勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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73 もしかして前作主人公の方々ですか?

 

 午後、ミル孤児院にて。

 

「いくぜサザンカねーちゃん!! ハイスティンガーシュートぉーっ!!」

「おっと……なかなか! うむ、いい蹴撃でござったなギガス殿!」

「だー! とめられたー!」

「くそー!! こっちにはイレヴンねーちゃんとリンねーちゃんとカトルにーちゃんがいるのにー!! 3対2だぞ助っ人の数!! 質の暴力でおしこめー!! ティオねーちゃんにまけんな!!」

「サザンカさん、パスちょうだいパス! 私が決めてくるね!!」

「うむ、承知! 頼んだぞティオ殿!」

「む、くるならこーい!! ティオのいちげきはこのリンにはつうようせん!! ひっさつ、ドラゴンウイングガードぉ!!」

「その前に俺が止めてくるぜリンちゃん……っしゃ来てみろティオ!!」

「いっくよー!! アクセラレーション……」

「おい魔法使うのかお前ガチか!?」

「ってのは嘘ー!! ゼノ、パース!!」

「何だと横パスかよっ!? イレヴンさん止めて!!」

「はい! グランドスピナー!! ……っなんと、回転までかけてきますか!?」

「ナイスパスだよティオおねーちゃん!! よーしいくよぉ!! ノッチ!!」

「うん……!! ひっさつ!!」

「「フルメタルファントムッ!!」」

「どわー!? おんぎゃー!!」

「ああ!! リンねーちゃんが吹っ飛ばされたー!!」

「ロックにーちゃんみたいな断末魔だったなリンねーちゃん」

「よしっ、ゴール!! ナイスだったよゼノー! ノッチも!!」

「だークソ!! フェイントにやられた……!!」

「申し訳ありませんでした。まさか回転までかけたパスをティオが繰り出してくるとは……」

「孤児院で私が一番サッカー強かったんだからね!! まだまだ負けないもんねー!!」

「はっはっは、皆溌剌で結構結構! ゴールは拙者が守る故、楽しんで蹴鞠なされよ!」

「うー……!! せんしゅこーたい!! つぎはわたしがせめるから!! アイリがキーパーやって!!」

「ええ!? わ、わたし魔法使いだよ!? リンおねーちゃんみたいに止められないよぉ!?」

「代わりに俺がキーパーやっとくよ。リンちゃんのカバーしてやってなアイリちゃん」

「わっ、ありがとーカトルお兄ちゃん!!」

 

 ベンチに座る俺の目の前、孤児院の狭い敷地に無理矢理線を引いて7対7でミニサッカーが繰り広げられている。

 俺以外のみんな……イレヴン、リン、サザンカさんと、午後に俺らと同じように孤児院に立ち寄ってたティオ、カトルもまざってのミニサッカーだ。

 孤児院の限られた敷地内でできるボール遊びと言えばやはりドッジボールかサッカーになるわけだが、普段はそんなに人数が多くないのでドッジボールでよく遊ぶ。

 反射神経や回避とかも鍛えられるので強く育つためにもいい遊びだと思うね。なお俺は孤児院現役時代に一度もボールに当たったことがありません(自慢)。

 でも今日はこうして孤児院の休息日にたまたま人数も多く集まったことで、ガキたちみんなまとめて二手に分かれてサッカーで遊ぶことになったのだ。

 

 まぁ俺は参加してないんですけどね(重要)。

 サッカーに俺の居場所はないから……相手からボールを奪うまではいいんだけどドリブル力とシュート力が低すぎてパスとか下手に出したら逆に取られるし。

 力押しだとガキ共に負けるし。避けるだけならいいんだけどね。アイツら殺人スライディング部隊になるからな俺相手だと。吹っ飛ばされるわ。

 そもそも今参加してる孤児院外のみんなはリン含めて手加減しながら遊んでるしな。ガキ共のいい運動よ。

 

 で、のけ者になった俺は何をしているかと言うと、シスターから色々話を聞いている所なのである。

 洗濯物を干す手伝いを終えた後、またいくらか寄付金を渡して……ベンチにシスターと並んで座ってみんなが楽しくサッカーしてるのを応援しながら、色々と彼女から話を聞かせてもらっていた。

 

 聞いていたのは、彼女の過去にまつわる話だ。

 

「……闘技場に魔族が溢れ出したときに、シスターが使ってた魔法……俺初めて見たんだけど、あれ出力ヤバくなかった? どんな魔法だったの?」

『みゃあ』

「あれは私が使える防御魔法の中でも最上位の魔法『守護防壁(インターラプト)拡大絶対領域(プロリフレーション)』です。国を守る守護結界と同出力の結界を指定範囲に生み出すというもので……まぁ、私一人ではせいぜい半径数mまでしか展開できないのですが。あの時はリンちゃんの魔力も借りてやれましたからね」

「すげー力だったよね。俺、未だに魔法関係はあんまり詳しくないけど……少しはかじったからさ。ヤバさは分かったつもり。どう考えても金級のマルカートさんでも出せない出力だった。……やっぱそれは、シスターが()()()()だから持ちえた力って事なの?」

「そうですね。私のほかにあれをもし使えるならばティオか、もしくはリンちゃんのような特殊な高位の種族のみでしょう。魔法に長けた存在ですから」

「……シスターは昔、トゥレスおじさんとパーティを組んで冒険してたって聞くけどさ。もしかして実力ヤバかった?」

「まぁ、みんな金級の称号を得ていたことは事実ですね」

『みゃ!』

 

 シスターが闘技大会の会場で見せたあの異常な出力の防御魔法。

 金級でも魔法の扱いに長けるマルカートさんが、おそろしいとまで評価した俺の魔法防壁(バリアー)を、さらに凌ぐほどの広範囲に展開していた。

 幹部級の全力魔力砲を受け止めた俺の魔法防壁(バリアー)のほうが防御力は上かもしれないが……それだってシスターのあれは下級魔族が触れたら浄化されるほどの出力。異常だ。

 範囲に秀でる感じなのかなとも思って聞いてみたが、実際はもっとヤバいものだったらしい。

 街に張ってある守護結界と同等の出力って。

 魔獣も魔族も絶対破れない奴じゃんそれ。

 

 で、あれを見たのと同時に、トゥレスおじさんについてもこの人実力ヤバいな? ってのを見せつけられたので、そこを聞いてみることにしたのだ。

 でもトゥレスおじさんに聞きにいったら絶対あの人喋らないだろうし。必要なこと以外はマジで口開かないからなあの人。カトルも聞きに行ったけどなんも教えてくれなかったらしい。

 そんなわけで旧知の仲であるシスターに聞いてみるのである。

 

 なお、この会話はみんなが遊んでるところにまでは届いていない。

 俺やシミレさんみたいに耳が良ければ聞こえるかもしれないが、基本的にフィールドはガキ共の騒ぐ声が響いてるし、シュートの轟音が鳴りやまないからな。

 俺もシスターもお互いに聞こえる程度の小声で話している。

 

「……私がトゥレスと出会ったのは、彼が15歳の頃でした。その時は彼のほかにもう一人、お節介なおじ様がいただけでしたね。私が彼に拾われた後は、3人でしばらくパーティで冒険者稼業をしていました」

「おじ様。……その人は今何してるの?」

「プライベートに関わる事なので秘密です。生きてはいますけどね。そして……私達パーティはそれぞれが飛びぬけた実力を有していたので、王都でもそれなりに名前が売れてはいました。ただ、トゥレスが目立つのを嫌う性格であったのと、私の都合もありましたので、特に名声を意識はしませんでしたね。目立ちたいとも思わず、黙々と冒険をしていました。あまりイベントにもトゥレスは参加しませんでしたし。もっとも、そのおじ様が私達を気にかけてくれて、色々連れまわそうとしてはくださいましたが……ぶっちゃけ陰キャパーティでした」

「ぶっちゃけられてしまった」

「そういえばその頃でしたね、トゥレスが前回の闘技大会で優勝したのは」

「あ、やっぱり? なんかそんな気がしてたよ……あんだけ魔族相手に大立ち回りしててさ。次回開催が見送られるほど強かったんだなトゥレスさん」

「今の有名な冒険者で言えば、ヴァリスタ氏と肩を並べる実力……でしたね、15歳の頃には」

「そんなに」

『みゃあ』

 

 そして聞けば出てくるわ出てくるわ新情報が。

 俺が冒険者やり始めて、種族の事も明かしたから出来る話だよな。別に隠されてたことがなんだってのは全くないんだけどさ。

 やっぱトゥレスさん鬼のように強かったのはそんな過去があったんだ。王様とも知り合いだったようだし……とんでもねぇ血を継いでんなカトルの奴。

 

「変化があったのは、私がパーティに加入して3年ほどしたころ……もう一人、新しいメンバーがパーティに加入しました。若い女性で、とても元気な子でした。まだ人を恐れる気持ちが残っていた私にも、無口なトゥレスにも遠慮なく笑顔で話しかけてくれるような子でした。才能はそこそこと言ったくらいでしたが、それでもよく努力して、成長してくれて……その後は最後までその4人でパーティを組んでいましたね」

「へーえ! 若い女性!! 美人でした?? 今何してます???」

「そういう所ですよロック。……とても綺麗な子でしたよ。純真無垢で、心も姿も綺麗な子。あの子の在り方に私は心を洗われました。そう、断言できるほどの底抜けの明るさがありました」

「ほえー……シスターがそこまで言う人ですか」

「ええ。彼女の朗らかさは……トゥレスの心までも溶かした。冒険を続ける中で、二人は少しずつ惹かれあっていき……」

 

 そこまで言葉を紡いで、シスターは顔を上げてその視線の先、サッカーに興じている俺の幼馴染……カトルの姿を瞳に映した。

 

 それだけで全てを察してしまった。

 

 カトルのお母さん。

 カトルを生んですぐに亡くなられたトゥレスおじさんの奥さんもかつてパーティに所属していたのだ。

 

「…………パーティを解散したのは、それぞれが冒険以外にやりたいことが見つかったからだった。私はこの孤児院を、おじ様も別の仕事をしないかと声をかけられていて……トゥレスもその子と深い仲になっていましたから、ちょうどいい時期だと思いまして……自然と、私たちパーティは解散しました」

「…………」

「当時は魔族などもおらず平和でしたからね。私達が強すぎるあまり、他の冒険者の稼ぎを奪いすぎても……なんて配慮もあったと思います。ギルドも引退には反対しませんでしたからね。それが今から17年ほど前の話です」

「……なるほどなぁ」

『みゃ……みゃあ……』

 

 シスターに聞けた話で、また色々と俺の中の人間関係が更新された。

 シスターもトゥレスおじさんも、昔は伝説級の冒険者で……先日の闘技大会の会場で見せた強さはそれだったのだろう。

 そして、トゥレスおじさんの過去。あの人はきっとなにも語ろうとはしないだろうけど、それでも……少し、哀しみの大きさを理解することは出来た、と思う。

 一緒に冒険して、想いを深めた奥さんが……その第一子が生まれる目出度い時に、亡くなってしまったのだ。

 俺とカトルが同い年、15歳。俺がシスターに拾われたころは1歳だったって話だから……出産の現場には多分シスターも立ち会ったのだろう。まだ孤児院を経営し始めていなかった頃のはず。

 回復魔法も万全に扱えるシスターがいても救えなかった命……だった、ということか。

 

 ────つれぇな。

 

「……話、ありがとねシスター。色々疑問が解けたよ」

「いいえ。……今の話を聞いて、ロックはどう思いました? どう、したいです?」

「悲しい話だ……って、想ったよ。でもシスターもトゥレスおじさんも、多分俺に何かしてほしいなんて思ってないだろうから。()()()()()。これまで通りトゥレスおじさんにもお世話になって、これまで通りハーレム目指して頑張るよ」

「……それで正解です。ただ知っているというだけでよいのです。知っていて、何もしない優しさもある。ロックはそれを自然と分かっていますね。孤児院では中々教えられなかったことですが……卒院してからイーリーアウス氏のところでよい経験を積みましたね」

「まぁね。孤児院出てからは苦労ばっかだったけどさ……いろんなことから学ばなきゃ嘘でしょ」

「立派ですよ。あとは調子に乗るのと女性へのセクハラさえ治れば本当に私が胸を張って心から誇れる子になるのだけれど」

「それは無理かなぁ!」

「どうして貴方のほうが胸を張るのそこで」

『みゃあ……』

 

 でも、聞けて良かった。

 聞けたことで……何が変わるってものでもないけれど。

 これまで通りトゥレスおじさんとも付き合っていくし、カトルもそうだし、シスターともそうだから何も変わらないんだけど。

 でも、俺がそれを知れたという事が大きい。

 うまく言葉にはできないけど……なんか誰かに優しく出来そうな気持ちと言うか。

 そんな風に思えるようになれたので。得るものあったな。

 

 知ってもらえる優しさ、か。

 俺もいずれは昔の話、しっかりイレヴンにもしないといけないのかもね。

 それをイレヴンが知ることで何が変わるわけでもないけれど、知ってもらえることで深まる何かがあるのかもしれんし。

 

 ま、それはいつかの話だな。

 今は一先ずこれから先の事を考えましょ。

 

「じゃあシスター、リンはさっきも言った通りでしばらく俺と一緒に遠征に出かけるから。王族からの依頼でグランガッチに向かうんで」

「ええ。リンちゃんの事もそうだけれど……本当に気を付けて行きなさいねロック。王族の方々にご迷惑をおかけしないようにするのよ」

「うん、大丈夫。みんなもいてくれるから」

『みゃあ』

 

 シスターとの話を終えて、俺はベンチから立ち上がった。

 サッカーの方を見れば、キーパーになってるサザンカさんが鉄壁過ぎて試合自体はサザンカさんが入ってたチームの方の勝利になり、今はガキどもみんなでサザンカさん相手にPK戦みたいな感じになってるようだ。

 まぁ体も大きいし今は鎧も脱いで身軽だからな。赤備えを装備した状態でヴァリスタさんと並ぶ速さで動ける人がアーマーパージしたらどんだけ俊敏かって話ね。

 

「おーい、そろそろ俺ら帰るぞーい!!」

「ん、マスター……ミルとの話は終わったのですか?」

「うん、そんな大切な話でもなかったしね。おらガキ共ー、俺のサザンカさんに挑むのはまたの機会にしやがれ」

「サザンカねーちゃんマジで強いな!! ロックにーちゃんとは大違いだ!!」

「試合で戦った時も、魔族に乗っ取られてたまたまロックにーちゃんが助かった感じだったもんなー」

「ロックにーちゃんなんでサザンカおねーさんの主みたいな顔してるの? いくら払ったの?」

「いやいや拙者はしっかり真剣に負けておるよ主殿に。真の実力とは秘めておくものでござるぞ皆の者」

「えー! うそだー! ロックにーちゃん俺よりよわいんだぜー!?」

「まぁ攻撃力ではお前らにも勝てないが。冒険者とは攻撃だけではないのだよ……ってか大会も俺が優勝したやろがい!! 実力見せたやろがい!!」

「あれはイレヴンおねーさんが頑張ってたからだよー!! サザンカおねーさんは魔族に操られちゃってたし!」

「でもカトルにーちゃんとティオねーちゃんはちょっと焦ってたよなー!! ロックにーちゃん逃げるだけなんだから、先にイレヴンねーちゃん狙えばよかったのに!!」

「言いたいことは分かるぜギガス。だが俺は先にロックをブッ倒したくなっちまったんだよなぁ……」

「私もー。ギガスだって今からバトルロイヤル! ってなったらまずノッチを狙うでしょ? そういうもんだよー」

「あんまり物騒な事言ってないの。みんな、ロック達や皆さまをお見送りしましょうね」

「おー!! また遊びに来てくれよなー!!」

「またねーミャウ!! 次はあそぼーねー!!」

『みゃあ!』

「サザンカさん今度あの居合斬り見せてねー!!」

「はは……では危なくならぬように気を付けて披露するとしようぞ」

「ロックにーちゃんまたなー!!」

「おー、夜に腹出しっぱなしで寝るんじゃねーぞー!!」

「しばらくわたしはこなくなるから、またね。おっきくなってもどってくるから!!」

「リンおねーちゃん、もっと大きくなるの……?」

「いつかシスターみたいになるんだぜリンねーちゃんも」

 

 ガキ共の群れに混ざって行ったらまぁわっちゃわちゃしてること。

 ホントに元気なガキ共だよ。子供は元気じゃねぇといけねぇや。

 

 ……こいつらの笑顔を守るためにも。

 これから始まる魔族との戦いは絶対に負けられねぇな。気合入れてこ。

 

 その後、カトルとティオとも別れて、夕飯の食材買って帰宅し、荷物を整えてから夕飯作って食べて風呂入って……と、いつもの一日を過ごした。

 

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