勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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75 ノインさんがコミュ障になったのこの人が原因では?

 

 さてお昼も食べ終えて昼下がり。

 明日の遠征に備えてやるべきことは大体やれたと言えるだろう。

 買う物買ったし。整えるもん整えたし。聞きたいこと大体聞けたし。

 後は闘技大会でお世話になってた人たちへのあいさつ回りをして今日はおしまい、明日に備えてぐっすり休む予定であった。

 

「ってなわけでカプチーノさんとカノンさんに会いに来たぞい」

「お礼を言うべきはヴァリスタですよねマスター?」

「おー! でっかいおうち!!」

「何とも立派な……ヴァリスタ殿は稼いでおられるのだなぁ」

『みゃあ!』

 

 そんなわけでまずやってきましたヴァリスタさんのお宅。

 見て摂取する栄養素カノンさんと話して摂取する栄養素カプチーノさんがここにはいるからな。お二人に優勝したこと褒めてもらわないと。

 ついでにヴァリスタさんにも訓練付き合ってくれたお礼とかはちゃんと伝えますよ。

 菓子折りもちゃんと買っております。出来る気配りスタイル。

 

「おっじゃまー! ヴァリスタさんいますかー!」

 

 ガロンガローンと豪邸の門扉にある鐘を鳴らして待つ。

 しばらくすればぱたぱたと門の向こうからメイド服が翻る足音がして、カノンさんが門扉を開けてお出迎えしてくれた。

 

「ようこそいらっしゃいました、ロック様」

「どうもっす! 今日もお美しいっすねカノンさん!!」

 

 恭しく頭を下げるカノンさん。

 それに連動してたゆんと揺れる立派なデカパイに感謝を込めてお辞儀を返して、用件を伝える。

 

「お世話になったヴァリスタさんとカプチーノさんにご挨拶に来たんスよ。この後しばらく俺たち遠征に出ちゃうんで……その前に訓練とか付き合ってくれたお礼と思って。ヴァリスタさんいますか?」

「はい。現在ご主人様は……」

「もしいなくてもカプチーノさんだけでもご挨拶したいですね! 何なら一緒にお出かけしておデートとかしたいっすねウヘヘ! カノンさんもご一緒しませんか!?」

「すぐゲスが漏れる」

「どうして女性(にょしょう)を前にすると主殿はこうも愚かになってしまうのか」

「ロックはおろか……」

『みゃあ……』

「相変らずで御座いますね。残念ながらご主人様はご在宅でございます。しかし現在、御来客のご対応をされておりまして……」

 

 もしヴァリスタさんがいなければカプチーノさんとカノンさんを誘ってデートにでもくりだすかなぁ! と調子に乗ってみたが普通にいるんだってヴァリスタさん。ちぇー。

 その上来客対応中ときた。お邪魔するのは申し訳ない。その辺は流石にわきまえている。

 こりゃタイミングミスったかな、と思っていると……

 

「……カノン! ロックくんたちならばどうぞ中へ招いてほしい! 御客人にも了解を取っているからね!!」

「おや。……そういうことですので、どうぞ中へ」

「どもども。お客さんってどなたなんやろ。女の人?」

「男性でございます」

「そっすか。はぁーーーーーーーー……………」

「このクソデカため息ですよ」

『みゃ』

 

 中庭の方からヴァリスタさんの大きな声が聞こえてきて、どうやら俺らもお邪魔してよいと。

 お客さんと話している時に招くなんて……と思ったけど、よく考えたら今俺闘技大会優勝者だったわ。

 知人に紹介するにしてもそれなりの格を持つ冒険者になったってことかな。そういう配慮はちょっと嬉しい。

 でも男の人じゃあ紹介されてもなぁ。そりゃため息も溢れるってもんですよ。

 

 さて、そうして案内されて以前訓練でも使った中庭にお邪魔すれば……そこには。

 

「やあロックくんっ!! イレヴンも……おお! サザンカ殿とリンちゃんもご一緒だったか!! 先日ぶりだな!!」

「おーっす。昨日ぶり」

「こんにちは、ロックくん。皆さまもようこそ」

 

 ヴァリスタさんとカトルが外に設置されているウッドチェアに座り、来客と話をしていた。

 その傍にカプチーノさんの姿もあって、そして。

 

「ほほう、貴公が闘技大会の覇者、ロックか!! ノルンが懇意にしていると聞く!!! 我が妹が世話になっているな!!!」

 

 ヴァリスタさんの隣に座っていた声の大きい厳ついオッサンが声をかけて来た。

 えっ誰? なんか周りに護衛っぽい人もいるけど……偉い人か?

 ってか今ノインさんのお兄さんって言った?

 え、どの奇数の王子様? 1と3と5と7が王子だったよな??

 

「あ、どもです。……ヴァリスタさん、この方は?」

「うむ! このお方は第五王子のアンドレ様だ!! 私と同い年でな、昔から懇意にしているのだ!!」

「様付けはやめろと言っているだろうヴァリスタ!! 公式な場でもあるまいに!! 俺とお前は朋友(とも)!! 遠慮など無用だ!!」

「ははは、これは失礼!! そうさな、アンドレは我が友!! 初対面の者の前とはいえ遠慮を見せた私を許してほしい!!」

「許すも許さぬもないさ!! 俺とお前は対等な関係なのだからな!!」

「そう言ってくれるかアンドレ!! おお、心の友よ!!!」

 

 第五王子のアンドレ様だって。

 へー。

 このオッサンたちうるっせぇ!!!(渾身)

 

「カプチーノさんお耳大丈夫スか?」

「なんとかね」

「にたものどうし……」

「うむ……豪快な丈夫(ますらお)であるな、お二人とも」

「カノン、こちら手土産になります。いつもマスターが本当にご迷惑をおかけしまして……」

「これはご丁寧に、ありがとうございますイレヴン様。早速切り分けて参りましょう」

「まぁこっち座れよロック。お前らにも関係ある話を今してたところだからさ」

「なんて?」

 

 リンとサザンカさんが呆れ半分でオッサン同士の絡みを眺めつつ、イレヴンが持ってきた菓子折りをカノンさんに渡したりしつつ。

 んでカトルが隣に座れと促してきて、話を聞けば俺らにもかかわりのある話をしてたってことで。なんだろ?

 

「……第五王子アンドレ。先日ノルンが言っていた、遠征に一緒に向かうお二人の内の一人ですよ、マスター」

「えっマジ? じゃあアンドレ様も……ノルン様と一緒にグランガッチに向かうんですか?」

「左様!! 獣王国に蔓延る魔の手からあの国を救いにな!! そして今日はその護衛をヴァリスタに依頼に来たところだったのだ!!!」

「事情はアンドレから聞いてね。魔族の手が伸びていると考えられる友好国への視察となればやはり魔装具使いが護衛としてはふさわしいだろう! ロックくんがノルン様の護衛として同行するように、私たちはアンドレに同行するのさ!!」

「わぁおマジか。って……『たち』ってことは……」

「そゆこと。俺も行くぜ」

「マジか……!」

 

 なんてこった。

 なんてこっただよ。

 第五王子のアンドレ様……そしてヴァリスタさん、カトルが今回の遠征に同行するということで。

 マジか……マジかよ。信じらんねぇ。

 

 男ばっかりじゃねぇかよぉ!!!(渾身)

 

「男ばっかりじゃねぇか!!!」

「お前よくアンドレ様の前でそれ口に出したなロック」

「フハハハハ!! なるほど噂通りの男だなロック!!! 助平(スケベ)で女に目がない!! 欲望ばかり先走り女難の相が出ていると!! ハハハ、面白い!! ヴァリスタ、俺は気に行ったぞこの少年!!!」

「アンドレならそういうと思ったよ。なかなかどうしてこのロックくん、深みのある少年だ! もっともそれは彼の周りにいる者たちを見れば一目瞭然といったところだな!」

「確かに。コイツマジでバカが服着て歩いてるようなもんですからね、見てて飽きない奴ですよ」

「馬鹿にされてんのかな今俺」

「マスターがバカなのは今に始まったことではないのでは」

「ンーンン」

 

 なんで急に笑われてんの俺?

 死活問題だろ男ばっかり参加しやがってよ。

 俺の性欲は魔力に直結してんだからマジで生存率に係わってくんだぞ。

 俺のまわりにいる人って言われても今は男しかいないんだけど?

 何? そういう趣味なのヴァリスタさん? 悪いけどノーサンキューよ俺?

 

『みゃふみゃふ……ゴロゴロ』

「ミャウちゃんも……リンちゃんもいつも大変ね、ご主人様がロックくんだと」

「ほんとにたいへん」

「拙者らがついておらねばな……」

「サザンカさんはロックくんに仕官したってカトルくんから聞いたわ。しばらくはご一緒に?」

「うむ。魔族の脅威がなくなるまでは主殿……ロック殿のお傍にいさせていただく約定でござる」

「まぁ素敵。それじゃあ前にお話しした通り、ヒノクニのお話を聞かせてくださる?」

「勿論でござる。拙者の語れることであれば何なりと」

「皆さま、イレヴン様より菓子折りを頂戴いたしました。お茶のお代わりも淹れましたのでどうぞご寛ぎください」

「おー! いっぱいたべていい?」

「リンちゃん、みんなで分けてからにしましょうね」

「わかった!」

『みゃ!』

 

 見てよ向こうの平和な光景を。

 ミャウを笑顔でもふもふするカプチーノさんに、それに懐いてるリンに、お姉さん風に優しく微笑むサザンカさんに、完璧なメイドのカノンさんが仲睦まじくティータイムしててさぁ……。

 俺が求める光景ってあれなんすよね。女の園。俺以外の人類全員デカパイ美女にならねぇかなっていつも思ってるよ。

 遠征中はアンドレ様たちのほうには近寄らんどこ。バイクの速度下がるわ。

 

「あとはアンナ姉様が誰を連れてくるかではあるが……おおよそ遠征の準備は整いつつある!! 我ら王族3名と貴公ら護衛の冒険者!! そしてグランガッチから大会に参加した冒険者、観客らとそれを運ぶ騎士団だな!! 馬の手配はしてあるぞ!!」

「ん。そういやその辺まだノルン様と詳しく話してなかったっすね。王族と俺ら護衛はいいとして……グランガッチの人たちって今どうなってるんです? 移送はどうやって?」

「うむ!! 闘技場での騒動の際、観客席にいた冒険者はトゥレス殿が気絶させ捕らえた! その後この国に来ていた数名の観光客も同様に捕えさせてもらっている!!」

「冒険者で8名、観光客が10名ほどだ。それぞれ意識を取り戻したのちに騎士団の方で冒険者は尋問、観光客は事情聴取をしたが……冒険者は全員が魔法陣を発動させたことも、自分の体に術式が組まれていたことも記憶になかったそうだ」

「それどころか何でここにいるのかも覚えてなかったんだとさ。観光客の人たちに話を聞いたら、全員グランガッチから王都に来たのは大会の開催が発令される前の時期だったって話で……つまり、大会の開催宣言があってからグランガッチから王都に来たのは冒険者だけで、観光客は0だった」

 

 それぞれから新しい情報を聞く。

 大会発令前にたまたま王都に来てた観光客以外はグランガッチからは誰も観光に来てなくて、冒険者は記憶を操作されて体に術式組まれて大会に参加してたって、それって。

 

「…………完全に落ちてません? グランガッチ」

「うむ、その可能性は極めて高いな!! あの闘争を好むグランガッチから観光客が一人もなく、そして冒険者も記憶すら操作されているとなると……魔族の仕業で間違いなかろうな!!」

「国と国同士の話だからね。こちらで勝手に処刑などするわけにも当然いかず、冒険者は隷属の首輪をつけて拘束、観光客も軟禁状態である程度自由は制限し……騎士団の護衛をつけた大型の馬車でグランガッチまで運ぶ予定となっている。尤も、向こうの国に着いたところでそれがどうなるかもわからないがな」

「観光客すら来てねぇってのがマジでな……下手すると向こうの国に着いた途端に攻撃される可能性だってあるからな。まぁ遠征メンバーは魔装具持ちの魔族に対抗できる人員を集めてるから、万が一の時は即座に撤退も考えられるな」

「ほーん……じゃあ後はワイバーン便が帰ってきたらその報告を受けてどうするか、って所ですかね」

「その通りだ!! 場合によっては我ら王族だけの遠征ではなく、早速の全面戦争になる可能性すらあるな!! 気構えだけはしておいてほしい!!!」

「物騒な話っすわ」

 

 いやーキツいでしょ。

 どう考えても魔族に支配されてるじゃんグランガッチ……どうしよう国中が魔族に溢れてたら。

 前にヴィネアがネレイスタウンに現れた時も、魔族の拠点として街を使いたいとかほざいてたしな。

 あれと同じ事がグランガッチにも起きちまってるのかもしれん。

 想像以上にやべー状態になってる……かもしれない、と心には備えておこう。

 これ下手するとリン連れてかない方がいいか? 勘で決めたけど……明日もし想像以上にヤバい事になってたらちょっと考えよっと。

 

「まぁすべての話はワイバーン便が戻ってきてからだ!! 明日の午前中に一度王城まで足を運ぶようにノルンにも言われているだろう!! その際に改めて説明するので遅刻などしないようにな!!」

「了解っす。とりあえず半年は余裕で遠征できるくらい色々準備しときましたんで。何があっても柔軟に対応できるようにはしておきますよ。ノルン様の為に」

「うむ!! アイツは少々人見知りが激しい!! 君には心を許しているようだからな!! 改めて妹をよろしく頼んだぞロック!!!」

「それは勿論っすよ! 親友ですからね!!」

 

 ここで出来る話はこれで終わりだ。

 後は明日の出発前の打ち合わせを聞くのみである。ガンバロ。

 

 その後は改めてヴァリスタさんには先日の訓練のお礼を述べてヴァリスタさん家を後にして。

 さらにその後にケンタウリスのクランハウスにも顔を出して俺らがしばらく遠征に向かう事を伝えて。菓子折り渡してお礼を言ったら殊勝な俺の態度に本物か疑われて。

 夕飯はサザンカさんの手作りで力つけるための肉料理を腹いっぱい食べて、ぐっすり眠って。

 

 そしてとうとう、遠征の日がやって来た。

 

 

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