勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
ぶるるんぶるるーん。
いつもよりずいぶん気の抜けた音を立てながらイレヴンバイクを運転し、俺はホエール山脈のふもとにあるバードマン温泉に向かって走っていた。
俺の後ろには鎧を脱いでぎゅっとデカパイを押し付けてくるサザンカさん。バイクの傍には時速100キロを超える竜翼による飛行を見せるヒルデガルドさんとリンがついてきていた。
遠征の行きの時のように馬車に速度を合わせる必要もないので、疲れない程度にブッ飛ばして走っている。途中で野営で一泊し、明日の昼すぎには目当ての温泉につくだろう。
そこでもう一泊して温泉で英気を養い山脈に挑む予定だった。
「……ノインさんマジで俺の事どう思ってんのやろ……??」
「ようやく意味のある言葉を喋られたな主殿」
『ずっと虚無になっていましたからね。ノインとリンに唇を奪われてからずっと』
そしてグランガッチを離れて30分、ようやく自我が追い付いてきて疑問を口に出来たのが今の俺です。
キスされたよね……?
目を閉じた後に明らかにキスされたよね俺??
ええ……? ノインさんそんな……なんで俺にキスしてくれたの……?
御姫様にキスされたの何で……?
あとリンもそれ見てから俺にキスしてくれたのなんで……?
『…………はーぁ。マスター、ちゃんと王都に戻ったらノインに誠意ある対応をするのですよ。これで何事もなかったかのように振舞ったら流石のノインも泣いてしまいます』
「え、いや。その、そりゃまぁ、うん……? もちろん、その、無事に帰って抱きしめてもらうし、その、俺もノインさんの事大好きだからさ……? 確かに俺ら出会ってから仲良かったけどさ……なんていうか、読書仲間っていう面が強くて……ノインさんだって俺の事ほら……趣味の合う親友だって想ってくれてた……んだと思っててェ……もしかしてあのキスも王族の挨拶とかからかい半分じゃないかって思いが拭えないんだけど……でもそんなので人前でキスするかなってノインさんわかり勢な面が冷静な判断もしてて……いつもデカパイ感謝してたし親友だと思ってたしいつかハーレムの一人になってほしいなと思ってたけど……でもほらノインさん王族だし……その、身分が釣り合わないかもとか思っちゃうっていうか……」
「主殿がヘタレにヘタレておりまするな」
「へたれ・ざ・ろっく……」
「日頃のセクハラメンタルはどこへ行ったのだロック=イーリーアウス」
いや俺だって分かってるよ? ノインさん俺の事好きになってくれたのかなってことは!!
でもさぁ……王族だし優しいお姉さんにして同担ファンの親友で……なんか急に……こう……なんかさぁ!?
『……では逆に聞きますが、ノインとそういう関係になるのは嫌なのですかマスターは』
「いやそれだけはない」
『でしょう? 王族だから諦めるなんてこともないでしょう?』
「それはそう」
『ハーレムだって諦めないでしょう?』
「それもそう」
『じゃあやることは決まってるじゃないですか。ノインもハーレムの一員にしてしまえばいいんですよ。闘技大会で優勝して、六大将軍を倒して、魔王も倒した冒険者となれば王族の一人や二人ハーレム入りさせても誰も何も言えなくなりますよ』
「そっか……それもそうやな!!!」
「これで納得するのが実に主殿だなぁ」
『みゃあ』
しかしイレヴンがなんかいい感じに思考をアシストしてくれてよく考えたら俺にとって嬉しい事しか起きてないことに気付けた。
そういえばそうだ。ノインさんとそういう関係になるのバッチコイだし王族だからって身を引くこともないしハーレムの夢が壊れたわけでもないし。
なんや俺の夢にまた一歩近づいただけやんけ!! やったぜデカパイ!!
「ロック。わたしもロックのことすきだからね」
「おお、うん。俺もリンのこと好きだぞ!」
「うん! えへへー」
「妹分が悪い男に騙されているのではないかという危惧を味わうのは長い竜生でも初めての事だ」
そしてその後にもキスしてきたリンも俺の事好きだよって言葉にしてくれて。
嬉しい……パパもお前の事愛してるからな……。
大人になったらいっぱいイチャコラしような……!! 本気で週一で会いに来るつもりだからな俺はな……!!
娘が『大きくなったらパパと結婚する』って約束しちゃっても律儀に守るタイプだからな俺は!!
『やれやれ……なんで私が他人の恋路を支援しなければならないのか』
「その気持ちよくわかるぞイレヴン殿」
「大変よな其方等も。難儀な男に捕まえられてしまって」
『みゃ……』
しかし俺のメンタル不調をケアしてくれたイレヴンから愚痴が零れて来た。
ごめんて。いつもありがとなホントに。やっぱ俺にとっての相棒はお前だけだよ。
イレヴンは唯一無二の相棒。ミャウは唯一無二のペット。サザンカさんは唯一無二の配下。リンは唯一無二の娘。
うん。色んな関係の唯一無二がいっぱいいるわね俺。冒険者らしくなってきたってことかな。
そんな風に気の抜けた話をしながら、道中の魔獣は全部轢き殺したりヒルデガルドさんがドラゴンシャウトで即死させつつ、平和に俺らの旅路は進んでいった。
※ ※ ※
その後道中で野営もして翌日の午前中。
やっと到着しましたわよバードマン温泉!!
「うおー……山が近ぇ!! これ登るんか俺ら!!」
「これは確かに凄まじい景観ですね。思わず見上げてしまいます」
「麓でござるからなぁ。ここは源泉が多いようで……物凄い湯気と硫黄の香りでござるな」
「ちょっとくちゃい」
「硫黄の香りはリンは初めてか? 竜人は鼻がいいからな……まぁ害のある香りでもない、じきに慣れるだろう」
『みゃ……ふにゃっぷしゅ!!』
ホエール山脈の麓にあるバードマン温泉。
自然にあふれた岩場にいくつも温泉が湧いている。近くには山小屋みたいなのもあった。
温泉も硫黄の香りのする白濁した湯質のものから炭酸泉になっているようなものなど色々あるようだ。
こりゃすげぇわ。以前ネレイスタウンにケンタウリスと一緒に行ったときに泊まったホテルでは人の手が入った温泉を堪能したが……こういう自然の温泉もすっごくいいですね。
ちなみにここは自然にできた温泉なので男湯女湯っていう分別は無くて混浴である。
もう一度言うが混浴である。
混浴だぜ!?!?
「それじゃあ他の客もいないようだし早速温泉入って長旅の疲れを取るとしますかねェ!! グヘヒヒ!!」
「元気が出てきましたねマスター」
早速入ろ入ろ!! 一緒に温泉入ろ!!
もちろんマナーは守るさァ!! 注意書きの立て看板にもタオルや水着などで自衛してねって書いてあるしね分かってる分かってる!!
ポロリがあってもいい……ってコトだろ!? ウヘヒョ!! 楽しみですなぁ!!
「……脱衣所のようなものもなし、か。拙者ら以外の人の気配も周囲には無いようでござるが……本当に自然そのままといったところか。趣き深い」
「私は何度かこの温泉にも来たことがあるが、アイテムボックスだけは手元に管理しておくとよいぞ。後は好きに脱いで好きに入るのがこの温泉のマナーだ」
「おー。それじゃさっそく……」
「ストップ。リン、せめて岩陰で脱衣しましょうね。恥じらいは持たなければ。マスターも困りますよ」
「特に俺は何も困らんけど」
「黙れマスター。ちゃんと隠してきてくださいねそちらも」
「ほーい」
女性陣が大きな岩の陰になるようなところに移動していって、俺はミャウと二人きりになる。
俺のシーフとしての気配察知にも勘にも特に他の客は見つからない。この硫黄臭には魔獣もあまり近寄らないようだし魔族の気配もないし。
ってことは別に俺が脱衣躊躇う必要もないわな。フードからミャウを下ろしてまず全裸。
とはいえ別に見せつけて興奮する性癖もないしちゃんと厚手のタオルを腰に巻いて隠しはします。不意に体積が膨張したらドン引きされちゃうからね。
楽しみだなぁ……なんだかんだで今までイレヴンと出会ったときにカプセルの中の裸を見て以来、ここまでダイレクトなドスケベイベントは発生してなかったし。
しかもイレヴンだけじゃなくてサザンカさんとヒルデガルドさんまで今回はいるもんなぁ……デカパイに溺れちまうんだぜ今から。
役得と思っていいのだろうか。これまでの俺の頑張りがとうとう報われる時が来たんだなぁ……!!!
「ほんじゃお先に失礼と」
『みゃ! みゃ!!』
腰にタオル一丁で温泉に向かう。
グランガッチで温泉用に購入しておいた入浴グッズから手桶を取り出してかけ湯をしてみれば……この温泉は意外と
湯気の量が違う所もあるから熱い温泉も他の所にはあるようだが……この温度ならミャウを入れても問題なかろ。
ミャウの体にもかけ湯をして、ついでに手桶にお湯をためてそこにミャウを入れて湯船に浮かべつつ、俺も温泉へ。
あっすごい。この白っぽいお湯いい……温いけど体に染みる感じがすごいいい……!!
「ふへぇぇぇ……こりゃ疲れも取れますわ」
『みゃふぅ……!』
じっくり肩まで浸かって疲れを癒す。
なんだかんだハードスケジュールが続いてたからな。王都を離れてからゆっくり休んだ日がないし。
長距離運転もプロになってきてるけどバイクをずっと運転するのも疲れがたまるし。
これから始まる登山はまぁ空飛んでいくからそんな疲れないだろうけど。登ってから何があるかわからないし体調は万全に整えておきたいね。
さて、そうして温泉を楽しんでいたらとうとうお楽しみの女性陣が合流してくる。
「随分と気持ちよさそうに寛いていますね、マスター」
「!?!?」
まずイレヴンが先陣を切って来た。
彼女は元々素肌の上に極薄のタイツを展開することができる。出会った時に展開してたやつね。基本装備って言ってたけど。
でもあれは自分の意思でどう展開するかをコントロールできるみたいで……なんと、ヌーブラと前張りのようにゾーンを隠すように展開してきた。
何だこの余りにもIQの低い装備は(畏怖)。
性癖が……性癖が歪む!!
元々イレヴンは完璧な美を体現するシミ一つないきめ細やかな眩しい白い肌をしている。それを過去最大に惜しげもなく晒したうえで、僅かな布地で隠されているB地区とデリケートゾーンがもう……すっごい。
ほぼ裸じゃんこんなの!! いや裸を求めてるのは俺なんだよね!!
「お前を見つけることができてよかったよ────」
「鼻血出てますよ」
お隣失礼します、と言って俺と肩を並べるように温泉に浸かるイレヴン。
ふぅ、と零す吐息が色気すごくて俺は何故か直視できなかった。見たらなんか死にそう。勘がそう叫んでいる。
なんでお前すぐ隣に入ってきた……??
「主殿。湯船に湯浴み布をつけて入るのはマナー違反でござるが、今だけは失礼を……」
「おっほぉ……!!」
しかしそうして狼狽した俺に続けてダメージが入る。
サザンカさんがやってきたのだ。髪を結い上げて一まとめにし、そして彼女こそは正統派、その身に纏うのは純白のバスタオルが一枚。
健康的な肌色のそのダイナミックなデカパイがこれでもかと言わんばかりにバスタオルを押し上げている。
というかサザンカさんは胸に夢が詰まり過ぎていてバスタオルが胸元に巻けなかったみたいで、両手でひらりと体の前面を隠すように抑えているだけだ。
その抑えた手に布の下で形を変えるスイカほどもありそうな大いなる胸が俺の目を通して脳を癒してくれる。
なんでこんなにおっぱいって素晴らしいんだろうな。いっぱいがおっぱいだ。
IQが今日この瞬間だけでガリガリ削れている気がする。俺はサルにならずにこの風呂を出られるのだろうか。
「サザンカさん綺麗ですッ……!! 無限の感謝……!!」
「……ふふ、照れてしまうな。主殿、お隣失礼いたしまする」
そうしてなぜかイレヴンとは逆隣、俺と肩を合わせるように入ってくるサザンカさん。
距離が近くありませんか!! いやイレヴンもそうなんだけどなんで俺両隣をデカパイお姉さんに囲まれてるんですか!!
身長差と俺が首まで浸かってるのもあって……今俺が首を横に向けるだけでどっちもおっぱいだよ!? 白濁のお湯で肝心な所はお互い見せてないけど!! おっぱいに挟まれてる!!
そうか今日俺は死ぬのか……(錯乱)。
「あ、ロックたちいた。わたしもはいるー!」
「飛び込むなよリン」
「……えっ……??」
そしてダブルドラゴニュートが最後にやってきた。
タオルを手に持ってはいるのだが……二人とも何も隠して来てねぇでやんす!!!(重ね錯乱)
いやッ!! リンは髪が長くてもみあげの当たりがギリ隠してるし!! ヒルデガルドさんは体の各部にあるドラゴンっぽい鱗が胸も股も大切な部分は隠してるし何なら普段からほぼ全裸な人だからいいんだけどね!! まだ視界に入れられるけど!!
リンはちゃんと隠してきなさいよ!? 俺も子供には欲情しないけどさ……お前の胸だけは反応に困るから!! パパからパパ(隠語)になりかねないんだよ俺の欲がさ!!
ちんちんが迷子になってるよ俺いま!! 取り戻せないんだよデカパイに囲まれてるから!!
「えへへー、ロックにどーん!!」
「ぶっ────!! リンおまっ、やめっ、ちょっとぉァ!? 何すんのぉ!?」
「えー、ロックはおっぱいだいすきなんだからよろこぶでしょ?」
「否定はできないけどお風呂は落ち着いて入りましょうねェ!?」
温泉に飛び込みこそしなかったものの、リンがそのままざぶざぶと俺に詰め寄ってきて正面からどしゃーっと抱きしめて来た。
もちろん俺は転ばないように抱きしめ返したけど……コイツ体温高いな!! 触れ合ってるから素肌が!! 感じてるから何とは言わないけど何かを!!
ちょっと!! 俺もう限界です!!
「これほどマスターが幸せな状態になる事も今後そうそうないでしょうね。気持ちよいですか?」
「……主殿が望むならば、拙者ももっと身を摺り寄せましょうぞ?」
「二人に挟まれたら俺心臓が止まると思いますッ!! ひ、ヒルデガルドさんちょっと助けてくださいませんこと!?」
「私まで巻き込むな。貴様らが乳繰り合う分には何も言わんから傍観者でいさせてくれ」
両隣の二人もなんか見たことのない顔で微笑みを向けてくるし!!
なにこれ!! なにがあったのこれ!? もっとこう……マスターのえっち!! 主殿のえっち!! みたいな感じで俺がひっぱたかれてオチがつくアレなんじゃないの!?
俺の首元に頬をすりすりしてくるんじゃありませんリン!! 耳横から生えてる角がぐりぐりして痛いしお前の体柔らかいし先っちょもなんかもう……もう!!
もうダメだこれ以上は俺のリトルロックがビッグロックになる!! 脱出ッッ!!!
「俺他のお風呂入ってくるんで失礼ッ!!」
「んにゅ。にげられた……」
「リンの拘束から逃れましたね」
「ふふ。慌てる主殿ほど
「楽しそうだなお前ら一家は」
『みゃあ』
ぎゅむぎゅむ抱きしめてくるリンの腕の中からにゅるりと脱出し、水音も波も立てずに湯船から脱出。勿論腰タオルはキープしたまま。
ギリギリ思考が上向きになる前だったのでそのまま俺は別の湯船に競歩で移動した。走ったらリンの悪影響になるからね。お風呂場で走ってはいけないから。
別のお風呂に音もなく入渠して退避完了。大きなため息をつく。
流石にみんなも追ってくるほどではなく、デカパイの泉となって手桶に浮いてるミャウをみんなで愛でる平和なシーンがようやく展開された。
どうしてみんなそんな全力で俺をからかってくるようになっちまったんだ……?
ノインさん助けて。俺なんかいつの間にか異世界転生チートさんの作品に出てくるチートハーレム野郎になってたかもしれない。