勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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77 ギャル系王女がケモボディのビッグマグナムにドハマリして……ってコト!?

 

 資料の中身についての質疑応答が始まった。

 

「───報告の上では、偵察に向かった騎士は問題なくグランガッチに到着!! 王宮にもつつがなく挨拶を終え、ギルドや街の様子も変わりなく!! そのまま帰ったという!!」

「アンドレ、報告をした騎士に看破魔法は使ったか? 万が一向こうの国に洗脳を受けていても看破魔法を使えば嘘は分かるはずだ」

「ウム!! 使った!! だがシロだ!! 騎士は嘘偽りを吐いてはいない!! 洗脳もされておらぬ!!」

「向こうの王様には流石に看破魔法はかけられないですよね……グランガッチ全体が洗脳されてるのかも? 向こうでは今回の騒動についてはどういう見解なんですか?」

「グランガッチ王家の弁では、参加希望の冒険者を一度にまとめて我が国に旅立たせたという!! その道中で襲われたのではないかとな!! 無論、この事態にグランガッチ国王も心を痛め、賠償と謝罪は事実確認を取り次第進めるとのことだ!!」

「……だが、それはワイバーン便をこちらから送った時点でグランガッチの冒険者を尋問した結果を知らなかった騎士が聞いてきた内容だろう。下手人のヤツらは確かに『なぜここにいるかもわからない』と吐いたぞ。大会に参加するべく王都オーディンに出発した後に魔族に襲われていたとすれば証言が噛み合わぬ。『大会に参加するために国を発ったが途中から記憶がない』と述べるはずだ」

「ヒルデガルド殿の仰る通り!! だが魔族が使ったであろう記憶操作魔法がどれほどの効果だったかが分かっておらぬ!! もし数日前の記憶まで操作するような物であれば向こうの国が言っていることを嘘だとは断定できない!!」

「他国でもギルド間ならば通信魔法を使えたはずです。向こうの国のギルドとは連絡は取れていないのですか?」

「いや、そちらも取れている!! だが向こうのギルドも国と同様の回答だ!! 推薦した冒険者が向かったところまでは管理しているがそれが洗脳されていた様子はなかったとな!!」

 

 ヴァリスタさんたちがアンドレ様に色々質問を投げかけ、それぞれ答えている。

 俺は黙ったまま話を聞いていたが……しかし、実を言えば俺の中の見解はすでに固まっていた。

 

「……ロックくん。どう思います~?」

「クロっす。国全体が魔族の手に落ちてますよ」

「む。断言するではないかロック!!」

「おー!? それが噂の『勘』ってやつかー!? あれだろーキュピピン!! って急に答えが閃くんだろー!?」

「答えが出てくるかって言ったら微妙なんですけどね」

 

 俺に意見を聞いてきたノインさんにはっきりと答えたところでアンドレ様とアンナ様にも俺の言葉を拾われてしまい、場の注目が俺に集まってしまう。

 うん。まぁ勘がそうだって叫んでるのは間違いないんだけど。

 ただ今回の勘はちゃんと根拠まであるぜ。みんなも分かってることだろうけどね。

 

「勘ってのが一番の理由なんであれなんですが……観光客の件についてはなんも向こうは言ってないんですか? ほら、大会の話出た後にこの国に来てるグランガッチの観光客0だったって話」

「む……それはワイバーン便を早急に飛び立たせたために騎士が観光客関係の疑義の情報を持たなかった故に聞いておらぬのだ!! あくまで選手が魔族の手先になっていたことしか聞いておらぬ!! 無論向こうの国王もその点は重く踏まえ、選手については我らが護送した後に裁判にかけると言っていた!!!」

「むこうのギルドには確認しましたか?」

「観光客までは管理していないという話だった!!」

「勘が引っかかってんのがそこなんですよね。グランガッチとは友好国の協定を結んでて、大会の話が来たのに観光客が誰も来てない……っていう事実だけでもう真っ黒だと思うんですけど」

「そっかー? あーしそこは別の推理があんぜー? 実はちゃんとグランガッチから観光客もいっぱいおっぱいで王都に向かってたけどさー、道中で魔族にやられちゃった説ありよりのアリじゃねー? まだ国に帰ってきてないから向こうも3日前の時点でそこ違和感ないだろー? この説ゼロじゃなくなくねー?」

「アンナ様から意外にも鋭い考察が。確かにその可能性も全然あって、グランガッチ自体が無事なのが一番なんですけどね……」

 

 観光客の件が怪しい! って主張したらアンナ様が割としっかりした反論を返してこられて俺困っちゃう。

 国が落ちてるんじゃなくて、グランガッチから王都に向かう道に魔族が潜んでたんじゃないか説。

 そこで魔族が冒険者に対しては洗脳及び術式の仕込みを、観光客や商人に対しては死を……ってしてた可能性は否定はできない。

 それだったらどんなによかったことか。いやよくはねぇんだけど。でも国一つ落ちてるよりも随分と救いのある話だ。

 

 ただ、俺の持ってる知識の内の一つがあんまりにも今回の件に合致してて、それが俺の勘を後押ししてるのだ。

 

「……ちょっと150年前の話させてもらっていいです?」

「む……?」

『かつての人魔大戦の時と……今回の件が、何か?』

「うん。150年前に、()()()の集落全員が魔族側についたって歴史があったじゃないですか。あれ、もしかして今回の件みたい事情があったんじゃないかなってちょっと思ってるんですよ」

「おー? 人魔大戦の頃の話なー? ヒルデの姐さんはその辺って詳しけりよりー?」

「ああ、当事の事は経験している。だがあれは……エルフ共が魔族側についたのがいつの時期だか、そしてその事情もはっきりせぬのだ。あの時代には今以上に冒険者の数が多く、エルフの集落にも足繁く通っていた物好きもいたのだが……エルフはいつの間にか魔族側に寝返っていた。一晩のうちに集落にいたエルフの全てが姿を消し、次に現れた時は肌を黒く染め魔族の手下となっていた」

『……しかし、確かにエルフは元は人間と友好な関係を築いていた種族でした。それこそ当時はグランガッチの獣人以上に人間への理解は深かった。今でも何故彼らが魔族に従ったのか謎は残っています。……それが、まさか?』

「俺の勘ではそのまさか。150年前もエルフの集落全体を洗脳した魔族がいて、今回はグランガッチを……って、なってるんじゃないかってね」

「ロックくん、それは鋭い考察かもしれませんね~!」

「ふむ……確かに、今回の状況と似ている点はあるな……」

「俺の中ではロックの勘が響いてる時点でそれが答えになっちまってますけどね」

「私達も同様です」

 

 ティオとシスターの件で改めて振り返った歴史。150年前のエルフの人類反逆事件。

 歴史書にその辺は詳細には乗ってないし、後年になって恣意的にエルフを悪と書くような書物が多いから参考にはならないが……ただシスターが言っていた話がやはり最も信憑性が高い。俺の中では。

 150年前の闇落ちデカパイダークエルフになるまでは、エルフたちは人類と友好的な関係にあったという話。

 それがなぜ魔族側についたのか。ずっと引っかかっていたのだ。

 

 だが、魔族に洗脳されてたかもという可能性がそこに生まれることで説明がつきすぎてしまう。

 当時の冒険者でも気付かないほどの強力な洗脳。魔法に長けたエルフでも抵抗が難しいほどのそれならば、獣王国全体を堕とすことも可能だろう。獣人は魔法の扱いに秀でる種族ではない。

 守護結界もグランガッチには張られているが、まさかで可能性を否定するには厳しいほど……状況証拠は整っているように感じている。

 

「個人的にはヴィネアが零してたアイツの上司の六大将軍の一人の『幻魔将アイム』ってのが名前的にもクサい感じがする。ヴィネアも魔族侵攻の拠点になる街が欲しいって理由でネレイスタウンを襲って来てたわけだし……それが150年前はエルフの集落、今はグランガッチに魔の手を伸ばしてる……って可能性はあると思います」

「…………なるほど、筋の通った話だ!! うむ、大きな可能性として含んでおこう!!」

「それなー! あーしとしちゃグランガッチ平和ガチお祈り申し上げ勢だからそうなってないことを願いたいけど……わっかんねーからなー!! ぜーんぶ考えすぎだったーってならねーかなー!? つれーわーマジぴー!!」

「……ん?」

 

 そんな風に俺が勘による推理を〆たところで、アンドレ様もアンナ様もその可能性を考慮に入れてくれて。

 しかしその中でアンナ様がグランガッチ寄りの考えというか……なんだろ、随分贔屓されてるな。ケモナーだったりするのかな?

 今回の事件を招いたのがグランガッチの冒険者であることは間違いない事実なので、王族としてはある程度グランガッチに対して懐疑的な姿勢なのかと考えていたけど。

 その部分を超えて親獣王国派な感じがする。なんか理由あるのかな? 

 聞いてみるか。

 

「……ノルン様」

「み゛っ。……急に小声で耳元で本名を囁くな~ばか~」

「アッすんません。……アンナ様ってグランガッチと何かあったりするんすか? かなり向こうの国の肩をもつようですけど」

「……アンナ姉様の旦那様がグランガッチの第二王子なんですよ~。今も旦那様はこの王城にいますけど、かなり立場が際どくて~……今回の遠征に旦那様は同行できないんです~」

「マジすか……」

 

 小声でノインさん……今は王族の前なので本名で呼びつつ話を聞いてみるととんでもねぇ事実が出て来た。

 マジか。そりゃあ……アンナ様にとっては辛い話だ。

 勘によればグランガッチは魔族の手に落ちている。これはもうほぼ確定事項なんだけど……国を離れてたアンナ様の旦那さんは無事だったんだ。

 だからこそアンナ様はこの遠征に同行して夫の祖国の無事を確かめたかった、って所もあるのかな。

 ここで旦那さんがグランガッチに同行して万が一があるよりは調査した結果を確認してから……って判断なのだろうか、同行しないのは。その辺は分からんけど。

 

 ううん。辛い。

 なんとかグランガッチを魔族の手から取り戻せないか、それもしっかり考える必要もありそうだ。

 

「……アンドレ、質問だ! 今回の遠征には相当な危険がつきまとうだろう! 万が一には戦争になる可能性さえある! 現状では騎士団は虜囚の世話と最低限の護衛だけが同行すると聞いているが……更なる数の騎士団を連れていくことはできないのか?」

「いや、それだけは出来ぬ!! 父上にも、第一王子のウィリアム兄様にも確認したが……こちらから軍を率いてグランガッチに向かってしまえば、それは向こうの国を刺激してしまうことになる!! それは本意ではない!! 無論、確たる証拠があれば騎士団を、軍を動かすことも視野に入れるが……今回の遠征はその証拠を確認するための調査も兼ねていると思ってほしい!!」

「戦争にさせねーために行くんだかんなー!! グランガッチが魔族に支配されてたとしてもロックちんがいった通り洗脳とかだったら……その辺何とか出来れば助けられるかもだろー!! あーしは諦めねーぞー!! グランガッチが魔族側に自分からつくはずがねーんだしなー!! 人類同士で争ってる暇ねーだろー!?」

「……魔族が王都内に実際に侵入までした以上、王都の警護も必要です~。今回の遠征で騎士団を連れて行って、オーディンが手薄なときに魔族に攻められて……という万が一はあってはいけませんから~」

「……失礼をした。そうだな、なればこその少数精鋭なのだからな」

 

 ヴァリスタさんがアンドレ様に遠征に騎士団連れていけないかと聞いたが、それもNGだということで。

 理由を聞けば頷けるものしかなかったのでそこに異は唱えない。

 さてしかしそうなると……俺の懸念は、こいつだけだ。

 

「…………」

「む。……ついてくからね、おいてかれても」

「そんな目で見るなよ」

『みゃ……』

 

 リン。

 こいつは連れて行った方がいい、と勘が言っているが……しかしグランガッチが危険なことも今日の勘で確信した。

 危険が分かっている所にはコイツを連れていきたくない……というのが、俺の本心。

 だがリン自身が行きたがっている。ほっといてもマジで飛んでついてきちまいそうだ。

 輸送する馬車の速度に合わせるから片道で3日はかかるだろう。向こうにいる時間と帰りでだいたい1週間は王都を空けることになる見込みだ。

 俺とリンが出会ってから、それだけ王都から離れるのは初めての事で……それに置いてかれるのは嫌だ、とでもいうかのような、強い眼差し。

 

 ……うん。やっぱ連れていこう。

 大丈夫だ。調査だとアンドレ様も言っているし、俺だけじゃなくてイレヴンにサザンカさんにヴァリスタさんにカトルにヒルデガルドさんに……ケンタウリスとの旅行の時以上に頼れる仲間がいっぱいいる。

 俺に万が一があった時はリンを託せるくらい信頼できる人たちだ。問題なかろう。

 

「大丈夫、ちゃんと連れてくよ。ただ……無茶だけしないように。必ずみんなの言うことは聞くんだぞ。わがままは禁止だ」

「うん!」

「ふ。……竜人の血は危うきに近づくほど昂るものだ。止められるものかよ……安心しろ、ロック=イーリーアウス。リンは私も気にかけておいてやる」

「助かりますヒルデガルドさん」

 

 同じ種族だからか、ヒルデガルドさんもリンには結構目をかけてくれている。

 大丈夫だろうこのデカパイドラゴンが気にかけてくれてれば。飛んで逃げられるしな。

 

「……それぞれから有益な意見が出たが……やはり結論は実際に調査に向かわねば出ぬな!! 早速出立と行こう!! 我ら王族の移動と幌馬車の輸送には王族専用の魔導馬車を使う!! 当然にしてその他の移動手段はそれぞれ問題ないな!?」

「うむ!! 私は飛行魔法で、カトルもバーストダッシュで一日中移動が可能だ!! 心配無用!!」

「竜人の羽搏きより速く飛べる生き物はいない」

「俺らも特段問題ないっす!」

 

 さて出発前の打ち合わせはこの辺で終わりだ。出立の準備に入る。

 魔導馬車……ってのは多分アレだな。ノインさんがこれまでも図書館に来る時に使ってたヤツ。あれそういう魔道具だったんだ。

 んでグランガッチの人たちを乗せた幌馬車が2輛を引いて、その人たちの警護兼見張りとして騎士団から10名ほど。

 その他、腕自慢の護衛として俺たち。勿論俺たちはそれぞれ移動手段を持っている。

 今回はリンのほかにサザンカさんが追加されて、勿論彼女も俺のイレヴンバイクに乗ってもらうつもりである。

 3人乗りは流石にリンのサイズとサザンカさんのサイズではできないけど、その辺もちゃんと考えてあります。

 

「よし!! では出立とする!! グランガッチの危機を救うのだ!!」

 

 アンドレ様の号令により、俺たちは王都を出発する準備をするのであった。

 

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