯作ってるミャウ。
今日も良い朝だ。天気も晴れ。雨が降る心配はなさそうだね。
大会はその後再開されるというアナウンスが国中に流れて、午前中に現在残っている選手全員でのバトルロイヤルで勝負を決めるということになった。
最後まで立っていた人が優勝者で、脱落した順に順位が決まるんだってさ。
まったくひでぇルールになったもんだと心から思うね。
「俺に不利なんだよなぁ……!! 絶対カトルとティオが俺のこと狙ってくるだろうなぁ……!!」
あの二人が絶対遊び半分で俺を狙ってくるんだろうなと言う確信があります。
ガキの頃から何かにつけてあの2人に組手と言う名の襲撃を受けてたからなぁ。絶対来る。
イレヴンに守ってもらいたいところだけどなぁ……二人がかり、いや下手したら他のメンバーも俺をいの一番に狙ってくる中で果たしてどこまで守り切れるだろうか。
今残ってる出場選手の中じゃ俺が一番弱いからな。仕方なしなところあります。
「まぁいいや。とりま朝ごはん作ろ。起きろミャウ、朝だぞー」
『フナァー……ふみゃっ!? みゃあ!』
鼻提灯をぱちんと割ってミャウを起こして、頭にセットして階下に降りる。
窓の外を見れば……ああ、うん。いつも通りサザンカさんが鍛錬してらぁ。
窓越しに見るその背中と横から零れるデカパイ横乳を見ると……昨日よりはちょっと元気が出てるかな。
うんうん、よかったよかった。大体の悩みはぐっすり寝れば晴れちまうもんよ。
「今朝は元気つけるために肉多めでいくかぁ。絶対体力使うしな過去最高に」
アイテムボックスから取り出した食材の仕込みを進めておく。
サザンカさんが来てからは俺が食材の下準備をしてるといい所でサザンカさんも鍛錬を終えて料理を手伝ってくれて仕上げを任せられるのだ。
俺もサザンカさんからどんなふうにしたら美味しくなるのかというテクを教わったので前より料理のレベル上がってる感じがしますね。目指せ一流シェフ。
「ん……お早う、ロック殿」
「おはよーさんです。よく寝れましたサザンカさん? 大丈夫?」
「うむ。昨日は色々とすまなかったな、恥ずかしい所をお見せした……落ち着いたでござるよ、大丈夫。お料理手伝うでござるよ」
「ならよかった。朝食はリキ付けたいんで肉炒め作ってます。切って下味付けた食材はそっちで」
「ふむ、お見事。ここ数日でロック殿も随分と上達なされたな……では拙者のほうで仕上げを」
「よろっす」
そうしてサザンカさんも鍛錬を終えて……うん、話した感じも普通だ。事件が起きる前のサザンカさんの雰囲気に戻ってた。
吹っ切れたならよかったぜ。俺たちはまた肩を並べて料理を作っていく。
……しかしふと思ったがサザンカさん闘技大会に参加しに来たわけだから今日が終わったら帰っちまうんだよな。
寂しいな。やはりここは泣き落として引き留めるか。
俺がワンチャン優勝したら『ロック殿強い! 好き! 抱いて!』ってならないかなぁ。ならねぇだろうなぁ。
「……お早うございますマスター。サザンカもミャウも」
『みゃあ!』
「お早う、イレヴン殿」
「おはよ、イレヴン。料理できてるから並べてもらっていいかな。んでリンが起きてこなかったら起こしてきてくれる?」
「了解です」
したらイレヴンも起きてきて、テーブルに料理を並べるの手伝ってもらってたらその匂いでリンも起きてきて、いつも通りの朝食を食べて。
ミャウの顔ぐしぐしして、今日はリンの髪もついでにぐしぐししてみたら尻尾でビターンってされて試合前に早速ダメージをもらってしまった。
「ロックはおんなのかみのあつかいがわかってない!! おばか!」
「寝ぐせ爆発しまくってるじゃねぇかいっつもお前……」
「おや、マスターは気付いてなかったんですか? 最近はリンもちゃんと起きたら髪を梳いてくるようになりましたよ」
「マジで?」
「
「そういう所に気付かないからマスターはカスなんですよ」
「ロックはカス!」
「すっごいアウェー」
大会決勝の日にこんな気の抜けた話する奴はそうそういねぇだろうな。
※ ※ ※
はい。闘技場に到着しました。
昨日あんだけの事件があったってのにまぁ観客席は客で埋まってたわ。
遠目に見渡せば孤児院のみんなもヴァリスタさんとカプチーノさんもいた。ノインさんも多分貴賓席にいるんだろうな。
ノインさんの件は流石に今貴賓席に突撃はできねぇからあれだけど……後で図書館で会った時にでも話を聞きたいところだ。
別にノインさんがもし王族だったとしたってこれ以降も付き合いを変えるつもりはないけど。助けてもらったお礼したい。
「それじゃわたしはこじいんのみんなのところいってくるね」
「おー。シスターに昨日は助かりましたって伝えといて」
「昨日も言いましたが……リンも頑張りましたね。今日も子供たちをよく見ていてあげてください」
「うん。じゃあね」
今日はリンが孤児院で一度合流しないで現地集合の日だったので、そのまま竜翼を広げて孤児院組の所に飛んでいった。
そして俺とイレヴンと、サザンカさんが残っているわけだが。
「……落ち着かぬ……」
「いいじゃないスか。赤カブトのサザンカさんもカッコよくて好きだけど個人的にはもっと美しさを前面に押し出していいと思うんすよね。お綺麗ですよマジで」
「ええ、この姿で戦っても人気が出たでしょうね」
「そうは言われても……むぅ。しかし流石に昨日の今日であの甲冑を着込めないとは分かっていても……むぅ……!!」
サザンカさんが今日はアーマーパージしています。
これは出発の時点で俺が言いだしたことだ。
昨日の試合、俺は赤カブト状態の操られたサザンカさんと戦ったわけだけど……あの体から魔族が飛び出してきたのを観客たちは見ている。
もちろんあの時は兜を被ってなかったのもあるから顔もみんなに見られてるわけだけど。それでも遠目にも目立ちまくるあの深紅の鎧を着ていると、遠目にも目立って何を言われるか分かったもんじゃないからな。
今日はサザンカさんは戦わないしほとぼり冷めるまではあの赤カブトで出歩くの禁止です! と伝えたらそれに応じてくれたのだ。
なので今はサザンカさんは私服である。
自分用の私服もアイテムボックスに入れて持ち歩いてたのがあるということで着用してもらったが、なんと赤い袴と腰帯に白い襦袢で。
いわゆる巫女服だ。生で拝める日が来るとは思っていなかった。初見で拝んだわマジで。
それなりにファッショナブルな作りにもなってて動きやすそうな改造もされてる反面、サザンカさんのデカパイが掛襟のクロスでむしろ強調されるように大いなる実りを強調している。
これで身長180cm以上だからな……ものすげぇドスケベの塊だぜこの人はよぉ!!
むしろ目立つって? このエロさで目立つ分には何も言われねぇだろきっと。
「しかしサザンカさんを一人にすると絶対に迷子になるのでヴァリスタさんの所まで案内しておこう」
「そうですね」
『みゃあ』
「流石にこの見下ろす形の観客席で迷いはせぬよ!? 拙者そこまでポンコツではござらぬよ!?」
「じゃあB席方向にいるヴァリスタさんたちの所に向かうにはどっちに行けばいいかわかりますよね?」
「無論! ……こっちでござるな!」
「逆です」
『みゃあ……』
まぁほっとくと迷子になるのでちゃんと誰かと一緒に観戦してもらわないとね。
色んな意味で一人にしておくのは今は危険なので、一番信頼できる大人でかつ警備隊でもない人に任せるに限る。つまりヴァリスタさんである。
一回戦で戦った者同士だし最強格同士だしセットにしておくに限るでしょ。カプチーノさんがむすってするかもしれないけど最終的には仲良くなってほしいのでヴァリスタさんに後は任せよう。
「ってなわけでうちのサザンカさんが迷子にならないようにお願いしますねヴァリスタさん」
「うむ!! 任せてくれたまえロックくん! 戦友であるからなサザンカ殿は!! さぁ、共に決勝の舞台を観戦しようではないかっ!!」
「テンションが高いわお兄様」
「肩を並べるレベルの強者との会話に飢えてる説がありますね」
「王都の冒険者はどうしてこうも面白くも温かい方々ばかりなのか」
ってなわけでヴァリスタさんにサザンカさんも預けて試合前の憂いはカット。
選手用の通路にイレヴンと共に入り、舞台に向かう道に続く。
「さて……作戦、というよりは試合展開の読みですが……マスターの考えの通りでよいのですね?」
「ああ。この決勝戦こそもう何が起きるかわかんないしな。お互い無理はせず……一応出来る限りで出来ることする感じで」
「わかりました。まぁ確かにあの二人であれば勢い余って、と言う事もないでしょうし……お任せします。横やりは入らないようにするので」
「うむ」
今日のこのバトルロイヤルに向けて練って来た作戦を改めてイレヴンとも確認しあって、舞台の袖で出場を待つ。
するとまぁ他の選手たちも集まってきて……カトルやティオたちケンタウリス組にはめっちゃ好戦的な表情を向けられて。
なんで俺を狙う気満々なんだよお前ら。いやアルトさんとシミレさんは許すけどカトルとティオはお前ら顔に『絶対ロックをぶちのめす』って書いてあるんだよ何なんだよ。
俺を狙うなら後悔させてやるからなお前ら!
※ ※ ※
『さあっ!! 昨日の不慮の事態で一時中断となってしまった闘技大会ですが……国王様の聡慧なるご判断により、決勝戦はまとめて行う事となりましたっ!! この王都全ての武が集約される最終戦!! これまでにない盛り上がりになる事でしょうっ!!!』
選手がそれぞれ舞台に上がったところで実況のおねーさんが頑張って盛り上げようとマイクパフォーマンスを繰り広げていた。
頑張ってんなぁ。ぶっちゃけ国王様の判断かなり際どいからな。まぁ盛り上がってるんでよしとしよう。
舞台に上がった選手たちもそれぞれ観客に向けて手を振ったり武器を掲げたりしてアピールしている。歓声すげー。
俺もなんかやるか……つっても武器持ってねえしな。
今更だけどなんで俺武器も防具も装備してないのにここにいるんだろう(素の疑問)。
『選手紹介も終わりまして……ではとうとう始めてしまいましょうっ!! 決勝戦!! 特別バトルロイヤル戦!! 1分後に試合開始となりますっ!!!』
結局俺への熱い歓声を俺の耳が捉えることはないままに試合が始まることとなった。聞こえたのは孤児院のガキ共の「ロックにーちゃん死ぬなよー」と言う気の抜けた声だけだったよ。泣きそう。
しかし試合が始まるとなれば、この時点で既に勝負は始まっている。
バトルロイヤルはスタート地点が極めて重要なのだ。位置取り次第ですべてが決まると言ってもいい。
舞台に上がった8名……俺以外の6人の選手と、俺とイレヴン。
その位置取りが重要なのだ。早速事前に立てた作戦通りに俺とイレヴンは位置をとった。
「……うわ、マジ?」
「へぇー……いいんだロック? そこに来ちゃって」
「どうせやるなら早い方がいいやろがい」
俺の立ち位置はさっきからずっと俺に熱いまなざしを向けてくる幼馴染二人のすぐそばに。
二人に挟まれる形で一番近い所に陣取った。
この時点で他の冒険者は俺たちに近寄れない。そうするとイレヴンが自由になり過ぎるからである。
相手からすれば俺たち二人のコンビは実に強みと弱みが分かりやすい。
捌き斬りによりカウンターがあるとはいえ、イレヴンと俺でどっちを狙いやすいかって言ったら俺だ。イレヴンは余りにも硬いし強い。ヴァリスタさんとかと同じで総合力に溢れすぎている。多人数相手でも戦えるしな。
じゃあ俺をみんなで狙えばいい……ともならないわけだ。イレヴンが遠距離攻撃も得意だから。
俺がみんなの攻撃を逃げ回る隙をイレヴンがつく、という戦法が考えられるために、イレヴンこそを本当は止めなければならない。
何故なら俺が攻撃手段に乏しいからだ。忍び寄って盗むっていう手段もあるけど、攻撃と言う意味ではからっきし。捌き斬り以外の有効打を持たないのだ。俺はほっとかれると何もできない。
なので、今回の試合の最善手は俺をほっといてイレヴンに全員で挑むことだ。
ここまで勝ち上がってきている実力を持つ冒険者なら予選のように一撃で……って事にはならない。
魔族と戦うのに比べれば対人戦は得意としていないイレヴンなら、アルトさんの盾で攻撃を凌ぎながら他の総火力で攻めれば押し切ることも可能だろう。
なんでその作戦をこの位置取りで全部ぶっ壊したわけだ。
「……なるほどね。考えるじゃないアンタたち」
「…………攻撃力で抜けているカトルとティオを、ロックが引き受ける形か。そしてイレヴン一人でオレたちの攻撃を捌くと……ナメられてるな」
「まぁ結果的にはそうなってはいるのですが舐めているつもりも一切なく。ただ私は……マスターがあの二人の攻撃を捌き切れると信じているだけです」
「ぞっこんじゃない」
「趣味
「うるさいなぁ!」
俺と離れた位置に陣取ったイレヴンに対してカトルとティオ以外の冒険者が囲むように位置した。
大体これで読み通り。
この場において一番厄介な二人組という利点をもつ俺達が最初に狙われるのは間違いなくて、だからこそその戦力比を分散する。
アルトさんやシミレさん、他の冒険者だと俺一人では荷が重い。
特にケンタウリスの二人はおっぱいとお尻が俺に特効なので勝つのは極めて難しい。
────だが、カトルとティオなら話は別だ。
こいつら二人と一番戦った経験があるのが俺なんだからよ。
シーフの本懐見せたるわ。
「急なアレで変な決勝戦になっちまったけどさ……めっちゃくちゃアガってるわいま俺!!」
「あー……懐かしー。よくやったよねぇこの3人で……今日は私が勝っちゃうからね!!」
「だっる」
『さあもう間もなく始まります決勝戦っ!! 皆さんご一緒にカウントダウンッ!! 5!! 4!! 3!! 2!! 1ッ!!!』
会場全体から始まりを告げる銅鑼の音までのカウントダウンが始まる。
震えるような熱狂をもって……とうとう決勝が始まった。
『───試合、開始ィィィィッッ!!!』