勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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9 勝てばよかろうなのだ!!

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 

 

 

『───ロックよぉ、ちったぁ勘ってのが分かるようになってきたか?』

『わかるかこのくそじじぃー!! 毎日毎日木こりばっかりさせやがってコノー!! 俺は冒険者になってハーレム作るの!! 木こりになりたいわけじゃねぇの!! アホ!! ハゲ!!』

『相変らずうるせェな……ゴホッ、ようやく生木の弱点を読む勘が掴めてきたところだろォが……いいかロック、勘だ。冒険なんてやる奴が最後に頼れるのは己の勘なんだ。そこをてめェは……』

『わかるかー!! そりゃね!? やり始めた当初よりは俺も木の伐り方コツが掴めてきたよ!? すごいよねこの年齢で太い木でも斧の一振りで伐れるようになったよ!? でもこれ冒険と何の関係もないよねぇ!?』

『わかってねぇなァ……いいや、その斧でいい。構えろロック。てめェに至高の勘ってやつがどれだけ便利なものかを教えてやる。俺に全力で振りかぶって来い』

『殺しちゃうやろー!! そんなことしたら殺しちゃって俺犯罪者になるやろがーい!! やだよこんなしょぼくれたじいさん殺して前科がついちゃうのイヤーッ!!』

『やかましい……ゴホッ、さっさと構えろ。てめェ如きにワシが殺れるはずがねェだろが』

『言ったなー!! 腕の一本は覚悟しろよくそじじー!! 必殺絶対死ぬなよアーックス!!』

 

 

 

 

『…………ティオを呼んでくだちゃい』

『てめぇの体で分かっただろ……ゴホッ。こいつァ相手が格上であればあるほど効果を発揮する技だ』

『いいから……いいから。消えようとしている俺の命を繋いでほしいから……!!』

『この技に肝心なのは勘だ。敵の攻撃……その呼吸を盗み、全ての威力が乗る一瞬を見切り、そこに全てを返す。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。相手の防御力も何も関係ねェ。完璧に極まりゃ自分で自分の心臓を貫かせるようなもんだ。これを【捌き斬り】という』

『死ぬから……!! 全身がズタズタになってる感じがあるから……!!』

『この型はどんな攻撃にも通ずる。ただし隙のタイミングは違ェ……それを経験で埋めることはできねェ。()()()()()()()。勘を鍛えろロック。てめェの勘は……ゴホッ、それだけは、ワシを超えられると信じてる』

『迎えに来る天使か死神が女の子でおっぱい大きいといいなー……ハハ……死ぬ前にセックスさせてくれねーかな……』

『ロックよぉ……ゴホッ。てめェがこの技を覚えることができたら、ワシの姓をやろう。イーリーアウスの名をお前が継いでくれると……ワシは信じたい、ゴホッ!!』

『(死ーん)』

『……聞いてねェか。ヘッ、勘と逃げ足以外はほんっとにからっきしだなこの坊主は。……やれやれ。治癒術士を呼んでくるか……』

 

 

 

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「ガァァッ……!? な、何故ッ!? 障壁を貫くとはッ……!?」

 

 俺の背後でバアルが膝をつく音がした。

 一撃を……じーさんから受け継いだ『捌き斬り』の一撃を叩き込んでやった。

 防具を装備していない俺に対してオーバーキルの一撃なんて叩き込もうとするからだ。そのために煽りまくって調子づかせてやって、その効果は出たって所か。

 が、しかし俺も無傷というわけではない。

 

「……やっぱ、じーさんみてぇに上手くはいかねぇか」

 

 ダガーを握っていた右腕の手首が曲がってはいけない角度に捻じれてしまっていた。ダガーの柄にもヒビが入っている。

 タイミングを読み切れなかったのだ。相手の攻撃を柄で受け流すように捌き、その上で攻撃の威力を全部刃に乗せて叩き込む。この捌きとカウンターを同時にやる、っていう技なんだけど、そのタイミングがとにかく難しい。

 完璧な一瞬を狙えれば威力を数倍に跳ね上げてさらに自身は無傷でやり過ごすこともできるんだけどな。

 まぁ右脚やられて万全の姿勢じゃなかったしな。そう言い訳しとこ。体勢も自身のダメージも関係ねぇってじーさんが言ってた気もするけど知らなーい。

 

「くっ、貴様ッ、ロック……!!」

「男に熱込めて名前呼ばれてもなーんも嬉しくねーや」

 

 努めて飄々とした態度は崩さずに振り返って立ち上がり、片膝をついてこちらを睨みつけるバアルを見下ろす。

 俺に対して怒髪天というところだろうか。おしっこ漏れそうなほどの怒りの双眸が低みから突き刺さる。

 

 まぁ、しかしなんだ。

 もう俺のやることは終わったんだよね。

 すぐには動けないほどのダメージを与えたことでこのクソ野郎にようやっと特大の隙が出来た。

 俺に振り返るのなんかさらに隙だぜバアルくん。愚かの極み系男子め。

 

「───魔剣、奥義───!!」

「───最大出力回転始動(マキシサイクロン)───!!」

 

 俺の視界、バアルの背後にて。

 この時を逃さぬように、息を潜めて機を待っていた二人がいるのだ。

 

「なっ、しまっ───!!」

「おせーよバカ」

 

 二筋の流星がバアルに向けて放たれた。

 

「剛魔ッ!! 炎斬破ァッ!!!」

 

 暁剣『イルゼ』に炎を纏わせ……否、もはやそれは刀身そのものが炎と見紛うほどに赤く輝く大剣を、横薙ぎにバアルに叩き込むカトル。

 そして、間髪入れずして。

 

「ツインッ!! ドリルブラスターッッ!!!」

 

 両腕を最大速度で高速回転させたイレヴンが、バアルの両胸にその(かいな)を突き刺した。

 

「─────ッッ!!!!」

 

 断末魔を上げる事すら許されず、バアルが胸に大穴を開けられ、上半身と下半身を真っ二つにされて致命傷を叩き込まれた。

 流石に決まった。あれは死ぬ。どうやっても死ぬだろう。

 死なぬにしてももう反撃できる状態ではない。

 

 勝った。

 そのことに安堵して、俺も全身の力を抜いてその場にぶっ倒れる。

 今更にして右脚と右腕の痛みがぶり返してきてすんごい痛ぇ! 無茶しすぎたわンモー!!

 

「……ッハァーッ!! ハァーッ……やったか!?」

「オイそれやってないフラグだぞカトル!! これで生きてたらお前ふざけんなよマジで!?」

「余裕あるねロック!? 今手当てするから……ッ、捻じ折れてる……こんな無茶してっ!!」

「……流石に殺したはずです。ですが、先程の感触は……」

『……やはり、というべきでしょうか』

「イレヴンもイルゼもフラグ積み重ねないでー!! ヤダー!! 俺もう囮にならないわよーっ!?」

「じたばた動くなバカロックー!! 手首まっすぐくっつかないよー!?」

 

 そしたらカトルもイレヴンもイルゼもフラグ立てまくり始めて思わず突っ込む。

 ティオがさらに俺の手当ても果たしてくれるが、しかし見れば徐々にバアルの体が光の粒子となり消えていく。

 魔獣が死ぬ時と同じソレだ。動物や人間とは違い、魔獣は死んだ後に死体は残らず綺麗さっぱり光になるのだ。その後にドロップアイテムとかが残される。

 

 だが、その消え際にバアルが口を開いた。

 

「……ここまで、やるとはな。貴様らの顔と名、覚えたぞ……」

「フッ……あの世で語り継ぐんだな、金級冒険者ノックスの名前をよ……!!」

「後でノックスさんに謝ろう!? ね!?」

 

 ばっかお前ティオーっ! ここでそんなこと言ったら嘘がバレるかもしれんやろがーい!

 さっきはなんかちょっとテンション上がっちゃってフルネーム名乗っちゃったけどもしかしたらまだロックかノックスかどっちか分からないレベルだったかもしんねーだろンモー!!

 と保身に走ったところで、バアルは光の粒子となって消えていった。討伐したのだ。

 

「………………消えた、な。やったな……」

「ええ、討伐しました。ですが恐らく……いえ、間違いなく」

『ですね。私がヤツの体を切断した際にも感じました。アレは()()()()()()()()()()()()()

「えっ!? どういうこと!?」

『バアルが遠方より操っていた、姿形を変化させた魔獣だと思われます。古き時代にそうした術を使う魔族がいました。恐らくは本体はこの数倍は強いでしょう』

「ウソだろ!? この数倍……!?」

「聞きたくなかったぁ……えっ、もしかしてすぐに攻めてくるとかないよね!?」

「……大丈夫だとは思います。魔族はそもそも、魔族領からおいそれとは出てきません。ダンジョンの最下層のように空気中の魔素が濃い所でないと活動に支障が出るからです。とはいえ油断はできませんが……マスター、何か勘に囁く様な感じはありますか?」

「いや勘はもう危機は去った感じでアレだけどちょっと待って? え、何? 俺そんな化物に名前と顔覚えられて因縁つけられたわけ??」

 

 永い時を生きるイレヴンとイルゼから衝撃的な話が漏れた。

 先程まで死闘を繰り広げていたのはなんとバアル本体が遠隔で操っていた魔獣だそうだ。そして本体は無傷で、この数倍は強いという話で。

 それを確かめるために、俺は動くほうの左腕でアイテムボックスからギルドカードを取り出して討伐履歴を確認する。

 パーティを組んでいるので俺とカトルとティオのギルドカードにはこれまで討伐してきた魔獣の名前が連なっているのだが……その一番上、直近で倒した魔獣の名前の所には『ドッペルゲンガー』という文字が刻まれていた。

 マジかよ……ふざけんなクソーッ!! 俺あとで復讐されるやつじゃーん!! ヤダー!! 死にたくなーい!!

 

「今からでもノックスさんが倒したことにならねえかなぁ!? ヤダー!! 俺そんな強くないのに魔族に狙われるのヤダーッ!!」

「そろそろ怒られるよロック! ……ふぅっ、手首は治ったから次は脚ね。体勢変えるよ……『エクスヒール』!」

「これまでこんな奴が出たって報告はギルドでもなかったはずだぜ……新しいダンジョンに急に現れた魔族の手先……ってか聞き間違いじゃなければあのバアルとかいうやつ、魔王軍だって名乗ってなかったか?」

「言っていましたね、最初の名乗りの際に。6大将軍の一人、破壊将ベルゼビュートの腹心だと……魔王には6人の将軍が仕えており、それぞれが国一つを滅ぼせるほどの力を持っている、と私のデータベースにはありますが……イルゼ?」

『……あり得ない事です。150年以上前の『冒険者飽和時代』にいた幾人もの英雄の手で、6大将軍全員と魔王は間違いなく討伐されたはず。私もその時の戦いに参加していたから記憶違いという事はございません。しかしなぜ急に……』

「ダンジョンが急に3つ新しく出てきたこととも関連してそうだね。……もしかして何かすっごい大きなことが起きてる?」

「かもしれません。私が目覚めたことと何か因果関係があるのか……私にも分からないことだらけです。しかし、とりあえずは……生き延びたことを喜びましょう。特にマスターは見事なご活躍でした。ただのエロガキではなかったのですね」

「───────」

「……マスター?」

「───あっゴメン。俺の右脚治療するために逆騎乗位みたいな体勢取ってるティオの太ももの事しか考えてなくて話聞いてなかった」

「死ねッッ!!!!」

「あ゛み゛ぃ゛ッッ!!」

 

 いやだってさー!! ティオがこう俺の腹の上で!? スカートで!? 大股開いてお腹に乗ってきてさぁ!?

 ティオは妹みたいなもんなので性欲を抱くことはないんだけどさぁ!! おっぱい小さいし尻も薄いのになんで太ももだけむっちりしてんだろなぁって思ってさぁ!! 食べ過ぎとかじゃねぇのかなぁってさぁ!?

 という衝動のままに口を滑らせまくったら股間に鉄槌が叩き込まれて今日一番の痛みを味わった。

 俺死ぬかもしれん。

 

『みゃあ!』

「お、ミャウも戻ってきたな……よく逃げてたぜミャウ。近くにいるだけで危なかったからなあんなの」

「とにかく撤退いたしましょう。全員が魔力も体力も使い過ぎました……セーフハウスまで無事にたどり着けるといいのですが。マスター、まだ索敵はできますか?」

「ちんちんが痛すぎて立ち上がれる気がしません」

「脚は治したよ? もう一発行こっか?」

「さぁて気を取り直して帰るかぁ!!」

「ロックお前よく立てるなマジでお前……」

『男の子にしか分からない痛みですね』

 

 必死の戦いを終えた後でもいつもの雰囲気を取り戻せる関係、プライスレス。

 そうしてそれぞれの回復も済んで、バアルが操ってたドッペルゲンガーから何もドロップしなかったことにキレつつも、俺たちは急いでダンジョンを撤退するのだった。

 






〜登場人物紹介〜

■じーさん
鬼籍。
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