勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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99 絶体絶命のピンチも華麗に潜り抜けてこそのイーリーアウスってもんよ

 

「全知万将アブソリュート……!? 六大将軍の名前を、なぜ……?」

 

 魔王の言葉にイレヴンが反応する。

 そんな将軍がいるらしくて、でもこの場にはまだ来ていない。それが俺に似てる……ってこと、だったのか?

 しかし魔王は確かに別人だと言ったし、俺を殺せと直々に指名までされている。全く油断できる場面ではない。

 

 俺らの背後には体に大穴を開けられてしまったノワールさん。それに駆け寄ったリン。

 俺を庇うようにしてイレヴンとサザンカさんが前に立ち、その傍にはニーズヘッグに憎しみの目を向けるヒルデガルドさん。

 

 向こうは魔王だっていう、金髪の少女……背は俺と同じくらいでメリハリのある体をしており、美と表現してよい見た目だが、その目の色が余りにも暗い女がそこにいて。

 そしてバアル、ヴィネアの俺に恨みがある二人と、ニーズヘッグ及びその配下の二人であるジェミニとボルックスが傍にいて。

 

 人数的にはノワールさんを除いて、俺らが5人、向こうは6人。

 しかも向こうにはノワールさんを一撃で貫いた魔王がいる。

 あの魔力砲を再び打たれたら?

 終わりだ。ガードビットだろうが護りの指輪によるバリアだろうが貫通されるだろう。

 捌き斬り。それしかない。

 俺という頼りないカウンターの札をタイミング完璧に使い、向こうの目をくらまして逃げる……ことが、できるか?

 向こうは魔族で全員空を飛べる。転移魔法も使える。

 俺らに退却という手段はない。ここをどうにかして切り抜けるためには、どうすれば……。

 

「……フフ、来るな」

「なにっ!? ……な、これは!?」

 

 バアルが不敵に嗤い、サザンカさんが刀を構えながら応答した次の瞬間。

 

「なっ──────!?」

「これは!?」

「くっ……!!」

 

 背後の、闇のマナが溜まっていた噴火口から……いや、ホエール山脈全体が脈動するように揺れる。

 地震だ。それも相当な大きさのそれが突如生じる。

 同時に闇のマナがまるで津波のような巨大な音とうねりを生み、そして。

 

「ノワールが斃れたことでマナの制御を失ったか!! 闇が溢れる……まずい!!」

 

 ヒルデガルドさんが叫んだ瞬間に、背後の闇のマナの噴火口が爆発した。

 そうとしか表現できない大爆発。

 大きな噴火口から図太い黒い奔流が高々とぶちまけられて行く。

 身の危険を感じ、咄嗟に護りの指輪のバリヤーを張る。

 この距離でこんなもんを見せられたら、間違いなく魔力酔いする。俺は倒れる。

 ドラゴニュートのリンたちや、状態異常無効のイレヴン、サザンカさんならば問題ないだろうが……俺は死ぬ。

 

 噴火口からの闇の奔流、それはとどまることを知らず青い空を徐々に暗く染め上げて行ってしまって。

 世界中に、闇が広がるのをまざまざと見せつけられる。

 

 まずい。

 事態が極まった。

 

 闇のマナが広がったということは、それは。

 

「ククク……これほど良い空気が吸えるとはなァ!!」

「最高の気分ね。流石ですわ、魔王様」

「ああ、これで敗北はないだろう。早急に特異点を殺すぞ」

()く済ませよ。この後の戦争に遅れが出てはならぬ」

 

 魔族どもが力を増してしまうという事。

 今、目の前で起きた闇のマナの濃厚な放出を受けて、バアルら魔族どもが全身から闇の魔力を身に纏い、ヤツら全員が凄まじく捗っている様であった。

 

 ヤッバい。

 獣王国グランガッチで起きた結界の塗り替えだけでもフォルクルスとカリーナがあれだけ力をあふれさせたのだ。

 これほどの闇のマナを、こんな至近距離で受けた幹部と将軍と魔王が相手で。

 あの時よりもこちらのメンバーは少なくて。

 既に、母親をやられているリンは守らなければならなくて。

 

 ──────死ぬか?

 

 

 俺は思案する。

 この場を何とか()()()が無事に切り抜けられる可能性を模索する。

 

 こいつらの狙いは俺だ。

 それは間違いない。ノワールさんが狙いという事であればそれは既にもう魔王が目的を果たした。

 残る目的は俺だけ、のはずだ。

 もちろん、俺が死んだって他のメンバーを殺されないとも限らない。

 

 限らないが─────俺の勘は。

 もう、答えを叫んでしまっていて。

 

「……っ、来る!!」

「主殿はやらせんっ!!」

「ロック=イーリーアウス……生き延びろ!! なんとしても……!!」

「ハアアァァッ!!」

 

 バアルとヴィネアが魔力砲を構え、ドラゴニュート3人が俺に向けて飛び込んでくる。

 魔王は後方で俺らの戦いを眺めている。俺らがどう足掻くのか見物したいのか。

 

 舐めんな。

 ()()()()()()()()()()()()

 

「─────『()()』ッ!!」

『─────わかったわ、パパ』

 

 護りの指輪。

 こいつはここ最近で何度も出番があったことで、以前以上に使いこなせるようになっている。

 先程ノワールさんの巨体に展開できたのもそう。

 結局魔王に貫かれてはしまったが、魔力防壁をどこにどのサイズで生み出すのかはもうコントロールできる。

 

 それを()()()()に使う。

 

「んギッ!?」

「な……」

「痛ったぁー!?」

「は、ガハっ!?」

「グふッ……っふ、ハーハハハハぁッ!!! そう来なくてはなァロック=イーリーアウス!!」

 

 魔族どもの一斉攻撃、そのタイミングを勘で読む。

 俺が()()()()だと思った瞬間に、そこに護りの指輪による風魔法の力場……魔力防壁を展開。

 それは全ての攻撃の捌き斬りの返し点を見事に拾い穿ち、魔族どもの攻撃を全て遠距離で返し切った。

 俺への攻撃は全部ブチ返してやるわ。仲間に向けた物も出来る限りな。

 

「エクスアームズ07『カーニバルミサイル』ッ!!」

「秘剣─────『隼断』ッ!!」

「ガアァァァァァ──────ッッ!!」

 

 そして俺が作った隙を狙い、イレヴンたちが攻撃を仕掛けてくれる。

 ドラゴニュート3人を狙った光属性のミサイルに、バアルの首を狙った隼断。

 ヒルデガルドさんの咆哮(ブレスキャノン)もヴィネアの腹を目掛けて一目散に放たれる。

 

 俺らのほぼ最大戦力の攻撃。

 これが通じなければ、俺は──────

 

「……あっぶな。このミサイル想像以上に威力高いのね」

「だが闇の魔素をたっぷりと吸った我らには通じない……!!」

「残念でしたね、お人形。闇の魔素の無い所で戦えばいい勝負ができたでしょうが……それは私達が常に味わっているハンデなのだとよくご理解ください」

「くっ……!!」

 

 しかし。

 イレヴンのミサイルはニーズヘッグらドラゴニュート組に直撃こそしたものの、その竜鱗を焦がす程度にとどまってしまって。

 

「……不可視の一閃。面白い技を使う女だ……初めて相まみえる絶技、見事なものよ!! だが生憎と得物が釣り合わぬ!! 魔装具でもない(なまくら)ではなァ!!」

「な……」

 

 サザンカさんの一閃は、バアルの喉元で止まっていた。

 対人戦では無双の強さを発揮する隼断は、しかしこの闇のマナが奔流する決戦の場では、刀そのものが魔装具ではないことで、その威力を削がれてしまっていて。

 

「……お前、舐めてる? ただの吐息に私が貫かれると思って?」

「貴様……ッ」

 

 ヒルデガルドさんの咆哮は、ヴィネアになんなく避けられてしまった。

 俺の目でも追い切れるか厳しいほどの速度。以前より速度に自信がある女であったことを思い出すが、闇のマナを受けてさらに自由に飛び回れるようになっていて。

 

 ───────勝てない。

 

 んじゃしかたねぇな!!

 結論は出てんだからな!

 俺の勘はなんともクールにこの危機を乗り越える手段を既に思いついているぜ。

 

「イレヴン!! サザンカさん!! ……リンは任せた!! うおらーっ!! 破れ被れじゃーい!!!」

「マスター!?」

「主殿!? 待たれよ!! くっ……シィィッ!!」

 

 俺はみんなの制止を振り切って、敵陣に吶喊する。

 それを止めるように、イレヴンはドリルスティンガーキャノンを、サザンカさんは蜻蛉落としによる威力を高めた斬撃で再び魔族を攻撃してくれる。

 

「やらせませんよ、お人形。既に実力は見切りました……貴方はここで壊れるのです」

「くそっ、もう一発……!!」

「だからそれもやらせないっていってんの!!」

「己の非力さを嘆くがいい、人形が」

「……!!」

 

 ドリルスティンガーキャノンはニーズヘッグが両腕で受け止め、その隙にジェミニとボルックスがイレヴンに攻撃を仕掛けんとするが、それは俺が止める。

 

「────『護れ』ッ!!」

「んぎっ!?」

「カハ……ッ、己に向かう攻撃でなくとも止めるのかこのガキ……!!」

 

 イーリーアウスの勘を舐めんな。

 お前らが仲間の誰を狙おうとやらせねぇよ。俺がみんなを守る。

 

「せぇいっ……、なに!?」

 

 サザンカさんが振るった大太刀は、しかし今度はバアルにその刃を思い切り握りしめられる。

 握りしめた上で掌から流血すらしていない。攻撃が通じない事をそれが証明してしまっている。

 

「な、く……離せッ!!」

「ヒノクニの女。武器さえ真面(まとも)なら貴様もまた新たなる強敵になるだろう。惜しい……出直して参れェッ!!」

「……くぅ…………き、ゃっ!?」

 

 そして握りしめた刃をバアルがそのままギリギリと握りしめ……大太刀をへし折ってしまった。

 まさかの事態にサザンカさんの体幹が乱れ、そこをバアルが腹に蹴りを繰り出して吹き飛ばそうとするが、それは。

 

「オラハイやーッ!!」

「ぐヌゥッ!! ……ロック!! 貴様はどれほどの男なのだ!!」

 

 俺が捌き斬りで止める。

 小規模な風の爆発を返し点にぶつけてサザンカさんへの蹴りを捌く。

 

「─────隙よねぇお前ェッ!!」

「隙なんてねェよ俺にはよォッ!!」

「に゛ゃっ!? ごっほ……なんで見えないところからの不意打ちも通じないのよお前!! 生意気ー!!」

 

 同時に俺に向けて飛び込んできたヴィネア。

 その姿は見えなかったし音も聞こえなかったが勘で腕を振るって爪による貫通攻撃を捌き返した。

 どんどんと勘が鋭敏になっていくのが分かる。

 それは恐らく、俺が覚悟をしたからだろう。

 

 死ぬ覚悟を。

 

「──────魔王!!」

 

 魔族どもの攻撃を乱れ捌き斬りしつつ、俺は目の前の少女……魔王に向けて叫ぶ。

 

「なんだ」

「名前くらいは教えろ!! あとスリーサイズもだ!!! 俺とお付き合いして人類と魔族の和平を考えたことはねぇか!! えっちしない!?」

「マスターすごい」

「この局面でそれが吐けるか主殿」

「流石に私もここまで来ると尊敬が勝るぞロック=イーリーアウス」

「フフ……それでこそだロック」

「相変らずバカなのねお前」

 

 どこまで行っても俺のやれることはかわんないの!!

 まず挑発して時間稼いで攻撃をカウンターするしかないんや!! 見ろほら俺の素っ頓狂な質問で魔族たちの攻撃の手も止まってるじゃん偉いぞ俺!!

 一秒後には死ぬかもしれないこの場面で一秒を稼ぐのがどれだけ偉いかって話よ!!

 

「……ダブレス(SS)。79:54:80。ない。しない」

「ダブレス!! いい名前だな可愛いねお人形さんみたい!! ここで俺を見逃してくれたりしない!? 見逃してくれたらお礼にえっちしてあげるよ!?」

「ない。死ね」

「ちくしょー知ってた!! なら逆に俺がコマしたるわーい!! くらえ地獄のくすぐり乱手っ!!」

 

 だからここからは詰将棋だ。

 俺の読み通りに行けば────()()()助かる。

 俺の大切な女たちが、一人も死ななくて済む、はずだ。

 魔王の性格はこの会話で僅かでも掴めた。

 

「─────おっと。させんぞロックよ」

「んぎっ!! ……ぎょわあああああああああ!!! やめろ離せバアルてめーっ!!! お前にだけは掴まれたくなかったわ死ね!!! 筋肉がキモいよーーーー!!! 『護れ』ぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 だがそれをする寸前に、バアルに俺は()()()()()()()

 勘が働かなかったのは……これが、()()()()()()()()からだ。

 捌き斬りはあくまで攻撃を返すための技。

 攻撃ではない、害をなさない行動に捌き斬りは返せない。

 

 いや俺のメンタルには大いにダメージはいってるけどね!!

 やめろ!! せめてヴィネアかドラゴニュートの誰かにしろよ!? 胸板が背中に当たってゲロ吐きそうなくらいキモいわ!!

 これを狙ってんのかこの筋肉ダルマはよぉ!? 俺との戦いからメンタルへの攻撃を学びやがったか浅学菲才がよ!!

 

「ぐっ、がっ、この……!!」

「無駄だ。ここで貴様がどんな攻撃をしても我は振りほどけん。……同時に、ここで我が貴様を抱きしめ潰そうともすればそれは返されるのだろう。貴様へは攻撃はしてはならぬ……それはわかっていた」

「てめ……!!」

「だから我は攻撃せぬ。その上で貴様を(しい)し奉ろう、ロック。最上の敬意を我が好敵手に込めてな」

 

 筋肉ダルマの腕を俺は振りほどけない。

 だが、同時にバアルも俺にここから攻撃はできない。

 零距離だろうが俺の捌き斬りは関係ない。

 護りの指輪を使えば、俺の姿勢すらも関係なくなった。いついかなるタイミングでもカウンターが取れるのだ。

 

 ()()に対しては。

 

「…………!! しま、バアル、てめぇまさか……!?」

「貴様の想像通りか、答え合わせを始めよう」

 

 バアルが蝙蝠のような両翼を広げ、俺を抱きしめたまま空に飛びあがる。

 わかった。

 コイツ、俺の事を闇のマナの噴火口に落とすつもりだ。

 

 そこまで運んで、腕を離すだけだ。

 攻撃ではない。腕を離すのを返したところで何にもならない。

 運ばれたら終わりだ。

 

「マスター!! くそォ……『ダイブブースター』、『ファントム───どけェヴィネアァッ!!」

「おっとォ!! 甘いわよ人形ッ!! アンタにも借りがあるからねェっ!!」

 

「主殿ッ!! この……ッ! どけぇッ!!」

「ふふ。折れた刀でどうしようというのかしら、サムライさん?」

 

「ロック=イーリーアウス……!! くっ、私の翼で────」

「甘いわよヒルデガルドッ!!」

「言っただろう、私は貴様も殺したいとなァ!! この裏切り者ッ!!」

 

 みんなも俺を助けには入れない。

 闇のマナで強化されている魔族たちが、それぞれみんなを足止めする。

 実力で上回られている現状、それを打ち破れるものは誰も────いや。

 

「ロックーーーーーー!!!」

 

 一人だけいた。

 リン。

 ノワールさんの突然の死に茫然自失だったリンが、俺の危機にその翼を広げて飛び込んできてくれたのだ。

 思わず俺は叫んでしまう。

 

「リン────────()()()ッ!!」

「えっ……─────わぁ!?!?」

「……ノワールの子。リンというのか……」

 

 魔王が、リンを狙って魔力砲を放っていたからだ。

 これまで俺たちとの戦いの中では全く手を出してこなかった魔王だが、ノワールとリンだけは別、なのか。

 俺の声で寸でのところで回避が間に合ったリン。

 だがその一寸が、俺の命を左右する間となった。

 

「…………くっそ。せめて最期は美女に抱かれたかった……」

「そういうな。さらばだロック、我が好敵手よ」

 

 噴火口の直上にたどり着いてしまった。

 闇のマナが噴出するそこに、飛行の勢いをつけてバアルが腕の力を抜き、俺の体を離す。

 捌き斬りの出来ない動きに、俺はもうなすすべがなかった。

 

「マスター!!!」

「主殿!!!」

「ロック!!!」

「ロック=イーリーアウス!!!」

 

『パパ……!!』

 

 最後の頼みの綱、護りの指輪による魔法防壁も体に纏ったが……闇の魔素に侵される。

 全身が燃え尽きてしまいかねないその魔力の源泉の奔流に、バリアーが耐えられない。

 ごくわずかな時間の延命を果たしたバリアーは、ひび割れる様な音を立てて粉々に砕けて。

 

 

 俺は─────闇に堕ちていった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side 王都】

 

 

「何ィ!? 魔族の軍隊が攻めてきやがっただとぉ!?」

「はい!! 今しがた遠見の監視員からの報告があり……オーディンに面するキュリオス平野に魔王軍襲来!! 数はおよそ()()()ッ!!」

「なんだってェ……!?」

「王都まではおよそ2時間ほどで辿り着いてしまうとの報告ですッ!!」

 

 ノックスは、ギルドで受けた報告に一瞬耳を疑った。

 唐突な……本当に唐突な魔王軍の襲撃。

 それも20万もの数。

 そんなに数がいれば、これまでの各拠点からの魔導通信機による報告で事前にわかるはずなのだ。

 それがなかったということは、恐らくは転移陣のような何かで唐突に現れたということだ。

 

「……まさか……魔王がとうとう復活したのか……!?」

 

 ノックスの傍で顎に手を当てて思案にふけるウォーレンは、この唐突な大事件の原因について思い至った。

 過去の記録を紐解けば、魔王軍に所属する魔族が唐突に現れることはそこまで珍しくはない。

 だがこれほどの数を、闇の魔素が薄い人間界に転移させるなど、並大抵の者にはできない。将軍レベルでもそういった転移術に長けているのは幻魔将アイムだけだったと記憶にある。

 そして今回のこれはそんな中でも過去最大の転移。魔王によるものだと推察がついた。

 

「ウォーレン!! 大至急民を避難させ、兵と冒険者を前線に配備する!!」

「うむ!! エドワウ殿、王族へこのことを通知願います!! ノックスは冒険者への連絡を!! ギルドカードに一斉通信を送れ!!」

「了解!! チッ、なんでこんな時に……!!」

 

 突然の青天の霹靂に、しかしただ手をこまねいてはいられない。

 魔族が相手となれば、戦えるものは限られる。

 ここ数日で魔装具の準備は整えていたが、しかし余りにも数が足りない。

 20万の魔族の大群から、20万人の王都民を守り切るために戦える魔装具所有者は……せいぜいが500人と言った所だろうか。

 残りの魔装具を持たない冒険者や兵士は護りに配置し、腕自慢の魔装具を持つ猛者たちで何とかしのぎ、王族それぞれの魔力を用いた広範囲攻撃で削っていく。

 そんな厳しい戦いを予感し、ウォーレンは声高々に指示を飛ばした。

 

「ったく……ロックたちがいりゃあ随分と希望も見えただろうに!!」

 

 ノックスは、思わずそんな言葉を零してしまった。

 ロック。彼がまだ、グランガッチへの遠征から帰ってきていないのだ。

 もちろん事情は把握している。王都とグランガッチを結ぶ転移陣を使い、ノルン様ら王族の皆さまとヴァリスタ、カトルが帰って来たのだが、ロック達はそこにいなかったのだ。

 何やらリンちゃんの親御さんドラゴンが見つかったとかで、そちらに会いに行くとか言っていたが……運悪くそれとタイミングが重なってしまったのだ。

 いや、むしろ魔族側がこの機を狙っていたか?

 ロックはともかくとして、あいつの相棒たるイレヴンがまさしく対魔族専用の殲滅兵器だ。闘技大会でも存分に見せた集団戦闘力は半端ない。

 アイツがいれば数万からの魔族は任せられただろうに。

 

 だが今は悔やむ時間も惜しい。

 ノックスはギルドに備え付けられている通信装置のギルドカード管理画面を開いた。

 

 これは現在生きている冒険者の名前が表示されるもので、通常の冒険などでも冒険者の生存確認を兼ねられるものだった。

 もし冒険先で死亡した場合は、その情報をギルドカードが読み取り、死亡通知が自動でギルドに送られる。

 死亡した冒険者の遺体の上にギルドカードが召喚され、それをドッグタグ代わりに回収するのもギルドの仕事であった。

 ギルドの、冒険者の絶対不変のシステム。

 

 さて、そんな冒険者一覧を出したノックスは、その全員に一括で襲撃事件通知の緊急メッセージを送るために、リストを一瞥して。

 

 

 

 ─────手が止まった。

 

 

「ウソだろ」

 

 

 画面に展開される冒険者名一覧。

 

 その中のひとつ。

 

 

 

 ────────『ロック=イーリーアウス』の名前が、死亡を示すように光を失っていた。

 

 

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