勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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82 外見に対して口調のギャップがひどすぎる!!

 

 俺とルドルフさんが気配を消しつつ壁からちらりと横顔だけ出して中を観察。

 イレヴンはステルス状態だからいつでも動けるように通路の真ん中で部屋の中をガン見している。

 

(……獣皇フォルクルスで間違いないでしょうね。特徴的なライオンのような顔……そして、ヤツの前に誰かもう一人いるようです)

(ん、マジか)

 

 壁からのぞき見している都合で近くにいるフォルクルスしか見ていなかったが、アイツが座って向かっている机の向かい側に誰かもう一人いるらしい。

 俺とルドルフさんの気配察知に引っかからないほどの相手か? マジか?

 

(ええ……獣人の女性ですね。猫型の、紫の毛並みは珍しいですね)

(ケモ度何%?)

(難しい物差しを使わせやがるなこのマスター。……40%、くらいでしょうか? 腕や脚は体毛に覆われてはいますが顔まわりは人間に近く、猫耳が生えていて……二足歩行ですね)

(だいたいイレヴンのケモ率認識が分かって得られたものある)

(六大将軍の目の前にいてこんなアホな会話する人います??)

 

 イレヴン曰く、紫の毛並みの猫耳ケモ獣人がその向こうに立っているらしい。

 それを見るために顔を出したいところだがそれをやると流石にバレる予感がするので見れないが……しかし紫の毛並みに手足だけの体毛の猫耳か。

 ()()()()()()()()()()

 

(ところでおっぱいデカい?)

(そろそろ本気でキレていいですかマスター。本当に今は正念場で……)

(いやゴメン真面目な質問。胸がマルカートさんくらい大きくて、身長は170cmくらいで、尻尾が三股に分かれてて、吊り上がるタイプの目で、顔は美人? ()()()()()()()()()()()()()()()?)

(ッ……ええ、マスターの言う外見で間違いありません。ドンピシャです……彼女を知っているのですか?)

(ああ)

 

 イレヴンにその外見で間違いないか確認した。

 マジか。何でここにいやがるんだコイツ。

 コイツは───

 

(───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

(……!! それは……)

(グンバツに美人だったんでよく覚えてる。あん時はリンを盗み出したときに一悶着あって、その後俺がギルドに逃げ込んで奴隷商人しょっぴくように伝えて捕まえてもらって……って流れだったから、俺の方で誰が捕まってたのか見てねぇんだよね。逃げてやがったか……そんで魔族だったのか)

(マスターがリンと出会ったのは私を目覚めさせる3ヶ月ほど前でしたか。その頃には既に魔族が復活していた……ということでしょうか。バアルよりも前に……)

(なのかもな。しかしコイツ何でここにいやがるんだ……何か喋れよクソ)

 

 そう、俺がイレヴンと出会う前、リンと出会ったときに奴隷商人のグループにいた女だ。

 リンが隷属の首輪で力を奪われ捕まっていたキャラバンの、その周囲にいる奴隷商人どもに混ざってた。

 奴隷商人が目立たないようにしてたのかみんな特徴のない目立たない服装だったのに対し、この女だけ異様にエロくて服も高級そうでデカパイッ!! ってなったからよーく覚えてるんだ。

 まぁ見つかったら死ぬなって勘が囁いてたから当時は泣く泣くスルーしてリンを助け出して、でもリンが暴れちゃって結局バレて、なんとかリンを宥めつつ逃げ出してギルドに舞い戻って報告して……だった。

 あの後のギルドの冒険者たちの追っ手を逃れてたのか。捕まえたって報告は貰ってたけど……全員じゃなかったのか、それともこいつだけは奴隷商人の一味じゃなかったのか。

 多分後者だろう。明らかに身なりが違ったもんな。

 

 であれば、この女はどんな理由でリンをさらったときにあの場にいて。

 そして今、グランガッチの王宮地下で獣皇フォルクルスといるのか。

 きな臭ぇ匂いがプンプンするぜ。ヤな予感しかしねぇ。

 

 さて、しかしそうしてじっとここに居続けても何も変化はない。

 フォルクルスもなんか呑気に茶なんてしばいてやがるし。グランガッチ名産のチャイかなこの甘ったるい匂いは。

 ライオンの癖に甘い茶飲むのかよ。似合わねぇわ。

 こいつらの会話が何もなくて、情報を引き出そうにもこれ以上踏み込んだら居場所がバレるだろうし。

 ここは撤退か。魔族が王宮の地下の隠し部屋に存在していた。その情報だけでも値千金だ。少なくとも王宮で暴れても後で説明する理由が出来る。

 グランガッチが魔族に侵されていることは間違いなく、それを助けるために行動したという事に出来る。と思う。

 戻るか─────そう、考えた時だ。

 

「────ヘッ。アイツら素直に謁見の間に移動しやがったなァ。危機感ってもんはねェのかねェ? オーディンの王族はバカばっかりなのかァ?」

「王都の王族も民も平和ボケしてるにゃ。前にウチが『餌』を運んでいた時はまーぁ商人も門番もゆるゆるだったにゃ。あの時ロックが急に出てこなければうまく譲れたんにゃがなぁ……」

「そのロックも来てるってのに随分と愚鈍じゃねぇかァ? 何とでもなるって思ってんのかねェ……わっかんねェや。ただアイツには色々ケチつけられてっからなァ……オイラも含めてよ」

「バアルのドッペルゲンガーの討伐、ヴィネアの撃退に次いで……ウチらが王都に忍び込ませた獣人による王都襲撃もアイツが止めてやがるにゃ。人形も含めてロックの危険度は高いにゃ……できればここで殺しておきたいにゃ」

「だなァ。んじゃやるか……カリーナ、お前も行って来い。死なねェ程度に頑張ってこいや」

「にゃ。魔装具持ちの冒険者があそこ多いにゃ……行きたくないにゃ」

「オイラだって行きたくねェよ面倒くせェ」

 

 ─────口調ッ!!!(渾身)

 

 いやさぁ! 話の内容もちょっとビビったよ!? 俺の名前出て来たしさぁ!

 カリーナって言うのかな、魔族の幹部だな多分な! フォルクルスの部下の一人はカトルたちが討伐したけどもう一人の幹部の方かな……とかリンの事をコイツら『餌』って表現しやがったかって事とかやっぱりこいつらにグランガッチ陥落させられてんなとか色々情報得られたけど!!

 口調よ口調!! そこが気になってちょっと話が頭に入らなかったわ!!

 ええ……すっごい厳つい筋肉ムキムキライオン丸なフォルクルスが下っ端口調で一人称オイラだし……カリーナは俺の記憶してる限りでめちゃくちゃ雌豹って感じの大人のお姉さんなのに一人称ウチで語尾にゃ族だし。

 すげぇよ外見とのギャップがよ。なんだお前らそのギャップどこに需要あるんだよ。

 いや大人のお姉さんが語尾にゃ族なのはちょっとグッとくるもんがあるけど。何で魔族なんだよクソがよ。

 

 さてしかしこいつらが喋った内容は火急の物であったことは間違いない。

 どうやらこの国の王様たちとの謁見が始まったらしいが……そこを明らかに狙っている旨の発言が零れている。

 ノインさんたちが危ない。いや、無論のこと向こうにも最強メンバーが残ってくれているからすぐにやられたりなどはしないと思う。状態異常で攻めてこられてもサザンカさんほか抵抗力の高いメンバーだしな。回復魔法もノインさんアンナ様が使えるし。

 だがここまで行くともう一度戻った方がよさそうだ。

 完全に裏は取れた。魔族が狙ってて、ここに六大将軍がいることも把握した。

 これを討伐するか一度国から撤退するか……判断はアンドレ様に任せることになるが、現状のヤバさを報告に行った方がいい。

 そう考えて、俺はルドルフさんに合図をして撤退しようとして。

 

「さて────────」

 

 椅子から立ち上がったフォルクルスを見て、ギンギンに勘が叫び出した。

 ヤッバい。

 ()()は、止めなければいけないものだ。

 

(イレヴン、止めろっ!! ドリルスティンガーキャノン撃て!!!)

(なっ───いえ、了解です!!)

 

 咄嗟にイレヴンに指示を出す。

 攻撃をするとイレヴンのステルス状態が解けてしまってこちらがいることがバレてしまうが……それを差し置いても、あの行動を止めなければヤバいという確信。

 何をするかは分かっていないが、何をおいてもアレをやらせてはならない。

 

 立ち上がり、すぅー……、と大きく息を吸い込んだフォルクルス。

 来る。

 それを。

 

「───ドリルスティンガーキャノンッッ!!」

 

 ステルス状態を解除して、イレヴンが貫き果たすために放った。

 回転力を瞬時に高めて放たれたそれは、ここ最近のレベルアップに伴って内臓魔力炉心の性能向上もしてきた成果もあって、過去最速の凄まじい速度で放たれて。

 地下の空間に空気を切り裂く高速回転音が生まれ、そしてフォルクルスの顔面に向けて放たれたそれは───

 

「……おおッとホんぎゃッ!? あぶにゃ!! マジか!? お前らなんでここにいるにゃ!?」

 

 俺の視界の外、フォルクルスに向けて飛び込んできたカリーナがドリルスティンガーキャノンをその爪で弾き飛ばした。

 威力を殺し切れておらず、爪は見事に砕けたが……軌道がズレる。

 フォルクルスの脳天を捉えていたイレヴンのドリル腕が僅かに弾け、フォルクルスからそれてしまった。

 この狭い室内でも急制動のホーミングを利かせて戻ってくるが……生まれてはいけない一瞬が生まれてしまった。

 

 息を吸い終えたフォルクルスが、それを放つ。

 

「────────!!!!」

 

 咆哮。

 そう見えた動作に、しかし……俺の耳には何も響かなかった。

 ルドルフさんも同様。隙の無い構えを取りつつも、音は聞こえていなかった。

 ただし、イレヴンはその音を捉えていた。

 

「この、咆哮ッ───超々高音!! まさか獣人の耳にだけ聞こえるように……!? これで洗脳していた!?」

「っぷはァー……フンッ!!」

 

 どうやら人間の耳には聞こえないほどの音だったようで。

 しかしそれを聞き取ったイレヴンが表情をゆがめて、同時にフォルクルスが己に向かい反転して飛んできたイレヴンの腕を叩き落した。

 くっそ。六大将軍……実力はホンモノか。あんだけ闘技大会で輝いて今もカリーナの爪を砕いた必殺のドリルスティンガーキャノンを、まるでおもちゃの矢を落とすかのように片手間に弾きやがった。

 イレヴンの推理を聞くに、さっきの咆哮で獣人が操られるような何かなのか……そんなもんをパなさせちまった。実にまずい。

 

「フォルクルス……ッ!!」

「おやァ……おやおやおや! 噂のロック=イーリーアウスさんじゃねェか! どうしたよ、お茶でもしに来たかァ?」

「男と茶ァ飲む趣味ねぇわ! けどそっちのカリーナが俺専用のメス猫になるってんならごちそうになってやらなくもないぜ? メイド服着せておっぱいブルンブルンさせてお茶注いでくれればなぁ!!」

「最近はこのマスターの軽口も頼もしく感じられるようになってしまって」

「余裕が常にあるのはとてもよいことですな」

「ロック……!! ウチの商談をぶっ壊した恨み忘れてにゃいからにゃ!!」

「あれは違うんだ!! 俺はノックスっていう鬼畜上司に無理矢理仕事させられてェ……!!」

「にゃに? ノックス……そういえばヴィネアがそんな事言ってたようにゃ……?」

「どうして魔族を相手する時に常にノックスを生贄に捧げるのですかマスター」

「リリース召喚でも狙っておるのですかなロック様は」

 

 一旦イレヴンも腕を戻し、室内で俺たちは相対した。

 獣皇フォルクルスとその幹部カリーナ。

 今はまだ会話が通じているが、二人とも無論の事気配がヤバい。

 特に六大将軍のほうだ。これまで相対したバアルやヴィネアといった幹部と比べても、圧倒的な猛者の気配。

 勘はもう先程からレッドアラート。

 とにかく今は逃げるしかない。この閉所では出来ることも限られてしまう。

 

(イレヴン、ちょっとでいいから隙を作ってくれ……したら速攻で脱出する!)

(了解です!)

 

 だからまず隙を作る。

 イレヴンが隙を作るための隙を俺が。

 

「よし!! ルドルフさんこんな時に悪いけどノインさんのスリーサイズ教えてくれますか!?」

「はにゃ!?」

「ふむ。姫様は169cmの104:63:98でございますな」

「ドスケベ王女がよォ!!!」

「何だお前ら面白ェな?」

「ついでだ!! フォルクルス!! こっちの姫様のスリーサイズを教えたんだからそっちのカリーナのスリーサイズを教えろ!! 男の好みもだ!!」

「何でウチの情報まで求めてくるにゃ!?」

「おう、コイツは身長172cmの97:66:112だぜ。オスの好みは情熱的なのがタイプだとよ。メシの食い過ぎで150年前よりも腰とケツがデカくなってやがんのウケるだろ?」

「いや……好みッ!!」

「どうしてそんなに詳しく知ってるにゃフォルクルス様!?」

「エクスアームズ09『ファントムレーザー』ッ!!」

 

 そのためにはやはり会話だ。

 知的生命体が一番隙を生むのはエロ談義をしている時だ。俺がそうだからな。

 したらルドルフさんもフォルクルスの奴も割と乗ってくるっていうね。いい情報聞けたわ。

 その会話の隙をついて、イレヴンが最速の発生技であるファントムレーザーを繰り出した。

 サザンカさんの隼断には及ばないがそれでも掌から放つ光の魔力砲は魔族特攻の兵器。同時にこの暗闇で光を放つことで目眩ましの副次効果を生む。

 ナイスアシストだぜイレヴン。

 会話で気が抜けていた魔族の二人もこの隙をついた一撃ならば───

 

「ハハハ、ロックお前デカケツ好きかよ!! なんだァ……話が合うじゃねェかよ。実はオイラも女はやっぱケツだと思っててよォ」

「なにっ……ぐッ!?」

「イレヴッ……!?」

 

 ───だが。

 フォルクルスが己に向かい放たれたファントムレーザーを凄まじい速さで姿勢をさげて回避する。

 その勢いのまま低空ダッシュで距離を詰めてイレヴンの脚をデカイ手でがしっと掴み、一気に引き上げて逆さ吊りにしやがった。

 クッ……速すぎる!! 俺への攻撃でもないから捌き斬りで返すことも出来ねぇ!!

 会話に乗ったのはこっちの油断を誘うためか!? それともこれがコイツの素なのか!? 俺に似てんなこいつ!!

 

「そりゃパイオツもいいもんだぜ? けどさァ、女って追っかけるもんじゃねェか。そん時見えるのはケツだろ? やっぱケツだよな」

「このっ……離せ!! エクスアームズ04『インパルス……」

「このケツもなかなかいいケツだけどなァ。壊さなきゃならねぇのが残念だ」

「てめッ……」

「イレヴン様ッ!!」

「おっと貴様らはウチが相手してやるにゃ!!」

 

 イレヴンがそれに対抗する前に、フォルクルスが動く。

 俺とルドルフさんがイレヴンを救い出そうとするも、カリーナが前に出てきて救助が届かない。

 そしてフォルクルスはイレヴンの脚を掴んだままブンッと小枝のように振るって……ぐっと、力任せに()()()()()を取って。

 

 まずい。

 

「ッ──────」

 

 ()()()()()

 

 

『────護ればいいのね? パパ♡』

 

 

 

「それじゃあ……あばよォッッ!!!」

「ぎ…………ッ」

「イレヴンッ!!!」

 

 フォルクルスがそのままイレヴンを天井に向かってブン投げた。

 それは俺が見たことがないほどの速度と衝撃をもって投げ飛ばされ…………イレヴンはとんでもない破砕音と共に天井にめり込み、全面にヒビが入って。

 

 天井全体が瓦礫と変わり、地下室が崩落し始めた。

 





~登場人物紹介~

■カリーナ
ケモ度40%くらいの猫系獣人。胸も凄いが腰回りのボリュームが凄い。
かつて違法奴隷商人にリンを卸していたが、その取引をロックに台無しにされている。
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