ペルソナ5 The My Star   作:アカトンボ

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有馬かなが苺プロに入るのって5月からのはず…


第七話 兆し

 4月14日、金曜日。昼休み。

 怪盗団と名乗る連中の予告状騒ぎから一日が過ぎた。学校の方もそれなりに落ち着きを取り戻し……そんなことはなく、今現在も校内は怪盗団の話題で持ちきりである。

 その理由はこの陽東高校教頭の反谷孝志が、今朝急に『自宅謹慎する』という連絡を学校の方にしたからだ。まさか本当に欲望を奪われたのでは?と生徒達はところどころで噂をしており、校内で怪盗団という話題は絶えない様子だ。

 

 生徒達の中には反谷孝志を恨む者も少なくはないため、「そのまま怪盗団に成敗されてしまえ」と言った冗談めいた声も当然聞こえてくる。過去、彼のせいで、第一志望の大学や就職先をやむを得ず断たれた生徒達にとってはざまぁといった感想が出てくるだろう。まあ、それは反谷の自業自得ではあるが。

 

「ねえ、お兄ちゃんはどう思う?」

 

 中庭の噴水近くのベンチに、一緒に座っているどこか興奮気味のルビーの問いかけに対し、兄のアクアは冷静に淡々と言った。

 

「全然聞いてなかった。なんだって?」

「だから怪盗団の話! うちの教頭、なんか自分から自宅謹慎したらしいじゃん? それってやっぱり怪盗団の仕業なのかなって」

「…さあ、興味ないな」

「もしかしてアンタ達も怪盗団の話してんの?」

 

 アクアとルビーの前に現れたのは、小柄で赤髪のボブカットにベレー帽を被った赤眼の女子生徒だった。その女子生徒は2人の座っているベンチの隣のベンチに座ると、赤く染まった一枚の紙をポケットから取り出した。

 

「何度見ても中二っぽいわよね〜。この予告状ってやつ、心の怪盗団『ザ・ファントム』って」

「とか言いながら、先輩もちゃっかり持ってんじゃん」

 

 ルビーも怪盗団の予告状を女子生徒に見せる。どうやらこの女子生徒はルビーやアクアより学年が上のようだ。

 

「有馬も怪盗団に興味あるのか?」

「違うわよ、私は友達に貰っただけ。先生達がほとんど回収したらしいけど、その前にこれを持ってる生徒も少なくないわ」

 

 有馬と呼ばれた女子生徒は、再びポケットの中に予告状をしまう。全て回収したと思っている先生達に見つかると面倒なことになるからだ。

 そんな彼女の名前は有馬かな。かつては『10秒で泣ける天才子役』として謳われた女優であり、当時はさまざまな分野に出ていたが、今はかつてのような勢いはないらしい。アクアやルビーとは幼い頃から知り合いで、最近では『今日は甘口で』の主演を務めていた。

 

「そういえば、どうして先輩がここに? もしかしてわざわざ私に会いに来てくれたの?」

「んなわけないでしょ。ちょっと教室の居心地がね……」

「あ……」

 

 有馬からその言葉を聞いたルビーは、察してはいけない何かを察してしまう。ルビーは有馬を憐れむようで、温かい目を向けた。

 

「私は先輩の味方だから…つらいことがあったら私に相談してね…?」

「……ちょっとあんた、今失礼なこと想像したでしょ? 言っておくけど、友達がいないとかじゃないから! アクアもそんな目で見ない!」

「俺、そんな目してたか?」

「してた!」

 

 事情を言わないことにはアクアはともかく、ルビーにはいつまで経っても可哀想なものを見る目をされ続けられるだろう。そう思った有馬は理由を話すことにした。

 

「実は、この前に転校してきた明智吾郎と同じクラスなのよ。あいつが私の後ろの席にいるせいで、クラスの女子達があいつの周りに集まって…」

「え! 先輩って明智さんと同じクラスなの!?」

「…そうよ、おかげで休み時間に席を離れたが最後、占領されるってオチ」

「有馬も大変だったんだな…」

 

 実はアクアも有馬ほどではないが、アクアの前の席である蓮に振り回されている。蓮というよりは、蓮の机の中にいる黒猫にだが。どうして他のクラスメイトにはバレていないのかアクアにもわからない。一度気が付いてしまうと気になって仕方がなく、なんなら時々鳴き声まで聞こえる。思わず自分の頭がおかしくなったと錯覚するくらいだ。

 

「あ、あれ雨宮くんじゃない?」

 

 アクアがちょうど蓮のことを考えていると、ルビーが渡り廊下にいた蓮を発見する。金髪の少年と対面している様子で、なんだか真剣な話をしているみたいだった。アクアと有馬も、ルビーに指を刺されてる蓮の方を見る。

 

「誰? 知ってる人?」

「先輩は知らないんだっけ? お兄ちゃんのクラスメイトの雨宮くんだよ。ところでお兄ちゃん、雨宮くんとは上手くいってる?」

「一応休み時間はたまに話してる。監督の所に行った時はカレーをご馳走させてもらったりな。めちゃくちゃ美味かったぞ」

 

 あのカレーの味は忘れることはないだろう。むしろその辺の店のより美味しく、また食べたいと思っている。一体どうやってあんなカレーを作れるようになったのだろうか。

 アクアがそんな風に言うのが珍しいのか、ルビーも羨ましがっていた。

 

「そういえばあの日のアクアってば満足そうな顔してたよね〜。いいなぁ、私も食べてみたい!」

「…またいつか、な」

 

 〜〜〜

 

 

 放課後。

 SHRも終わり、蓮は机の中にいるモルガナに鞄に入れる。怪盗団としてやれることはやったため、反谷が罪を告白するまで今は待つしかない。

 蓮は昼休みに竜司と話していたことを思い出す。竜司から聞いたのは、なんと池田先輩の推薦の取り消しと竜司が陸上部を辞めなくていいと昨晩反谷から連絡があったということだった。昨日、心の欲望を盗んだためそれが影響を及ぼしたのだろう。金城や奥村の時も同じようなことがあったため、この世界でも同じだと信じたい。

 

 陽東高校は土日休みで、羽を伸ばそうと久しぶりに明智と吉祥寺にでも出かけようと思ったのだが、明智は忙しいらしく「今日は早退する」と五限目の途中でチャットに連絡が来ていた。どうやら警察に呼ばれたそうで、何かの事件の調査に行くらしい。

 それでも土日がある――と思っていたのだが、明智の出る事になった恋愛リアリティショー、今からガチ恋始めます――略して『今ガチ』のPVをこの土日に撮ることになったとも言っていたので今週は諦めるしかなさそうだ。

 

 蓮も特に用事は無いので真っ直ぐ五反田家に帰ろうと思ったところに、後ろの席のアクアと目が合った。そういえば彼とは、同じクラスでしかも席もこれだけ近くにいるにも関わらず、偶にしか話していない。この前カレーを振る舞ったとは言え、あれから竜司のために怪盗活動をしていたのであまり関わる機会がなかった。

 五反田に仲良くしてやってくれと言われていたのもあり、蓮はちょうどいいと思い、親睦を深めようとアクアに「暇なら今から一緒に出かけないか?」と訊いてみることにした。

 

「…俺と?」

 

 意外そうに言うアクアに蓮は首を縦に振る。思わず面を喰らうアクアだが、少し考える素振りをしてから答えた。

 

「まあ、偶にはいいかもな。ちなみに何処に出かけるんだ?」

 

 帰りながら決めようと返す蓮に、アクアは呆れながら言った。

 

「…普通、前もって決めてから誘うものだろ。蓮って変わった奴だな」

 

 アクアも十分変わってると思う蓮だが、それは飲み込んで取り敢えず一緒に教室を出る。そして下駄箱で上靴から靴に履き替えて、校舎から出ると、校門近くでアクアの妹である星野ルビーの姿があった。しかもその隣には蓮の見知った顔があり、思わずその場で立ち止まる。その人物とは元の世界での怪盗団の仲間――高巻杏である。

 ルビーが蓮とアクアの存在に気がつくと、そのままこちらにやってきた。

 

「あ、お兄ちゃん! それと雨宮くん!」

「ルビーも今帰りか?」

「うん、それで杏ちゃんと何処かに行こうと思ったんだけど…」

「本当にごめんね、ルビー。急に事務所からモデルの仕事頼まれちゃって…」

「ア、アンど――むぐ!?」

 

 杏の声に条件反射して、鞄に入っていたモルガナが声を上げる。蓮はモルガナが鞄から完全に見える前に、モルガナを鞄に押し戻すとルビーがキョロキョロとまわりを見渡していた。

 

「今猫の鳴き声しなかった?」

「ルビーの気のせいじゃない? そろそろ電車の時間だから私行くね!」

「アン殿ぉぉ…」

 

 情けない声で泣いているモルガナを尻目に、帰っていく杏の背中を見送る蓮。元の世界の杏であれば気付くであろうモルガナの声は、この世界の杏には全く聞こえていない。

 竜司の時は別人でもあまり取り乱していなかったが、大好きな杏にああいう反応されるだけで動揺して深く傷付いているみたいだ。ここまでくるとモルガナが少し可哀想に思えてくる。蓮はというと「やっぱりか」と既に割り切っている。

 

「…ねえ、やっぱり猫の鳴き声聞こえるよね?」

 

 正確には『鳴き声』ではなく『泣き声』なのだが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。蓮は欠かさずに、気のせいだとルビーに言い聞かせた。

 

「いやいや! なんなら雨宮くんの方から聞こえたし! もしかして…その鞄の中に猫入ってたりする…?」

 

 >夢と希望なら入ってる

 

 鞄に指を刺すルビーに対して、蓮は真顔でそう言いながらファッショングラスの位置を直す。蓮のトンチンカンな返答に30秒くらい静かな空気ができてしまう。やはり無理があったようで、アクアとルビーは今も黙ったままだ。

 この間に耐え兼ねて鞄の中にいるモルガナが思わず、小声で蓮に零した。

 

「どーすんだよ、この空気……」

 

 元はと言えばお前のせいだろと心の中で思う蓮。この場に竜司がいたら即座にツッコミを入れてくれてなんとかなっただろうが、生憎今はいない。

 この空気に途方にくれていた3人と1匹だが、それはルビーの機転によって止まったような時間が動き出す。

 

「あ! そういえば雨宮くん今日暇? 雨宮くんの作るカレーが美味しいってアクアから聞いて私も食べたいと思ってたんだ〜」

 

 蓮と同じくらいかそれ以上のポーカーフェイスのアクアがルビーに報告する程美味かったようで、蓮としては嬉しいものである。しかし、これからアクアと何処かに行こうとしていたので、どうしようかと蓮はアクアの方を見る。

 

「俺のことは気にしなくていい。ルビーにも食べさせてやってくれないか? 実は俺も食いたいと思ってたからな」

「やった! 雨宮くんって監督の家に住んでるんだよね? 早速行こ〜!」

 

 アクアは妹に甘いようで、どうやらシスコンだったらしい。まあ、惣治郎直伝のカレーをまた食べたいと思ってくれるのは悪い気はしない。こちらとしても作り甲斐があるというものだ。

 

「ところで材料とか大丈夫? これから買いに行く?」

 

 蓮はそれには心配ないとルビーに返事をする。あれから五反田がカレーの材料を買ってくるようになったので、いつでもカレーが作れるようになっているのだ。

 

「オマエのカレー、どんどん食べるヤツが広まっていくな。ワガハイもなんだか誇らしいぜ!」

「やっぱり気のせいじゃないよ!? 君の鞄から猫の声するって!」

 

 そんなこんなで、蓮はルビーにもカレーを振る舞うことになった。五反田の家に着いた時に、いつもの癖でうっかりモルガナを鞄から出したところを、アクアとルビーに見られたのはまた別の話だ。

 

 ○○○○○○

 

 

 夜、明智は警視庁の中のロビーで休憩していた。彼が呼ばれたのは、とあるアイドルグループのメンバーである一人が、廃人化になってしまった事件についてである。前にニュースでやっていたアイドルとは別の人物であり、警察は、駆け出しの探偵ではあるが実績のある明智の見解を聞きたいとの件であった。

 明智はこの世界での廃人化の犯人が誰なのか考えていた。

 

(…間違いない。あの症状…犯人はメメントスやパレスを利用している……一体そいつは誰だ?)

 

 警察も懸命になって捜査に当たっているが、警察は正直言ってアテにならない。犯人は異世界を使って殺人を行なってるのだ。当然、証拠も無く足も付かない――つまり現行犯でないと逮捕できないのだ。こうなったら自分でなんとかするしかなさそうだ。元の世界に戻れる手がかりになるかもしれない。

 

「あら、お疲れ様」

「……」

「えっと、吾郎くん?」

「…ん?」

 

 明智が犯人について考え込んでいると、腰まである長い黒髪の綺麗な女性に話しかけられたことに気がつく。『吾郎』という名前は世の中にはたくさんいるが、目線がこちらに向いているのもあって明智に声をかけたのは間違いではなさそうだ。

 だが、明智はこの女性刑事に見覚えがない。もしかしたら『この世界の明智』なら知っていたとは思うが、今は違うのだ。彼を下の名前で呼ぶということは、それなりの親しさではありそうだが……。

 何を言おうかと固まっている明智に対して、女性は柔和な笑みを浮かべながら言った。

 

「また何か考え込んでたんでしょ? 吾郎くんいつもそうだもんね」

「ええ、まあ…ははは」

 

 ボロを出さないように明智も探偵王子スマイルをしながら無難にそう返す。一応、相手は警官なので少しでも妙な素振りを見せれば何か勘付かれるだろう――そう思い、明智は続けて言う。

 

「廃人化事件の犯人について考えてたんです。犯人は何を思ってこんな事をするのか…何のために…とか」

 

 これは別に嘘ではなく、実際に思っていたことである。

 廃人化事件のことを口にすると、女性の顔つきが真剣なものに変わった。明智は何かまずいことを言ったかと思い身構えると彼女の口が開く。

 

「…やっぱり吾郎くんも他殺と思う?」

 

 どうやら失言ではなかったようで、明智は少し安心する。彼女は純粋に事件について話を訊いていたみたいだ。女性の質問に明智はまるで推理をするように話し出す。

 

「ええ、立て続けに芸能人だけが発症する精神疾患なんて聞いたことがありませんからね。犯人がいるのは確定でしょう――問題はその手口についてですが……まだ僕にはわかり兼ねます」

 

 当然明智は手口については知っているが、この人に言ってもどうせ信じないだろうと思い、誤魔化すことにした。異世界の存在を知らない人に異世界がどうのこうのと言えば、こちらの頭がおかしくなったと思われるのがオチだ。今の明智はそもそもこの女性と初対面なので、信用していないのも当然と言えば当然である。だが、人から頼られたい、必要とされたいと内心では思っているのも事実であり、明智は前向きに女性に言った。

 

「ですが、僕は必ず犯人を捕まえて見せますよ。それも貴女達警察より早く、手柄は一人占めになるかもしれませんが恨まないでくださいね?」

 

 そう冗談混じりに言ってみせる明智に、女性はさっきと同じ笑みを浮かべながら返した。

 

「ふふっ、頼もしいわね。でもごめんなさい、先に犯人を捕まえるのは私だから」

 

 途中から打って変わって、真面目な様子でそう言う彼女に明智は違和感を感じた。その目には犯人に報いを受けさせると感じさせるような意志を宿しているように――そんな彼女に気圧されて明智は思わず黙ってしまう。

 

「…私の弟ね、3年前に殺されたの。でも犯人は今も分からずじまい……」

「え?」

 

 急な重い話に明智は素でそう返す。明智は余計なことは言わずに、黙ってそのまま彼女の話を聞くことにした。

 

「だから弟を殺した犯人を…なんとしてでも私の手で捕まえたいの」

「そう、だったんですね…すみません、軽はずみな事を言ってしまって…」

「あ…私こそごめんなさい…急にこんなこと言われても困るわよね」

 

 お互いが謝り、それから2人とも無言になってしまう。すると、明智は少し気になることがあり、彼女に質問する。

 

「あの、差し支えなければお伺いしたいのですが、貴女の弟さんを殺した犯人は廃人化事件の犯人と同一人物と睨んでいるということでしょうか?」

「…えぇ、拓也も突然人が変わったようになって最後には……」

 

 彼女の言葉に明智は察する。きっと、廃人になる際に起きる症状が彼女の目の前で起こったのだろう。白目を向いて、その目から黒い血が流れるさまは普通の人にとってはトラウマでしかない。しかし、それでも逃げずに今も追っているのは犯人に対して許せない心があるからだろうと明智は思う。

 明智は自分なりの推理を女性に話すことにした。

 

「…おそらくですが、貴女の弟さんは偶然、犯人の犯行現場に居合わせてその口封じでと言ったところでしょうか。なんにせよ許されないことですね」

「ええ、生きていたら吾郎くんと同い年だったわ…拓也、劇団に入ったばかりだったのに…」

 

 女性は自分のせいで暗い雰囲気になってしまったのをなんとかしようと話題を変えた。

 

「そういえば、吾郎くんと初めて会ったのはちょうど去年の今くらいだったわね。ふふっ、それが今ではこんなに話す間柄になるなんて思いもしなかった」

「……」

 

 きっと、元の世界での新島冴のような関係だったのか彼女はそう語る。今の話もどうやら初めて話しているみたいだった。彼女が親しいと思っているのは、あくまでこの世界の明智である。当然、元の世界の明智にはそんな記憶はないどころか彼女の名前すら知らない。

 

(これ以上、この女性と話していると本当に襤褸が出そうになるな…)

 

 今日の用事はもう無いため、明智はそろそろ帰ろうと床に置いてあったアタッシュケースを手に取る。これからは事件のこと以外、出来るだけ彼女と話さない方がよさそうだ。プライベートなことなんてのはもっての外だ。

 

「すみません、そろそろ失礼します。明日は朝早くから番組のPV収録があるものですから」

「そう、吾郎くんも有名になって来た証拠ね。なんなら送っていくけど?」

「はは、小さい子どもじゃないですし1人で帰れますよ。お気遣いありがとうございます」

「……」

 

 女性は黙ってじっと明智を見つめる。すると女性は悲しそうな顔をして明智に言った。

 

「…今日の吾郎くん、なんだか余所余所しくない? もしかして私、知らないうちに君に何かした…?」

「そ、そんなこと無いですって…! 最近疲れが溜まっててそのせいかもしれないです…」

 

 ちなみにこれも嘘じゃない。ここのところ、蓮達と異世界に行ってばかりなので明智も少し疲れているのは事実だ。彼女の申し出は素直に嬉しかったのだが、色々勘付かれないようにしようという気持ちが強くそれが裏目に出てしまった。

 明智は柄にもなくなんだか罪悪感を感じ、彼女の厚意を無下にせず、折れることにした。ところで僕の家を知っているのかどうか気になるが、彼女が知っていた場合、話がややこしくなるので言わないでおこう――と心に思う明智だった。

 

「…じゃあ、お言葉に甘えてお願い出来ますか?」

「え?」

「家まで送ってくれるんでしょう? あ、その前に回らないお寿司でも食べさせて貰えるとさらに嬉しいです」

 

 笑顔で高級寿司も要求する明智に、女性は思わずクスりと笑う。

 

「そうね、私もお腹が空いたわ。回るやつでいいよね?」

「えぇー…」

 

 てっきり流れで高級寿司を食べに行く気分だった明智はがっかりするが、女性……宮代詩織は嬉しそうに笑っていた。

 




宮代詩織が警察になったのは小さい頃からの夢だったという設定でいきます。
詩織さん良いですよねえー
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