勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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71 馬子にも衣裳って思ってるだろお前ら

 

「ほえー……じゃあ世界中に魔族討伐関係の情報流してるんすね今」

「ああ。今ちょうどギルドマスター室でエドワウ様とマリア様がウォーレンさんと打合せしてるよ」

 

 その後ギルドでノックスさんに色々情報聞いてみた。

 闘技大会で王都に張った守護結界を超えて魔族に侵攻された事実から、魔族の人間界への侵攻が本格化したことをギルドの通信魔道具で各国、各街へ通達して。

 で、魔族に関する情報を集めるために、ホエール山脈の向こうの魔族領に近い国はそちらの調査などを進めて、他にもなんか情報あれば集めて。

 あと軍備とかも整えて……とかなり今日から本格的に動き出してるらしい。

 

「俺ら王都の冒険者は? 今後どんなふうになりそうなんすかね?」

「そーだな……まぁ日々の魔獣狩りとかは街の安全のためにもやらなきゃいけねーけど、ダンジョン探索の依頼とかは減って、その分魔族関係の調査依頼が増えると思うぜ。徴兵とかの話も出てくるかもな」

「コワーイ。俺も大会優勝しちまったし徴兵で声かけられちまうのかな……」

「お前さんはノルン様に声かけられて応じたってさっき言ってたよな? ってことはもし大々的な戦争になったらロックはノルン様の傍にいる感じになんじゃねーか」

「そういやそっか……ならいいかぁ!! ノルン様おっぱいでっかいしマブダチだからなー!!」

「はっはっは。器がでっけぇよお前さんは」

 

 確かに、俺はもうノインさん……第九王女ノルン様に声を掛けられて護衛の話を貰ってた。

 一応あの場で騎士になるって約束もしてたからとっくに王家の息がかけられていることに改めて気づく。

 そういやそうやん。あの場では友達を助けるために即答したけどよく考えたらこれ王家直々に指名したようなもんだな?

 まぁノインさんにそんな騙すつもりはないだろうし、そもそもノインさん護る為ならなんだってやるから全然かまへんのだけどね。

 とにかく魔族をぶっ潰せばええ!!

 戦争になったら俺のイレヴンとサザンカさんが頑張ってくれるでしょう(他力本願)。

 

「……うし、情報あざっしたノックスさん! いつも色々教えてくれて助かります!!」

「おう。お前さんも今や闘技大会優勝者だからな一応の肩書は。いっぱい恩を売って後で回収する見込みだぜ」

「俺が男に恩を返すと思ってたんだ……」

「そういうとこだぞお前さん」

『みゃ』

 

 聞きたい話も聞けた。ギルドで出来るタスクは大体完了したとみるべきだろう。

 魔装具は無事受領出来て、サザンカさんの魔装具問題も解決した。

 魔族関係の調査は本格的に動き出してるけど調査結果が出てくるのはこれから。

 俺の冒険者ランク……金級になったりしないのかって話も聞いてみたけど、金級への昇格は銀級昇格以上に冒険者の経験年数とギルドへの寄与率が関わってくるってことなので、今回の闘技大会優勝だけでは無理だろうなと言う話だった。

 それはそれで気楽でいいや。金級の冒険者はいつもギルドからの依頼を直接受けて大変そうだったし。自由気ままにやれるのがええ。

 

 うむ。やること完了。

 では次のタスク消化に向かいます。

 

「よーし。そんじゃ買い出し行くぞみんなー。メシも道具もしっかり整えて来ようぜ!」

「了解です、マスター」

「うむ。では皆さま、これにて失礼。色々ご教授頂き感謝でござる」

「くろいドラゴンのおはなしがあったらおしえてください!! じゃあね!!」

『みゃあみゃあ!』

 

 俺の傍についていたイレヴンと、酒場の人たちに挨拶や色々話聞いたりしてたサザンカさん、リンと共に、俺はギルドを後にした。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 そしてまた街中をぶらつきつつ、今後の予定を改めて組む。

 

「まず買い出しでメインストリート行こっか。遠征は王族の人たちも来るから向こうでも色々整えてくるだろうけど……俺ら以外のメンバーが多くなると予想されるので、万が一の可能性も考慮して買えるだけ買い溜めしとこう」

『みゃあ!』

「そうですね。向こうも間違いなくしっかり準備はしてくるでしょうが……なにせ行く場所が行く場所です。不慮の事態で周りが資材不足になってしまったときにカバーできるようにしておきましょう」

「他の者を(おもんばか)れるのは主殿の美点よな。うむ……しかし主殿、買い溜めるとしてもどれほどまで持ち運べるものでござろうか? 恥ずかしながら拙者の持つアイテムボックスはこの国の等級で行くとBランク程度……あまり容量の助けにはなりませぬ」

「あ、そこは安心してください。俺のアイテムボックスSSランクなんで。貰い物すけどね」

「なんと。最上級のアイテムボックスなど相当希少なものでござろうに……人の縁よな」

「わたしもさっきノインにもらったアイテムボックスもってる! このバッグが……Cランクだっけ?」

「SSランクとBランクとCランクが一つずつ。それだけあればどれだけ買い込んでも困ることはないでしょうね」

 

 まずは買い出しだ。

 食いもんは一か月分、道具や回復薬なども一通り×3くらい揃えておこう。他の人に提供することもあるかもだしな。

 遠征もそれなりに経験あるし、こないだのケンタウリスとの遠征で多人数の遠征の時に必要な物とかも分かってるからな。慣れたもんですよ。

 

 欲しいものリストを紙に書き起こしつつ、ちょっとサザンカさんが触れたアイテムボックスの件。

 俺の持ってるこの何の変哲もないウエストバッグだが、実は容量がSSランクなのだ。スゴイワザモノである。

 あんま詳しく他人のアイテムボックスの容量まで聞かないけど、前にマルカートさんに遠征中にそれとなく聞いた話ではクラン・ケンタウリスでも所有してるアイテムボックスの最上位はSランクのものが二つだけだそうで。

 そう考えると俺のがどれだけ破格なものなのかが分かってもらえるだろうか。

 普通駆け出しの冒険者はアイテムボックスなんて便利なものは持っておらず、銀級に上がってようやく購入するって人も多い。

 これもじーさんのおさがりではあるんだけど……まぁそういうわけで俺は収納場所に困ったことがないのだ。

 アイテムボックスを盗まれないように気を付けてさえいればいい。シーフだからその辺は得意です。

 

「えー、生活用品、キャンプ用品はこんなもんで……あとはなんか思いつくものある?」

「……そうですね。これから向かうのは他国で、王族の配下として向かう形ですから。もし獣王国がまだ魔族に支配されていなければ、向こうの国のお偉方に謁見したり、夜会などにお呼ばれするケースも考えられますよね?」

「ん? あー……そうね、それは確かに」

「その際の礼服なども準備しておいた方がよいのではないでしょうか? もし使わなくとも今後使う場面もあるかと思われますし……私たち女性陣はそれぞれそれなりの装いですので謁見は問題ないでしょうが夜会となると少々……マスターなんて私服ですし」

「あー……なるほどな? それは確かに可能性として全然あるな」

「ちなみにマスターはそういった正装はお持ちですか?」

「いや、この私服と喪服だけ」

『みゃ……』

 

 さて一通り俺の方で必要な資材をリストアップして、他なにか買っといたほうがいいものあるかなと意見を求めると、イレヴンから礼服を整えるべきだという話を受ける。

 なるほど。確かに……お偉いさん方に挨拶とかは今回の遠征はマジであり得る話だ。

 なんてったって王族の護衛として他国に向かうわけだしね。

 そん時にこの使い古しのパーカーでは流石に何を言われたものかたまったもんじゃない。

 イレヴンとサザンカさんは高級な装備で身を包んでるしリンもドレスタイプの私服だから彼女たちはいいとして、俺は私服だもんな。

 小汚いガキが来たと思われるわこれだと。

 金はあるんだ。せっかくだしいい服買ってみますか。

 

「では、マスターの正装は買っておいた方がいいでしょうね。今後ノインとの付き合いも増えるとすれば王城に招かれることもあるかもしれませんし。あとは私達の分のドレスなどは準備しておくに越したことはないでしょう」

「ふむ、主殿の礼服か……中々興味深いでござるな」

「俺あんま服って拘らないからなぁ……じゃあそれも買いに行こっか。ついでにリンとイレヴンの分のドレスと……ちなみにサザンカさんはそういう正装って持ってます?」

「拙者は和装ではあるがしっかりとした物を所有しており申すよ。二十一(はたあまりひとつ)にもなれば流石にな」

「了解。そんじゃ俺らの服買いに行くかぁ! イレヴンとリンのドレスは可愛いのにしたいなぁ! 特にイレヴンのはえっちな感じでグヘヘ!!」

「欲望マン。……ところで、もちろん私達の服はマスターが選んでくれるんですよね?」

「へぇぁっ? ……いや、そこはほらァ……店員とよく相談してみてェ……?」

「ヘタレ野郎が」

「ロックのセンスはあんまりしんようならない……!!」

「おや、リン殿のその服……漆黒の装いは大変似合っているではござらぬか。主殿の選んだ服ではないので?」

「これはシスターにもらったふくなの。ロックがえらんだふくはゴミだった」

「大変失敬」

『みゃあ……』

 

 聞けばサザンカさんはしっかりとした礼服を持ってるらしいのでこちらは心配いらないようで。流石は大人のお姉さん。

 そしてイレヴンに服は選んでくれるのかと言われたけど……俺そういう服のセンスとか分からんし……マジで……。

 これはきっと俺の育ちが関係しているんだと思いますね。孤児院育ちで高級な服に触れなかったからさ。だからセンスが悪いんだ。きっとそうだ。

 ティオはいつも可愛い服着てるけどアレは例外だと思っておこう。

 リンと出会った頃にシスターと一緒に服を選びに行ったことがあるんだけどめっちゃ不評だったからな。自信ないです。

 

「そんじゃ買い出しのほかに礼服とみんなのドレスも買って……そしたらどっかでお昼食べて、午後は孤児院に行きますか。んで明日は息抜きしつつ図書館回ったりケンタウリスやウォーレンさんやヴァリスタさんの所にごあいさつ回り行く感じで」

「了解です。そうですね、大会関係でご尽力いただいた人たちにはご挨拶をしておかねば」

「ほう、図書館……。書を嗜む経験が浅かった故、大変興味があるでござるな」

「おひるごはんたべたい」

『みゃ』

 

 そうして買う物も今後の予定も立て終えて、メインストリートに到着したのだった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 ここはメインストリートの高級呉服店『リーゼ』。

 初めて踏み入れる店内で、俺は人生で初めての感覚を味わっていた。

 

「誰だこいつ」

「よくお似合いでございますよ」

 

 向かう鏡に映るのは、俺の知らない俺。

 正装に身を包んで髪も整えた姿の俺がこっちを見て、怪訝な表情を浮かべていた。

 試着に付き合ってくれてる支配人さん(48歳・女性)が褒めてくれるけどいまいち実感がわかない。

 

 えっ誰?

 あんまりにも印象違う……鏡の向こう誰よコイツ??

 

「………………」

「………………」

「イレヴンとサザンカがぷるぷるふるえてる」

『みゃあ……』

 

 そんな俺の姿を見てイレヴンとサザンカさんが震えながら必死に笑いをこらえていた。

 なんだよンモー! いいよ言ってくれよ似合ってねぇってよ!

 自分でもなんつーか……貴族のパーティに気合入れて初めてやってきて緊張してる木っ端貴族の次男坊みたいな感じと言うか……とにかく服が中身に釣り合ってない感じがしてすごいんだから!!

 

 ちょっと現実逃避も込めてこうなった経過を振り返ります。

 

 俺らが服を求めてこの店に入ると、すぐに支配人さんが出て来たんだよね。

 流石に闘技大会優勝した俺の顔は覚えてくれてたらしくて。

 そのまま支配人さんが俺たちを店内に案内してくれてさ。

 

 で、それぞれ礼服を求めてるって言ったら色々展示してある服を見せてくれたんだけど、俺には男性用の礼服なんて全くピンとこなかったもんで。

 とっとと決めたいから支配人さんに『一番動きやすいもん見繕ってくれます?』ってお願いしたらなんかめっちゃ気合入れて選んでくれて。

 色々されるがままに髪とか整えられて顔も化粧されて着替えて……。

 んで着替えが完了した所でお披露目したのが今の俺です。

 誰だよ。

 

「似合ってますマスター、とても。とても似合っています……ええ、とても」

「おにんぎょうさんみたい」

「うむ……好い。とても好い。他の服もぜひ試してもらいたい所でござるな」

「そう言って着せ替え人形にするつもりやろ俺をー!! これでいいや! 俺これで決定な!! 早くイレヴンとリンも自分の選んできなさいなー!!」

 

 恥ずかしくってやだもーなにこれ!!

 ファッションとかよくわからんし! 色んな服見てどれがいいかなんて俺のセンスじゃわからんし!

 男の買い物は悩むもんじゃねぇわ!! 決定!!!

 

「お買い上げ有難うございます」

「うぇい。彼女たちにもいいドレス選んであげてください。……ちなみにお値段いくらくらいになりそうです?」

『みゃ』

 

 脱いだ礼服を支配人さんに一度お返しして、イレヴンとリンが女性向けの礼服がある方に他の店員さんと一緒に向かって……まぁ女子の服選びは時間がかかるだろう。

 サザンカさんもそちらに向かって俺一人になったところで、支配人さんに服の値段を確認する。

 なんてったってここは王都でもかなり高級な呉服店。礼服のお値段なんて四ケタ万Gとかいってもおかしくない。

 いやもちろん俺も先ほど貰った支度金があるしお金に余裕はあるけどさ。別にそこまで高いだけの品とか求めてるわけじゃないしさ。

 このあとイレヴンとリンのドレス代も追加されることを考えると出費は多くても1000万Gくらいまでに抑えておきたい。キャンプ道具もそれなりに金がかかるしな。食費も。主にリンの食費も。

 

「代金は御気になさらないでくださいロック様。今回の買い物ではお代は結構でございます」

「ホェッ? え、なんで!? いいんスかそんな!? タダより高いものはないって教わりましたよ俺!?」

「ほほほ……ロック様、貴方は昨日の闘技大会の優勝者。その方が当店の礼服を着て頂いているだけでも十分な広告塔として機能していただけますので。それに昨日の後夜祭では当グループが運営している飲食店業の売り上げに多大なる御貢献をいただいております。それを少しでも還元させてくださいませ」

「おー……おぉー……? いいんですかそんな、庶民の感覚としては恐縮しちまうんですけどぉ……!」

「ほほほ、素直なお方。もしよろしければ、当店『リーゼ』のお名前を各所でご紹介いただければ幸いですわ。ロック様もお連れの皆さまも、大変素材が宜しいですから大きな宣伝効果が期待できるでしょう。そしてロック様やそのお知り合いの方々が今後も当店を御贔屓になさってくださればこれに勝る売り上げはございません」

「すごい丸め込まれてる気がするッ! まぁ確かに俺のまわり美人が多いですがぁ……!」

『みゃ』

 

 したらまさかの無料(タダ)と言うね。

 その理由を聞いたらすっごい納得。このおばさんはやり手だな。

 なるほど確かに、俺はともかくとしてイレヴンもリンも絶世の美女だ。それは胸を張って自慢できる。

 そんな二人が着るドレスは絶対に目立つだろう。そこで懇意にしている呉服屋という立場を獲得したらそれはまぁ人気も出るだろうな。

 一応俺も闘技大会優勝者と言う立場で今後も付き合いは広がるだろうし……俺の知り合いもケンタウリスを代表して有名どころの美人が多い。カトルとティオなんてそれこそだしな。

 なるほどなぁ……闘技場で戦ってた俺らを見てそこまで商機を見い出したこの支配人さんすげーな。純粋にリスペクトだわ。

 

「よければロック様が今着られている普段着も当店でよい素材で仕立てましょうか? デザインは大きく変えずに、破れにくく耐久性のある素材を使わせていただきます。勿論、ロック様が気になさっているでしょう敏捷性には影響が出ないように。お力になれると思いますわ」

「そこまで!? いやでもそれはちょっとかなり欲しい……! 長い事着てるんでほつれて来ちゃってんすよね」

「では3セット程お仕立ていたしましょう。お洋服の採寸を失礼────はい。フード部分はお猫様が入られているようなのでより頑丈で洗いやすい素材がよろしいですね。勿論こちらも無償です。当店を選んでいただいたサービスとお考え下さい」

「仕事がハヤーイ」

 

 ついでに私服も似たデザインで新たに仕立ててくれるということでそれも有難く恩恵に与ることにした。流石に数年着てた服だからほつれてたしね。いい機会よ。

 簡単に採寸を終えて、それを支配人さんが店員さんに渡して……なんかすごい速さで奥に引っ込んでいって。

 もしかして今作ってんのか? すげーや高級店。

 

「本日中に私服の方もお渡しできると思いますので。今しばらく店内をご散策ください。お連れ様のドレスが決まりましたらお声がけさせていただきます」

「ほーい」

『みゃあー』

 

 そんじゃイレヴンたちが着替え終わるのを待ちましょうかね。

 

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