勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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95 俺は莫大な遺産を受け取っていた───

 

「───そんで初めての冒険の後に美人局やられて遺産全部盗まれたってワケ」

「そんな悲しいオチあります???」

 

 俺はイレヴンに過去を語りながら、俺が冒険者になるまでにじーさんと共に過ごした日々を振り返った。

 本当に……本っ当にぐーたらなじーさんだった。いっつも酒ばっかり飲んでた。

 朝から夜までずっと酒臭いし。アル中だし。ぶっちゃけ捌き斬りを教わった時と毎朝20分の組手以外は殆ど言葉でしか教わらなかったし。

 カトルとか、俺から一年遅れでメルセデスさんとこに研修に行って2年で特別に合格したティオとかに研修内容をあとで聞いたら俺とは全然違ってきちんと技術とかスキルとか冒険のイロハとか教わってたらしいの。俺と大違いだったの。

 俺は冒険者の基本は自分で図書館通って本読んで覚えたし、ダンジョンなんて独自のやり方で探検するようになっちまった。

 

 ゴブリンの件だって……マジでよ。酒に溺れた体で無茶しやがって。

 最期にじーさんから事情は聞いたけどさ。無理はしてほしくはなかったよな……そうすりゃもう少し長生き出来て……俺が、冒険者になった姿を見せられたのに。

 ギルドカード見せて自慢したり。リンとかイレヴンとかと出会ったの紹介できたのにさ。

 

「ま……そんな感じだったわけよ。思わせぶりにしといて大した話でもなくて悪いけど」

「いいえ。とても……とても温かい話が聞けました。マスターにとって、大切な思い出なのですね」

「えー? いやどーだろ……? じーさんとの生活にいい思い出ほとんどないような……」

「そんなことはありませんよ」

 

 んでそんな俺のくだらない話を聞いてくれたイレヴンが、何故だかとても優しい笑顔を見せてくれて。

 え、なんで。割とくだらない話だったと思うんだけど……呑兵衛のおっさんとの共同生活なんて欠片も華が無かったし今と比べても非常に女っ気のない生活だったんだけど。

 

「だってマスター────話している時に、ずっと笑顔でしたから」

「…………そうかい」

 

 しかしそう指摘されてしまえば俺も口を噤む他なかった。

 まぁ……否定はできないわな。

 殆ど笑わないじーさんだったっけど、今目を閉じて思い浮かぶじーさんの顔がなぜか笑顔だもん。

 俺も思い出す時にそんな顔になってんのかもな。

 なるほど。誰かにこの話語ったの初めてだったんで自分では気づかなかったわ。

 

「…………」

「…………」

 

 なんかちょっと無言の間ができた。

 なんだろ。なんか……無性に照れるというか。昔話なんてしちまったのが恥ずかしいというか。

 いや、イレヴンに知られるのが嫌とかそういうんじゃないんだけど……なんかガキの頃の恥ずかしい想い出を自分の口から語る恥ずかしさというか……。

 ……俺この雰囲気我慢できません!! よっしゃいつもの下ネタトークに舵切るかぁ!!

 

「ところで今日のお風呂でおっぱ」

「マスター」

「いむんっ?」

 

 と思って口を開いたらイレヴンがそれを遮るようにカットインし、俺の頭をすぐ横からぎゅっと抱きしめて来た。おっぱいに埋もれる我が頭。

 

 ……母性ッ!!

 

 いや違う性欲だったわ性欲。性欲ッ!

 なんで俺おっぱい大好きなのにいざそれを顔で味わう時に母性感じるんだろうな……正直ここ最近のリンに抱きしめられてた時もママみ感じてたし。ロリ巨乳ママ。

 ガキの頃にシスターに抱きかかえられてたせいなのだろうか。あのデカパイエルフシスターが俺の性癖を運命づけてしまったのか? ありえる。

 

 でも、俺を抱きしめるイレヴンの手が、伝わる熱が優しくて。

 俺はそれに抵抗する気が起きなかった。

 心臓の音はしない。人の胸に耳を当てた時と違う、低い穏やかな駆動音がイレヴンの体からは聞こえてくる。

 

「……マスター。もう少しだけ、こうしていてよいですか?」

「そりゃいいけどさ。……え、どうした?」

「いえ……なぜだかこうしたくなったのです。今のマスターが……狂おしいほどに、愛おしく思えてしまって」

「急に俺の相棒がヤンデレドスケベアンドロイドにジョブチェンジした件」

「もう少し黙ってろよカス」

「ンーンン」

 

 相変らず相棒の胸に顔を埋めながら、しかし愛おしいなんて言われちゃうとちょっとドキっとする。

 最近しおらしくなること増えたよなイレヴンも。付き合いも長くなってきたから絆は紡げてるとは思ってるけど……こう、俺を見る目が優しくなるって言うか。

 

 イレヴンがたまに見せるそんな優しい表情が俺は好きだ。

 ずっとそんな顔をさせたくなる。

 

 まぁ俺の軽快なジョークにより何故かキレられたのだが。なんで。

 

「……マスター。これからもずっと、一緒に頑張りましょうね」

「そりゃ勿論。これからもずっと頼むぜ、相棒」

 

 まぁなんかいい感じの雰囲気でそのまま二人で湯気に霞む星空を眺め、暫くそうして体が冷える前に俺は山小屋に戻り就寝した。

 お昼に見たみんなのデカパイ肌色とかイレヴンのおっぱいの感触でめっちゃシコりたかったけど流石にみんながいるからシコれなくて辛かった。ぐぬぬ。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 翌朝になった。

 

「さあ登るぜホエール山脈!!」

『みゃあ!!』

「登るという表現が適切かどうかはアレですが」

「飛行魔法の使い手すら極めて希少な昨今においてまさかの万全に空を飛べるメンバーの方が多いパーティでござるからな拙者ら」

「おそらのたび」

「空にもワイバーン等の魔獣はいるが……まぁ私の手が空くしな。竜人二人がいて後れを取る事は無かろうよ」

 

 朝食を食べ終えた俺たちは早速ホエール山脈に挑むために山陵を見上げながら準備を整えた。

 つっても準備したのはだいたい俺とミャウだけなんだけどね。

 俺は寒さ対策に厚着してマフラーつけてマグマポーションを飲んだ。一日は寒さに強くなる薬だ。

 高山病対策に薬も飲んだし。これで俺はバッチリ。

 そしてミャウだが、俺の護りの指輪による魔力障壁を周囲に展開している。護ることを意識すれば使いこなせるようになってきたなこのバリアーも。

 まぁ猫ってそもそも標高高い所でも普通に過ごせるらしいしね。寒くなったら俺の服の下に潜り込んでくるだろうし……心配はいらんだろう。逞しいからミャウは。

 

 イレヴンはそもそもどんな環境でも適応できるアンドロイドなのでそのまま。

 サザンカさんは聞いたところによるとヒノクニでも高い山が多くてその辺り旅してた経験もあり慣れていると。赤備えの武者鎧がその辺の耐環境性能も高いらしい。状態異常も無効だしね今は。高山病にもならない。

 で、リンとヒルデガルドさんはそれこそドラゴニュートなわけで。高い所で過ごすのに苦はしない種族だ。リンなんて生まれ故郷なわけだし。

 

「んじゃイレヴン、頼むな」

「畏まりましたマスター。ではしっかりしがみついてくださいね。ミャウも落ちないように」

『みゃあ!』

「大変なご負担をかけるな、リン殿」

「だいじょーぶ! ちょっとおもいけどたんれんのいっかん!!」

 

 さて、そんな俺たちだが前にも話した通り当然にしてえっちら山登りなんてことはしない。

 ダイブブースターで空を飛べるイレヴンに俺が背負われて、サザンカさんはリンが運ぶことになった。

 ドラゴニュートとしての力を覚醒させたリンにとっては鎧込みで相当な重量のあるサザンカさんでも運ぶのは容易なのだろう。そんな自信が見て取れる。

 でも重いって言われてサザンカさんが凹んでるからもうちょっと優しい言葉にしような? ワガママデカパイボディとかそんな感じでさ。

 この場にいる女性全員がそうだって? そうだね×1。

 

「では参りましょう。エクスアームズ03『ダイブブースター』!!」

「よいしょー!! まっててねおとーさん!!」

「私が先導しよう。ブラックドラゴンの所には過去に一度訪れたことがあるからな」

 

 そして俺もサザンカさんもばっちり荷物にジョブチェンジしたところで、それぞれ飛び立って山脈の頂上を目指して飛翔。

 カリーナが言っていた通り、この温泉地から北西に向けて飛び立つ。ヒルデガルドさんが先陣を切り、その後ろにリンとイレヴンが続く形だ。

 飛翔速度としてはヒルデガルドさん>リン>イレヴンといった具合だが、イレヴンだってバイクで巡航速度で走るのと同じくらいの速度で飛べるしな。ぐんぐんと視界が地上から遠ざかっていく。

 

「地面が離れていく景色見るのは初めてだけど……これ怖ぇー! スリルあるなぁー!! 面白ー!!」

『みゃあみゃあ!!』

「あまり動かないでくださいよマスター……ってこらぁ!! 胸に手を伸ばすな! バランス崩れますから!!」

「楽しそうでござるな、あちらは」

「サザンカ、うではだいじょうぶ? いたくない? どうたいかかえよっか?」

(いや)、リン殿の腕の長さだと拙者の胴当てを抱えるのは無理でござろう。リン殿こそ鎧を着こんだ拙者をぶら下げて、腕や肩は痛くなってござらんか?」

「ぜんぜんへーき! ドラゴニュートはがんじょうなの!!」

 

 遠ざかる地表をワイワイと楽しみながらイレヴンのおっぱいに手を伸ばしたら怒られた。メンゴ。

 背負われてる俺と違ってリンは両腕でサザンカさんの両腕を掴んでぶら下げながら飛んでる形だ。体格差があり過ぎるし背中の羽根で飛ぶからおぶさるという手段が使えないのだ。

 しかしお互いに肉体的な耐久力はすごいし何よりリンの飛翔力がドラゴニュートとしての覚醒を果たしているので速度的には問題なくついてこられている。

 ホントに成長したよなリンは。おっぱいのサイズとか身長とか言う意味ではなく、強さって意味で。心も体も。

 

 ……こうして成長したリンを見た時に、親御さんのドラゴンはどう思うんだろうな。

 やっぱり後継者としてのそれとしか見てないのだろうか。

 リンがいなくなっても探しに来てねぇしな……いやマナの管理が大変で移動できないのかもしれないし、先入観はよくないな。

 会って話そう。話して分かり合えるのがいっちゃんなんだから。

 

「……む、話の途中で済まないがワイバーンだ。すぅー…………tatisare!! arasoinikitanodehanai!! omaeranoaruzinomusumewoturetekita!!

『みゃっ!?』

「おわぉ。竜の言語だ」

「ヒルデガルドが叫んだことでワイバーンが寄ってきませんでしたね。通じるのか、魔獣にも……」

「……なんか、あのワイバーンみたことある……ような……」

「リン殿の生まれ故郷でござったな。半年前までここにいたのであろうから、急激に情緒が育ったとしても見覚えのある光景ではないか? リン殿にとっては」

「うん……なんとなく、こんなところですごしてた、きもする。もっとたかくまでいってみないとはっきりいえないけど……」

 

 そして飛び上がる道中、やはり空中での襲撃でワイバーンなどが近づいてくることもあったが……それは全部ヒルデガルドさんが竜語で叫んで追っ払ってくれていた。

 ワイバーンってドラゴンの亜種で力もドラゴンほど強くないんだよな。でもダンジョンとかで出てくると羽根を使った風の衝撃波が面倒だったりする。避けられるけど。

 そんな奴らがめちゃんこ飛んでるこのホエール山脈だが、こちとら本場のドラゴニュートが二人もいるのだ。

 ヒルデガルドさんの叫びに驚いたように飛び去って行ってしまうワイバーン。質の差を理解したかな。

 襲ってこない魔獣を狩るのも妙な話だし……ってか言っちゃえばここに住むブラックドラゴンだって人間からすりゃ魔獣みたいなもんだしな。

 今回はリンの里帰りであって探検でも探索でもない。余計な戦闘は極力避けるべきだろう。荒らして恨まれたくないし。

 

「─────ん。もうちょい進路左かな。11時方向」

「おや。マスターの勘が響き始めましたか」

「うん。そっちになんかスゲェのがいる……感じがする。あと何故か急に嫌な予感もしてきた」

「むむ。いやなよかん!!」

「主殿……流石にここまで飛び立ってしまってからそれを言うのは少々遅いでござる」

「や、いや、会えないとかそういうんじゃないんだろうけど……なんかね、一悶着ありそう。まぁいつもの事ではあるけどな。備えとこうぜみんな」

「了解です。マスターがリンの親御さんに失礼をなさらないように目を光らせておかねば」

「ちゃんと世話して育ててたし流石に怒られることはないやろー!!」

「ブラックドラゴンは温厚な性格だ。いきなり取って食われるようなことはないから安心しろ」

 

 そしてもう1000mは飛びあがったかというあたりで俺の勘も響き始める。

 ブラックドラゴン……が、いるかなって方角が感じ取れて。

 そして同時に、またしても危機が迫っているような感覚もし始めている。

 

 だがそれは危険だけじゃなくて……何だろう、早く辿り着かないといけないような……説明がしづらいな。

 火中の栗を拾いに行かないとやべーぞ!! みたいな感じの響き方ですかねこれは。

 なんかありそうだなぁ。まぁでも死ぬ気はしないから何とかなるやろ。

 イーリーアウスの勘は自分の死期には聡い。周りの大切な人に及ぶ害への勘は……じーさんのお墨付きで俺は持ってるから。

 大丈夫だろ。多分。

 

 その後もワイバーンを散らしながらホエール山脈にそって登っていき、中腹辺りで一度山麓の丘陵地に着地して休憩や気圧への慣らしを挟みつつ。

 とうとう俺たちはホエール山脈の頂上付近、目当ての地へたどり着いたのだった。

 

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