個性『滅尽龍』のヴィラン   作:玉ネギのソテー

4 / 9
保須市にて

 

 

「なんだコイツ……!」

「どうせヴィランだ!やっちまえ!」

「おう!」

 

二人組のヒーローが四足歩行の巨大な黒い獣と対峙している。

獣は知性と苛立ちを感じさせる鋭い瞳で二人を見据えた。

二人組の片方がその瞳を狙っ飛び込むが、獣は後退してそれを避けると右前足を大きく振り上げる。

 

「はっ、そんなトロい動きが当たるかって──っ!?」

 

避けられて深くアスファルトへ突き刺さったその右前足がアスファルトから引き抜かれたその時、右前脚に鎧のように備わっていた棘が飛び散り、最初に攻撃をしたヒーローへと突き刺さる。

棘を受けたヒーローはその勢いのままに吹き飛ばされ、ビルに衝突すると同時に棘がさらに深く突き刺さり絶命した。

 

「……っ!テメェ!」

 

もう一人は、自分では勝てないとわかりながらもヒーローとしての使命感と共に獣へ挑んだ。

彼は自慢であるスピードを生かして尻尾にしがみつき、尻尾を切り落とそうと武器を取り出した。

しかしその努力も虚しく、彼は凄まじい力で地面へと叩きつけられ絶命。

黒い獣は続々とやってくるヒーローを鎧袖一触と言って良いほどの勢いで蹂躙してゆく。

 

───────────────

 

グラントリノの身を案じて新幹線を飛び降りて保須へやって来た緑谷は、それを見た。

脳無以上の脅威、悉くを殲ぼさんとする怪物、ネルギガンテを。

 

《アレがフルパワーじゃねェからな。オレの全力はあんなもんじゃねェ》

 

彼女が言っていた言葉を思い出す。

しかし、これも彼女の本気ではないのだとしたら……、未だ本領を発揮していないのだとしたら、そう考えると背筋が凍る思いだった。

プロヒーローたちは致命傷だけは避け、回復系の個性のサイドキックを軸に、時間稼ぎを行う作戦へと変更したらしく、ネルギガンテは圧倒的な力を誇ってはいるものの、お互いに千日手の状態をキープしていた。

緑谷はネルギガンテはプロヒーローに任せ、飯田を探し、そしてステインと対峙した。

勝利したその後……

 

「……全ては、正しき社会のために」

 

そう言って緑谷を攫おうとした脳無を殺害したステイン。

 

「贋物…正さねば…誰かが…血に染まらねば…!ヒーローを取り戻さねば!!来い、来てみろ贋物ども…俺を殺していいのは本物のヒーロー、オールマイトだけだ!!」

 

ステインの鬼気迫る形相とオーラにその場の全員が圧倒されたその時

 

「──ぐ、はっ」

 

斜め上の位置から伸びた鋭いナニカ──よく見ればそれは尻尾だった──が、ステインに突き刺さる。

唸り声を上げながら地面に降り立ったのはやはり、黒い獣。

確かに目が合った、緑谷はそう感じた。

エンデヴァーの炎がネルギガンテへと迫るが、彼女はそれを翼で防ぐと、一際大きな叫び声を上げた。

大地を踏み締め、突進してくるネルギガンテへと、エンデヴァーは先ほどとは比べものにならないほどの高温の炎を浴びせる。

しかし、それでも時間稼ぎにしかならず、ネルギガンテは止まることなくエンデヴァーたちへと迫る。

 

「っく、化け物め……!」

 

火力がさらに上昇し、肉が焼け焦げる臭いが立ち込める。

その翼を焼き焦がすような炎熱に晒され、骨が見えるほどに肉が燃え尽きるが、すぐさま再生してその傷が塞がっていく。

エンデヴァーの炎が強くなり、その姿が炎に呑まれる。

しかし、炎が晴れた時、そこにいたのは……

人型に戻ったのみで傷は一切無い姿の黒神だった。

 

「はぁ……クソ、腹が減った」

「──子供、か?」

「黙れ」

 

目を見開いたグラントリノの言葉に、黒神は不機嫌そうな声でそう返した。

 

「こんなとこで、子供がなにしとる」

「見てわかんねぇか?殺しに喧嘩だ、楽しいぜ?」

 

黒神は楽しげに笑う。

実際楽しいのだ、彼女の価値観の内でこれ以上に楽しい行為は存在していない。

黒神が強く踏み込んだかと思うと、彼女の姿が掻き消える。

グラントリノがエンデヴァーを突き飛ばす。

 

先ほどまでエンデヴァーが立っていた位置に彼女の腕が突き刺さっていた。

硬直している彼女にグラントリノがかなり強い蹴りを入れると、彼女はそのままビルまで吹き飛ぶ。

そこにエンデヴァーが追加で攻撃を仕掛ける。

エンデヴァーはNo.2であることもあり、すでに彼女の判明している限りの全容を知らされていた。

だからこそ、彼女を焼き切り得る全力の炎を放ったつもりだった。

 

「……っハハハ、イイなこれ、癖になりそうだ。お前も楽しいだろ?もっとやろうぜ。──、お前は美味そうだ」

 

笑みを保ったまま瓦礫の内側から姿を現した彼女は、先ほどの一撃で腹部に空いた大穴もみるみるうちに塞がっていく。

再び構えたエンデヴァーを前に、彼女は不敵な笑みで舌なめずりをした。

 

「……我慢も何も、とうの昔にやめちまった、ガマンできねェオレが可笑しいだのって話も聞き飽きた。今はオレの時間だ、もう我慢はしねェ、好きなように()って、好きなように食ってやる」

 

もう一度尻尾を地面に打ち付けて低く構えた彼女の姿が、緑谷の中で先ほどの黒い獣のよう(ネルギガンテ)だった際の彼女と重なる。

エンデヴァーが炎を放ち、それを彼女が翼で防いだ隙をついてグラントリノが背後に回り込んで頭を狙って蹴りを入れた。

しかし、気づかないうちに彼女の側頭部から伸びていた巨大な角がそれを阻んだ。

彼女は大きく体を回転させてグラントリノへ尻尾を叩きつけようとする。

 

「……っ!お前さんのように苦しんどるやつならいくらでも──」

「黙れって言ったろ?そんなこと知ってる、知っててオレは我慢すんのをやめた、そう言ったんだよ」

 

彼女の言葉へ指摘を飛ばしたグラントリノへ明確な敵意が向けられる。

表情から遊びがなくなり、棘が生えてすらいなかった部位からも夥しい数の棘が生え揃う。

しかし、その時彼女の後ろにUSJのヴィラン、黒霧が現れる。

 

「黒神ネル、終わりです」

「……待ってろ、この爺ィブッ殺して──」

「時間切れだと言いました」

「……チッ、融通が効かねェな、飯にもならねェカスの癖してよォ」

 

彼女の怒りを示すように尻尾が激しく地面を叩き、翼がはためく。

一応は仲間だからだろうか?その矛先は黒霧へは向かず、ヒーローたちへと無数の棘が飛ばされる事となったが、狙いが定まっていなかったこともあり、その幾つかが肌を掠めるのみだった。




一応補足を
なんでグラントリノがそこまでヘイトを向けられたかというと
「子供か?」
という最初の一言と
「他にも苦しんでる人は多くいる」
という発言が子供扱い&子供を論理で黙らせようとする大人の口調
に聞こえたのが彼女を怒らせた原因になります。
子供(幼稚園や小学校)時代を想起させる言葉が嫌い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。