個性『滅尽龍』のヴィラン   作:玉ネギのソテー

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個性『滅尽龍』のヴィラン

xxxx/03/04

 

とある家庭に、虐待の噂ありとの通報について職員が向かい、問題なしとの判断で如何なる措置も行わず放置した件について、児童の個性の中に自己の再生が含まれていることを確認。

虐待の隠蔽が容易であったことが判明した為、近日中に再調査を行う。

 

xxxx/04/01

 

職員が向かったところ、娘を除いた家族全員の食い荒らされたような痕の残る死体を発見。

行方不明の娘について調査を進める。

 

xxxx/04/30

 

調査は打ち切りとする。

以降この資料は[編集済み]に関わる為、一般の目に触れぬよう保管することとする。

 

───────────────

5年後

 

USJでの救助訓練が行われる当日、行きのバス内にて

 

「今月で3回目だってよ、例のヴィラン」

「例の?……あ〜、ネルギガンテだっけ?」

「そうそう、ヒーロー事務所が襲われて、その場にいたヒーローの半分が意識不明でビル一棟が倒壊だってさ」

 

そんな世間話や雑談と共に訪れたUSJにて襲撃を受けた雄英の生徒たち。

オールマイトが遅れて駆けつけ、安心かに思われたその時。

死柄木が嗤う

 

「おい、出番だ」

「ンなことわかってるっての、一々うるせェな」

 

そう言って面倒くさそうに頭を掻きながら前に出たのは、褐色肌に白髪の少女。

困惑するオールマイトを他所に、死柄木は

 

「ネル、そいつがこの世界で最強の男だ。そいつなら、お前の飢えを満たせるかもしれないぞ?」

 

と少女に語りかける。

すると少女の顔つきが変わる。

 

「……そうか。──なぁ、オールマイトって言ったか?お前ヒーローなんだろ?なら助けてくれよ、オレは腹が減って仕方がないんだ」

「すまないが、ヴィランに今すぐ手渡せる食事はないよ」

「ハハっ、面白いコト言うな、オレが食うのはテメェだよオッサン!」

 

少女の背中に黒い翼が、腰あたりに同じように黒い尻尾が生える。

それと同時に少女がありえないほどのスピードでオールマイトへ攻撃を仕掛ける。

 

(──っ!早い!?)

「オラァ゛!」

 

なんとか躱して致命傷は避けたオールマイトだが、その腕には切り傷が残っていた。

少女の爪には、オールマイトの血がどろりと付着している。

 

「んっ──んれ……。なかなかいい味だな、腹八分目くらいまではオマエで満たせそうだ」

 

自身の爪にこびりついたオールマイトの血を舐め取ると、小さく笑みを浮かべた。

彼女の両腕が黒い甲殻に覆われ、その先ほどと同じような猛スピードでオールマイトに迫るが、オールマイトが二度目の攻撃を見切れないほど弱い訳がない。

オールマイトと少女の拳が〝拮抗する〟。

 

「──っな!?」

「ハハ!いいじゃねェか、ギア上げな!」

 

少女はその翼を大きく広げるとオールマイトの周囲を旋回するように飛び回り、四方八方から攻撃を仕掛ける。

防戦一方であったオールマイトだが、ほんの一瞬の隙を突いて少女の腹に拳を叩き込む。

大きく地面を転がった少女は、その笑みを凄まじく獰猛なモノへと変貌させながら立ち上がる。

全身の黒い甲殻を内側から突き破るように白い棘を生やした少女は、陣触れかのように咆哮する。

咆哮している最中の動きが止まった少女にオールマイトは拳を振りかぶる。

しかし、まるでそれを待っていたかのようにオールマイトを見据えた少女は棘の生え揃った両腕を交差してその拳を受け止める。

オールマイトの拳に僅かな痛みと、バキバキと棘が折れる感触が伝わる。

しかし、少女の笑みは変わらない。

少女は獰猛な笑みのままオールマイトを突き返すと、体を大きく捻ってその尻尾を叩きつける。

よろめいたオールマイトへ飛び上がった少女が拳を叩きつけようとするが、オールマイトは一歩下がってそれを避ける。

すると、少女の拳が地面に突き刺さり、少女がそれを引き抜くとともに無数の棘がオールマイトへと飛ぶ。

オールマイトは上体を逸らすことによって、すんでのところで無数の棘を回避した。

 

「──ッチ、避けんのかよ」

 

そう言いながら身振りするような動作と共に折れたりヒビが入っていた棘を体から振り落とす。

 

「ヒーローだからね。簡単には負けないさ」

 

少女の甲殻の下から生えた棘は先ほどより少し黒いように見えた。

 

「おい、あんま時間かけんな」

「……はぁ、わかってるよ、わかってる」

 

死柄木からそう声をかけられた少女の表情から遊ぶような喜色が消える。

二度目の翼を広げての突進に、オールマイトは反撃の用意をする。

二度目の突進は、翼とそこに生えた棘を盾にしての攻撃だった。

先ほど行ったように棘を折りながら拳を叩き込む。

 

(先ほどより、硬い……?)

 

一抹の違和感を感じながらも戦闘を続けるオールマイト。

少女の棘は折れは再生を繰り返す。

互いに疲労が溜まる。

 

「その棘は……、無制限なのかい?」

「そうだ。そうじゃなきゃこんなバキバキ折らねェだろ?」

 

軽く息を切らすオールマイトに、ほんの少し息を乱した少女が答える。

しかし、そう言った少女の棘が生え変わらない。

その時、少女は背後を振り向き

 

「おい、そろそろ腹減った。出せ」

 

その言葉に答えるように死柄木が黒霧に合図を出すと、黒霧のワープゲートから脳みそが剥き出しの、一切の行動を行わない死人のような人型が排出される。

少女はそれを押し倒すと、嬉々としてそれを貪った。

内臓は生きるための最低限しか残っておらず、そこにあるのは肉と骨だ。

肉を裂いて骨から引き剥がし、血液を飲み干す。

その度に、再生が止まっていた少女の棘が生え変わる。

オールマイトはその凶行を止めようとするが、黒霧のワープゲートがそれを阻む。

時間と共に、少女の爪が鋭く変化し、先ほどなかった場所まで棘が生え揃い、生え揃った棘が黒く染まっていく。

そして、棘の全てが黒く染まり切ったその時、彼女の食事は終わった。

 

「……黒霧の野郎がヘマしたならもう時間もねェ、速攻で終わらせてやる」

 

その言葉と同時に迎え撃つ為、拳を握りしめたオールマイト。

少女は翼を大きく開き、先ほどよりもさらに高い高度へと上昇する。

少女は咆哮すると同時にオールマイトへと急降下する。

オールマイトは少女の全霊の一撃を、自らの全霊で迎え撃つ

 

破棘滅尽旋(はきょくめつじんせん)

DETROIT SMASH(デトロイト スマッシュ)!!

 

凄まじいほどの風が吹き荒れ、地面が割れる。

全てが吹き飛ばされそうなほどの暴風の渦中である二人は、拮抗の末にお互いが吹き飛ばされた。

少女が立ち上がり、再びオールマイトに向かおうとしたその時、少女の足元が凍りつきその片足が氷に包まれる。

少女は一秒ほど動きを止めたものの、尻尾で氷の一部を砕くと未だ氷に張り付いている自身の足の肉を引き剥がすような勢いで無理やり動き出す。

 

「……ハハハ、──アハハハハ!!おもしれェ!死ぬまで殺し合おうぜ!皆殺しにしてやるよ!」

 

少女は心の底から楽しそうに、尻尾を地面に打ち付ける。

しかし、そんな少女の目玉に銃弾が命中する。

 

「1-Aクラス委員長!飯田天哉!ただ今戻りました!」

 

目玉を潰された少女は、自身の爪で目から銃弾を引き抜く。

それと同時に目玉が再生する。

 

「おい、どうする?コイツら全員……殺すかァ?」

「いや、ゲームオーバーだ。お前の飯もタダじゃない、帰るぞ」

「マジかよ、こっから面白くなりそうだったのに」

 

少女はそう言いながらも死柄木と同じくワープゲートへと向かう。

スナイプが残りの弾を全て少女へと放つが、それら全てが翼と黒い棘に阻まれる。

 

「覚えとけよ……、次は殺すからな」

 

少女は肩越しにそう吐き捨ててワープゲートの中へと消えた。

 

───────────────

 

『油断したね?……〝ネルギガンテ〟』

「──それもそうだけどよォ、テメェの出す飯がシケてんのも悪ィだろ?フルパワーが出ねェんだよ」

『全く、君は燃費が悪すぎるな』

「黙れ、テメェが勝手に拾っといて文句言うな」

 

ネルギガンテと呼ばれた、先ほどUSJにて猛威を払った少女、黒神ネルは自身の翼を毛繕いするような感覚で翼の棘を何本か折りながらテレビ越しに話しかける人物へと文句を吐き捨てる。

 

「……寝る。なんかあったら起こせ」

 

彼女はそう言うと、バーのようなアジトの端──半ば彼女の寝床のようになっているスペース──で背中を丸めて眠った。

そんな彼女を見て、死柄木は一言

 

「……扱いづれぇ」

 

と呟くのだった。




ヒロアカ世界に古竜はいないのでこの世界のネルちゃんは個性を食ってます。
燃費や使い勝手に関わらず大出力の個性の方がより多くエネルギーを得られる感じです。
つまりUSJで食べてた脳無には使い勝手が悪いけど大出力の個性が入ってました
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