勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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74 たとえどんなに忙しくても趣味とは優先されるもの

 

 

 翌日。

 いつもの時間よりちょっと早い時間に目が覚めて、ミャウを連れて階下に向かえばいつものようにサザンカさんが庭で素振りしていて。

 

「……ふっ、……ふっ、と。おはようございます主殿。今日は少しお早い御目覚めのようで」

「おはよーさんです。なんかね、目が覚めちゃって」

『みゃふ……ひゅむひゅぬぁぁ……』

 

 サラシに巻かれたデカパイに感謝申し上げて朝の挨拶を交わして。

 朝食を作り始めてもよかったんだけど……ちょっとだけまだ時間が早いかな。空もまだ明るくなり始めたころだ。

 俺はもう孤児院を卒院してからこの生活リズムに体が慣らされちゃってるけど、サザンカさんも早起き勢なんだなぁ。

 じっくりヒノクニの話とか聞いてみたいな。今聞くか?

 ……や、鍛錬の邪魔をしても悪いか。後にしよ。

 

 しかしこのままサザンカさんのデカパイを眺めてるだけってのもな。手持無沙汰だ。

 俺もたまには鍛錬でもしますかね。これから遠征だし勘を備えておくのは悪い事じゃないだろ。

 

「サザンカさん。邪魔にならないようにするんで俺も鍛錬してていいです?」

「……ふっ、と……? うむ、拙者こそ場を借りている身ゆえ勿論構いませぬよ。主殿の鍛錬と言うとどのようなことを成されるので?」

「多分俺しかやらない鍛錬方法だと思うね」

『みゃあ』

 

 サザンカさんからも許可を取り、俺も庭で久しぶりに鍛錬をすることにした。

 やることは勿論、勘の鍛錬だ。

 

 自宅の裏にある外倉庫に向かい、中に貯蓄していた丸太片の塊を手に取る。

 既に50cmほどの長さに切り分けてある状態の丸太だ。これを薪にするのが俺の主な鍛錬方法である。これから遠征だし10束くらい薪にしちまえ。

 じーさんが生きてる頃には木の伐採から薪造りまでよーくやらされた。

 魔導タンクがない家に薪を売りに行ってお小遣いを稼いだもんよ。相変らず重いなこの丸太。

 

「うっしょ、と……」

「ほう、丸太……薪割りでござるか。斧を振り下して手首(リスト)を鍛えられる。原始的ながら効果的な鍛錬でござるな。好い好い」

「うん、まぁ結果的に薪にはなるんだけどね。やり方がちょっと違います」

『みゃ』

「なんと?」

 

 素振りをひと段落させてサザンカさんが俺が持ってきた丸太片に目を向ける。

 丸太片を縦にして地面に置いて、普通の薪割りならこれで斧を振るってパコーンなんだろうけどね。

 

「……ほいっと」

何故(なにゆえ)!?」

 

 俺は指でパコーンってします。

 人差し指一本。それを丸太の命の点……じーさん曰く、どの木にもある節の弱い所、木の呼吸が集まってるところを勘で読み取りタイミングを合わせてつっつく。

 するとそれで亀裂が入り、すぱっと割れて薪になるのだ。

 ちなみにこれを丸太が16分割されるまでやります。

 細く割れたのをさらに細く割るのはさらに弱点が読み取りづらくなるので勘を冴えさせないとスピーディには割れない。

 

「ほい、ほい、ほい、ほいっと」

「え、え……? 何でござるかそれ……? キモ……いや、不可解な……」

『みゃあ』

 

 今キモいっていいかけましたよねサザンカさん?

 まぁ自分でも自分でやってることがたまによくわからなくなるからいいけどね。

 この薪割りは勘を全開にして常に丸太に対してアルティメットクリティカルを連発させてるようなもんだ。

 勘が少しでも働かないと全自動突き指マシーンになるし、割る時の力の籠め方もかなり繊細な力加減を求められる。

 

 例えるなら……見えない縫い針が自由自在に空を飛んでるところに手に持った糸を勘で突き出して針穴に通すのを連発してるような感じかな。

 実際に縫い針に糸通しすると抜いて刺してになるし針が動かないから連発してできないけどこれは目の前で丸太相手に連発できるからずっと勘を張ってられる、効率的だ……とはじーさんの弁である。

 

「……うむ! 丸太10本分の薪割り完了!!」

「拙者の知っている薪割りと違う……!! 本当に拙者の理解の外にござるな主殿の力は……」

「まぁ冒険者の中でもまともな方ではないのは自覚してます」

 

 そうして5分ほどで薪束を完成させた。

 遠征中のキャンプで使うだろうからね。これはちゃんと薪束にしてアイテムボックスに入れときましょ。

 

「ほんじゃ俺は朝飯の仕込みしてくるんで。お邪魔しましたね」

「いやいや、面白いものを見させていただき申した。あのような技もあるのでござるなぁ。拙者ももう少し鍛錬してから手伝いに伺いまする」

「はーい。ごゆっくり」

『みゃぅ……むぁぁー……』

 

 未だにおねむであくびをかますミャウをひょいっとつまみ上げ、俺は朝食の準備に向かうのであった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 そうして出来たゴキゲンな朝食を味わってみんなで食べた。今日は和食でした。

 サザンカさんが作ってくれる味噌汁ってなんでこんなに美味いんだろうなぁ(渾身)。

 

「きょうはとしょかん! おべんきょう!」

『みゃあ!』

「自分から読書を求められるのは偉いですねリン」

「どれくらいの文字まで読めるようになってるんだ? 孤児院の国語の教科書はどこまで読めてるん?」

「ん? えーと……『なかよし』まではよんだよ」

「10歳向けのやつか……割といいとこまで読めてるなぁ。そろそろ異世界転生チートさんの本を読み与えるべきか」

「お願いですからやめて差し上げろクソマスター」

「主殿が好まれる本……興味があるでござるな」

「勘弁してください。サザンカまで染められてはたまりません……」

 

 昨日と同じく4人で街中を歩いて図書館へ。

 デカい仕事が終わったらやはり異世界転生チートさんの新刊を読まなければいかんよ。

 前から3週間近く経ってるからな……またいっぱい新刊出てるといいなぁ!!

 

 

 はい。図書館に到着しました。

 

「おっじゃまー。ビブリオティックさん今日もお綺麗ですね!」

「いらっしゃいロックくん。あら……今日はまたいっぱい女の子連れて来たわね」

「お久しぶりです、ビブリオティック」

「ほぉ……本がこんなに。凄まじい広さの図書館があるのだなぁ王都には。お初にお目にかかる。拙者、サザンカと申す。今はロック殿の配下にござる」

「おべんきょう! ためになるほんよませてください!」

「はい、サザンカさんは闘技大会で噂になってた赤カブトさんね? 初めまして、司書のビブリオティックです。リンちゃんは今日は何のお勉強をしたいの?」

「んー……れいぎ! おうさまとえっけん? するときのれいぎのほんよみたい!」

「うちの子が勤勉でパパ嬉しい!」

「むしろ礼儀関係の本を読まないといけないのはパパのほうじゃないですか?」

「リン殿と一緒に読まれては如何かなパパ殿」

「ンーンン」

『みゃあみゃあ』

 

 いつもお綺麗なビブリオティックさんにもご挨拶して、それぞれ求める本を探しに行く。

 リンは何の本読むのかと思ってたらなんとまぁ、これから向かう先の遠征に向けて礼儀関係を学びたいという話らしい。

 もちろん孤児院でも普段の授業で基本的な礼節関係はシスターが厳しく教えているが、流石に王族相手の作法まではしっかり学ばないしな。

 なんて偉いんだ俺の娘は。パパも胸が熱いよ……。

 イレヴンはリンが一人にならないように一緒に礼節の本を読むらしい。ママかな?

 

「俺はいつも通り好きな作家の新刊読むんすけど……サザンカさんは何の本読まれるんです?」

「うむ、拙者は色々読みたいものが多くござるが……今日は一先ずこの国の文化や風習について書かれた本などがあればそちらを読んでみようかと」

「それでしたらこちら、R棚のほうに本があります。ご案内いたしますか?」

「なるほど。いや、書架の場所はこの図で覚えたので案内は……」

「絶対案内してあげてくださいビブリオティックさん……!! サザンカさん迷うから。なんなら図書館から一生出られなくなる可能性まで見えてるから」

「そこまで言うか主殿」

「私もマスターに同意見です」

「サザンカはたいへんほうこうおんち」

「拙者の方向感覚への信頼の無さよ」

 

 サザンカさんもビブリオティックさんに案内されて行って、それぞれも自分の求める本を探しに行って……俺はミャウと二人きりになって。

 

 ───時は来た。

 

 ここ最近は特に周りに俺の女がいつもいてTHE・ハーレム状態が続いておりそれは俺にとって心の栄養であったことは間違いないのだが、小説を読む時だけは別だ。

 小説を読む時はね、誰にも邪魔されず、自由で……なんというか救われてなきゃあダメなんだ。

 独りで静かで豊かで……。

 己との戦いであり己と小説との対話なのだ。

 物語を読むことでそれと語り合えるのが本の素晴らしさ。

 没頭するためにもやはり孤独である必要があるのだ。

 孤独の読書(リード)

 

「うぇっひっひ……おっ! あるやんけェ……!」

『みゃあ……』

 

 何故かミャウにため息をつかれつつも俺はお目当ての書架に到着。

 そこには相変らず筆の速い異世界転生チートさんの新刊がなんと2冊も出ており、さらに新作の短編が1つ出ているではありませんか。

 やはり神か(確信)。

 

「こちらも読まねば無作法というもの……」

『ふみゅ……みゃふ……』

 

 音もなく3冊を抜き取って己が手に。

 しかし1セットしか異世界転生チートさんの本は図書館にしかないんだがなぜ俺が来る時にいつも新刊が誰にも借りられてないんだろうな。

 こんなに面白いのに。みんなもっとこの人の本を読むんだ。

 でもみんなが読むことで図書館で借りられまくって俺が読めなくなるのはちょっとやだな。そろそろお金もたまって来たし俺も購入勢になるか?

 ノインさんとの感想戦も今までは図書館でしか出会えない関係だったけどお互いの立場も明かして遠征後も間違いなく距離縮まるだろうしな。王城に気軽に遊びに行ける関係になるかもしれないし。

 そうなったら王城に行って感想戦を……いやでもあのカフェでカフェオレ飲みながら話すのが楽しすぎるんだよなぁ。デートっぽい雰囲気とふんわりした何つーか……映えって感じのあのシチュが俺もノインさんも好きすぎる。

 いつでも通話できるような通信魔道具もってねぇかなぁノインさん。そういうのを貸してもらってカフェに待ち合わせてデートみたいな感じで感想戦したい。

 

「さぁて……(たしな)みますか……」

 

 とにかく読まなきゃ始まらねぇからな!

 しっかり熟読して物語を味わうからこそ感想戦に熱が入るのだ。お互いの理解度と熱量が近くないと感想戦に水差しちまうしな。

 心の底から楽しんで物語を味わう。いっちゃん幸せな時間だよ。

 

「むほほ……むほほほ……」

 

 そうして俺は物語に没頭していった。

 続きものの新刊2冊を読んで……相変らず面白おかしい物語を堪能する。

 頭のどこを使ったらこんな物語が思いつくんだろうなぁ。全くこの世界ではありえない学園の風習とか面白いわ。科学っていう異世界転生チートさん特有の設定がすごくいいよね。イレヴンみたいなアンドロイドがいっぱい出て来た! 面白!

 

 はい。新刊二冊を読み終えて……そして短編らしい新作の薄い一冊を最後に読む。

 これは完全新作だな。タイトルは……『秘密×秘密のプリンセス×プリンセス』?

 ほーん。姫様が出てくる感じの話かぁ。いいね。

 姫騎士でお尻が弱い系なのか、それともまともなお姫様なのか……女主人公の話は主人公への共感ではなくシチュで萌えるスタンスで挑みましょう。

 対戦よろしくお願いします。

 

「………………ほほぉ……??」

 

 話は……どうやら王家に生まれてしまったが末っ子でどうにも家族とうまくいってない御姫様が、好きな本の趣味が合う年下の可愛い市民のショタと出会って身分差がある中で恋心をはぐくんでいく……という話のようだ。

 へー、心理描写がすっげぇ丁寧。まるで経験したことがあるような主観視点で進む話が没頭させに来てるな。

 このヒロイン役? のショタもいい……。名前はナナツくんでお調子者な男の子のようだ。でも親しい仲の女性には優しい一面もあるって感じだね。

 これはいいな……これまでの異世界転生チートさんの話作りとちょっと毛色が違う感じがあるけど、読ませてくる。

 主人公の御姫様がえっちな体してるっていう描写があってそんな姫様が身分を隠して少しずつお互いに惹かれてく感じが……すごくいい……。

 なんていうか……普通に人気が出るタイプの話だと思いますね。とにかく心理描写が上手かった。

 最後はちゃんと濡れ場まで表現してくれてたからシコりもカバーしてくれていてこれは名作ですわ。

 ノインさんとの感想戦が楽しみだな……濡れ場部分の評価を聞きたい。おねショタ味めちゃくちゃ濃かったので性癖的にも満足です。

 

「ふぅ……えがった……」

「……読み終わりましたか、マスター」

「ん。あれ、イレヴン。待っててくれたの?」

「ええ。私もリンもサザンカもお目当ての本は読めましたので」

「そっか。二人は?」

「外で待っていますよ。リンのお腹が減ってぐうぐう鳴るようになってしまったのでサザンカと共に」

「おおう。もうそんな時間か……んじゃ出よっか」

「はい」

『みゃ』

 

 満足して読み終えたら隣にまたイレヴンが座ってた。

 聞いたらみんな俺が読み終わるの待ってくれてたんだって。

 気付かないくらい本に夢中になってしまった。女を3人も待たせるなんて申し訳ないの極みだぜ。

 せめて美味しいご飯を食べさせてあげますか。

 

 そうしてイレヴンと共に図書館を出て二人とも合流して、お昼を食べに向かうのだった。

 





~設定紹介~

■秘密×秘密のプリンセス×プリンセス
ノインが書いた夢小説をルドルフが本人に無断でバレないように編集して発刊した新作。
キャラの名前だけ変更してあとは素材の味をそのまま提供している。
かなり濃密で読ませる心理描写のある逆シンデレラストーリーは女性中心に人気を博してしまい後日大量に増刷された。
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