勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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65 おかしい……俺を騙そうとしてる……

 

『続いて、国王による授与式を執り行う』

 

 はい。

 ウォーレンさんのアナウンスで国王が賞状を手にずいっと俺の前に出てくる。怖。

 

「────優勝、ロック=イーリーアウス。貴公は第104回闘技大会に於いて相棒たるイレヴンと共に斬新奇抜、奇想天外なる見事な戦いによって頭書の成績を収め、同時に魔族の侵略を防ぎ民を守護した。ディストール=オーディンの名に於いて貴公の活躍を称え、優勝の名誉を授与する」

「ひゃい」

 

 うっへぇ。ガチなやつじゃん。

 賞状を受け取る手が震えるんですけどぉ! イレヴン代わりに受け取ってー!!

 

「さて……おめでとう、ロック。イーリーアウスの誇りを胸にこれからも頑張ってくれ。其方らしくな。其方のような面白い男は嫌いではないぞ」

「有難うございますぅ……」

「国王に握手されてマスターが驚くほど縮こまってる」

『みゃあ』

「しかし何故(なにゆえ)猫を連れているのだ其方」

「家族なんでェ……」

「ふむ、ウォーレンによればアンドロイドの他、竜人の娘も共に暮らしていると聞く。其方、相当面白い星の元に生まれついておるな?」

「自覚はなくてェ……」

「私を見つけるくらいですからね。もしかすると大物かもしれませんよこの子は」

「ふっ、かもしれんな。気に入った。其方等の今後の更なる活躍を期待しよう」

 

 イレヴンと共に壇上に上がったところまでは覚えてるんだけど記憶が飛びそうなほど緊張している。

 目の前の国王様から震える手で賞状受け取った上になんか大人びた微笑みを見せられつつ握手を求められておずおずと手を差し出してぎゅっとでっかい手で握られて……なんで?

 なんで俺こんなことになったの???

 客席から送られる拍手があんまりにもそぐわなさ過ぎて凄い……凄い逃げ出したいわ今の俺!!

 優勝するわとか冗談で言ってたのに本気で優勝しちまうとは思わないじゃん!! サザンカさん戦で完全に負けを覚悟してたからそこから勝っちまうと逆に恐縮しますというかぁ!!

 

「ちくしょー、倒れた差で俺3位だもんなぁ……もうちっとだけ粘ってればなぁ! あの順番だけで5000万損したわ!」

「仕方ないよねー、私もロック追っかけるの夢中で回りみんなイレヴンさんにやられてたの気付いてなかったし。賞金はありがたく貰うけどね!」

「ティオはまた孤児院に廻すんでしょ? アタシもあんまりお金あってもだし、どうしようかしらね」

「……これから、魔族との戦いが本格的に始まって……色々と入用になるだろうからな。魔装具はティオが受領する分はオレに廻してくれ。その分孤児院にオレも寄付する」

「魔装具はクランに寄贈するからあとで団長と話し合おうねシミレさん! 孤児院への支援もいつもありがとー!」

「俺もイルゼがあるから魔装具要らないんすよねー。あとでヴァリスタさんに相談しよっかな」

 

 優勝した俺とイレヴンが壇上で国王の凄まじい圧を堪えているというのに壇の下にいるやつらは気楽だなオイ!

 クソー! 俺も孤児院に廻すからなこの金なぁ!! 一億Gなんて大金どうしろってんだよマジで! 全額寄付だわ!!

 

「ほらマスター、ここで観客にアピールですよ。事前の打ち合わせでそう言われてたじゃないですか」

「そいやそうだった。うぁー……もうヤケだぁ!! やってやったぞこんちくしょー!!!」

『みゃあああ!!』

 

 賞状とその後に受け取ったトロフィーを高々と壇上で掲げて、観客がそれに湧いて歓声を浴びせてくれる。

 それ自体はめっちゃ嬉しいんだけど最初に声上げたの開会式の時のサクラの人の声だったの聞こえたからな!! 観客席の特に女冒険者が微妙な顔してんの全部見えてっからなクソー!!

 男冒険者共はアホを見る目で楽しそうに笑ってやがるしよぉ……全身の震えが止まらねぇくらい大目に見ろよンモー!! 小市民なんだよ性根がよ!!

 

 はい。

 まだ現実を受け入れられてないので決勝がどうなったか脳内で振り返ろうと思います。

 

 えっとね、俺がティオとカトルをあしらってた間にイレヴンが4対1の状況から見事に他の冒険者を制してたらしいのよ。

 途中から俺も遊ぶの楽しくなっちゃって夢中になってて気づかなかったんだけどさ。最後の一撃でティオとカトルが倒れる3分くらい前にイレヴンが全員場外に弾き飛ばしてたらしいの。

 順番としてはモブ冒険者二人、シミレさん、アルトさんの順にはじき出した。

 なので大会の順位は一位が俺、二位がカトルの後に倒れたティオで三位がカトル、4位がアルトさんで5位がシミレさんで……まぁ上位陣をケンタウリスが占める感じになりましたね。

 一位は俺だけど(重要)。

 

 んでイレヴンだけど、4人の攻めをしのぎ切ってもまだ余力はあって、自動回復しつつも俺の加勢に向かうか……と最初は思ってたらしいんだけど、結局見守るだけにしたんだって。

 すぐ助けに来いよって試合後に言ったんだけど、イレヴン曰く、

 

『マスターたちの顔が余りにも楽しそうだったもので……横やりを入れるのは無粋に感じました』

 

 だってさ。

 そんで結局俺らは最後まで3人でガキの頃と変わらん組手で遊んで、終わってみたら俺がそのまま優勝しちまったのだ。

 

 ヤダーッ!!

 優勝したことでなんかめんどくさいしがらみに巻き込まれたりするのヤダーッ!!(本音)

 

「もう俺だって分かってんだよ……どうせ美味しい思いした後は揺り戻しが来んだよ……後夜祭で女子にナンパしかけても一人も引っかからなくて涙ちょちょぎれるんだろどうせよ……金目当ての女ばっか集まって美人局されんだろ知ってんだよ……」

「国王と謁見した直後にこんな情けない発言しながら壇を降りる人います??」

『みゃあ』

 

 水に濡れたミャウみたいな顔して愚痴りながら表彰台から降りてったらカトルとティオにもみくちゃにされて祝福された。

 お前らマジで覚えてろよ。いや勝ったのは俺だし完全に逆恨みなんだけどこの恨みいつか晴らしてやるからな。

 

『……これにて表彰式を終了とする。続いて閉会の挨拶となる』

 

 さて俺ら選手は一度舞台袖に移動して、最後の締めをギルドマスターであるウォーレンさんがそのまま行う。 

 

『────まず、この大会に参加した冒険者、および観戦に来てくれた民たちへ……心よりお詫び申し上げる。我らギルドが運営するこの大会の中で魔族に襲撃されるという未曽有の惨事が起きてしまった。優勝したロックや他の冒険者たち、王族の方々の活躍もあり被害は最小に抑えられたが……忸怩たる思いだ。ここ150年の平和の中で我々ギルドが知らずのうちに積み重ねた緩みを突かれてしまった』

 

 まず最初に魔族襲撃の件の謝罪から始まった。

 うん……誰が悪いんだっつたらそりゃ襲ってきた魔族なんだけどさ。それでも魔族が侵入する隙がこの大会にあったって話にもなって、友好国であるグランガッチが魔族の手に落ちてる可能性もあるのにそれに気付けてなかったってのはあるんだけどさ。

 トップってこういう時に頭下げなきゃならないから大変だよね。お疲れさんですウォーレンさん。

 

『……だが、私は今の人類に光明を見ている。確かに襲撃はされたものの、それを容易く討ち果たした冒険者たちがここにいるからだ。過去の時代にいた伝説の英雄たち……それに引けを取らぬ大いなる力を持つ者たちが今、ここにいる。人類は負けない。今日の試合を見て、新しい時代が既に幕を開けていることを強く実感した!!』

 

 そして話は起承転結の転に入り、魔族に俺ら冒険者は負けないぞ、と活を入れられて。

 ウォーレンさん声がめっちゃ渋いし威厳あるからサマになるな。観客席からもおお……って感じの感嘆の声が漏れとるわ。

 

『明日より魔族討伐にかかる調査が本格的になるであろう!! 平和とは言えぬ時代になるかもしれない─────だが!! 闇を晴らすのはいつだって人の力だ!! 冒険者たちよ、今日はゆっくり羽を休め、明日からの戦いに備えよ!! そして王都の民よ、来訪者よ!! これが最後の晩餐には絶対にならない!! 我々がそうはさせない!! 必ず平和を取り戻す!! だから安心して……この後の後夜祭、大いに盛り上がってほしいっ!!!』

 

 その勢いのままに希望を語るウォーレンさん。観客も大歓声。熱いぜ。

 だが言ってることはその通り。俺ら冒険者が頑張って魔族を倒して平和を取り戻す。

 俺だってイレヴンのマスターだからな、もちろんそのつもりだ。

 魔族が人類を狙う限りは、俺は魔族に負けやしねぇ。魔王だろうが何だろうがブッ倒して平和を取り戻してハーレム作るまで死ねないからな。

 

『これにて闘技大会は閉会となるっ!! この後舞台は一般開放され、闘技場の周辺地域にて後夜祭が始まる!!』

 

 テンションが上がった状態で後夜祭にシームレスに移行。

 こりゃいいや。闘技場の観客席周辺もその外の通りもめちゃくちゃ飲食店がビアガーデン式に店を開いて盛り上がってるからな。

 優勝者のパレードは昨日の一件もあって中止になったしこりゃ俺も平和に飲み食いできそうだ。ナンパ祭りが始まるぜ。

 

 

『なお今日の飲食代は全て優勝者であるロックが奢ってくれるとのことだ!! 存分に腹を満たしてくれたまえっ!!』

 

 闘技大会が開かれて以来最大音量の歓声が闘技場に炸裂した。

 

 

 ────聞いてねェよなぁ俺そんな話なァ!?!?

 

 

「ちょっと待ってくださいウォーレンさん!? 俺なんも聞いてないんですけどぉ!?!?」

『そういえば優勝者スピーチを忘れていたな。ロック、最後は君の一言で〆てくれたまえ』

「絶対確信犯ですよねェこのタイミング!?」

『ちなみに君が受け取る優勝賞金は一億Gだ』

「改めて確認する必要ありましたかねェ!? マイク乗りましたねェ金額がねェ!?」

 

 ナイスミドルな笑顔を見せつけて俺に向かって来てマイクを手渡される。

 この時点で既に観客が爆笑の渦に巻き込まれてるんですよね!! 俺に逃げ場ないんですよね!!

 

「ウケるわ」

「よかったー私準優勝で」

「いいじゃないロック、ここで奢ったらモテるわよ多分」

「…………これまで女性にばらまいた恥を漱ぐチャンスだぞ」

「どうするのですかマスター?」

『みゃっみゃっ!』

 

 マイクを受け取る俺を半笑いでみんな見てきやがる。こいつらマジでよ。

 まったくよぉ!! 分かってたよこんなオチだよいつだって俺はよぉ!!

 祭りは盛り上がらねぇと嘘だからなぁ!!

 

 

『────仕っ方ねぇなぁ!! 今日は全員奢ったらァーーーッッ!!!!』

 

 

 後夜祭開始ィィィィィ!!!!

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「疲れ」

「お疲れ様ですマスター」

「疲れ」

「さっきからこれしか呟かねぇなコイツ」

「疲れェ……」

「随分と萎れてしまったなロック殿」

 

 お昼前に表彰式が終わって、そこから後夜祭が始まって、今は日も落ちてお酒も進んで宴もたけなわな時間。

 俺はさらなる気苦労でしおっしおに萎れていた。

 

 いやね? 俺も自分の発言には責任持つ系男子だからね?

 奢るって観客の面前で叫んだ以上マジで奢るつもりだったわけよ。あぶく銭手にしたっていい事ねぇからさ。

 ウォーレンさんもその辺色々考えて俺にあんな話を振ったんだろうな。俺が大金手にしたら多分怠惰になるって想いがあったんだろうな。

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 俺もその辺はちゃんと受け止めたよ。

 とりま一億Gは今日マジで全部使ったって構わなかったわけよ。

 

 でもさぁ!!

 冷静に考えたら都民の今夜の飲食代全部なんて払いきれるはずないんだよねェ!!

 

 王都には20万人くらいの人が住んでまして。

 まぁ全員祭りに参加してるわけもないから仮に半分の10万人として。

 その中には子どもとかもいるだろうから全員が全員めいっぱいじゃないけどさ。

 大人は酒飲んで食べるじゃん。

 一人当たり3000Gは軽く食べるじゃん。

 この時点で3億Gなのよ。

 

 死ィ~!!

 

「ってなわけで……ウォーレンさんに泣きついてェ……一億Gはもらわなくていいからギルドと国から金出してもらうように交渉してェ……」

「ノックスも説得には付き添ってくれましたね。助かりました」

「まぁどう計算してもロックの賞金で賄いきれねぇのは分かってたからな。国も元々今日の後夜祭で民に税金を還元する予定だったし、先日の魔族襲撃のお詫びって面も込みで織り込み済だろ。逆にロックが奢って回ったっていう箔つけてやるためにギルドマスターもあんなこと言い出したんだろうぜ」

「でも店との交渉は俺が直接やることになってェ……!! 色んな商会の偉い人とかだけじゃなくて個人で店出してる人の所とかにも回って後日ギルドに俺の宛名で請求書上げてもらうように色々頼んで回ってェ……!!」

「ふむ。大変でござったな。しかしそこまで果たせばロック殿の顔も広がり人脈も相当作れたのではござらんか?」

「そりゃそうなんすけどね。今は疲れが勝りますわ。疲れ。まずは食事をして休息を取らなければもう一歩も動けない。ミャウ枕ぁ!」

『みゃ。みゃっみゃ……みゃふ、なー』

 

 そんな経過で大会が終わってから6時間、ずっと俺は駆けずり回ってたわけだ。

 手伝ってくれたイレヴンとノックスさんには感謝しかねぇよ……走り回る道中で俺の顔見てヤジ飛ばしてくる奴らもいっぱいいたしよ。呑気に酒なんて飲みやがってよあのモブ野郎どもがよ……。

 いろんなところで色んな露店が出てて、二日前の魔族襲撃で出来なかった出し物とか歌劇なんかも街の広場とかでやっててめちゃくちゃ盛り上がっている。楽器の音が闘技場周りに響きまくっている。

 

 疲れたンモー。

 もうこれはミャウをモフって回復するしかねぇわ。

 イレヴンとサザンカさんというデカパイを左右に侍らせてミャウを枕にして机に突っ伏した。

 疲れ。

 

「まぁ、今日は色々とマスターも頑張っていましたから……スパークリングオレンジお代わりしますか? お注ぎしますよ?」

「それより焼き鳥ちょーだい。あーんってして」

「欲望枯れねぇなコイツは」

「……あーん」

「あーん。んまい」

「してやんのかイレヴンお前さん」

「サザンカさんもしてェ……」

「拙者もでござるか!? う、うむ、ロック殿の奮闘を祝わねばな……では、その、あ、あーん……?」

「あーん。んまい」

「赤カブトもやんのか……いやこれ随分な状況だぞ疲れて気付いてねぇけどコイツ」

「ミャウもしてェ……」

『みゃあ!?』

 

 テーブルに乗ったミャウの上に顎を乗せてイレヴンとサザンカさんから与えられる焼き鳥を無限に咀嚼するマンになりながら今日の疲れを癒していく。

 デカパイ二人が無条件にあーんってしてくれるのなんて今日くらいだからな。遠慮しねぇぞ俺は。

 どうせイレヴンは明日からまたツンデレポンコツアンドロイドに戻るし。サザンカさんとはお別れだし。甘えられるときに甘えるんじゃい。

 

「……あ、ロック達みっけー! 全然見当たんなかったからどこに行ってたのかと思ったー! ……あれ、なんかすっごい疲れてる?」

「おや、ティオも……皆さんも。勢ぞろいですね」

「ティオもあーんってしてェ……」

「急になんだぁー!?」

「どしたのよコイツ……萎れちゃってるじゃない。ナンパ駄目だったの?」

「アルトさんもシミレさんもあーんってしてェ……」

「ウっザ」

「…………いつにもましてウザ絡みしてくるな」

「奢りの約束を果たすために随分駆け回ったようでござるからな。大目に見ましょうぞ」

「ふむ、今日一番の功労者だからなロックくんは!! 労わるのも先輩冒険者の務めであろう!! ここは私があーんをしてあげようじゃないかっ!! さぁ口を開け給え!!」

「ヴァリスタさんはノーサンキューでェ……カプチーノさんかカノンさん呼んで来て欲しくてェ……」

「妹たちも一緒にいるが今の君には近寄らせたくないかな」

「カトルくん私の代わりにあーんしてあげてくれる?」

「マジで言ってますカプチーノさん?」

「カトルならギリあーんってしても許すよ……敗北者じゃけェ……」

「取り消せよ今の言葉……!!」

 

 その後ケンタウリス組もヴァリスタさんたちもなんか近寄って来たので全方位あーんしてマシーンになってウザ絡みしてたら何人かにはちゃんとあーんしてもらえた。

 もちもち咀嚼しながら何でこんなことになったんやろな……って改めて思いつつ。

 

 いつの間にか猫吸いの構えになってがっつり寝落ちたのだった。

 





これにて第三章終了。
今回はRTAシーンなしです。

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