個性『滅尽龍』のヴィラン 作:玉ネギのソテー
黒神へと凄まじい炎が迫り、黒神とテスカトルの二人を覆い隠す。
直後、ちょうどテスカトルの背後に位置していたビルの一つが凄まじい轟音と破壊音を上げて倒壊する。その瓦礫の中で、倒れ伏す影が一つ。黒神はそれをつまらなさそうに見つめている。
「……ンだよ、弱ェじゃねぇか」
「っ!舐めるなァ!」
黒神の挑発から一秒と経たずに放たれたのは、先ほどとは比較にならない業火。
それは、薄々感じ始めた力量差への焦りと、黒神の挑発への苛立ちが誘発した一撃。
黒神ネルというヴィランを焼き殺すつもりで放った一撃だった。
事実、その一撃は彼女の上半身を丸ごと消し飛ばし、灰すら残さなかった。
しかし……
「──やればできンじゃねェか。裏のヤツに用意させた服で良かった、危うく上裸晒すとこだった──」
「……な、貴様──来るな!」
下半身の切断面から得体の知れない異音が聞こえたかと思えば、服と共に、灰も残さず消えたはずの上半身が再生していく。
全ての再生が終わり、自らへと捕食者のような獰猛な眼を向ける黒神に、テスカトルは恐怖してしまった。
「……──あああ!あああアアアア!!」
赤き四足、獅子の如き立て髪と龍の如き翼。
黒神はにんまりと笑う。
「やっと本気か。ならオレも合わせねェとな?」
バキバキ、メキメキと骨格が変容し、皮膚が裂け新たに鱗が生え並ぶ。
頭蓋を突き抜けた角が悪魔の如く捻じ曲がりその姿を表す。
炎王龍に応えるように、滅尽龍が姿を顕す。
「───────!!!!」
悉くを殲ぼさんと雄叫びを上げ、ネルギガンテが大地を踏み締めた。
その全身には金剛の棘が生え揃い、内側から不気味な光を放っている。
テスカトルが吐き出した炎をネルギガンテの翼が防ぐ。
焦げていく翼も、焼け落ちるよりも早い速度で再生していく。
翼が再生こそするものの燃えている一方で、彼女に生え揃った棘は焼けるどころか傷一つ付いていない。
二匹の龍が、正面から激突する。
首筋に噛みつこうとしたテスカトルを、ネルギガンテは正面から引き倒し、その首筋に喰らい付く。
テスカトルが叫びを上げて炎を撒き散らす。
しかし、ネルギガンテの牙は深くその首に刺さり込み、肉を裂く。
ネルギガンテが空へと咆哮を上げる。
その光景を見て、オール・フォー・ワンはほくそ笑む。
「……素晴らしい。これ以上ないほどの暴走だ」
「暴走…?」
「彼女は今満腹なんだよ、オールマイト。しかし彼女は食事を止めようとしない。なぜかわかるかい?」
「…………」
「彼女の飢餓が満たされた時、彼女の個性はアポトーシスにも近い働きを始める。満たされたままでは彼女の身体は持たないからこそ、自らエネルギーを消耗しようとする。……それはつまり、凶暴化と暴走だ」
オール・フォー・ワンはただ笑う。
心底愉快そうにオールマイトへと笑いかける。
「僕が与えたのは彼女のキャパシティを遥かに超えるエネルギーだ。おそらく彼女は時間経過とともに加速度的に凶暴化し、最後には自滅するまで暴れるだろうね。どうする?オールマイト。僕を倒すか、彼女を救うか……、今の君には二つに一つだろう?」
宵闇に、オール・フォー・ワンの笑いとネルギガンテの咆哮が木霊した。