勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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89 ズキュウウウウゥゥン!!!

 

 みんなで朝食を食べ終えて今は午前中。

 俺とイレヴン、リンとサザンカさんはグランガッチのメインストリートを歩いていた。無論買い出しのためである。

 

「ふんふん、ふんふん……♪」

『みゃあ』

「とてもリンの機嫌がいいですね」

「朝飯しこたま食ってたからな?」

本気(マジ)でござるか主殿」

 

 そしてなんか楽しそうに鼻歌を歌うリン。

 何故かこいつは今俺の肩の上に乗っている。肩車というやつだ。

 リンは出会った頃から肩車されるのが好きで、しかし尻尾と羽根があるのでクソ重くて俺もやりたくないのだが、何故か今朝はめっちゃねだられて仕方なく肩車してやっているところだ。

 リンの身長は137cm。デカパイがちょうど俺の頭に乗るような感じになるので頭頂部に当たっているのだがこれに欲情するほどゲスではない。パパなので。

 しかしほんとに今日はなんか機嫌がいいな。なんでやろ。

 

「リン、楽しそうだけどなんかいいことあったか? 親御さんに会えるのが楽しみか?」

「うん! それもそうだし、ロックがずっといっしょにいるってやくそくしてくれたからそれもうれしいの!!」

「健気か。まぁ約束を違えるつもりはないけどさ。何があっても別れたくねぇしな俺もリンと」

 

 リンが素直におとうさんに会いに行くの楽しみっていう他に俺と離れ離れにならないことが嬉しいって言ってくれて……なんか胸が温かくなっちまいますわね。

 第二のパパとして育て方は間違えてなかったという事だろうか(落涙)。

 本当の親御さんに会う時にもしっかり挨拶しないとな。もしお父さんだったらお義父さん娘さんを僕にくださいって挨拶しなきゃいけないし、お母さんだったらドラゴニュートに変身できないか聞いてみないとな。

 リンのママだぜ……? 絶対デカパイドラゴンに変身できるよママだったら!! それを求めている所を否定できないところはあるぜ!!

 

「王都との移動方法も今ノインさんがやってることが成功すれば何とかなりそうだしな」

「聞いた時は驚きましたね……国家間の転移陣を再設置できるかもしれない、などとは」

「ヒノクニでは全く転移陣など存在しておりませんでした。歴史上に語られる存在でござったなぁ……この目で見れるかもしれないというのは誠に貴重な経験なり」

 

 ついでに今朝ちょっとノインさんから伝え聞いた話。

 昨日の大立ち回りの時にノインさんがこの国の守護結界を展開する装置を再起動した際に、国全体に闇の魔素が追加で注がれてたのを光の魔力に変換したことで……国周辺の魔素の量がかなり濃密になっているという話だった。

 それで同じように闇の魔素が一度注がれて召喚陣が展開された王都の闘技場の舞台も上手く術式になんか組み込むやらなんやらで……150年前には各国に設置されていた国家間を移動する転移陣がまた作れるかもしれない、という話だった。

 ノインさんがその辺めちゃくちゃなんか色々調べてやってるんだって。

 

『だいたい新しい国に移動したときはファストトラベルが設定できるんですけどそれ私にしかできないんですよね~。王都から出たことなかったから今の私のファストトラベル先は王都だけだったんですけどグランガッチも登録できればそれを使ってうまく転移陣起動できるといいんですけど~』

 

 って言ってた。

 何言ってるかよくわかんなかったけどまぁノインさんならきっと転移陣の再設置もやりとげてくれるでしょう。

 姫の騎士だけど特に俺がやれることもないから買い出し行ってきていいですよ~って言ってくれたのでこの買い出しは勿論了解を取ってきている。

 

「グランガッチと王都の転移が出来るようになればホエール山脈まで相当近くなるもんな。グランガッチからなら山脈までイレヴンバイクで本気で走れば1日かからないし」

「ですね。リンがマナの管理をする……というのも、ずっとそこにいなければならないという事でなければ王都にも遊びに来られるかもしれません」

「そうだといいなー。わたし、こじいんのみんなやシスター、カトルやティオにもあいたい」

「今も親御さんが闇のマナ管理してるんだよな、特に闇の魔素が世界中で濃くなってたりはしてねぇし。どんな管理してていつごろにリンが継ぐ事になるのか……その辺りは聞いておきてぇな」

「魔族の侵攻も本格的になっているこの世界の状況で闇の魔素が漏れ過ぎるようなことがあっては人類にとっては余りにも不利……魔族も狙っており申すな。リン殿にちょっかいを出していたのもそれが理由でござるし」

「うん。……まぞくを、まおうをたおせばかんりもしなくてすんだりするのかな?」

「その辺もしっかり話聞いて来ようぜ」

 

 ホエール山脈にいるリンの親ドラゴン。

 それがどんな使命を持ってて、どんな風にマナの管理してて……そして、いつその使命をリンに継ぐ事になるのか。

 リンを生んでからどんなふうに一緒にいて、どんな風に育ててたのか。

 リンは物心ついてすぐに攫われたって話で、親ドラゴンと何か話したりしてたって記憶もない……らしいけど。

 でもこの外見で物心がついてすぐってのも何ともすげー話だな。ドラゴニュートって肉体が早熟なんだろうか。幼少期って概念はもしかするとないのかも。

 その辺もヒルデガルドさんにあとで聞いてみよ。

 

「マスター、もうすぐ店につきますよ。そろそろリンを……」

「おー。よしリン、降ろすぞ」

「うん。かえりもかたぐるまやってね、ロック!」

「がんばる」

『みゃ』

「はは……()き好き」

 

 事前に王宮で聞いていた遠征道具を購入できる店についたのでリンを肩車から降ろす。

 重かった(本心)。

 でもまぁこんくらいで喜んでくれるならいっくらでもやってやるわい。ガキを肩車するのは慣れてるしよ。

 さて漏れがないように買い出ししておきますか。登山装備にどんなのが必要なのかは知識として持ってるけどホエール山脈は人類未踏の地。

 何が出てくるかわからないから備えられるだけ備えときましょ。耐寒のマグマポーションとかいっぱい買っとこ。王都じゃ高いし。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 はい。

 道具を色々買いそろえて一度王宮に戻ってきて昼食を取り終えたところで、みんなの現状とそれぞれの動きについて打ち合わせることになりました。

 

「一先ずは~……転移陣は起動することに成功しました~。グランガッチの正門の外と、王都の闘技場の舞台を繋いであります~。私がもう一度王都に転移して戻ってきてますので安全性も大丈夫です~」

「マジすか。すげーぜノインさん!」

「ありがとうございます~。……王都側が国内なのがちょっとアレですけれどね~」

 

 まず一番気になっていた転移陣だが、無事に開通が出来たとのことで。やっぱすげぇぜ……ノインさん!!

 もうこの遠征に参加してるメンバーには俺らがノルン様をノインさんって呼ぶことを知ってくれてるのでフツーに呼ぶことにした。ノインさんもこう呼ばれた方が嬉しいって言ってくれたし。

 しかし偉業を成し遂げたノインさんだが、いまいち達成感のある顔をされていなかった。理由は分かる。

 

「うむ!! 出来れば王都も正門外に転移陣を置きたかったところだったな!! 物資の輸送や人員の転移という面で考えても少々セキュリティ関係が面倒になる!!」

「悪用されたときに王都側にデスり面ありよりよなー。魔族に使われちったらそれこそテン下げだしなー。……あ、いやノルっちの事は責めてねーからなー? めっちゃすげーしえれー!! こっからすぐに王都帰ってダーリンに会いにいけるっちゃもんなー!!」

「あはは……そうですね、私達の帰還にまず使って~……でもその後は転移陣の利用は慎重にしないといけませんね~。お互いの国のギルドか王族の許可がないと使えない……くらいにまずはしておきましょうか~」

 

 王都側の転移陣が国内に設置されてしまっていることだ。

 魔族が一度召喚陣を組み込んだ闘技場の舞台を再利用した転移陣になったようで、しかしこうなると転移陣を使ってワープしてきた者は国内にいきなり現れることになる。

 守護結界の内側に出てくるのだ。正門の門番チェックも当然スルー。

 もちろん便利ではあるんだけど、万が一魔族や……悪い企みを持つヤツに使われたときに、取り返しがつかなくなる。

 むしろそんな転移陣がどの国ともつながってた150年前ってのはどれだけ修羅の国だったんだろうか。当時の冒険者すげーわ。

 

「ではロック、イレヴン、リン、そしてサザンカ殿はホエール山脈のブラックドラゴンの調査に向かい……それ以外の皆と騎士団、および捕虜のカリーナは一度王都に戻ることでよいかな!!」

「私とカトルはそれで問題ない」

「リンちゃんの親御さんの件は俺も気になるけど……魔族がこんだけ動いてるってなると王都に魔装具使いがいなくなりすぎんのもやばいしな。ロック、俺は先に師匠と一緒に戻ってるからな」

「おお。ティオや孤児院のみんなによろしく言っといて」

「ああ」

 

 さてそうなると王都に帰るのを俺ら以外が躊躇う必要はない。

 またいつでも来られるわけだし、今回の事件の報告のためにも一度王都に帰ることになり、それは勿論俺ら以外のメンバー全員ということになる。

 俺らも別に王都に一回戻ってまたグランガッチに転移して来てもよかったけどね。それをしなきゃならない理由もないし。

 ブラックドラゴンとの面会が終わって帰る時には転移陣を使わせてもらおう。その辺はノインさんにギルドに話し通しておいてもらおっと。

 

「…………」

「んー……ヒルデの姐さんもしかしてお悩みお気持ち勢かー? リンちゃんの事気になるなら全然ロクちんについてってもらっていいよー? ヒルデの姐さんならいつでも転移陣使っていいってグランガッチに話しておくしなー?」

「……いいのか? アンナ」

「いいんよいいんよー!! 行きの道中も洗脳襲撃の時も守ってもらったりでちゃーんと護衛の仕事はしてもらったしなー!! 帰りはワープできんだから護衛いらないっしょー!! 兄様もノルっちも一緒だしなー!!」

「そうか……すまんな。では私もそちらについて行っていいか、ロック=イーリーアウス?」

「俺はもちOKっす……でも今回ホエール山脈に向かうのはリンですからね。リン、ヒルデガルドさんも来たいらしいけどどうする?」

「いいよ!!! ヒルデはおねえちゃんだから!!」

「ですって」

「ふ。姉か……末妹だった私にも妹が出来たか」

 

 しかし遠征メンバーの中でヒルデガルドさんだけは王都への帰還を望まなかった。

 この遠征中目をかけてくれていたリンが、その目的である親ドラゴンに……闇の魔素を管理するブラックドラゴンに会いに行くことに、やはり同じドラゴニュートとして気になるところがあるのだろう。

 俺としてはもちろん大歓迎。ドラゴニュートの事についてまだまだ聞きたいことあったしな。

 なんでみんなデカパイなのかとか、メスのドラゴンはドラゴニュートになれるのかとか、寿命どんくらいなのかとか、俺の女になるつもりはありませんかとか。色々ね。色々。

 リンも本当に彼女によく懐いている。昨日の夜なんかは一緒のベッドで眠ってデカパイ祭りになってたみたいだし。勿論リンもOK即答だった。

 

「ではヒルデガルド殿はロックについていくとして……我らは戻り次第国王に今回の件を報告し、今後はグランガッチと同盟国の連携を取って魔族侵攻の対策を練る事とする!!!」

「カリーナは今は気絶させてますが~、六大将軍の一人までグランガッチのような大国に攻め込んでいたことを考えると、他の国にも魔族の手に堕ちている可能性があります~。魔王も目覚めているでしょうし……今回のグランガッチの件は何とかなりましたが~、いつ魔王軍の本格的な侵攻が始まってもおかしくないですからね~」

「早いとこ魔王倒して平和をとりもどさねーとなー!! グランガッチも義父(パッパ)も無事だったからやる気モリモリアンナちゃんだぜー!!」

 

 それぞれの動きについてはこれで決定。

 俺、イレヴン、リン、サザンカさん、そしてヒルデガルドさんがブラックドラゴン及び闇のマナの管理状況を確認する。

 それ以外のメンバーは王都に戻り、グランガッチと連携して魔王軍の侵攻に備える。

 うん、すっきり。お互い頑張りましょう。

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 会議も終えて、俺らロック組が出発するのを正門前でみんなが見送ってくれることになった。

 

「……ロックくん。これから君が向かうホエール山脈は、魔族領との境になってる山脈なのでとても闇の魔素が濃い地域です~。もし魔族と遭遇したならば、人間界で遭遇するよりも強力な状態となっているでしょう」

「ノインさん……」

「……信じています。ロックくんの、みんなの力を信じていますが……それでも言わせてください。……無事に王都まで帰ってきてくださいね」

 

 その中でもノインさんが別れ際に俺に声をかけてくれる。

 ノインさんの言う通り、俺らがこれから向かう先は闇のマナの管理場所。ブラックドラゴンだってリンという娘を連れてはいくものの、まだ味方かどうかも分かってない。

 魔族幹部のカリーナがその存在を危惧していたということは魔王軍の中でも知られている場所という事だ。鉢合わせる……なんて可能性も、ある。

 っていうか、俺の勘では一悶着ではいかないと既に若干響いてる。

 リンを不安にさせたくないから言ってないけど。ってか誰もが何かあるだろうなとは思って行く場所なわけだけど。

 

 でも、ノインさんのお願いに俺はいつだってこう答えるんだ。

 

「もちろん安心して待っててくださいよォ!! 俺はノインさんの騎士なんですから絶対無事に戻ってきますって!!」

「ロックくん……!」

「帰ってきたらそのデカパイでぎゅって抱きしめて30分くらいもぎゅもぎゅしてくれるって約束してくれれば帰還率100%になりますよどうですか!? チャンスですよチャンス!!」

「おいクソマスター」

「相手は王族でござるぞ。流石は主殿」

「ロックはおばか」

『みゃ』

 

 俺がこのデカパイ親友お姫様の元に帰ってこないはずがねぇんだよなぁ!!

 どんなにヤバいことになっても俺には帰れるデカパイがある。

 それだけで無限の力が湧いてくるってもんですわなァ!!

 

「……ふふっ。流石ロックくんです。それじゃあお約束しましょうか~」

 

 なんていつもの俺らしく茶化してみたら、しかし意外とウケたのかにこりとノインさんが微笑みを見せてくれた。可愛い。

 そのまま小指を伸ばしてこちらに手を向けてくれたので、ゆびきりげんまんするために俺も笑顔で小指を差し出したところで。

 

「目、閉じて?」

「えっ」

 

「─────ちゅっ」

 

「「「!?!??!?!??」」」

 

 言われた通りふと目を閉じたら唇にしっとりとした熱を感じて。

 それは一瞬で消えてしまって……目を開けば、目の前にノインさんの頬を染めたはにかんだ顔があって。

 

 えっ。

 

 えっ??????

 

「……約束ですよ。王都で待ってますからね~」

「アッハイ……はい?」

「行きましょう兄様、姉様。私達もロックくんたちに負けないように王都の地盤を固めなければ~」

「うむ!! 我が妹がここまで大胆だとは知らなかったな!! ははは、愉快愉快!! では王都に戻るぞヴァリスタ、カトル!!」

「ヒルデの姐さんもロクちんたちをよろしくなー!! あーしらもがんばっからよー!! そんじゃ帰んべー!!」

「では皆さま、失礼いたします」

 

 えっ???

 

 

 えっ???????

 

 

 ………えっ????????????

 

 

「……やられた」

「むぅ……機を読み切った間合いの踏み込み、見事としか言いようがない」

 

 

 えっ……?

 

 

「ロック、ロック。こっちむいて」

「あ、はい……?」

「─────んっ、ちゅっ」

 

「「!?!??!?!?!?」」

 

 

 

 

 え。

 

 

 

 ええ??????

 

 

 

「ふむ。リンは随分と早熟だな。姉は心配だぞ」

『みゃあ……』

 

 

 

 

 

 ええ???????????????????????

 

 

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