個性『滅尽龍』のヴィラン 作:玉ネギのソテー
「……ちょっとメシ食ってくる」
そう言って黒神はアジトを出ようとする。
個性を喰らう個性の彼女の食事、それはつまり殺しであるとその場の全員が理解していた。
「足をつけるなよ、面倒だ」
「骨まで食えば万事解決ってことだろ?」
死柄木の言葉に、黒神はそう返答するとそのままアジトを出た。
時間は真夜中、明かりの消えた寂れた道を彼女は翼を生やし上空から俯瞰する。
黒い服に黒い翼、灯りも星もない今夜に彼女を捕捉できる人物はいない。
彼女は自身の感覚と直感を頼りにターゲットを決めると、相手が一人になったその瞬間に上空から接近する。
「うわっ!?な──んんっ!」
「ちょっと黙ってろ。すぐに終わる」
相手の口を塞ぎ上昇を続け、とあるビルの屋上へと相手を運んだ。
そのビルは屋上が立ち入り禁止となっている高層ビル。
哀れな食糧の叫び声は地面にもビル内にも聞こえない。
すると、相手の男が黒神へ炎を投げつける。
個性による攻撃のようだが威力が低く、黒神の顔の表面を少し焦がす程度に終わった。
「……ッチ、エサが抵抗するなよ。まぁともかく念には念を、だな」
黒神が男の喉に歯を立てる。
喉が無くなった男はもう助けを呼ぶことはできない。
食事は続く……
次の日の朝方、ヴィラン連合のアジトのドアが開いた。
「
白と赤が混ざったような色の棒──おそらく骨──をボリボリと噛み砕きながら黒神が帰ってきた。
「今日は何人食べちゃったんです?」
「5人」
黒神はトガにサンドイッチとサラダの入ったレジ袋を投げ渡す。
中身を見たトガが首を傾げていると、黒神は
「ヴィランだって体が資本だ、しっかり食っとけ」
「私はちゃんと──」
「細い、明らかに足りてねぇよ……お前くらいの歳でお前より細いやつ見たことねぇぞ」
ほら、と促す黒神。
トガがとりあえず渡されたものを食べると彼女は
「よく食べた。今度はもうちょっと多めに持ってくる」
と言って微笑むとトガの頭を優しく撫でた。
その場にいる全員が一度も見たことのない彼女の表情と仕草に戸惑うが、彼女は我関せずと言った様子でいつもの位置で体を丸めて眠り始める。
「おい、黒霧……、なんだ今の」
「アレが、姉としての彼女……ということでしょうか?」
少し過保護気味に見える態度と優しい笑み。
彼女にとっての〝姉であること〟とはそういうことなのだろう。
そして次の日
「……おい、話がある」
「どうした?雄英襲撃リベンジか?」
死柄木の言葉にふざけ気味にそう返した黒神に、死柄木は
「あぁ、その通りだ」
そう言って笑った。