Ppp…ppp。
暗い部屋に小さな電子音が鳴いている。
「─っ…」
畳の上で丸まった身体を引き伸ばし、スイッチの表示灯を頼りに暗がりから手を伸ばした。
明かりをつけると窓からは冷たい風がひゅうひゅうと音を立てて入り、外も暗くなっていた。
どうやら寝落ちてしまったようだ。
「喉…」
冬の乾燥した空気にやられたのか、がさがさと声は喉から擦れて出る。
水を飲もうと蛇口を捻るが、費用を払えず止められているため、一滴も零れない。
ポストを覗いて、顔を歪ませる。そこには何冊かの支払い請求用紙と催促用紙ばかりが詰め込まれていた
「…」
舌打ちをカッと響かせ、携帯をつける。
つ…つかない。
寝る前に充電を忘れていた。
14歳、ひとり暮らし 。
親はいたが、質は最低だったようで当分前に居なくなった。ネグレクトというものだろう
ま、かなり教育熱心で、放任主義を徹底しすぎてしまったんだろ、そう思っておこう。せめて。
最初の方は見かねた地域の人達が融通してくれて部屋やお金を借りて生活出来ていたが、身体が悪くお金が貯まらなかった。
やりたいことはなく、やるべきこともこれといっては無かった。
人として最低限の生存活動を行うためには、少なからず栄養は必須ということで、寝て起きて食べる、人間の享楽を全て切り捨てたような生活を只今まで、ずっと繰り返してきていた。
今日もまた、味気のない安い業務用の野菜を食べて、眠る、次の日も、またその次の日も、両指で数えれなくなって来た頃、ポケットに突っ込んだ財布に重さを感じなくなってしまった。
顎の無精髭を捻ったり、戻して少し考える。
そろそろが潮時なのだろう、目標もなく、生きるすべなく、なかなかにいいスコアを出せたんじゃないだろうか。
緩やかに死へと向かう私の人生に、感情を不思議と抱くことはなく、自然のように、ただなるべくしてなるように、そんな静かな感情で受け入れてしまっている。
死を容易に感じるなんて生物として破綻している!、なんて頭で考えはするが正直な話、自分の感情すらもう分からない、行動する理由がないのだ。涙を流す理由もない。ただそうなる、そうなることを今まで積み重ねたから、そう思えてしまったのだろう。
そう考えると、今この状況が特別な気がして、はっと鼻で笑ってみたりする。目を見開いてみたりする。
…理由はないよ?。
ただ、どうすればいいかがわからないだけ。
ガチャ。
ふと、凪の心に風が吹いた。
──扉の開く音がする、玄関から、
戸締りをしていなかったとはいえ、こんな夜分遅くにノックもせずに勝手に入ってくるなんて異常だ。
それに 、僕を尋ねてくる人間なぞまずいない。
誰だ?
嫌な予感に身を震わせ、寄ってくる足音に鼓動を巻いていく。 乱れた足音、壁と服が擦れる音。
襖からゆらっと幽鬼のように現れたのは、びしゃびしゃのスーツをはだけさせ 、俯いている女だった。
女の目は虚ろで、頬を伝うは涙か雨か、潰れた眼で僕を見つめている
女は無言だ。無言でただ覗いている。
ありえない状況に言葉が出ない僕は逃げようと震えるが恐怖から身に力を入れることができない。
すると女は、虚ろな顔で僕に跨り、緩やかに、しなやかな手を首元に寄せてきた。
え?、あ、は?、いや、イヤイヤイヤ、嫌。
首を絞められた事実を認めることが出来ない。
ゆっくりと、頸動脈が圧迫される。先程まで死を軽んじていた脳が、哀れにも危険信号を大量に発信している。
苦しい。次第に指先がブリキのように重く、冷たく感じる。
大きな声は出ないが 、涙と嗚咽だけが止めどなくこぼれる、涎を吹きこぼしながら、冷えていく肢体に死を感じていた。
ぐ、お、おぉ、ぎ。
呻く、暴れる。
なおも女は感情を見せない。視界がぼやけてしまって確認ができない
その無感情さに苛立ちと恐怖を感じ、感覚の薄い手足は震える。
そんな中でも虚ろな女のくすんだ黒い真珠のような眼だけが、網膜に焼き付いて薄れない。
むが、ぎぐぅ。
苦しい、苦しい。
あっ 、ぁ...
身体に電流が流れたのかと錯覚する衝撃、感覚を無くしたその刹那、視界が真っ暗に落ちた。
─ダメじゃん、本当に死んじゃう。なんだよ、なんでだよ
浅い諦観が恐怖で染められる中、ぼくは冷たい暗闇の底へ意識を沈めた。
ゆっくりと書きますね
無理やりコイツぶっ殺して転生させようぜ