五条悟の専属家庭教師 作:家庭教師
「次は、理科です。場所を移動しますよ。五条家は色々あって便利ですね。私も教えてて楽しいです。」
〜19時〜
「なぁ、その前に飯食わねぇ?」
五条悟の部屋を出た後の五条悟の一声がこれである。
唯は少食なので、あまり空腹感は感じていなかった。
「あぁ·····そういえば、そんな時間ですか·····いつも何処で食べてるんですか?」
「専用の食堂がある」
「流石御三家·····」
少し呆れにも近い感情を抱きながら、五条悟の後を着いていく。広々とした日本家屋の中を歩き、五条悟がスパーンと中々の勢いで襖を開けた。
「飯!」
「悟様。今日は何になさいますか?」
「今日は生姜焼きの気分かな〜。唯は?」
「私は·····おむすびを2つ。しおむすびと·····なにがありますか?」
「今すぐに出せるのは·····しゃけ、こんぶ、おかかですかね。先生」
「ではこんぶを。」
〜19時30分〜
「本当に良かったのか?おにぎり2つだけで。」
「えぇ。少食なもので。」
「だからちっちゃいんじゃないの?」
「悟様の方が小さいじゃないですか。」
「俺にはまだ伸び代あるからな?」
「私だってまだ14ですよ。成長期です。」
日本家屋には珍しいフローリングの部屋に着き、扉を開く。中には人体標本や骸骨標本、薬品棚、洗面台に理科実験用器具と多種多様なものがある。
「並の学校の理科室より設備が整っていますね。」
「だろ。」
「空き瓶ありますかね··········ありました。悟様はここで少々お待ちください。」
またしても放置される五条悟。しかし、今度は早かった。
「何してんの?」
「食堂からお砂糖を貰ってきました。これを飲む為に」
「·····コーヒー?」
「持参です。好きな物で。」
実験器具からアルコールランプ・三脚・ビーカー・マッチを取り出す。洗面台でビーカーの中に水を注ぎ、三脚の上に置く。その下に点火済みアルコールランプを移動させ、沸騰させる。
「安全の為に濡れ雑巾・使用済みマッチ棒を捨てられる水入りビーカーも用意します。さて、丁度いいですね。ここにある実験器具の説明をしましょう。」
ビーカーを除いた理科実験器具をもうワンセット持ってきて、再度マッチ箱から1つマッチ棒を取り出す。
「『マッチ』。そしてこれがマッチ棒です。知ってますか?」
「知ってるよ。お前本当に舐めてんのな」
「品定め中です。」
「科目ごとに品定めんなって。」
「まずはマッチ棒の仕組みを説明しましょう。マッチ棒の先端を見てください。赤く丸くなっているでしょう?この部分を『
まずは1つ目。『
2つ目。『
3つ目。『
マッチ棒自体はとても小さく、保管方法が悪い場合幼児が口にしてしまうケースもありました。しかし、この程度ならば人体には有害ではありません。今回は1つ目の詳しく詳細が書かれたマッチを使用しましょう。マッチ棒の先端の頭薬以外の部分を『
「いきなり早口じゃん。怖いし長ぇ·····何?ガラス?とか·····途中赤血操術出てきてなかった?」
「
「マッチ1つに説明がクソ長ぇ〜。」
「何を言うんですか?マッチは科学の結晶ですよ?あぁ、しかし約10年程前に新発売された·····少々お待ちください·····ありますかね··········ありました。『チャッカマン』ですね。流石五条家ですね。マッチ棒の数は凡そ40程、着火も子供では難しいマッチとは違い、こちらのチャッカマンはスイッチ1つで1000回以上の点火が可能です。ちなみに原理はライターと殆ど同じです。」
「じゃあチャッカマンでいいじゃん。」
「悟様。これは理科の授業ですよ。チャッカマンで点火して何が授業になりますか?それに安全性と歴史はマッチの方が上です。次に·····そうですねぇ。簡単な物から説明しましょう。『
「お〜い三脚くん泣いてるぞ〜。」
「無機物は泣きませんよ悟様。ジョークが下手ですね。次に『ビーカー』ですね。『
「ビーカーくん泣いてるぞ〜。」
「
「4位中2位じゃねぇか·····」
「現在水をお湯に沸騰させる為使用しているアルコールランプとは別に説明用の同アルコールランプがあります。皆さんが当たり前で忘れている事ですが、アルコールランプにあるアルコールは8分目までしか入れては行けません。10分目まで入れてしまうと、ランプ内のアルコールに引火して最悪爆発・ガラスが飛び散って大惨事になります。危険度で言えば、実験器具の中でも上位に入るでしょう。まぁアルコールランプのアルコール継ぎ足し・詰め替えなど、一般人はまず機会が無いので気にする事はないでしょう。次に、芯が底についていることを確認しましょう。芯の長さは·····そうですね。5mm程が良いでしょうね。長過ぎ・短過ぎはアウトです。そして、必ず平面な場所で使いましょう。傾いたり倒れたりしたら、引火の危険性があります。最後に、この説明用アルコールランプにマッチで点火します··········点火しました。さて、付けたばかりですが、アルコールランプの火の消し方を説明したいと思います。アルコールランプの消し方は利き腕で蓋を持って上斜め45°から火を抑え込みます。中が真空状態で酸素が届かなくなり、火は鎮火します。1度、火が消えたか外して確認します。この時空気に芯を触れさせ冷やしましょう。まぁ·····アルコールランプの火の消し方はこんなもんですね。注意点はいくつかあります。まず、真上から蓋を被せるのはやめましょう。普通に熱いので·····火傷します。悟様は無下限呪術で防御出来て便利ですね」
「お前も術式使えば防げるだろ·····」
「私の場合防げるというか··········まぁいいです。複雑なので、いつか悟様や私の術式についての授業もしたいですね。当分先でしょうが·····次に、1度被せるだけで終わらせない事です。しっかり被せたら、1度確認・冷却の為に外しましょう。そうですね。たっぷり5秒は冷却させましょう。その後、このように蓋をします。はい、これで完全に鎮火しました。実験器具の説明は以上です。悟様、コーヒー飲みますか?」
「砂糖·····は、あるのか。」
「悟様はまだお子様なので、カフェイン多量にならないようコーヒーは少量、お砂糖たっぷりにしましょう」
「お子様言うな」
新しくビーカーを2つ取り出し、唯が懐からコーヒー粉入りの小瓶を1つ取り出した。
「本来この小瓶1つが1杯分なのですが、悟様はまだお子様なので7:3ぐらいの割合で分けましょう。悟様、お砂糖はお好みで。」
「大丈夫だろうな。コレ·····」
五条悟が『
「中身は多分お砂糖ですよ。白いですし。」
「お前が態々食堂まで行って詰めてきたんじゃねーのか·····」
「そうですね··········でもまぁ、もしかしたら詰めた女中の手違いで塩かもですね。」
「それは心配してない」
大さじで2杯の砂糖を薄味コーヒーにブチ込む五条悟を見て、いつものポーカーフェイスで唯が見つめる。
「ほぼ砂糖水じゃないですか」
「そう?コーヒーの味するけど。」
「まぁ悟様がいいならいいですけど·····その量なら夜眠れなくなる事も無いでしょう。ディナーコーヒーとしては丁度いいですね。悟様はそのまま砂糖水を堪能してください。」
「コーヒーな。何すんの? 」
「実験授業のお片付けを。」
「コーヒー作っただけだろ。」
「ちゃんと使用した実験器具の説明したじゃないですか。義務教育でアルコールランプ使いますよ。ほら、マッチ付けるの練習しますよ。タスキ付けてください。」
「これ飲んだらな」
〜20時30分〜
実験器具の片付けを終え、荷物を纏めて五条家の玄関で五条悟と対峙する唯。
「さて、今日の授業は終了です、悟様。本日は算数・国語・理科の授業を行いました。すべて復習を忘れないように。いつか抜き打ちテストします。」
「マジかよ。ゲロだる·····」
「算数は宿題ありませんが、国語は太宰治:著の『人間失格』を読破する事、理科はアルコールランプのマッチを使った点火と安全な鎮火を宿題にします。」
「ちなみに次はいつ来るんだよ。」
「1週間以内には来ます。細かい日程は決まったら前日までに給仕長様までにご連絡します。その時給仕長様から悟様にお伝えするように致しますので、一夜漬け等はしませんようお願いいたします。後、短編でもいいので、部屋の東側の角に置いた30冊あまりの本を1日3冊読破してください。これは宿題ではありません。挑戦課題と言った所でしょうか。」
「一夜漬けさせたくないなら伝えねー方がいいんじゃねぇの?」
「私は家庭教師ですよ、悟様。そして悟様は生徒です。マナーというものがあります。」
「··········金はいいのかよ。任務よりコッチの方が金払い良いんだろ?1日でも多く来た方が」
「昼にも似たような事を言いましたが、私は1級呪術師としての俸給に満足していますし、1級の等級を背負う者として任務は最低限こなさなければなりません。呪術師は年中人手不足なんです。1級となれば尚更。悟様には呪術界の為にも一刻も早く空白の特級術師の席を埋めて頂きたいです。」
「呪術師は年中人手不足ねぇ。お前が特級なりゃいいじゃん。」
「私に国家転覆は不可能ですよ。頭を潰す事は可能ですがどうせすぐすげ替わるだけです。」
「へぇ〜。俺以外に良い術師居ないの〜?」
「最近私と友人が1級に推薦した4つ下の女の子が居るんですが、中々に筋が良いです。彼女はいずれ特級に上がるでしょう。しかしまだ未成熟です。悟様とどちらが早いかは··········私には分かりかねます。」
「今度連れて来てよ」
「呪術師は忙しいんです。お互い義務教育がありますし、私は1級。彼女も2級*2。連れてこられたら連れてきますよ。(ただでさえ最近は呪霊の動きが活発になっている。恐らくは悟様の誕生により一時的に世界のバランスが呪霊に傾いている。悟様が成長すれば「五条悟が居るから」という理由でバランスが呪術師優勢になり、呪霊共はなりを潜めるだろうが·····それまで特級術師不在で凌ぐしかない·····か·····)」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません。お見送りありがとうございます。
·····時に悟様。」
「なんだよ。」
「今日は楽しかったですか?」
思わず五条悟が着ている着物の裾を握る。
自分は勉強が嫌いだ。それは自分がよくわかってるし、なんなら今まで4ヶ月間、馬鹿みたいな家庭教師を相手にしてきて更に嫌いになった。
算数も国語も理科も社会も生活も音楽も工作も好きじゃない。
でも、今日初めて唯に出会って、沢山バカして·····
「··········楽しかったよ。」
馬鹿の相手は疲れる。でも唯みたいなバカとバカするのは楽しい。
「これからもやって行けそうですか?」
「··········さぁな。」
「まぁ悟様がどうこう言おうが五条聡様からお暇を頂かない限りは金の為に来ますけどね。」
「テメェ·····俺が父さんに解雇してくれって言ったら1発だぞ。」
「親の七光りは楽しいですか?」
「お前マジふざけんなよ!」