個性『滅尽龍』のヴィラン 作:玉ネギのソテー
荼毘とトゥワイスの元にトガを運び、合流した黒神。
少し興奮気味のトガに
「いつにも増してテンション高いな、なんかあったか?」
「お友達が出来たし、好きな人も見つけました!」
「……そうか、よかったな。ンじゃあ、オレはそろそろスピナーとマグネを拾いに──」
「いえ、貴女は死柄木の〝先生〟がお呼びです」
「──そうか、わかった。トゥワイス!ほらよ」
彼女がトゥワイスに手渡したのは一枚の紙。
そこには彼女の翼や尻尾を含めた各部位のサイズや身長が事細かに記されていた。
「一応、オレが最高戦力だからな、いつでも増やせるようにしとけ」
「おう、わかった!ふざけんな、誰がそんなことするかよ!?」
「それじゃあ、また後でな」
黒神は、黒霧の展開したワーフゲートの中へと消えていった。
──────────
「──よく来たね、黒神寧……いや、今はネルだったかな?」
「……そうだ。ンで?今更になってオレの全部を奪ってやるって話か?」
「そんな要件じゃない、キミの個性は僕にとって都合が悪い。──『テオ・テスカトル』、メキシコのNo.1がこちらに向かっているらしい。キミや弔を追い詰める為、そして僕に辿り着く為だ。オールマイトの相手は僕がやるさ、キミには──」
「もう一人の野郎を喰い殺せって話だな?」
「その通りだ、そうと決まれば話は早い」
黒神の正面にドサドサといくつかの脳無が落下する。
どれも意思は持たず──正確には奪われ──食糧として差し出されたも同然の生きる屍たちだ。
「今回は僕も出し惜しみはしない、今用意できる最大限だ」
「……そうかよ」
黒神は薄い笑みを浮かべたその直後、いつも通りに人体へと喰らいつく。
そのエネルギーの総量はおそらく、彼女の体が本来欲する量を満たし切り、それでもなお有り余る量。
彼女は体から翼と尻尾が生やし、黒い甲殻が身体を覆う。
全身の棘がボロボロと抜け落ち、結晶のような、または金剛のような強靭な棘が生え揃う。
棘が淡い光を纏い、エネルギーがその許容量ギリギリまで蓄積された事実を伝える。
しかし、彼女は捕食を止めない。
棘に纏う光が増し、彼女の内側から破裂しそうな印象を与えるほどの光が漏れる。
その光に照らされながら、オール・フォー・ワンはほくそ笑んだ。
──────────
神野区にて、オール・フォー・ワンと対峙するオールマイトの隣に、赤い羽を持つ男が降り立つ。
「ヒーロー、テオ・テスカトル。現着した」
赤い服と、赤い翼と尻尾。
公安からの要請に応えたプロヒーロー、テオ・テスカトルが鋭い双眸でヴィラン連合全員を睨みつけ、大地に立った。
オールマイトとそれに迫る実力を持つプロヒーロー、その二人を同時に前にしてなお、オール・フォー・ワンは笑みを崩さない。
「残念だけど、君の相手は僕でも弔でもない。……そろそろあの膨大なエネルギーに順応した頃だ」
その言葉とほぼ同時、オールマイトは上空に煌めくような光を確かに見た。
「──っ!テスカトル!上だ!」
「遅せェンだよ鈍間がァ!」
上空から飛来した黒神がテスカトルの頭を鷲掴みにして地面へと叩きつける。
仄かに光を放つ金剛棘を生やした翼と尻尾、そして両手両足も同様の状態の彼女は、押さえつけたテスカトルに牙を突き立てようとする。
しかし、テスカトルから粉塵が撒き散らされたかと思えばそれと同時に凄まじい爆発と炎が黒神を包み込む。
「──野蛮だな。地獄すら生ぬるいと心得るがいい、女」
「地獄なんざ毎日だ。飽き飽きしてっからちょうどいいな──期待してるぜ?」
テスカトルの冷酷な一言に、好戦的な笑みで答える黒神。
今ここに、戦いの幕が切って落とされた。