ペルソナ5 The My Star 作:アカトンボ
あ、自分はルビー推しです←聞いてない。
『次のニュースです。連日、渋谷で騒がれていた闇バイトの件ですが、詐欺グループの主犯である人物が警視庁まで――』
4月28日、金曜日、曇り。朝。
どうやら昨晩、金田邸で警察のガサ入れがあったようで、金田は罪を認めて自首したみたいだ。今回も反谷の時と同じように改心は成功したと見える。
五反田家で貴美子の作ってくれた朝ご飯を、隣で一緒に食べていた五反田が大して驚きもせずに淡々と言った。
「今まで散々悪事に手を染めてた奴がどういう心境の変化だよ。まさか、最近流行りの怪盗の仕業とか言うんじゃねぇだろな?」
「ニャフフ〜、実はそうなんだなこれが」
ミルクの入った皿を一生懸命飲んでいたモルガナがご機嫌にそう言う。もちろん、五反田には何を言ってるのかわからないので、にゃあにゃあと鳴いているようにしか聞こえない。
すると、ニュースのキャスターは五反田の予想通り怪盗団のポストカードについて言及している。
「おいおい……現実に怪盗なんているわけねぇって。ま、いたらいたでそれは面白いかもな」
このニュースを見ても五反田は怪盗団を信じていないようだ。確かに五反田くらいの年齢だと未知の存在を突っぱねるのは当然かもしれないが、どうやら少しは興味があるらしい。その怪盗は目の前にいるというのに――蓮としては複雑な心境だが、無闇に正体を明かすわけにいかないのでここは黙っているしかないだろう。ついでに彼が『早熟』と呼んでいるアクアも怪盗団に入っているわけだが、そんなことは微塵も思っていない。
「そういや蓮、お前んとこの高校の教頭もあんな感じになったんだってな。お前は怪盗についてなんか知ってたりすんのか?」
>興味無い
あくまで無関心を貫く蓮に五反田は思わずため息を吐く。
「早熟といいお前といい……若いうちにちょっとは夢くらい持った方が良いぞ? 俺なんて未だに夢を見続けてるからな」
五反田の夢とは何だろうか? 映画監督であることはここ数日暮らしてきた蓮も流石に知っているが、詳しいことはまだ知らないのだ。まだしばらく世話になる立場なので、ここで距離を縮めるチャンスかもしれない。蓮は「ちなみにどんな夢?」と聞いてみることにした。
「それはな――」
「蓮くん! お茶碗空っぽじゃないの!? ご飯おかわりいるかい!?」
一呼吸置いてから何かを言おうとした五反田の横から、貴美子の乱入が入る。いつの間にやら蓮の茶碗にご飯を盛っており、もはや五反田家の様式美である。
「だからなんでいつも良いとこで来るんだよ!!」
「そんなこと言われても知らないわよ!!」
結局五反田の夢が何なのかわからなかったが、今日も親子で仲が良いなと思いつつ、蓮は貴美子に注いでもらったご飯を平らげてから陽東へ通学するのだった。
放課後。
今の怪盗団のアジトである陽東高校の屋上にて、怪盗団の面々が揃っていた。明智、アクアはもちろん、昨日新しく加わった有馬かなにも声をかけて来てもらっており、なかなか濃い顔のメンツである。すると、未だに実感の無いかなが蓮に訊いた。
「ねえ、本当に金田って改心したのよね? 正直まだ信じられないでいるわ……」
「心配すんなって。カナだってニュース見ただろ? ワガハイらがやってやったんだぜ!」
今回も無事成功させたことで、モルガナも尻尾を振るほどご機嫌である。ちなみに金田の件が世間に広まって以来、怪盗お願いチャンネルのアンケートである『あなたは心の怪盗団を信じますか?』のYESがなんと21%まで上がっていたのだ。今まで一桁だったのが、急に21%になっていてやはりメディアの影響は少なからずあるのだろう。怪盗団を認知する人々が増えるのはどちらかというと良い傾向と言える。
すると、神妙な面持ちをしていた明智が口を開く。
「水を差すようで申し訳ないけど、ちょっといいかな? 話しておきたいことがあるんだ」
明智によると昨日は警視庁に呼ばれていたようで、金田邸を警察と一緒に調べていたらしい。それで今回の金田の改心により、警察が怪盗団の存在を警戒し始めてしまったみたいだ。近いうちに怪盗団の捜索も始まるかもしれないので、これからは特にこちらも警戒して欲しいとのことである。本当はおとなしくする方が良いと思うのだが、それでもしばらくの間は大物をターゲットにせずにメメントスにいる小物を相手にするのはどうだろう? リーダーである蓮は困っている人を見過ごすなんてことはできない性分なので、明智にそう提案してみる。
「君は本当にお人好しがすぎるね。まあ、目立たなくて地味な依頼なら良いんじゃない? 好きにしなよ」
「……?」
思わず蓮に対してなら本性を出す明智を垣間見て、かなは首を傾げながら目を丸くする。異世界で感じたように『いつもクラスで見せている爽やか探偵王子は演技だったのか』と改めて思ったかなである。
そこで、話を聞いていたアクアはスマホを取り出して怪盗お願いチャンネルを見る。
「知名度が上がったせいか、割と掲示板にコメントが書かれているな」
どれどれ、と蓮達も怪盗お願いチャンネルのサイトを見てみる。まだまだ冷やかしの書き込みも多々あるが、応援してくれているのも増えている。中には【俺は最初から信じてた】【怪盗しか勝たん】といったような調子の良い事を書いている輩もいる。まさに『掌返し』というやつだ。
スクロールして他の書き込みも目を通していくと、『借りパクされたのでなんとかしてください』だの『好きな子がいるけどその子の心を盗んで俺だけを好きになるようにしてくれ』だのなんともしようもない依頼が多々ある。こればかりは名前が無いので流石に出来ないのもあるが、後者に至っては欲望の塊なのでむしろ改心させないといけないのはこのコメ主である。
「そもそも誰がこんなセンスの無い怪しいサイトを作ったのよ? もしかして蓮だったり?」
かなにそう言われて「自分ではない」と首を横にふる蓮。蓮も誰によって怪盗お願いチャンネルを作られたのか知りたいくらいだ。
「……」
「どうかしたかい、アクアくん?」
アクアの手が止まり、声をかける明智。本当はアクアが開設させたのだが、ここで公言なんてしたら蓮や明智はともかく、かなには何か言われそうなのは明白なので、アクアは今は言わずに話を依頼に戻すことにした。
「名前が無いとできないんだよな? だったらこれはどうだ?」
【結婚詐欺に遭いました……相手の名前は『牧村洋一』です。他の被害者の女性が出る前に改心させてください……】
蓮は早速イセカイナビを起動させて『牧村洋一』『メメントス』で音声入力してみると予想通りヒットした。今日はこの男を改心させて、メメントスの中も進めるだけ進もう。少なくとも大衆の怪盗団の認知が広がったので、おそらくエリアも解放されているはずである。
すると、かなが複雑な表情をしていた。
「ねえ、もしかしてまたパレス?とやらに行くのかしら?」
「いや、今日はメメントスだ。カナにもちゃんと説明するからよく聞けよ」
つかさずモルガナがメメントスとパレスの違いを説明する。
「とまあ、こんな感じだ。大体わかったか?」
「ええ、もう大衆のパレスとか言われても何も驚かないわ。さっさとその結婚詐欺男を潰したらいいんでしょ?」
最初こそテンパっていたかなもどうやら慣れてきたようで、しかも一緒に行ってくれるみたいだ。蓮達は早速渋谷駅に向かおうとして、屋上を後にすることにした。
蓮達が靴箱で上履きから靴に履き替え外に出る。校門から出ようとしたところで、後ろからルビーに声をかけられた。
「あ、お兄ちゃん! ていうか何そのすごい濃い面子……」
蓮(の鞄にモルガナin)、明智、アクア、かなの顔ぶれを見て流石のルビーも驚いている。そのルビーも両隣りにみなみと杏がおり、口にこそ出さないが「そっちも十分濃いだろ」と思う蓮だった。しかし、今までの流れで怪盗団同士で集まっていたが、確かに目立つかもしれない。これからの活動に向けて考え、まず明智にはまたあの変装をさせるか……と悪いことを考えていたところで、ルビーが「あ!」と何かに気付いたように声を出した。
「見て! 不知火フリルだよ!!」
ルビーが指を差す方向を見ると、校舎から1人の女子生徒が出てきたところを発見する。その女子生徒は『不知火フリル』というようで、美人で大人びた印象を感じる。ルビー曰く月9のドラマで大ヒットし、歌も踊りも演技も出来るマルチタレントらしい。もちろん彼女も芸能科で、聞けばルビー達と同じクラスのようなのだが、未だに声をかけられないでいるらしい。
そんなルビーの熱弁を一緒に聞いていたアクアが、フリルに近付いて声をかけていた。
「こんにちは、不知火さん。俺の妹がアンタと同じクラスなんだ。仲良くしてやってくれ」
あまりにもストレートすぎるため、アクアの思いがけない行動に思わずルビーも「ちょっ!」と反応してしまっている。そんなフリルはアクアの方をじっと見つめて、呼吸を置いてから返事をした。
「貴方知ってる。そこにいる有馬かなさんと『今日あま』に出てた人?」
「……よく知っているな。そんな話題にもならなかったのに……」
「ちょっと界隈で話に上ってて見た。良かった」
「……ありがとう」
蓮と同じくらい表情を変えないアクアが、意外そうというか不意をつかれたような顔をしている。
次にフリルは明智、みなみ、杏の方をゆっくりと見ながら言った。
「探偵王子の明智さんに、そちらの方達は雑誌の表紙で見た事あります。寿みなみさんと高巻杏さん…でしたよね?」
「は、はい!」
「私のことまで知ってたんだ!? 今はまだ不知火さんの方が有名だけど絶対に追い越してみせるから!」
みなみと杏はフリルに認知されて、少し嬉しそうにしている。
そしてフリルは最後に蓮とルビーを、交互に目を合わせて訊いた。
「貴方達は……ごめんなさい。何をしてる方ですか?」
>普通の高校生だ
ここで「自分は怪盗団だ!」と蓮は答えるはずもなく、自分は芸能界と関係ないただの一般人であるとフリルに自己紹介する。一般人にしては、明智、アクアやかなといった目立つ面々と一緒にいるのは謎ではあるが。
「普通の人は鞄の中に猫を入れて移動しないと思いますが……可愛い」
初対面の人に鞄の中にモルガナがいるのがバレてしまった。クラスではアクア以外バレていないのに、彼女は意外と目敏いのかもしれない。モルガナももう遅いのだが、フリルから見えないように鞄に完全に隠れた。最後何か言ったように聞こえたが気のせいだろう。
そして、フリルはさっきから追い込まれている感じになっているルビーの方をじっと見つめる。
「私は…その……今のところ特に……」
一応ルビーも芸能科なのだが、何も活動をしていないのでそう答えざるを得ない。視線もフリルから外して気まずい感じになっている。
「そう。えっと…頑張って?」
渋谷駅前。
あれこれあったが、なんとかメメントスに突入することが出来そうだ。ちなみに、あの後のルビーはみなみと杏に慰められながらトボトボと帰っていった。自分だけ活動していなかったことを実感したようで、かなり気にしている様子に見えた。自分も何もしていない、とルビーを励まそうと思った蓮だったが彼女は芸能科であるため、普通科の蓮が何を言っても慰めにはならないだろう。なのでルビーの事は杏達に任せて、自分は怪盗団の活動に集中するとしよう。
蓮達はイセカイナビを起動させてメメントスに潜入すると、『新しいエリアが追加されました』と音声があり、どうやら以前行き止まりだった先に進めるようになったらしい。ターゲットである『牧村洋一』を改心させつつ、早速メメントスの奥へと進むジョーカー達。すると、壁があって行き止まりだったホームに、牧村洋一のシャドウがニヤニヤしながら待っていた。絵に描いたチャラそうな風貌である。
『へへっ、これだけ金がありゃやりたい放題できるぜ! 売れ残りの頭の悪いバカ女を騙すなんて簡単なことだなぁ! これで千鶴さんも俺に振り向いてくれるってもんよ!』
ハンニャ教頭や金田カツエといった大物と比べて、いかにもな子悪党って感じだ。だが結婚詐欺をするクズには変わりないため、さっさと改心させてしまおう。
すると、牧村シャドウが今のところ怪盗団の紅一点であるタイガーに目を向けた。
『お! 君可愛いじゃん。よかったら俺と付き合わね? まあ貰うもん貰ったら捨ててやるけどなww』
あくまで牧村本人ではなくシャドウであるため、実に正直だが、タイガーの方を見るとまるでゴミを見るような目で睨みつけていた。
「気安く話しかけないでくれるかしら。とりあえずお仕置きしてあげるから覚悟しなさい?」
『ケッ、こうなりゃ力尽くで従わせるしかねえな』
その瞬間、シャドウ牧村は
「行くわよ、ペルソナ!」
タイガーのペルソナ『ウルスラ』が顕現する。偶然にもアンズーの弱点は核熱属性であるため、かなり有利だ。しかも速さも高いため、タイガーはシャドウ牧村に向けて『フレイラ』を正確に放つ。
『な、何ぃ〜!?』
敵がダウンし、早くもHOLD UP!である。ジョーカーはなんだか呆気ないと思いつつ、しっかりと総攻撃の支持を出してフィニッシュを決めた。
すると、シャドウ牧村は元の姿へと戻り、タイガーに対してビクビクとした様子でいた。
「ひ、ひぃ…! も、もう許してくださいお願いしますっ…!」
「随分と弱気になったものね。あと謝るのは私にじゃなくて、結婚詐欺で騙した女性達にしなさい。そして警察にも自首するように」
『わ、わかりました! もうしません! うぅ…ごめんよ、うらら……』
そう言い残して、シャドウ牧村は『オタカラの芽』になって本人のところに帰っていった。ジョーカーはしっかりとオタカラの芽を頂き、その正体は『モテる男になるには』という名の本だった。元々牧村はモテてなくて逆に女性に貢いでばかりいたのではないかという思考に至る。
「さっさと行こうか。いつまでもここにいるわけにいかないしね」
「そうだな。俺もシャドウを倒して鍛えないと」
「……なぁ、ジョーカー。あとで一緒に読んでみないか?」
完全に興味無しのクロウとオーシャンとは別にモナが少しこの本が気になっている様子。杏との仲を縮めたいのが丸分かりである。ジョーカーとて年頃の男子で異性に興味が無いわけではない。特に気になる異性がいるわけではないが、一応オタカラなので持っておこう。
それから新しいエリアを右往左往しながら進んでいくジョーカー達であったが、また新エリアに続くであろうホームに壁が出来ているのを見つける。どうやら今回はここまでのようだ。
「行き止まりのようね。ていうかさっきから気になってたけど、何が目的でメメントス?の奥に行こうとしてるの?」
依頼を解決するという建前で、連れて来られたタイガーにとっては最もな疑問である。ジョーカー、モナ、クロウは元の世界に帰るためにメメントスの最奥に手掛かりがあるんじゃないと踏んで進んでいるだけなのだが、それをオーシャンやタイガーにいつ打ち明けるか考え中だ。ジョーカーがどう言おうかと悩んでいると、クロウが咄嗟に助け舟を出す。
「実は僕達も異世界について全部わかっていなくてね。僕も探偵としてこのメメントスの奥に知的好奇心を掻き立てられて、いつか謎を解き明かしたいと思っているんだ」
それらしい理由を一瞬で考えて言うクロウ。本当にパンケーキ事件がなければ、彼はジョーカーを欺いていたんじゃないかと思われる。
これ以上先の行けないメメントスには今のところ用は無いため、ジョーカー達は現実に帰ることにした。
「ふぅ…疲れたぁ〜。早く帰ってベッドにダイブして寝た〜い!」
かなもあれからシャドウを相手にしながら進んでいたので、現実に戻ってドッと疲れが出たのだろう。蓮はお疲れ様、と労いの言葉をかける。
「てか蓮は疲れてないの? まだまだ余裕そうな顔してるわよ?」
蓮も最初の頃は疲れ切っていたが、今では体力も付いておりこのくらいでは表情を崩さない。様々なパレスを攻略した彼にとってはメメントスは軽く感じるだろう。蓮はかなへの返答に「腹がすいた」と真顔で言うと明智がにこやかに言った。
「あはは。じゃあこの後、僕の行きつけの喫茶店でもどうだい? 僕もお腹が空い――と、詩織さんからだ」
明智のスマホがピピと鳴り、電話に出る。
「はい、はい…わかりました。今すぐ行きます」
通話を切り、明智は申し訳なさそうに言った。
「ごめん、僕はもう行くよ。それじゃまた」
夜。
あの後、アクアもかなも疲れてそうだったのでそのまま解散した。アクアもかなも力に目覚めて間もないが、ちゃんと怪盗団の戦力に申し分無い。早いうちに二人も新しく入ったのは運が良かった。モルガナも蓮のベッドの上で機嫌が良さそうにしている。
「本当オマエ『持ってる』なあ。この世界でも順調に仲間が増えてるぞ! 最近の新入りは優秀なヤツばかりだぜ……ハァ」
上機嫌だったのが、一気に気分が落ち込むモルガナ。蓮も思わず「どうした?」と反応する。
「ワガハイ達、本当に元の世界に帰れんのかな……もしずっとこのままだったらどうすりゃいいんだ……」
>きっと帰れる
「……だよな! 悪い、ついオマエの前で弱音吐いちまった」
モルガナの気持ちもわからないでもない。もうしばらく、この世界にいるままなのだ。自分も不安になりそうなこともあるが、諦めるのはもっと駄目だ。それに自分は1人じゃない。モルガナと明智がいるだけで十分心強い。必ず元の世界に戻るため模索しよう、そのことをモルガナに伝えた。
「蓮……ワガハイ、前に『もう甘ったれない。自分の足で立派に立ってオマエのコトを守ってやる』って約束したのにかっこ悪いよなぁ。示しが付かないぜ……」
>針千本飲むか?
「飲まねーし! それに諦めたわけじゃねーからな!? 絶対、元の世界に帰ってみせるぜ!」
その息だ、と笑みを浮かべる蓮。モルガナも蓮と話してスッキリしたのか、表情が明るくなった。
「さてと、異世界に行ってオマエも疲れてるだろ? 今日はもう寝ようぜ」
モルガナの「もう寝ようぜ」が最後の〆にちょうど良すぎる件。
有馬かなのコードネームなんですが、ビッシュ(フランス語で雌鹿)に変更して猫の白い仮面から白い鹿の仮面にしてもいいでしょうか?(中の人ネタで良いかなと思ったため)
-
ビッシュに変更していい
-
タイガーのままがいい