勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
試合開始、直後。
「死ねオラロックーーーーッッ!!」
「くたばれぇーーーーーっ!!!」
左右の幼馴染から躊躇いのない攻撃を仕掛けられてるのが俺です。
カトルはイルゼに存分に魔力ブン廻しての剛魔炎斬破。
ティオはさっそく5倍速からスタートの回転斬撃。
まぁそうだろうな。
当然わかってた攻撃なので俺はそれを凌ぎます。
「どらっつぁーい!!」
「だぁっ……!? なんだそれ!?」
「ってぇーっ!? あっぶなッ……!?」
剛魔炎斬破はイルゼを振り始めてから衝撃波の攻撃判定が出るまでに一瞬の間があるのでその瞬間にカトルに向かってゴキブリみたいに突撃。
イルゼではなく振ってる腕を最大速になる前にぽんっと叩いて若干軌道をブレさせる。それだけで避ける隙は十分発生する。
俺を追って俺より早く突撃してきたティオはカトルの斬撃に巻き込まれまいと突撃に躊躇いが生まれるのでその隙にひょいっと身を翻して同士討ちを狙う……が、ティオが凄まじい軌道で一度距離を取った。
器用なやつ。
「器用なやつ」
「器用なのはお前だぁーっ!! カトルの斬撃に躊躇い無く突撃できるのロックくらいだよ!?」
「まぁ見慣れた攻撃だし……っとっと。ぶねぇな」
「っちぃ!! 喋りながらでも避けやがるなコイツ相変らずっ……!!」
「でも攻撃を重ね続ければスタミナで勝てるはずっ!! もう一倍速あげてくよっ!!」
「省エネで避ける俺と本気で来るお前らでどっちが体力勝負で勝つかって話ね」
雑に褒めたらティオに逆切れされ、その会話の隙をついて再びカトルが薙ぎ払ってくるが勘で読めてるのでひょいっとスライドして避ける。
どれだけ見慣れた剣戟だと思ってんだコイツらのコレ。ガキのころからずっとこうだぞコイツら。
冒険者になってからは多少は落ち着いたし、リンがうちに来てからは子供に見せるもんじゃないってことで家に襲撃に来ることも少なくなったけど……孤児院時代から俺がじーさんに引き取られて冒険者になってあの家に暮らしてリンが来るまでほぼ毎日この二人と組手してきたんだわ。
これが他の冒険者の攻撃なら俺も気を張るけどね。
この二人の攻撃だってんならあくびしながらでも捌けるわ。
「だあぁぁー!! なんで当たらねぇんだよロックマジでお前相変らずこの野郎!!」
「見たことあるから」
「私は前よりも随分速く回っておりますがぁー!?」
「倍速に合わせてリズム取ってる」
「じゃあ新技ならどうだ!! 魔剣、奥義ッ!! 『
「いやそれ予選で見せたやろがい」
「熱っつ!? こらカトルー!? こっちまで巻き込むなぁー!? 息合わせていくよっ!!」
「いつものことだけどなんで2対1強制されてんだよ俺だけ」
目まぐるしく舞台の中を移動しながら俺は二人の攻撃を捌いて同士討ちを狙うようにちょこまか逃げ回る。
カトルの大ぶりの一撃は当たれば威力は高いけど目で追えるし最悪イルゼの剣の腹蹴れば避けられる。
ティオは確かに回転速度は早くなったけど結局ベーゴマだ。当たらなけりゃ意味がなくて、んで俺の回避に特化した動きなら当たる寸前に直角よりも鋭角にギリで避けられる。
回転しながら90度以上の方向転換ができないティオはそのまま俺を追撃できない。一度距離を取るのでそれの繰り返しだ。
そしてカトルが繰り出した新技は予選で使った全方位衝撃波ぶっぱの技なので見たことある。
この技はカトルの頭上なら安泰じゃ。技を出す瞬間を勘で読んで跳躍してカトルの頭に手のひら置いて逆立ち。これだけで回避できるのでみんなもそうしような!
「……マスターにあれほどの動きが出来るとは……」
「動きがキモすぎて直視に堪えないけど捌いてるのが凄すぎてじっくり見てたいって気持ちも湧いてくるのよね」
「…………息の合った演武のようで、しかしそれにしては余りにも騒がしい。やはりまだ子供だな」
回避し続けながらイレヴンの方を見てみれば、あっちも4対1で頑張ってくれてるようだ。
ちらちらこっちの方を見てくるけど俺は大丈夫だから集中しろよイレヴン。
むこうの勝負は、アルトさんとシミレさんの二人がいい感じにイレヴンと均衡している。
ネレイスタウンから帰ってきて、俺らもケンタウリスでレベル上げさせてもらってたけど、ケンタウリスの方もイレヴンと模擬戦する中で相当レベルを上げてたからな。
アルトさんの盾の扱いが中々に巧妙で、大盾にシミレさん隠して姿を見えなくしたり、ドリルブラスターも大盾できっちり捌く腕力も持ってるようだ。どっしりしてるな。お尻大きいからな。
他二人の冒険者はアルトさんやシミレさんには実力で劣るようだが、それでもいい感じにイレヴンの隙をついてまずは厄介なアンドロイドを潰そうとしているみたいだ。
そんな4人を相手にしてなお凌ぐイレヴンが流石だね。これが魔族相手だったら特攻武器ばっかりだから一瞬で勝負ついたんやろな。対人戦苦手なのかもねイレヴンは。
「よそ見ばっかするなぁー!!」
「おっと目にゴミが」
「目を閉じて避けるなぁー!!! 舐めやがってぇー……くらえー!! ツインエッジ・ティオクロ」
「オラァッ!!」
「んぎゃぁーっ!? がはっ……『エクスヒール』っ!! くそぉー!!」
途中で回転を止めて切りかかって来たり魔法攻撃も試してくるティオだけどお前の呼吸は誰よりも俺が分かってるんで。当たらないんで。
なんなら音と勘で位置と攻撃のタイミングは読めるから挑発がてら目を閉じて避けてやったら早速頭に血が上ってた。ウケる。
そしてそのまま大技を……ティオの持つ技の中では一番振りが大きい十字斬りを繰り出してきた。
アクセラレーションは相変らずしてるけどこの攻撃の瞬間が一番ティオに隙が出来るんだよね。
だからこそ合わせる。
サザンカさんのあの居合に比べりゃこの技の殺意は低い。
直撃したらもちろん俺はやられるんだけど即死には至らない。
だから別に返してしまっても構わんのだろう? ってノリで捌き斬り一丁。今回は手刀で応じてやりました。
自分の攻撃の威力をモロに返されて吹っ飛ぶティオ。次の瞬間には回復魔法を自分にかけてる辺りこいつもよくやるよ。
ヴァリスタさんとかもだけど回復魔法を戦闘の中で使える相手って厄介だよな。一撃で意識を落とさないと魔力切れまでは回復し続けるんだから。
だからこの二人は場外に落としたい所なんだよな……もっと吹っ飛ばす系の技出して来ねぇかなカトルの奴。
ブーストダッシュで突っ込んできてくれたりしたらその勢いを殺さず加速させる方向に捌き斬りして場外にぶっ飛ばしてやるんだけどなぁ。
駄目か。今もすさまじい剣戟が俺を襲ってるけど完全に一人を微塵切りにする感じの攻めだもんね。避けてるけどさ。
「捌き斬り対策として間違ってねぇよなぁ俺いま!? 返されてもっ、そんなダメージにならねぇけど!! ロックなら、数発当たれば、倒せるっ、この連続斬りでっ……よぉ!!」
「当たればソウデスネー」
「キモいんだよ避け方が相変らず!! そんなんだから女にモテねぇんだよ!!」
「急に言葉で攻めてくるのやめろやこのメス顔!!」
「バーカ!! ロックのバーカ!! 童貞!! 変態!!」
「うるせーぞまな板!! お前まで口頭弁論に参加してくんな罵倒ヘタクソか!! カトルに顔面偏差値負けてるくせに!!」
「黙れ丸顔ぉーっ!! 10歳の時にシスターにガチで怒られて一晩中泣いてたやつがよぉー!!」
「お前なんか結構な頻度で夜に怖くなって俺の布団潜り込んできてただろうが泣き虫ティオ!!」
「ロックてめぇ身長が13歳の頃から伸びてねぇよなぁ!! 背が低いから回避も楽だってか!?」
「はぁ!? お前それ以上は戦争だぞ!? カトルちゃんの癖に生意気な事言いやがって!! 4年前だっけねぇ!? 俺の口調真似して一人称が俺になったのがねぇ!! それまでは私だったよなぁカトルちゃんなぁ!?」
「人の黒歴史掘り起こすんじゃねぇよ性欲魔人が!! 欲望でしか生きてねぇくせに最近は身近に綺麗な女の人増えてやがるし肝心なところで鈍感晒してるしこのクソボケ!! 死ね!! 世の中の男性に謝りながら俺に斬られて死ねッ!!」
「ほんっとロックは女の子の気持ちわかってないからね!!! 反省して土下座しなよ土下座!!! 全ての女性に謝れー!!」
「全人類に謝罪しろとか何言ってるかわかりませんがー!? 俺がハーレム作ろうとしてんのに嫉妬してんですかねお二人ともぉ!? 人気冒険者の化けの皮が剥がれて来てますよみなさーん!! これがこいつらの本性ですよー!!! 今から俺に乗り換えてもらっても遅くないっすよー!!!」
「だぁくそマジで攻撃当たってくたばれお前ェェェェ!!!」
「なんで当たらないんだよぉ!? こんにゃろぉー!!!」
そのまま舞台をぐるぐる回るように二人の攻撃を凌ぎながらいつの間にか流れは口論に。
しかしそれこそ俺のフィールドだ。口で俺に勝てると思ってんのかお前ら。
お前らの恥ずかしい過去いっくらでも知ってんだからな!! 8歳の時の俺とカトルのファーストキス事件(事故)だってティオがまだお赤飯来てねぇことだってぶちまけてやってもいいんだからな!!
とまぁ勢い任せに10分ほど凌ぎ続けただろうか。
流石に俺も疲れてきて最初の頃ほど余裕はなくなってきており、しかし全力で俺を攻め続けた二人は俺以上に限界なのだろう。
さっきから刃に乗ってる魔力がなんか落ち着いてきてる気がする。終わりは近いな。
「フゥー……フゥーっ。次でキメてやるぜこの野郎……!!」
「おーおーやってみろって。5回目だけどなそのセリフ……ぶへーっ……」
「ロックだって……流石に息が切れてんじゃん……私はちゃんと最後の一撃に力とっといたもんねっ……!!」
捌き斬りで適宜ダメージは与えていたものの、こいつらも俺のやることを分かってるから致命打になるようなそれは起きておらず、まだ最後の力を残している様だ。
ここまで来ると新技を二人ともやってきそうだな。俺もそれを勘で避けるだけよ。
「イルゼ、魔力全部廻せ……!!」
『はいはい……』
「セントクレア様、お願いしますっ!!」
『りょーかーい』
インテリジェンスソードのお二人も随分とかったるそうな声で魔剣から魔力を受け渡す。
炎の剣と、水の双剣がそれぞれ赤と青に輝きを放ち始める。
なるほどなんかすげー一撃が飛んできそうだ。どちらかを捌き斬りしたらどちらかが当たるタイミング……くらいはやってくるだろうな、この二人なら。
ふむ。
じゃあ俺も勘の赴くままにやってやろう。
「行くぜロック!! この一撃で俺の方が強いって証明してやる!!」
「いやお前の方が強いけどな。俺が慣れてるだけで」
「絶対に負けたくない……ロックにだけは絶対に!!」
「負けたくなかったならケンタウリスのみんなで俺に向かってくるべきだったと思われる」
最後の気迫と共に、カトルもティオも剣を大きく構えて。
来るな。とんでもない必殺技が。
「魔剣、絶技───『覇王灰燼砲』ッッ!!!」
「アクト:スラスティア───『ヴォーパルギガカノン』ッッ!!!」
俺の前方、左右の位置からお互いの剣戟から放たれる獄炎の奔流と水圧の大砲が放たれた。
最後は捌き斬りさせまいと遠距離攻撃で来たか。確かにこれならどちらかを返してる時にはどちらかは放ち終えてるので、同時に二つの捌き斬りが放てない俺には必殺だろう。
そしてどちらの攻撃も速い。こんだけの大技だ、多分だけど避けても追ってくるだろう。
咄嗟の回避、とかが通じないやつね。とんでもねぇ技だよ。
何だったら喰らえば死ぬんじゃね? ってレベルの大技が舞台に放たれて。
そして俺は。
その二つの奔流を己の体で受け止めてやった。
「んなっ!? ロック……!?」
「えっ、嘘!? やった!? やっちゃった!?」
二人の爆発的な魔力の奔流による爆発が生まれて。
その光景に何故か驚愕の声を上げる二人に対して、俺は───
───ほぼ無傷でそこに立っていた。
「やっほー」
「「なんでだよッッ!!!!」」
いやぁ。
火と水で見事に打ち消しあってくれたもんで。
俺の勘がオススメ度☆5くらいでこの二つの攻撃ぶつけよ? って推してきたもんだから、左右両斜め前から飛んでくる火と水が俺に直撃する寸前に一歩だけバックステップしたのだ。
そして俺の目前で火と水がぶつかり合って綺麗にお互いの威力を相殺し合って、俺には生ぬるい水の波動が浴びせられただけだったわ。
風邪ひきそう。へっぷし!
「あークソそういうことか!! そんなことあるかよ普通!? ちっくしょ……もう今日はなんも出ねーわ!! 終わり!! 俺の負けだクソー!!」
「私も全部出し切っちゃった……ああもー体力配分ミスったー!! もっとじっくり行けばよかったー!! 降参!!」
「ハイ俺の粘り勝ちィ!! 大会だからって張り切り過ぎたなお前ら! ガハハ!!」
そうして全魔力も根気も使い果たしたらしく、二人がいつもの組手でもやってるようにばたんと後ろに倒れて降参してきた。
よっしゃ勝った。俺らがやり合う時は先に心が折れて降参した方の負けなのだ。
今日は体力配分ミスらなかった俺に軍配が上がったけどこれまでには俺がミスって一撃貰ってやられることもあったし。テンションを上げ過ぎたこいつらの自滅というやつですね。最後の一撃なんかまさにそんな感じだし。
はー……凌ぎ切った。
ようやくこれで……あれ、何すんだっけ?
えーと……ああそうだ、イレヴンの加勢に向かわなきゃ……ってか、あれ。
今試合どうなってんの?
『────なんとッ!! まさか、まさかまさかのッ!! ロック選手ッ!!! 優勝候補二人の猛攻を、イレヴン選手に頼らずに!! 15分もの間凌ぎ切ったぞ信じられないッ!!! まぎれもない本物の実力ッ!!! 闘技大会決勝戦、ロック選手の優勝ですッッ!!!!』
え?
「おめでとうございますマスター」
ええ??