ペルソナ5 The My Star 作:アカトンボ
覚えてるスキルは戦闘中で出していきます。
「はぁ…確かに君ってそういうやつだったね。話を戻そうか、ひょっとして蓮は反谷教頭を改心させるつもりかい?」
明智の言葉に蓮はうなずく。ハンニャはおそらく、竜司に問題行動を起こさせて退学に追い込もうとしている。このままだと竜司が危ないと思い、蓮は反谷を改心させようと思っていた。
「まったく…元の世界の竜司じゃないっていうのに。蓮は本当にお人好しだよね」
「だが、それが蓮の良さでもある。ワガハイは異論ないぜ、アケチは?」
「…誰かのため、か」
蓮が、どうした?と訊くと明智はふっと笑みを浮かべながら言った。
「獅童のパレスで、君達に言われた事を思い出しただけだよ。君は他人ために力を使っていたけど、僕は自分のために使った――それが僕と蓮との差だって」
今となっては懐かしい話だ。獅童のパレスで、仲間達と一緒に明智と戦って、その後すぐに認知上の明智が現れて、結局明智とは別れることになってしまった。たくさんのシャドウから怪盗団を逃がすのと引き換えに――しかし、明智は奇跡の生還トリックを遂げて、今は仲間として共にいる。運命とは不思議なものである。
「なあ、アケチ…本当は正義の味方に憧れてたんじゃないのか? それこそ怪盗団みたいな……」
「ご想像にお任せするよ。今は僕の詮索なんてしてる暇はないんじゃない? 反谷教頭を改心させるんだろ?」
全会一致で、この世界での初めての
「やっぱあの教頭、パレスがあったんだな…」
「どうやらこの世界にもパレスは存在するみたいだね。次は何処を根城にしているかだけど――学校かな?」
明智がそういうと、イセカイナビが『ヒットしました』と再び反応した。どうやら当たりのようである。
パレスに侵入するにはイセカイナビに
「…カモシダの時と同じ『城』とか?」
『該当しません』
どうやらモルガナの予想は違うみたいだ。蓮も当てずっぽうで、研究室やら美術館やら色々と言ってみるがイセカイナビは、該当しませんの一点張りである。今回もこれで苦戦しそうだ。
途方にくれているモルガナは、さっきから黙っている明智に話をふる。
「アケチも何か言っていけよ…」
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してて」
こう見えて明智は話の途中で考え込むクセがある。蓮が、何を考えていた?と聞くと明智は間を置いて答えた。
「…今は関係ないから言わないでおくよ。それより、まさかこれだけ言っても出て来ないとはね。今回も手強そうだ」
>諦めるのか?
「そんなこと一言も言ってないだろ? でも今日はお開きにして、続きはまた明日にしよう。実は僕、この後は番組の収録があるんだ…」
「ん? アケチ、またテレビに出るのか?」
「昼休みに
明智は、蓮から無理矢理かけさせれた眼鏡を取り外して、ボサボサにされた髪をいつもの形に整える。別に今、戻さなくてもいいのにと思う蓮だったが、口に出すとまた怒られそうなので抑えることにした。
「じゃあ、また明日――」
別れの挨拶をしながら、明智が出口の扉を開けようとしたとき、扉は一人でに開いた。つまり誰かが向こう側でちょうど扉を開けたことになる――
「何やら話し声が聞こえると思ったら……屋上で何をしとるか、このバカチン共がぁ!! 下校時刻はとっくに過ぎとるんだぞ?」
ちょうど今、全会一致で
「明智吾郎か。ふん、貴様がもてはやされるのはせいぜい今のうちだけだ。探偵なんぞ、事件が解決すれば用済みなのだからな。とっとと帰らんか!!」
「はい、この後収録があるものですから。では、さようなら」
反谷の嫌味に明智はキレることなく、いつもの演じている清廉な探偵王子スマイルで挨拶をして出て行った。きっと内心では、めちゃくちゃブチキレてるに違いない。彼の本性は穏やかとは正反対なのだ。
明智がこの場からいなくなったことで、反谷は次に蓮に目を付けた。
「また貴様か! 問題行動は起こさんよう忠告したはずだが? 私に歯向かえば、進学や就職の推薦は無いものと思うことだ!」
蓮もさっきの明智のように、さようならと言って扉から出て行く。竜司が狙われるより、自分にめを向けられるならその方が良い。かつて仲間だった竜司が嫌な目に遭うよりはマシだ――蓮はそう考えながら、校舎から出て家に帰るのだった。
五反田の家に帰ると、玄関に五反田のものでも貴美子のでもない誰かの靴があった。今誰か来ているのだろうか。蓮がただいまと言うと、貴美子が「おかえり」とキッチンの方から返事が聞こえてくる。洗い物をしているようだ。
手洗いとうがいを済ませて、蓮は自分の部屋に戻った。モルガナも蓮の鞄から出て、伸びをする。
「そうだオマエ、ゴタンダのカーチャンに弁当箱出した方がいいんじゃないのか? 何事も早めの方がいいぞ」
モルガナの言う事はもっともだ。早速鞄から弁当箱を出して、キッチンへと向かう。すると、貴美子はちょうど洗い物を終えたところだったので自分で洗うことにした。そもそも世話になっている身なのだから、これからも自分で洗うことにしよう。
「あら、ありがとねぇ。お弁当どうだった?」
美味しかったですと答える蓮。量こそは多かったものの、モルガナもいたので全部食べ切れた。すみれ程とは言えないが、男子高校生の食欲も侮ってはいけない。
この世界に来てから貴美子には世話になりっぱなしだ。蓮は何か恩を返せないかと思い冷蔵庫の中を開けてみると、じゃがいも、にんじん、玉ねぎに肉……カレーの材料が揃っていた。蓮は、今晩は自分が作ってもいいかと貴美子に許可を取ることにした。
「蓮くんがお夕飯を作るの!? じゃあ…お願いしようかしら」
貴美子の許可を得た蓮は早速、惣治郎直伝のルブランカレーを五反田家に振る舞うことにした。地元に帰る前の日に貰った惣治郎のレシピノートを頭に叩き込んでいるので自信はある。まだカレーだけだが。
「実は今日アクアくんも来てるの。アクアくんの分も用意してあげてね」
あの靴はアクアのだったみたいだ。彼とは入学式の帰り以来、ほとんど話していない。親睦を深めるいい機会かもしれない――そう思いながら、蓮は腕によりをかけてカレー作りを始めるのだった。
一方その頃、蓮がルブランカレーを作っている最中、五反田の部屋では五反田と蓮のクラスメイトの星野アクアがいた。部屋の棚にはDVDやBDがびっしりとあり、台本らしきものもところどころに積まれている。
実はこれでも五反田は、予算の多い大作映画を次々撮るような大物ではないが、監督賞に7年連続でノミネートされるなど実力を高く評価されている映画監督だ。ちなみに、この歳になってもまだ親元から離れていないのは、本人曰く『都心に近い実家があると出るメリットもなく、クリエイターあるあるだから』とのこと。
アクアも五反田の作品に何回が出演したことがあるが、自分に才能なんて無かったと悟って以来は出ていない。
「次はこれを編集してくれ」
「了解」
アクアがしているのは五反田の映画制作の手伝いだ。必要の無い箇所をカットしたり、繋ぎ合わせたりしている。形としては五反田の弟子ということになっているらしい。
星野アクア――実は彼は宮崎県の北部にある病院の産婦人科の医師、雨宮吾郎の生まれ変わりなのだ。前世である雨宮吾郎は、十数年前――世間を騒がせた人気アイドル、星野アイの出産を迫っていたある日の夜、病院の近くで不審な男を見つけ、彼を追っている内に崖の下に突き落とされて死亡してしまった。
だが、次に目が覚めたのは天国や地獄ではなく、星野アイの息子として生まれ変わっていたのだ。彼はこれから幸せな日々を過ごしていくのだろうと思っていたのも束の間……星野アイは雨宮吾郎を殺した同一人物に、花束に隠してあったナイフで刺されて殺されてしまった。
雨宮吾郎、いや、星野アクアは真犯人である父親に復讐を誓う。いつかアイがされたことと同じ目に遭わす――そのために彼は今も芸能界の情報を集めて色々と探っている。今この瞬間にも……。
しばらく無言でお互い編集をしていると、五反田が口を開く。
「そういや早熟、蓮と同じクラスなんだってな」
「蓮って、雨宮蓮のこと?」
「そうだ。あいつ、学校ではどんな感じなんだ?」
「どんなって言われても。至って普通のやつだと思う。ただ…」
「ただ?」
「……」
アクアは今日の授業中のことを思い出す。蓮の机の中に黒猫が潜んでいたことを……アクアは蓮の後ろの席なので気付いてしまったのだ。いつもクールなアクアも、机の中のモルガナに気が付いた途端に授業に集中できなくなり、先生に当てられても返事が遅れてしまうくらいには動揺してしまっていた。
(なんであいつ……猫なんか連れてたんだ?)
「どうしたんだ?」
「……なんでもない、それよりなんであいつを引き取ったんだ? 何か理由でもあるのか?」
「お前には話しておくか。俺と蓮の父親は知り合いでな、その縁でってところだ」
「ふーん」
会話がそれきりで止まる。アクアが蓮と初めて会った時、彼のことを名字で呼ばなかったのは、自分の前世の名字が『雨宮』だったので、呼ぶのがくすぐったかったからだ。おまけに、その後に明智『吾郎』まで現れる始末である。ここまで偶然が重なると、神様か悪魔の運命の悪戯かと勘繰ってしまう。
「まあ、なんだ。蓮とは友達になって欲しいもんだな」
「…考えとく」
「はは、そんな事言わずに頼むぜ」
ぶっきらぼうなアクアの言い方に、笑って返事をする五反田。五反田も五反田で、蓮のことを気にかけているようだ。
「監督とは長い付き合いだけど、あいつと知り合いだったなんて全然知らなかった」
「別に隠してたわけじゃねえけどよ。蓮もなぁ、昔は――」
「泰志! アクアくん! 蓮くんがカレー作ってくれたわよ!! 早くいらっしゃい!」
蓮の小さかった頃の事を言おうとした五反田だが、貴美子の乱入によってそれは中断された。
「今、早熟に昔の蓮のこと話そうとしてたのによ! なんでいつも割って入ってくるんだ!」
「知らないわよ! せっかく蓮くんがカレー作ってくれたのに冷めちゃうでしょ!」
「…へ? 蓮が?」
五反田がアクアと顔を見合わせる。蓮の意外な特技に目を丸くしているようだ。
貴美子が五反田とアクアを呼びに行ってる間、テーブルの上に人数分のルブランカレーを用意する蓮。しばらくすると、貴美子が五反田をよんでリビングに戻ってきた。
「呼んできたわよ!」
「かーちゃんから聞いたぜ。今日の夕飯は蓮が作ったんだってな」
五反田はそういうと、テーブルの椅子に座る。遅れてアクアもリビングにやって来る。蓮はアクアと目が合うと、是非アクアも食べてみて欲しいと言ってルブランカレーを勧めた。
アクアも椅子に座り、行儀よく手を合わせて言った。
「じゃあ…いただきます」
3人は蓮の作ったルブランカレーをスプーンで掬って口に運ぶ。すると、一口食べた五反田は目を見開いて、あまりの美味しさに思わず叫んだ。
「う、うめぇぇ! こんなカレー初めて食ったぞ!」
「凄いわねぇ! お店出せるくらい美味しいわよ!」
上手くいったみたいで何よりである。自分でもルブランカレーが作れるようになった蓮だが、やはり惣治郎の作ったカレーの方が美味い。まだまだだと思ってさらに精進しようと思った蓮であった。
アクアの方を見てみると、彼は表情が変わっていない――と思ったらスプーンを持つ手がさっきから止まっておらず、さらに勢いが増していっている。
「マジで美味いな、このカレー……」
思わずそう呟くアクア。ルブランカレーで3人の胃を掴むことに成功した蓮は、小さくガッツポーズをした。
次に蓮がテーブルの上を見た時、五反田の皿が空になっているのに気付く。どうやらもう食べ終わったみたいで、五反田は皿を蓮に差し出していた。
「おかわりあるか? あったらまだ食いたいんだが…」
「…俺も」
なんとアクアも要求してくるほどだ。蓮は言われた通りに、2人の皿にカレーをよそって目の前に出した。なんと好評のようである。作った蓮としては嬉しい限りだ。
「蓮くん。よかったらまた作ってくれるかしら? おばさんも病みつきになっちゃったわ!」
また必ずと約束をする蓮。どうやら五反田家の定番メニューになりそうで、これからも作る機会がありそうだ。そろそろ惣治郎の言う通り、自分流に改良していくのもいいかもしれない。
そのうち明智にも、竜司と祐介に振る舞った激辛ルブランカレーをご馳走してやろう。2人には好評だったし、きっとなんとかなる――と思って、顔には出していないが、悪い事を企んでる蓮だった。去年の文化祭の時に明智が『特別』なたこ焼きを食べて、辛いのが苦手なのはわかっている。
「おい蓮! ワガハイの夕飯を忘れてないか!?」
その頃、番組の収録を終えた明智はテレビ局を出て帰ろうとしていた。明智が出たのは『いま、会いたい人』のコーナーで、この世界でも似たようなのがあったのだ。元の世界の時のように、明智は当たり障りの無いことや、冗談めいたことを言ったりして観客達の笑いを取ったりとしていた。
そこまでは良かったのだが、MCの言っていたことが内心で引っ掛かっていた。
(廃人化事件…まさかこの世界でも起きているとはね)
そう、先日ニュースになっていたアイドル廃人化。MCによると、明智はこの事件を追っていることになっているのだ。元の世界の廃人化事件では、獅童の命令で動いていた明智が、自分で起こして自分で解決をした自作自演だったわけだが、今回は本当に探偵として自分の力で考察していかないといけない――因果なものである。
そもそも明智は自作自演なんかしなくても、十分頭の切れる探偵だ。その証拠にニイジマパレスでは明智のおかげで攻略できたと言っても過言ではない。まあ、蓮を殺そうとした時は怪盗団の策で逆に騙されてしまったわけだが……。
(この世界で廃人化事件を起こしてる犯人を見つけることが、僕達を元の世界に帰れることと繋がっているんじゃないか?)
明智はそう思考する。ベルベットルームの住人の話では、邪悪で巨大な意志が世界を滅ぼそうとしていると言っていた。もしかすると廃人化の犯人がその元凶の可能性がある。明智は一刻も早く元の世界に帰りたいと思っているので、廃人化の犯人を必ず見つけると決心した。
明智が色々考えていると、背後から声がかかってきた。
「やあ、明智くん」
声をかけてきたのは、インターネットテレビ局『ドットTV!』所属の鏑木勝也だった。学校の屋上で蓮に言っていた人物である。
つい最近、最終回を迎えたネットドラマで少女漫画が原作の『今日は甘口で』のプロデューサーを務めていた。
「今日はありがとう。探偵で忙しいのに来てくれて、感謝しているよ」
「大丈夫ですよ。僕はただ出ただけですし、このくらいは」
「謙遜だねぇ、今時の子は」
鏑木は煙草を取り出し、ライターで先に火を付ける。ふぅ〜と明智に煙がかからないよう息を吐いた。
「明智くん時間ある? この後どうだね?」
「そうですね…少しなら大丈夫ですけど」
本当はもう帰りたいと思っている明智だが、今のところ蓮とモルガナ以外は、探偵王子としてのキャラでやっているので断りづらいのだ。それにこういった業界は付き合いというものもある。下手に断れば、評判に関わったりするので元の世界の時でも気をつけていた。
「すまないね。疲れているだろうに」
「構いませんよ。何処に行きます?」
「じゃあ、回らない寿司でもどうだね?」
銀座にある高級寿司屋に連れられた明智。帰りたいと思っていた明智だが、回らない寿司と聞いて行かずにはいられず、お腹も空いていたので鏑木の誘いに乗らざるを得ない。明智は大人びて見える青年だが、彼もこの世界では高校2年の子どもなので嬉しくないわけがなかった。
「遠慮しなくていいよ。僕の奢りだから」
「ありがとうございます」
「美食探偵王子を誘うなら、こういう場所じゃないと割に合わないだろう?」
(そう言えば去年の今頃、冴さんにさりげなく要求したけど結局回るやつに行ったんだっけ)
懐かしいと思う明智だった。まだあの頃は怪盗団なんて存在すらしていなかった。今では明智も怪盗団、去年の彼に言っても絶対に信じないだろうが、今の明智にとっては獅童の駒になってた頃は黒歴史と化している。蓮と出会ってから、明智も変わる事が出来たということだ。
しばらく高級寿司を味わった後、明智は鏑木に目的を問いかけた。
「ところで鏑木さん」
「何かね? もしかしてお気に召さなかったかな?」
「そろそろ聞かせてもらえませんか? 僕をこういう所に連れて来たという事は、何か理由があるんでしょう?」
明智にそう言われ鏑木は一瞬固まったが、すぐに「ははは」と落ち着いた笑いをしながら返事をした。
「流石は高校生探偵だ。君、将来有望だね」
「それはどうも。でもこのくらい誰でも勘付くと思いますが…」
「ふむ…明智くんに誤魔化しは通用しないね。では本題に入ろうか」
明智は彼は何を言い出すつもりなのだろうと、身構える。
すると、鏑木は湯呑みに入っているお茶を飲み干して、少し間を置いてから言った。
「明智くん、恋愛リアリティショーに興味はない?」
ついにクロスオーバーっぽくなったと思いたい…
今ガチの収録はGW明けで男性キャストはまだアクアしか決まってない設定でいきます。