勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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80 虎穴に入らずんば獅子身中のスネークイーター

 

 とうとうグランガッチに到着した。

 みんな身嗜みを整えて、王都よりも雑多な印象を受けるグランガッチの正門に入っていく。

 もちろん俺も普段のパーカーから正装に装いを変えている。ピシっと髪型もキメて白の装飾よ。

 それみてノインさんの肩がまたプルプル震えてた。笑わんでくださいよンモー。

 

「王都オーディンよりはるばるご苦労様でございます!! 王宮へとご案内いたします!!」

「うむ!! よしなに!!!」

 

 正門を守る向こうの国防隊っぽい犬型獣人の人がアンドレ様に見事な敬礼を果たし、俺達を王宮に案内してくれる。

 その際、護送してきたグランガッチの冒険者と観光客を乗せた幌馬車は正門で憲兵に引き渡されたが……まぁ彼らから聞けることはこれ以上ないからな。

 それを止められるほどの証拠を今の俺たちは持っていない。大人しく引き渡すことにした。

 

(しかし……見てる感じじゃ普通だな、確かに)

(そうですね。守護結界も問題なく展開しているようです。サザンカが操られていた時のような暗い気配も案内する兵士たちからは感じられません。マスターの勘の方は?)

(黒だね。……ただ、今ここで何かして解決できるような感じでもない。やっぱ王宮が怪しいんだろうな)

(そうですか。……何か私に出来ることがあればすぐに言ってくださいね)

(もち)

 

 スキル『以心伝心』でイレヴンとテレパシーによる会話をしながらグランガッチのメインストリートを歩く。魔導馬車の中に王族の3人がいて、その周囲を俺ら護衛が囲む形だ。

 きょろきょろしすぎない程度に街並みを眺める。

 グランガッチに来るのは何気に初めてだからな。興味深いのはその通り。

 グランガッチは王都に比べると温帯に位置しており、また石造りの建物よりも木々を使った建物が目立つ。

 異世界転生チートさんの風景描写を借りるならばアジアン風とでもいうか……高い建物はないが平屋が無限に広がって。そして人々の熱気は凄まじいの一言。

 国防隊っぽい人は流石にしっかりした装備を身にまとっているが、街を行く人たちは皆軽装だ。獣人だから熱がこもりやすいってのもあるんだろうな。

 女性獣人も軽装なのが嬉しいです。体毛アリも無しもどっちも顔が可愛いならOKよ。ケモ度75%くらいまでなら全然許容範囲内です。四足歩行までならイケる。

 

 しかし、そんな中でも常に響くのは俺の勘。

 サザンカさんとの試合の日の朝の時のような……もやもやとした勘がどんどん強まっていく感覚。

 これは間違いなく危機が迫っているだろう。

 王宮か。そこに絶対なんかいる。多分魔族が。

 今ここにいる王宮カチコミの面子としてはリン以外は心強いメンバーだし、リンの事はヒルデガルドさんがかなりこの遠征中に気に入ってくれてて保護監督を俺の代わりに務めてくれている。

 この3日の遠征中にリンの力はかなり伸びた。ヴァリスタさんやサザンカさんの目から見ても唸るほどの成長。やはり同種に直接教えを受けるのは相当な効果があったようだ。

 ここまで強くなれば俺も実力的な部分ではそこまで心配はしていない。あとは策略とかにハマらないように気を付けるだけだ。

 

「……ふむ。実に活気のある国だね」

「そうでござるな、子供の声もよく通っている。平和の音でござるな……」

「……で……()()()()()、ロック」

「油断NG」

「そうか。……なんとかしてぇな」

「な」

 

 小声でみんなと話すが、街並みを見て歩くだけであれば確かに平和そのものだ。

 だがそこで俺が普段のようなおちゃらけた調子になってない様子を見て、みんなも気を引き締めている。

 そりゃあね。俺だってマジモンの平和で勘が響いてなければ道行くデカパイメスケモに無限に声かけて闘技大会優勝者なんすよグヘヘとワンナイトラブを求め彷徨っただろうけどさ。

 しかしダメだ。勘がめちゃくちゃ響いてる。

 事前に王族の皆さまにも声をかけていたように……これから俺らが向かう王宮に、その原因があると考えるべきだ。

 

 ……やってやるさ。

 イーリーアウスの勘は誰かを守るために在る。

 この国に住む人たちを救うためなら、守るためなら。

 らしくないガチにだってなってやるさ。

 

 グランガッチだけにな!!(激うまギャグ)

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「では、こちらの部屋でお待ちください」

 

 王宮まで案内された俺たちは、騎士団を王宮の外に待たせて、王族3人と護衛のメンバーだけで王宮内の大きな客室でしばらく待たされる。

 メイドさんたちがこの国の名産のお茶……砂糖をたっぷり混ぜた甘いお茶を人数分入れて退室して、一息をつけるシーン、なのだが。

 

「ヤな予感がすごい」

「ですね~。余りにも私達を簡単に招き入れすぎている感じがします~」

「うむ……いや、無論の事我らも警戒は常にしている! だが他国から王族が来賓された際の対応としては今の所おかしな点はない! 王宮に招き挨拶、および今回の来訪にかかる用件の打ち合わせだからな! 現時点では本当に魔族がいるのか疑わしい所だ!」

「おいアンドレー、あんま声大きくすんなー部屋の外聞こえっかんなー? そりゃあーしもこれマジでワンチャン国は無事じゃねーか説ビリーブなんだけどなー? 義父(パッパ)と話して何も無けりゃマジで気のせいじゃねーかと思いたいけどなー?」

 

 もうオーケストラかってくらいに勘が警笛を鳴らし始めている。

 駄目だこりゃ。真っ黒だわ。

 そりゃアンドレ様とアンナ様が言う通り……今の所グランガッチの対応は王族に対するものとしては普通だ。

 迎えを正門に準備し、国の大通りを通す形で、そこもしっかりと警護して王宮に案内し、そこで謁見し会合をする。そこになんにも疑義はない。

 あんまりにも普通。王都での魔族襲撃事件が起きてなけりゃ疑う余地もないくらい完璧な対応なのだが。

 

 でもダメだ。

 俺は自分の勘を裏切れない。

 ()()()()()()()()()()()()

 

「すみません、俺の方で魔族の気配感じてます。王宮のこっちの方角かな……誰か俺以外に感じ取れてる人います?」

「ん…………私の気配察知ではいかんともだ!」

「拙者も同様でござる。殺気のような物はなく……剣呑な雰囲気も正直感じ取れておりませぬ」

「イルゼの熱量感知はこの王宮内にいる人全部感じちまうからな……多分駄目だ」

「闇の魔力なら私のセンサーで感じ取ることもできるのですが、それもありません」

「……竜人の聴力でも違和感のあるほどのそれは聞こえんな」

「誰も何も感じ取ってないんかい!」

 

 勘がもうバッチリヤバい気配の方向まで察してるんだけど誰もそれを感じてないらしい。

 ンモー! 俺が勘違い中二病ボーイみたいになるでしょ!!

 くっ……!! 静まれ俺の勘……!! みたいになるでしょー!!

 マジなんだからさこの勘さぁ!!

 

 さて、しかしここでずっと手をこまねいて魔族に先手を取らせるのもつまらない。

 俺らもそれぞれ奇襲があってもいいように心も身構えてはいるが、勿論このまま黙っているつもりはない。

 俺の勘に魔族の気配が引っかかる可能性も遠征中に検討していたのだ。

 そして、だからこそこれからどうするかも既に打合せ済みである。

 

「……ノルン様。俺やっぱ()()()()()()。証拠を探してきますよ。このまま受け身じゃいい結果にならない感じしかしてないんで」

「ん。……ん~……本当に大丈夫なんですか~? ……無理、してない?」

「してないっす。別に俺一人で隠れてる魔族倒してくるとかそういう話でもないし……頼れる相棒がいますから」

 

 ノインさんに了解を取って、俺は潜入捜査に出向くことにした。

 潜入調査は正しく俺が得意とする分野だ。シーフとしての技能を遺憾なく発揮できる場。

 この王宮に潜入し、誰にもバレないように魔族が忍んでいる証拠を発見し、報告する。

 それを事前に一つの案として考えていた。

 

 しかしもちろん俺一人だけで行くのではない。

 俺一人でも見つからず動き回ることはできるかもだが、結局のところ俺には火力がないので護衛が必要だ。

 捌き斬りで何とか出来るかもしれないが前の闘技場の時みたいに複数に囲まれるとヤバい。潜入捜査についていける護衛が必要で。

 そして、それは俺の相棒が果たしてくれる。

 

「では……エクスアームズ10『スティルステルス』────」

 

 イレヴンの新機能。

 それなりのスキルポイントを利用して解放した新しいスキルは、イレヴンの全身を透明に変化させるもの。

 足音もせず衣擦れの音も立たなくなり、気配察知や嗅覚の察知にも引っかからなくなる。

 マスターである俺だけはイレヴンの輪郭がぼんやり光るように見えるけどな。他の人からは完全に見えなくなるらしい。

 この状態のイレヴンと戦うとなったら、勘で場所を見つけて攻撃するしかない。つまり潜入捜査にうってつけの状態だ。

 

「……マジで見えないなイレヴンさん。熱量感知にも引っかからねぇや」

「恐ろしい拡張性だな。必要な機能を開放できる、万能を体現するような……特化型のロックくんとはベストパートナーだったようだな」

 

 カトルのイルゼを使った熱量感知にも引っかからないんだって。やべーわこのスキルの性能。ポイント使った甲斐があり過ぎる。

 もっとも攻撃したり声を出したり何かにぶつかったりするとステルスが解けちゃうんで奇襲には向かないんだけどな。こういう場面ではうってつけ。

 しかも俺とは以心伝心でテレパシーで会話できるしな。コンビネーションも問題ないし。

 

 ちなみにスキルポイントはこの機能を開放したうえでまだ余っている。

 先日の闘技大会で魔族の群れを狩りまくり大会出場者を狩りまくった結果、溢れるほどのレベルアップを果たしているのだ。

 基本性能を向上させる内臓魔力炉の機能上昇も、湖で上げてからさらに二段階の出力向上を果たしている。上げるたびにスキルポイント消費が重くなるんだけどまだ余裕がある。

 つまり今や王都最強の冒険者並みに動ける魔族特攻の全身武器ウーマンなのがイレヴンだ。幹部くらいなら瞬殺できますよこいつ。

 

「これで武力はよしと。あとは……」

「知識面、でございますな。不肖ながらこのルドルフ、お力となりましょう」

 

 もう一人。

 ルドルフさんが俺たちに同行してくれることになっている。

 

 ノインさんの付き人であり執事。

 そしてその腕前だが……まぁ俺が背後を取られ続けていることから察してほしい。

 マジのガチで気配を消す技術については俺以上だ。昔は何をされていらっしゃったので?

 ノインさん曰く「物心ついた頃からずっとお世話になっている」らしい。

 つまりはそれだけ長く王城務めを果たしている人なのだ。当然にして俺なんかよりもいくらでも知識に溢れていらっしゃることだろう。

 グランガッチの王族とか貴族の顔と名前も大体覚えてるって話だから、万が一そういう人と鉢合わせて、って時にも説得してくれるかもしれないし。

 とにかく味方にいてくれる安心感が凄い。

 

 俺、イレヴン(ステルス)、ルドルフさん。

 気配遮断に長けたこの3人で王宮内の潜入調査を行い、魔族の痕跡を探すのだ。

 

 さて、しかしそうするとまた新たに問題が発生する。

 今から俺たち3人でこの部屋を抜け出てスニーキングミッションするわけだが、そうなれば当然ここから3人減ることになるわけで。

 この後のグランガッチの王族との謁見の時に人数おかしくね? って話になる。

 でもそこはノインさんが何とかしてくれる。

 

「では私は……召喚魔法『ドッペルゲンガー』。……これでよし、ですね」

 

 ノインさんが周囲に一切魔力を漏らさずに、部屋の外にバレないように魔法を行使。

 高等術式である召喚魔法で、魔獣『ドッペルゲンガー』と同じ効果を持つ素体を召喚する。

 前にバアルが操って使ってた奴ね。あれは魔族による使役魔法で魔獣の姿形を変えて操っていたわけだが、今回のこれはノインさんの意思で操るわけだ。

 スライムみたいな素体が見る見るうちに俺とイレヴンとルドルフさんにそっくりな姿になり、俺らの代役を果たしてくれる。

 これからの会合でもどうせ俺らは喋る事はないんだ。ノインさんの後ろでじっとさせておけばいい。

 

「……我が末妹がこれほどの魔法を行使できるとはな。本当に爪を隠していたなノルンよ!」

「ほんそれー! マジで見分けつかねーわ……頑張ってたんだなノルっちー! えらい! おねーちゃん嬉しいぞー!」

「あっ、いえ、その、ほ、本とか読んで~……?」

 

 そんなノインさんの魔法の腕前に兄姉もベタ褒めだ。もっと褒めてあげてくださいよ。めっちゃノインさん恐縮してるけど。

 このドッペルゲンガーの出来はヴァリスタさんもヒルデガルドさんも太鼓判を押す出来だ。任せても大丈夫だろう。

 

「うし……んじゃ行ってきます。あと頼んだぜみんな。ミャウも俺のドッペルくんの肩に乗っててな」

『みゃ!』

「主殿とイレヴン殿ならば万が一はないと信じており申すが……どうかお気をつけて」

「ロックくん、無理はしないでくださいね~。ヤバくなったら私どこからでも駆けつけますからね~」

「あったけぇ。任せてくださいよバッチリやり遂げてきますからねェ!」

 

 デカパイおねーさんたちからの激励を受けて、俺たちは潜入調査に向かうべく窓を開けて部屋を飛び出して行った。

 

 

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