ペルソナ5 The My Star 作:アカトンボ
一応ペルソナ方式で物語を書いているので、どうしようか悩み中です。
5月6日、土曜日。昼。
今日から恋愛リアリティショーである『今からガチ恋♡始めます』の収録が始まっていた。そのメンバーである明智とアクアは、収録現場の学校に来ており、それぞれ行動している。リアリティショーに台本はないが演出はあるようで、ディレクターの話を参考と取るか、指示と取るかそれは人それぞれである。台本がない以上は、自分達で立ち振る舞いを考えないといけないのだ。自由といえば自由だが、カメラマンが寄った時はその時の会話を要約した感じでしてくれると助かるとのこと。
明智はもちろんそれは得意だが、アクアにとっては若者特有の共感しあうだけの会話が『キツい』と思っており、早くもこの番組に出たことに後悔していた。
(なんで俺がこんな……)
発端は鏑木Pからの提案から始まったのだ。有り体に言えば、この番組に出ることでアイの裏話や情報を教えてくれると取引をしたということだ。アクアとルビーの父親を見つけ出すヒントになると信じて今ガチに出ている。わざわざこんな恋愛リアリティショーに出なくても、異世界で鏑木Pのシャドウに聞けば手っ取り早いと考え、今ガチの収録が始まる前に、彼の名前をイセカイナビに音声入力したらヒットはした。『今日あま』のドラマの事を思い出したら予想通りである。
(メメントスにいたなら話は早い。問題は俺一人でいけるかどうかだな)
パレスを持つほどの欲望では無かったようで運が良い。もしパレスであれば、アクア1人だと攻略する事は到底不可能だからだ。とはいえ、鏑木Pのシャドウがいる場所は出口からやや遠いところにいたので、俺一人の力では正直言って不安だ。なのでこれからの情報収集のためにも蓮に指導してもらい、実力を付けようとしているのである。蓮は改心という形でアクアの目的に協力してくれると言っていたが……アイをあんな目に遭わせた犯人をアクアは改心だけで済ますつもりはなかった。
(俺は絶対に許さない……必ず犯人にも同じ報いを受けてもらう――)
偶然とはいえ、こんな力を手に入れたのだ。利用しない手はない。また芸能界に入る事になったのでこの力は好都合だ。ちなみにだが、パレスの主のシャドウにトドメを刺せば現実でも殺す事が出来るらしい。
(俺を転生させたことと言い、神様って本当にいるのかもな。この力でアイの仇も討てるかもしれない…)
アクアとかなは『蓮かモルガナがいないと異世界に勝手に行ってはいけない』と約束をしているが、出来るだけアイを殺した犯人に関連した事情は自分1人で行きたいとアクアは思っている。怪盗団に入ったのも、あくまで手段として使えるからである。
そうと決まれば恋愛リアリティショーなんてさっさと降りる――わけにもいかない。正直なところ今の時点でキツいが、自分で出ると決めた以上、最後まで演じ切ることにしよう。
「本当にこういう番組って台本ないんだね。どんな話していいかわかんない」
「分かる〜」
すると同じ出演者である鷲見ゆきに話しかけられ、アクアは話を合わせる。どうやらゆき曰く、自分は臆病であまりトークも上手くないらしい。そんな自分語りをされ、アクアはどうして彼女がこの仕事を受けたのか聞くと、ゆきの事務所の看板の人が仕事断らない主義らしく、仕事をほとんどもっていくからとのことだ。
「それだけだとまだいいんだけど、最近は杏――私と同い年の子が人気出てくるし余計に暇でさぁ……」
そんな時に鏑木Pが声をかけてくれたらしく、ゆきはこの仕事を引き受けたという。意外とゆきは彼氏を作ったことないようで、ゆき曰く「タレントが全員恋愛していると思ったら大間違いとのこと。
どうやらゆきは杏と同じ事務所のようで、名前で呼んでる辺り仲は悪くないようである。
「君は恋愛に興味ないの?」
「……ないわけないじゃん。僕も男だし」
そう言いながら、アクアはアイの面影が頭に浮かぶ。アイが生きていた頃を忘れた時は一度もなく、過去の事をまだ消化しきれない。そうアクアの話を聞いていたゆきは神妙な面持ちで言った。
「……じゃあ、乗り越えないとだね」
「……」
「知ってる? 前シーズンのカップル、最後にキスしたんだよ」
「まあ、一応予習はしたし――」
「良い人がいるか不安だったけど……私、君にならキス出来るかも」
不意に耳元でそう囁かれたアクアは、少し戸惑った表情を見せる。ゆきによるとどうやら近くにカメラマンがいたらしく、わざとこんな演出をしたようだ。大変いい性格をしており、何が臆病者だとアクアは思った。
(なるほど、これがリアリティショー……)
一方アクアがゆきと話し込んでいる頃、明智はディレクターのアドバイス?を聞き終えてメモをとっていた黒川あかねに話しかけていた。
「黒川さん、よかったらちょっといいかな?」
「は、はい…! なんでしょう?」
何故か明智(この世界の)と同い年であるにもかかわらず敬語である。いきなり探偵王子に話しかけられて、驚いたのかそれともただ単に真面目なのか。明智は少し気になっていることがあり、まわりにカメラマンと出演者がいないのを確認してまわりに聞こえないよう単刀直入に言った。
「君のお父さんにはお世話になってるよ。職業柄ね」
「あ…父からお聞きしてます。明智さんは優秀な探偵だと――」
どうやら当たりのようである。明智はただ『黒川』という名字だけで決め付けたのではなく、事前に彼女の父親である黒川理から「実は私の娘も出演するんだ」と聞いていた。ここまで情報が揃えば、もはや確定である。
「だから君にも挨拶しておこうと思ってさ。これからしばらくの間、よろしく頼むよ」
さわやかな探偵王子スマイルで、あかねと接する明智。とはいえ、あかねも警察官の娘である以上、もしかしたらとんでもない情報収集スキルを持っているかもしれず、一応彼女にも襤褸を出さないように気を付けよう。そう思っていると、やはり明智は注目されているのかカメラマン達が寄ってくる。先程していた話はせずに別の話をすることにした。
「そうだ。黒川さんおすすめのカフェとかあったりする? 実は僕、スイーツ…というか甘いものに目がなくてさ。今度そこに行ってみるよ」
「え? あ、ああ…それなら渋谷駅前にあるカフェが良いですよ! その中でもパンケーキがすごく美味しくて――」
明智にパンケーキの話は禁句だと言うことをつゆ知らず、善意で話を合わせているあかね。それでも明智は笑顔で聞いているが、内心はカフェの話を振って後悔していた。途中で話をさえぎるのも番組的に心象が悪いと思い、相槌をうちながら聞くしかない。
「このパンケーキ見てください。フルーツが乗ってて美味しそうでしょう?」
「そ、そうだね…」
なんならスマホで明智に見せてくる始末だ。いくら事情を知らないとはいえ、あかねはめちゃくちゃパンケーキを推してくる。彼女に悪気は一切無いのだが、パンケーキという単語自体、耳にしたくない明智は苦痛でしかなかった。
(……もはやわざとだろ? わざとやってるだろこの女)
内心は軽くキレかけてる明智である。しかし出演者且つ知り合いの警察官の娘なので、邪険には出来ず表向きは笑顔で接するしかないのが苦だ。
その頃MEMちょはというと、同じく出演者であるミッシェルこと『三科栄吉』に声をかけられていた。
「やぁ、超絶ビュウティフォー、ナイスガイのボクと話をしようじゃないか。実はね、最近ギターの調子が良いんだ。いずれ君にもぜひ聴いてほしい」
「うん! ミッシェルってボーカルだけじゃなくてギターも上手だから楽しみだよぉ」
若干ナルシストでキャラが濃い栄吉だが、MEMちょはたじろぐことなく相手をする。さすが人気ユーチューバーの肩書きは伊達ではない。ミッシェルはこうみえて女性ファンも多く、キザではあるがそこが良いと思う人もいるとか。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。必ず君の期待を裏切らないからさ♡」
「ホントに〜? 自分でハードル上げちゃって大丈夫?」
皆それぞれ自由に会話をしながら演じており、収録初日を問題なく終える。これからどういう展開になっていくのか気になるところである。アクアも明智もどうなっていくことやら。
○○○○○
5月7日、日曜日。昼。
明智とアクアが恋愛リアリティショーの収録に励んでいる一方、蓮はセンター街でこれからの活動に向けて備えていた。ラーメンくらいしの店主である倉石のおばちゃんから武器や装備を買う為に値切りを交渉して却下されたり、『サトミタケシ』というドラッグストアで傷薬を購入したりしていた。サトミタケシはたけしくんの父親が店長をしており、やはりというかたけしくんに雰囲気が似ていた。
すると、鞄の中にいたモルガナが思わず蓮に声をかけた。
「ぐ…あのドラッグストアに流れてた曲……洗脳されそうだったぜ……」
財布と相談しながらしばらく店にいたので、蓮もさっきからあの曲が頭の中でループしていた。今度来た時は聴かないように、店に入ったらイヤホンをするべきか検討中である。
「〜♪――ハッ!? いかんいかん!」
モルガナもループしているようでつい口ずさんでしまっている。あのドラッグストアは人を洗脳する電波でも流れているのだろうか。
近々、中間試験もあるので勉強でもしようと、そろそろ帰ろうかと渋谷駅に向かっていると、クレープ屋の前で蓮の見知った顔ぶれを見かけた。
「じゃあまたね杏、久しぶりに話せて楽しかった」
「私だって志帆と会えて嬉しかったよ! 全国大会頑張ってね。応援してるから!」
杏とその友達の『鈴井志帆』である。2人とも仲良さそうにしており、表情もまさに見てわかるように明るい。この世界でも2人は親友のようだ。元の世界の鈴井志帆は鴨志田のせいで、自殺を図ってリハビリを余儀なくされたが、様子を見る限りこの世界の志帆は選手として活躍しているようだ。
志帆は駅へと向かって行き、杏はその姿を見送る。その際近くにいた蓮と目が合った。
「あ……君は」
「ア、アン殿ぉぉ!」
「わっ! びっくりした! 君っていつも鞄に猫入れてるんだね」
「アン殿……やっぱりワガハイの声が聞こえてないんだな……」
杏の声を聞き、鞄から勢いよく顔を出すモルガナ。ここは学校ではないため、蓮もモルガナを鞄の中に戻そうとせず、蓮も杏に挨拶をした。
「何回か顔を合わせたことはあったけど……そういえば私たち、ちゃんと自己紹介してなかったよね? 私は芸能科のルビーやみなみと同じクラスの高巻杏。夢は世界一のトップモデルになることだよ!」
元の世界で杏と過ごしたことのある蓮はよく知っている。大切な友達である鈴井志帆の件、それからミカというライバルと出会ってモデルとして成長した杏のことを。今のところを見るとトップモデルという夢は共通しているが、秀尽に転入した頃に出会った時の杏みたいにはなっていないようである。
かつての仲間の姿を見ると一緒に過ごした記憶が蘇ってくるが、蓮は切り替えて自分の自己紹介をすることにした。
「雨宮くんか〜。なんか不思議だね、君とは初めて話した感じがしないかも」
そう言いながら。杏は蓮をまじまじと見る。初めて会ったも何も元の世界では共に戦った仲間だ。蓮からすると親しい友達だが、こちらの世界の杏からしたら友人の友人程度の関係である。竜司の時も感じたが、少し寂しい気持ちになる。モルガナは特に(杏に対して)寂しいと感じていそうだ。
「その猫も……なんだかずっと前から知っているような気がする」
もしかしたら集合的無意識というのは、別世界とも繋がってたりするのだろうか。だとしたらデジャヴが起きるのもそのせいだったり……それは考えすぎか。確か斑目を改心させた打ち上げの時にも杏からそう言われた事があったが、あれも関係が…?――ここまでくるともはやオカルトの域である。
蓮はモルガナという名前がある、と杏に伝えた。
「そうなんだ。よろしくね、モルガナ」
杏はモルガナの頭を優しく撫でる。すると、モルガナは気持ちよさそうにしていた。
「にゃ、にゃあ〜…」
蓮は心の中で「良かったな、モルガナ」と思っていた。この世界に来てからモルガナも頑張っていたので、このくらいのご褒美があってもいいだろう。当然だが、ルビーに好き放題されてる時より嬉しそうである。
しばらくこの状態が続くかと思ったが、突然ピピピッと杏のスマホが鳴った。
「あ、事務所からだ」
モルガナを撫でていた手を止め、スマホを取り出して確認する杏。どうやら事務所からの電話のようだ。
「お疲れ様です! はい、いいです。小さい記事でも…はい! わかりました!」
そう言って杏は嬉しそうに電話を切る。すると、ウキウキとした気分で蓮に言った。
「再来月の雑誌出られるんだって! やっぱり嬉しいなぁ」
「流石はアン殿だぜ!」
やったな、と蓮もついいつもの癖で褒める。しまった…と思った蓮だったが、杏はそれ以上に嬉しかったようで気にしていない様子だった。
「えへへ、まあね。これでも私、未来のトップモデルだし♪」
そう言いながらフフン、と胸を張る杏。この世界の杏も竜司同様、元の世界とそんなに違いはないらしい。強いて言うなら、現時点でこの世界の杏は最初から自信を持っているくらいだ。元の世界の杏は、「強くなりたい」と言われてよく蓮とそのための特訓?を付き合ったものだ。
「夢はトップモデルだけど、まずは絶対に勝ちたい先輩がいてね。その人、綺麗で強くて…悪い人でさ。でも嫌いになれなくて…なんていうか、小さい頃に憧れた悪役みたいなの。私のこと嫌いって言われたけど、そんなんで挫けていられないし、むしろやる気が出たもんね!」
杏の言葉からおそらく『ミカ』というのがわかる。元の世界とは違い、この世界ではミカの方が先輩になっているようだ。
「どうやらこっちのアン殿は立派にやってるな」
これなら怪盗団としての助けは必要ないだろう。蓮としては相談とかして欲しいと思っているが、余計なお世話はしたくない。
「あ、そうだ。急にこんな事言うのもなんだけど…ちょっと今悩んでる事があって……」
「なに!? アン殿に悩みがあるだって!? 蓮、今こそワガハイらの出番じゃないか?」
ここに来てモルガナがやる気を見せており、場合によってはメメントスか誰かのパレスに行きそうだ。それは困った人を放っておけない蓮も同じで、「遠慮なく話してくれ」と返した。
「実はね……」
生唾を飲む蓮とモルガナ。二人は杏の続きの言葉を待つ。
「今、すっっっごいクレープが食べたい気分なの」
「…………………は?」
近くにあるクレープ屋に並んでいるクレープを見て真顔で言う杏に、二人は空いた口が塞がらない状態になる。蓮は、なんだって?とまるで鈍感ラノベ主人公のようにもう一度杏に聞き直す。
「今、すっっっごいクレープが食べたい気分なの」
同じ事を一言一句もう一度復唱する杏に、蓮は眼鏡を反射させる。とうとう自分の耳がおかしくなったかと疑う蓮に対して、杏は今まで抑えてた欲望をぶちまけた。
「だって! クレープってカロリー高いじゃん? だからモデルとしては意識しないとダメなわけで…! でも食べたい! だから代わりに雨宮くんが食べて!」
この無茶苦茶な理論、間違いなく杏だ。さっきまでは自信に満ち溢れてあんなに夢を語っていたのに、やはり杏は杏らしい。あまりの変わらなさに思わず蓮は笑みを浮かべる。
「あー、もう! こうなったら今流行りの怪盗団にでも頼んじゃおうかな。私のスイーツ食べたい欲を盗んでくださいって――あれ? 私ってば天才?」
「……よかった。ワガハイの知るアン殿だったぜ」
怪盗団を便利屋のように使うなと突っ込みたいところだが、この世界の杏はペルソナに覚醒していない。なら異世界にシャドウがいるのではないかと脳裏によぎったが、当然杏にはいないだろう。もし彼女にパレスがあるとすれば、お菓子の家かもしれない――。
いつの間にか怪盗お願いチャンネルを開いていた杏は我に返って首をブンブンと振りながら言った。
「ううん、怪盗団に頼るのも違うよね。やっぱり自分自身でなんとかしなきゃ……」
やはりこの世界の杏は前を向いている。そもそも悪人しか改心させる気はないので、例え今の杏にシャドウがいても退治なんかしない。
「そういえば、君は怪盗団っていると思う?」
かつての仲間だからか、蓮は杏に対して怪盗はいる、と答える。それを聞いた杏は意外そうに言った。
「雨宮くんってそういうのに興味ないと思ってたけど意外。まあ、私もいるって思ってるかな。だってもう2回も騒ぎが起きてるしね」
「その怪盗は目の前にいるぜ、アン殿!」
そうアピールするモルガナだが、杏に声が聞こえないため気付かれない。とはいえ、杏にも怪盗団の存在を認知されていたのは嬉しいことだ。やはり2回目というのが大きいのだろう。
「最初はうちの教頭が改心させられたよね。ということは…怪盗団って実は陽東の関係者だったり?」
冗談っぽく笑いながら的を突く事を言う杏である。まさしくその通りで、なんならモルガナの言う通り目の前にいる。
どう答えようかと考えていると、また見知った声がこちらに話しかけてきた。
「お、偶然だな雨宮……って高巻も一緒かよ」
竜司である。呼び名が苗字なのが未だに慣れないが、それは仕方ないことだろう。竜司は蓮と杏と交互に見ながら聞いてきた。
「え? お前ら付き合ってんの?」
「違うっつの。男女が話してるから付き合ってるって決めつけない方がいいよ。てかアンタこそ何してんの?」
「俺? 俺は気晴らしにジム行ってたんだよ。テスト近いから部活もできねぇし……やべ、テストのこと思い出しちまった……」
「あ、私も嫌な現実思い出しちゃった……もー! せっかく久しぶりに志帆と会えて気分良かったのに台無しじゃん!」
久しぶりにこの2人のやり取りを見て懐かしい気持ちになる。ついこないだまで当たり前と思っていた光景が、また見れて思わず蓮は笑みを浮かべる。
すると杏に怒られた竜司は慌てて言い訳を始めた。
「お、俺に当たるなって! テスト作ってんのは先生だろ……ハァ、また学校に怪盗団が現れてテスト無くならねぇかな……」
「リュージは相変わらずだな。呆れてものも言えないぜ」
元の世界の竜司だとここで「んだとぉ!?」と言い返して、モルガナと口論になるのだが、この世界の竜司はモルガナに無反応である。それどころか、竜司は蓮に救いを求めるような眼差しを向けていた。
「なぁ、お前って頭良かったりする? だとしたら頼む! この後、俺に勉強教えてくれ…! 俺、赤点なんて取っちまったら陸上部にも迷惑かかるし、それにお袋に怒られる…」
まるで藁にも縋るような感じで言ってくる竜司に対して、蓮は「構わない」と返事をする。かつての仲間が困っていたら、放っておくわけにいかない。まさかのOKが出ると思ってなかった竜司は、これ以上ないくらい感謝していた。
「あ、雨宮……サンキュー! やっぱ持つべきものはダチだぜ!」
「……私も芸能科の友達誘って勉強しようかな」
杏の勉強も見ようと思っていた蓮だが、そもそも学科が違うのであまり参考になれそうにない。こんな時に真がいれば勉強も捗るのだが……生憎、陽東に真はいない。
「それじゃあ私もそろそろ帰るね。坂本は赤点取らないように頑張りなよ?」
「うっせ、高巻だって英語しか出来ねえ癖に」
「何も出来ないよりはマシでしょ? じゃあねー、雨宮くん」
笑顔で杏がこの場から去っていく。その後ろ姿を見て竜司はしょうがないと思っている感じで言った。
「ったく、中等部の頃から変わんねぇな。今に見てろあいつ」
竜司から聞いたのだが、この世界でも杏と志帆とは中学が一緒だったようだ。高校で学科が別れてから話すらしていなかったらしく、久しぶりに顔も会わせたそうだ。ちなみに志帆は特待生として、バレーボールの強豪校に進学したらしい。
それから竜司とファミレスで勉強することになり、蓮は教えるのに苦労するのだが、それはまた別の話である。
今世間ではリアルメジエドが猛威を振るっててふるえてます。双葉助けてくれ。