勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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第五章 黒竜の住む山巓
88 早朝デカパイ感謝申し上げます


 

 朝。

 

「……んむ」

『フッピー……ミャスムピー……モナァー……』

 

 俺はグランガッチの王宮内、客間として準備された部屋のデカいベッドで目を覚ました。

 ふっかふかのお布団の上にはいつもの如くミャウが鼻提灯作って爆睡している。

 そういやコイツはフォルクルスが咆哮した時に操られてたのかな?

 まぁ事件が終わったらひょっこり出て来て無事だったしどうでもいいだろう。鼻提灯つんつん。ぱーん。

 

『ふみゃっ!? みゃ……みゃあ!』

「おはよ。……さて」

 

 身を起こして部屋の中を見渡す。

 王族にはそれぞれ一部屋ずつ、そして同行してた俺ら護衛組は男女に分かれて部屋を取ってもらって。

 あと王都から同行してた騎士団の人たちは詰所の別室で一晩を過ごしたらしい。襲撃の時は洗脳された獣人たちの猛攻を何とかしのいで、事件後は国同士の折衝の中で色々雑務に追われてたようで。あの人たちもお疲れさんやな。

 

 さて改めて。

 早起きの俺と比べてカトルもヴァリスタさんも流石に早朝には起きないようで、静かに寝息を立てて自分のベッドで眠っている。

 起こしてもなんだしな。静かにしといてやろ。

 昨日色々話したリンはあの後女子部屋でみんなと何話したんだろな……気になる。

 サザンカさんなら起きてるかな。あの人は俺よりも早起きだ。遠征の道中でも早起きして朝食を作ってくれてたので本当に助かった。

 ちょっとサザンカさんの様子見てくるか。料理は今日は王宮の方で作ってくれるから手持無沙汰になってるかもしれん。

 

「そのついでにヒルデガルドさんの寝起き突撃インタビューをしてくる。うむ完璧な作戦だ」

『みゃ……みゃ……』

 

 呆れた雰囲気を出すミャウを布団からどかして、グランガッチの部屋に備え付けのガウンを脱いでいつものパーカーに着替えて準備完了。

 ミャウを頭の上にのせて、足音を立てずに部屋を出る。

 

「こっちの国の朝日はなんか色が違うな。黄色い感じ」

『みゃあ!』

 

 空の色が違うのか、国の建物の色が違うのか……地平線から頭を出した太陽も王都の自宅で見るものと比べると受ける印象が違う。

 王都から1000キロ以上離れた国に来てるんだもんな。旅してるなって実感がここにきてようやく湧いてきた。

 3日の遠征からグランガッチについてからすぐにスニーキングミッションして戦闘して後始末して……ってずっと忙しかったからな。

 もちろん魔族との争いはまだ続いてるんで心の底から気は抜けねぇけど……少しは息抜きするか。

 ホエール山脈、のふもとのバードマン温泉。そこを目指して出発するのは明日だ。

 今日は登山に向けた準備の買い出しをする予定である。リンはすぐに向かいたいって言うかもだけど焦ってもいい事はない。のんびり観光しながら整えたいね。

 

「さてそうしてやってきました女子部屋の前」

『みゃ』

「無音開錠のテクが輝く時だぜェ……!!」

『みゃあ……』

 

 女性陣がお休みされているお部屋の前に到着。

 当然にして鍵がかかっているのだがそこは俺の開錠スキルが輝く。音も気配も生まない俺のスーパー開錠技術により潜入もお手の物というやつよ。

 今この部屋の中にはイレヴン、リン、サザンカさん、ヒルデガルドさんがいるはずなのだ。

 オールデカパイ。フォーカードだぜフォーカード。リンは対象外だけどそれ以外はもう甘露の塊というやつよグヘヘ。

 最近は公務の遠征中だったりであんまりハジけられなかったからなァ……! たまには女の園に突撃して目に優しい光景を味わって視力回復したっていいよなァ!?

 いざ突撃ッ!! ホエール山脈攻略前に8つの神々しい山嶺を踏破せよッ!!

 

「開いたぜグヘヘ!! それじゃおっじゃまグッヘェ!?」

「……む。申し訳ありませぬ主殿」

「扉の前に立っていては危険ですよマスター。まぁ何しようとしてたか丸わかりですが」

『みゃ』

 

 そして鍵も無事攻略して開けようとした瞬間にサザンカさんが扉を開けてきて俺の顔面をしこたま打った。ITEッ!!

 赤くなったお鼻をすりすりしてれば俺の女(現実逃避)二人が並んで出てくる。

 どったの。サザンカさんはともかくイレヴンまで。

 

「まぁサザンカさん起きてるかなって思って来たんですが。イレヴンまで起きてるのはどしたの? 眠れなかった?」

「私に睡眠は必須ではないことを忘れていませんか? 遠征に出発してからは常に起きていますよ私は」

「マジかよ」

「昨日の今日ですしここは他国の王宮ですからね。もし何かあれば窓を叩き割ってでもマスターの元に駆け付けられるようにしていました」

「真面目っ!!」

「忠臣よな。……主殿、中庭に出ませぬか。やはり朝は少しは体を動かさぬと調子がでませぬ」

「ん。俺もそのつもりだったんでいいっすよ! ……ところでリンはよく寝れてました?」

「ええ。満腹でぐっすりでした」

「ヒルデガルド殿の布団に潜り込んで竜人同士仲睦まじく鼻提灯を作っておられたよ」

「そりゃなにより。昨日のパーティの料理3回くらい全滅させてたもんな二人で……」

 

 なんとイレヴンはこの遠征に入ってから眠らずの番をずっと続けてくれていたということで。律儀なやつ。

 周りみんなが眠ってる中で一人だけずっとベッドで起きてるってどんな気持ちなんやろな……。小説とかその時間に読んでたりすんのかな。

 やっぱ今度異世界転生チートさんの本を貸してやろう。金はあるし王都に帰ったら全巻購入してやるかぁ!

 

 さてそんでサザンカさんにもお誘いを受けて俺たちは一度中庭に出る。

 王都よりも湿度の高い空気。朝霜を纏う植物の香りが匂い立つ。

 昨日の大立ち回りで崩壊して立ち入り禁止になっている向こう側には立ち入らないようにして、暫く3人と一匹で散歩する。

 

「今日は明日に備えて買い出しでござったな。登山となるとまた色々準備せねばなりませぬな」

「そうすね。つってもストレートに登山するつもりはないけどね。なにせ空飛べるイレヴンとリンがいるし。抱えて飛んでもらう予定」

「今回ホエール山脈に向かうのは私達のみですからね。後は標高の高い所に行くのでその辺りのお二人の対策を考えねば。私は全環境適応型の高性能アンドロイドなので心配はいりませんし、リンも竜人なので高所も問題はありませんが」

「厚着は出来るようにしておきたいなー。つっても雪が降る季節ってわけでもないみたいだけど」

 

 歩きながら話すのはこれからのこと。

 昨日の時点で色々情報を仕入れてある。ホエール山脈のドラゴンがいるだろうあたりは標高が高いが……季節的にも今は雪が積もったりはしてないらしい。

 イレヴンとリンの速度で飛んでいけばまぁ3時間もすれば目的の所に行ける見込みだ。ワイバーン便より速いからなウチの二人は。リンはさらに成長したし。

 だから買い出しも食材関係が主になるのと念のための高山病対策と上着に羽織れるマントかな。防風対策はしっかりしとこ。

 

 ちなみに昨日の時点で俺らがホエール山脈に寄って行って、みんなが帰国するのに付き合えないのはノインさんに了解を取っている。

 『ロックくんには、ロックくんがやりたいことをしていてほしい』って言ってくれてね。騎士になったのに帰りの道程を護衛できないことは申し訳ないと恐縮しつつも、そこはご了解を頂いていた。

 残念そうにはしていたけれどね。流石にノインさんまで連れて登山はできねぇからな。

 

 なお捕まえてた魔族幹部のカリーナだが、束縛したまま王都に護送するらしい。

 道中で暴れ出さないか心配だったが、ルドルフさんの魔装具『シルバーエッジ』が束縛に特化したそれなのでずっと糸で縛りつつ、ヴァリスタさんとアンナ様が得意の幻惑魔法を掛け続けて無力化して運ぶって話だ。

 王都についたらギルドの監督下で更に情報を引きずり出す予定とのこと。

 デカパイとはいえ魔族だからね。俺がかけられる情けはないよ。暴れ出さないよう祈るのみである。

 

 しかし…………こう散歩してるだけなのも暇ですわね。

 

「なんか手持無沙汰」

『みゃあ』

「まぁ他国の宮殿内ですからね。朝食を頂いた後は街並みを歩くことになるでしょうが……」

「うむ。では少し体を動かそうか主殿。よければ拙者の鍛錬に付き合っていただけませぬか?」

「えぇー? 俺よりイレヴンの方がいい勝負できると思いますよ?」

「イレヴン殿とは遠征の道中で何度か組み打ちさせていただいておるからな……それにイレヴン殿相手であれば加減は無用となってしまう。拙者は今、加減した戦いを覚えたいと思っているのでござる。今回のいくさでも洗脳された獣人の方々らを対処する際に中々うまくいかなくてな……」

「なーるほど。そう考えると確かに俺の方がいい……のか? まぁいいか。ほんじゃ俺は避け続けるんでいい感じに攻撃してもろて……あ、隼断は駄目っスからね! あれはどうやってもどっちか死ぬから!!」

「無論。主殿に当たりそうになれば刃は止めまする、拙者の腕を信頼頂きたい」

「回復薬は備えておきます。頑張ってくださいねマスター」

「二人に対して無限の信頼があります」

『みゃあ!』

 

 暇を訴えたところサザンカさんが朝の鍛錬に俺を誘ってこられた。

 俺はいつものデカパイサラシが揺れるのを見たかっただけなんだけどな……でも流石に王宮でサザンカさんも肌を晒すのはあれか。今は軽装の巫女服風の衣装だし。

 仕方ない。こうなりゃ間近で服の下で揺れるデカパイを堪能させてもらおう。

 ミャウをイレヴンに預けて、5mほどの間を空けてサザンカさんと相対する。

 気楽なもんだ。サザンカさんも俺を斬らないって約束してくれてるし。サザンカさんの太刀筋はこれまでも何度も見せてもらったのでリズムは覚えてるし。

 避けるだけなら何のその。デカパイが不意に揺れてしまって目を奪われる以外で不覚は取らんわ。

 余裕があれば例の護りの指輪のバリアーも練習したいもんだね。チャンスがあればやってみよ。

 

 そんなわけで模擬戦開始。

 

「では────シィィッ!!」

「ふんぬらっ!!」

「お見事! ならば二の太刀ッ!!」

「そばっとォ!!」

「相変らずマスターの回避はキモいですね」

『みゃ』

 

 神速の踏み込みで間合いを詰めて上段からの大振り。

 右にズレて回避。

 振り下ろされた太刀が振り下ろす途中で俺の胴を薙ぐように軌道を変える。

 ブリッジで回避。

 踏み込みがてらの蹴撃で膝を放ちつつ詰まった間合いで柄をぶつけに来るサザンカさん。

 更に間合いを詰めて挟み込まれる前にその腕と足の間に退避。密着。

 腰をぶつけて零距離から間合いを離すことを画策するサザンカさん。

 これは受ける。両手でカバーしつつ後ろに飛んで衝撃を受け流す。ついでに服の上からちょっとおっぱい触った。性欲ッ!

 離れた間合いで薙ぎ上げ。

 くねっと回避。

 振り降ろしからの三連撃。

 ワンタンメンのリズムで回避。

 不可避の角度から踏み込み斬り。

 関節外して可動域広げて回避。

 関節を戻す隙をついて柄底によるとっつき。

 サザンカさんの目の前でぱんっと掌を打って一瞬の隙を作って全力で腰を引いてピッタリ回避。

 

 そんな感じで付かず離れずの距離でサザンカさんが振るう太刀を紙一重で避け続ける。

 うーん……これでサザンカさんにとっては峰打ちなんだなぁ。当たったらスパッといっちまいそうなんだけどな。

 サザンカさん器用だなぁ。すげーや。

 結局『護れ』と指輪に指示する暇もなく回避に専念し続けるしかなかった。

 あのバリアーを展開するには本格的に接敵する前じゃないとまずいな。これほどの密度の剣戟が相手だと護りに気を張る余裕がねぇや。

 それが分かっただけでも大収穫。使い所を間違えないようにしないとね。

 

「……ふーっ……お見事也。霞を相手にしているような手応えの無さ、流石でござるな主殿」

「褒めてますそれ?? まぁ手加減してもらってりゃあね、これくらいは。本気出したら俺なんて一瞬でズンバラリでしょサザンカさん」

「ご謙遜を。うむ、やはり拙者の目は違えてはいなかった」

「マスターらしい感想ですね。お疲れ様です」

『みゃあ』

 

 5分ほど大太刀を回避し続けたところでサザンカさんが息をついた。

 ……俺の記憶が正しければ最初の一息から今まで呼吸してませんでしたよね? 肺活量ヤバいな。やっぱ人類最強かなこの人。高山病とか全然大丈夫そう。

 でもまぁサザンカさんにとっては今の攻防は汗をかくほどの運動ではなかったようで。俺結構ぜーぜーしちゃったけどね。朝飯前に部屋に備え付けのシャワー浴びるか。

 

「うむ、いい運動が出来申した。お付き合いいただき感謝でござる、主殿」

「どーいたしまして。俺も眼福でしたよ揺れるサザンカさんのデカパイが」

「うふふ……主殿のえっち」

「ッ……今のすっごくいい……!!」

「イチャつきやがるな朝から」

『みゃ……』

 

 サザンカさんのお茶目な笑顔が疲れた心を癒してくれて、そんな感じで朝の時間を過ごしたのだった。

 

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