ペルソナ5 The My Star   作:アカトンボ

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最近暑いっすねほんとに…


第八話 それぞれの休日

 4月15日、土曜日。早朝。

 今ガチのメディア用PVの収録のため、明智は陽東ではない別の高校へとやってきた。番組の舞台となる高校だけあって、立派な学校だ。これから夏までこの今ガチが続くことになるが、明智に不安とかそういうのは無かった。むしろ元の世界に帰れるのかどうかが不安に思っているくらいである。

 明智は色々なバラエティ番組に出たことこそあるが、恋愛リアリティショーは初めてなので、きちんと予習はしており抜かりはない。他の出演者についても色々と予め調べている。

 ファッションモデルの鷲見ゆき、女優の黒川あかね、人気ユーチューバーでインフルエンサーのMEMちょ、ヴィジュアル系バンドリーダーのミッシェル、役者の星野アクア、と色々と濃そうなメンツが揃っており明智はこの中で揉まれることになる。特に星野アクアは入学式の日に少し話をしていたので、ちょっとした顔見知りがいたのは予想外だった。

 

 そしてついに収録が始まり、この番組で少しでも有名になるため、明智は気合いを入れて臨む。

 ちなみに今ガチの流れとしてはこうだ――出演者はそれぞれ自由に会話をしてOKで、定型のカメラのアングルには気を付けろとのこと。カメラマンが寄った時には、その時会話をしていた内容をすればいいらしい。

 それぞれ自己PRを撮り終えて、休憩の時間となる。明智もひと息つこうとしていたところに、ディレクターの話を聞きながらメモを取っている黒川あかねの姿を見かけた。

 

「あの…あんな感じで良かったでしょうか?」

「うんうん、なかなか上出来だったと思うよ」

 

(確か彼女…劇団ララライって所の若きエースと呼ばれてる女優だったかな。それがこんな番組に出演するなんて意外だな)

 

 そうしばらく周りを観察していると、あの人気ユーチューバーのMEMちょに声を掛けられる。

 

「やあ! ゴロたんってアクたんと同じ陽東なんだよね?」

「まあ、そうですけど。それがどうかしました?」

 

 『ゴロたん』という変なあだ名を付けられたのは敢えてスルーし、有名人に話しかけられても普通に返す明智。これがただのミーハーであれば嬉しすぎて舞い上がってしまうことだろう。

 

「だったら、もちろん怪盗団を知ってるよねぇ? 今度する生配信は怪盗団について話そうと思ってるんだけど、何かネタがあったら頂戴♪」

 

 テレビで怪盗団についてまだ話題になっていないにも関わらず、MEMちょは既に知っていた。おそらく、陽東の生徒がSNSにあげてバズったものを見たのだろう。流石は若者に人気のインフルエンサーである。ここで明智が怪盗団は僕だと言えば、MEMちょは目を輝かせてさらに食いついてくるだろうが、そんな後先を考えないことを明智が言うはずもなく。

 そこへ、近くにいた鷲見ゆきも話に入ってくる。

 

「もしかして怪盗団の話? 私も陽東に通ってる友達から聞いたけど、あれってマジのやつなの?」

「それが気になって私もゴロたんに訊いてたんだよぉ。探偵王子としての怪盗団についての考察とか聞いてみたいなぁ」

 

 そもそも目の前にいる明智が怪盗団なので考察も何もない。今はまだチラホラとしか話題になっていないので、明智も今の大衆と同じ目線になって怪盗団について適当に言うことにした。

 

「怪盗団、ね。申し訳ないけど、僕も君達と大して情報量は変わらないと思う。だから期待に添えるようなことは言えそうにないかな」

「それでもいいからさ! 早く早くぅ〜!」

 

 MEMちょに急かされるように言われ、明智は少し考え込む。答えようによっては、自分も怪盗団だと疑われる可能性もあるので、どう言おうかと頭の中で慎重に言葉を選ぶ。

 すると、少し離れていたところで今まで黙っていたアクアが口を開く。

 

「俺も気になるな。明智があの連中に対してどう思っているのか」

 

 真顔でそう言うアクアに、明智は茶化すように言葉を返した。

 

「へぇ、てっきり星野くんは怪盗団に興味無さそうだと思ってたんだけどね。何かわけでもあるのかい?」

「…別に。最近妹が怪盗団のこと話してるから、ちょっと気になっただけだ」

 

 どこか歯切れの悪い返事をするアクアに、明智は何かを感じ取る。流行とは無縁そうな彼にそう言わせる理由とは一体なんなのか――それともただの考えすぎか。摩訶不思議な存在に興味を持つのは、単なる年頃なのかもしれない。

 明智が思考を巡らせていると、同じ番組の出演者である男の介入によってそれは阻止されることになった。

 

「ヘェイ、ベイビィ達。もしかして、お揃いでボクの話でもしているのか〜い?」

 

 このナルシスト気味な彼の芸名はミッシェル。ヴィジュアルロックミュージシャンだけあって厚化粧と、深海を思わせる蒼穹色に髪を染めた長身痩躯の男である。現役高校生でありながら、最近人気が出てきたロックバンドグループ『ガスチェンバー』のボーカルとして活動しているが、ギターの腕も確かである。

 思考を邪魔?された明智が、引き気味の皆に代わってミッシェルに話しかける。

 

「えっと…君は確か、ミッシェルくん…だったかな?」

「イェェェス! 全てのレディ達に愛をふりまく天才アーティスト、ミッシェル様とはボクのことさ♡ ホォォォォォオオゥ!!」

「はは…君って面白い人だね」

「面白いっていうか……」

「鬱陶しい……」

 

 MEMちょが言葉の続きを思いとどまったのに対し、鷲見ゆきが小さな声でボソリと毒を吐くが、本人には聞こえていないようで、ミッシェルはフレンドリーに明智達に返事をする。

 

「てなわけで、これからよろしくな。実は俺、今ガチの収録楽しみにしてたからよ!」

「「さっきとキャラが違う!?」」

 

 ミッシェルのキャラの変わりようにMEMちょとゆきが即座にツッコむ。どうやらこっちが通常の彼らしい。

 

「星野に明智! お前らも顔は悪くねぇが、カップル成立は諦めな。何故なら…ボクの美貌によって3人のレディ達を落としてみせるからさ♡」

「そ、そうか」

「はは…お手柔らかに頼むよ…」

 

 自信家で妙にテンションが高いミッシェルに明智も内心少しイラッとするが、なんとか抑えて探偵王子のキャラを保つ。これから夏までの間、今ガチが終わるまでこのメンバーと付き合っていかなければならない。ストレスがやばそうである。

 明智は今ガチに出ることにしたことを早速後悔しつつ、今日の収録をなんとか終えるのだった。

 

 ○○○○○○

 

 

 4月16日、日曜日。昼間。

 この世界に迷い混んでから一週間が経過する。

 昨日、明智が今ガチの収録を受けている間、蓮とモルガナは英気を養っていた。今日も収録で忙しい明智には悪いが、おかげで異世界に行った疲れも完全に取れて今日は何処かに出かけようと思っており、支度を済ませ、貴美子に「いってらっしゃい」と見送られて外へと出る。

 すると、鞄に入っていたモルガナが顔を出して言った。

 

「今思えば、この世界の事まだよくわからないんだよな。とりあえず渋谷のセントラル……じゃなくてセンター街に行ってみようぜ」

 

 そう、この世界ではセントラル街ではなくセンター街になっているのだ。例えば、未だに三軒茶屋を四軒茶屋と言ってしまいそうになるので、気を付けないといけない。

 蓮は渋谷行きの電車に乗り、そして渋谷に着いて降りる。早速センター街に蓮達は直行し、周りを見渡してみる。

 

「見たところ特に変わったところは無さそうだな。次はミリタリーショップがあった場所に行ってみようぜ」

 

 モルガナに言われて、ミリタリーショップがあったところへと足を運ぶ。ミリタリーショップの店長の岩井宗久は武器商人であり、凄腕のカスタム職人でもある。彼のモデルガンのカスタムの腕は見事なもので、異世界では大いに役に立っていた。今、蓮達が使っている銃も岩井にカスタムしてもらったものである。モデルガンの他にも、蓮達がそれぞれ使っている武器のレプリカも扱っており、異世界に行く前の準備には欠かせなかった。

 この世界でも岩井が経営していたミリタリーショップがあるといいなと淡い期待をしていたが、現実は甘くなかった。なんと、そこには『ラーメンくらいし』という名前のラーメン屋が出来ていた。

 

「…もしかしてイワイのヤツ、ラーメン屋の店主になったのか?」

 

 モルガナの言葉に、へいお待ち!と言って客にラーメンを振る舞う岩井を想像してしまい、蓮は少しニヤつく。実は案外似合うかもしれないと思う蓮であった。

 中をチラリと覗くと、そこには岩井――ではなく、頭には白い頭巾を被り、耳にイヤリングとサングラスをかけた、どこかただ者と感じさせない雰囲気の中年女性が店を切り盛りしている姿があった。客の人数は今のところあまりいない。

 

「どうする? 入ってみるか?」

「流石はマイ・トリックスター。もうこの店の噂にこぎつけたのですね」

 

 声のした方に振り向いてみると、元の世界でベルベットルームがあった場所にラヴェンツァが立っていた。気配を感じなかったので、モルガナは驚いた様子だ。

 

「ら、ラヴェンツァ殿!?」

「ごきげんよう、モルガナ」

 

 急に現れたラヴェンツァに対して、蓮は一体どうしたんだ?と訊くことにした。

 

「貴方が地元に帰る前日に、ベルベットルームの鍵はお渡ししたはずなのに一向に来ないものですから…こうして私から来ることにしました。そうしたらちょうど、このお店に入ろうとしている貴方をお見かけしたということです」

 

 そういえば、カロリーヌとジュスティーヌだった時に戦って倒した後に、ジュスティーヌが「囚人が来ない日が続くと寂しい」的な事を言っていたのを思い出す。どうやら寂しがりやなところは、健在のようである。

 ところで、先程言っていたこの店の噂とは一体何のことだろうか。噂も何も、ここのラーメン屋の存在を知ったのはついさっきなので、そのような話は初耳である。そう伝えると、ラヴェンツァはクスりと微笑みながら言った。

 

「謙遜などしなくてもよいですよ。貴方の事だからきっと何か考えがあって来たのでしょう?」

「えーと、それがラヴェンツァ殿…本当にワガハイ達はこの店の噂なんて知らないわけでして…ここに寄ろうとしたのも単なる偶然なんです」

「……そうなのですか?」

 

 予想が外れて蓮の顔を見ながらそう言う彼女に、蓮は「そうだ」と頷く。すると、ラヴェンツァはそのまま固まってしまった。

 とはいえ、先程彼女が言っていたこの店の噂が気になってくる。ラヴェンツァのことだから何か有用な情報だろうと思い、それについて訊いてみることにした。

 

「実は、ここのお店の主は裏では武器を扱っているとか。なので、もしそれが真実なら貴方達の旅路の助けになると思うのです」

「武器……」

 

 これから先――といっても、いつまでこの世界にいる羽目になるのは不明だが、これからこの世界でのメメントスやパレスを攻略するにあたって武器が必要になるのは間違いないだろう。もし、本当にここのラーメン屋の店主が武器を扱っているのであれば実に助かる。

 

「…蓮、どうすんだ?」

「怖がらなくても大丈夫です。私も一緒に入りましょう」

 

 本当はラヴェンツァが興味があって入りたいだけでは?とそんな考えがよぎるが気にしないことにする。

 モルガナを鞄の中にしまい、噂の真意を確かめるべく、蓮は勇気を出して『ラーメンくらいし』に入ることにした。

 

「おえ…く、食ったぜ…板チョコとミルクのラーメン…」

 

 店に入った途端そんな台詞がカウンター席の方から聞こえてくる。見ると、蓮と同じ年齢くらいの眼鏡をかけた少年が今にも吐きそうな様子で手で口を押さえていた。

 鞄の中に入っているモルガナが蓮とラヴェンツァにだけ聞こえるような小さな声で言った。

 

「板チョコとミルクだって!? いくらなんでもラーメンに合わなすぎだろ!」

 

 聞いてるだけで気分が悪くなりそうな組み合わせである。メニューを見ると、しょうゆや味噌、豚骨など普通のもあるが彼はどうしてあんなものを注文したのか疑問でしかない。そもそも何故そんなものがあるのか……。

 それから眼鏡をかけた少年は、しばらく吐き気と格闘した後、今にも倒れそうな口調で店主に言った。

 

「さ、さあ…ビジネスといこうか…うっぷ」

「あのねぇ〜、うちはただのラーメン屋だからぁ〜。武器なんて売ってるわけないでしょ〜?」

「フッ…『秘密メニュー』が密売の合言葉だってのは知ってるんだ。そうか、注文が違うのか。ゲテモノだって噂だからな…生クリームチャーハンでも貰おうか、ママ」

 

 なんだかとんでもない会話を聞いてしまった。しかし、武器を手に入れるためここで諦めるわけにはいかない。蓮は空いてるカウンター席に座り、ラヴェンツァにも隣に座るように促す。

 早速蓮は、店主のおばちゃんに武器を売ってくれと頼み込む。

 

「え〜? あんたもかい〜? そもそもあたしが武器を売っているのが本当だとして、そんな小さな女の子連れてる男に売るわけないでしょ〜?」

 

 おばちゃんに正論を言われて蓮は黙ってしまう。隣にちょこんと座っているラヴェンツァを目にし、完全に裏目に出てしまったと後悔する。そもそも、この人が武器を売っているという噂事体が眉唾ではないかと思う。それはそれで残念なことではあるが……。

 すると、店に入ってから黙っていたラヴェンツァが口を開く。

 

「こう見えて私は長い刻を過ごしています。なので、貴女より私の方が遥かに歳上だと思いますよ?」

「そうかい〜。おばちゃん驚いちゃったよ〜」

 

 ラヴェンツァの言うことに本気にすることなく、店主のおばちゃんは麺を茹でて、湯を切る作業をしている。どうやら年頃のよくある戯言と思われて適当に流されてしまったようだ。彼女は黙って、そのまま席に座る。よく見ると、拳を震えるまで握っており、小声で「こうなったらメギドラオンで無理矢理……」と物騒なことを言い出した。

 このままだとこの店はおろか、渋谷までめちゃくちゃになり兼ねないと思った蓮は、何か注文する?とメニューの方に指をさして気を利かせる。

 

「…では、豚骨ラーメンとやらが気になります」

 

 店主のおばちゃんに豚骨ラーメンを注文し、蓮もタンタン麺を注文することにした。今日のところは諦めるしかないと踏んで、ラーメンが出来るまで待つ。

 すると、少し離れているカウンター席の少年が、生クリームにまみれたチャーハンを必死に口に入れているのが目に入る。先程、少年が言っていたことを思い出す――確か、秘密のメニューがゲテモノでどうとか。その秘密のメニューとやらを注文すると武器を売って貰えるのだろうか。

 

「うっ…生クリームチャーハン、完食…した…ぜ」

 

 眼鏡をかけた少年は、さっきまで生クリームチャーハンを食べている時に持っていたレンゲを皿の上に置いて手で口を押さえている。蓮はその健闘を讃えて拍手を送りたいと思っていたが、店主のおばちゃんはそんな少年の勇姿を見ても、飄々とした態度で言った。

 

「よく平らげたもんだよぉ〜。これ伝票ね〜」

「こ、これでも違うの…か…」

 

 あそこまで頑張って食べていたのにも関わらず、少年の努力は実らなかったようだ。蓮は思わず同情してしまうが、何が彼をここまでさせるのだろう。

 

「今日のところは帰るとするよ、ママ…」

 

 少年はお金を店主のおばちゃんに渡すとカウンター席から立ち、帰ろうとする途中で蓮は少年と目が合ってしまった。

 

「僕にはわかる…君も武器が欲しそうな目をしているな。そうだ!」

 

 少年はスマホを取り出すと、チャットのIDを見せてきた。

 

「ここは取引といこうじゃないか。もし秘密メニューついてわかったら君に連絡しよう。その代わり、君にそのメニューを食べてもらうことになるけど」

 

 >取引になっていない

 

 蓮は首を横に振りながらそう言う。もちろん武器は欲しいには欲しいのだが、この少年の代わりに自分が秘密メニューとやらを食べることになるのだ。つまり、秘密メニューが当たるまで食べ続けないといけない。苦しむのが自分だけでは割に合わないと蓮は踏んだ。

 すると、取引が破綻してしまうと思った少年は焦った感じで蓮に言った。

 

「い、いいのか? お前の情報源じゃ、秘密メニューに辿り着けないと思うぞ! なら、やっぱり俺も食べるの手伝うから頼む! 正直、俺だけじゃ食べるのキツいんだ…!」

 

 さっきまでと態度が変わり、手を合わせて必死に懇願してくる少年の言い分に、蓮が少し考えていると会話を聞いていたラヴェンツァが口を開く。

 

「これも試練です。今までの困難と比べたら大したことではないでしょう。貴方ならきっと大丈夫です」

 

 真剣な表情でそうは言っているが、実は楽しんでいないだろうか。しかし、だからと言って武器を調達出来ないのはこれからの怪盗団の活動に支障が出るだろう。蓮はそう思い、少年の取引を受けることにした。

 

「本当か!? 恩に切るよ! 早速だけど連絡先を交換しておこう!」

 

 お互いスマホを出して連絡先を交換する。これで秘密メニューの情報があったらこの少年に連絡が来るわけだ。どうやらこの少年の名前は里見武と言うらしい。

 

「雨宮君だな? 俺の事は『たけしくん』と呼んでくれたまえ。よし、君にもう一つ良い情報を教えよう。センター街の映画館の近くにドラッグストアがあるだろ? あれ、実は俺の父親が経営しているんだ。暇があったら寄ってみてよ」

 

 無事に取引が成立して「それじゃあ」とたけしくんは店から出て行った。武見の病院が無いため、これからはたけしくんのドラッグストアに行ってみても良さそうだ。

 

「豚骨とタンタン麺お待ち〜」

 

 ちょうど頼んでいたラーメンが出来たようだ。蓮はおばちゃんから頼んだラーメンを受け取り、早速食べようと思っていたら、ラヴェンツァが困ったようにしていた。

 

「あの、これはどう召し上がれば良いのでしょうか?」

 

 蓮は近くに置いてある割り箸入れから割り箸を取り出すと、それを綺麗に割って見せるとそのまま麺を啜る。すると、ラヴェンツァは初めてみた子どものように目を輝かせながら言った。

 

「まあ! これはそういう風に召し上がるのですね! 早速私も同じように……あれ?」

 

 ラヴェンツァも蓮と同じようにして割り箸を割るが、左右対称になることなく失敗してしまう。自分のと蓮の割り箸を交互に見比べ、ラヴェンツァはもう一つ割り箸を取った。

 

「今度こそ…」

 

 深呼吸をしてから、ググッと割り箸を割るラヴェンツァ。しかし、その割り箸も失敗に終わる。また一つ、また一つと成功できず、彼女は思わず無言になってしまい、蓮はどう言おうか悩む。

 ラヴェンツァがルブランの屋根裏部屋に住んでいた時に、潜入道具を作ろうとしていて結局作れなかった事を思い出す。ペルソナの処刑も時々事故が起こったりするので、意外と不器用なのかもしれない。そんなラヴェンツァを見兼ねて、蓮はやってあげようか?と声をかける。

 

「…いえ、大丈夫です。次こそ綺麗にやれます」

 

 ラーメンは冷めると伸びてしまい美味しくなくなる。そう説明すると、ようやくラヴェンツァは納得してくれた。

 

「…そうなのですね。では、お願いできますか?」

 

 蓮は割り箸を綺麗に左右対称に割って、ラヴェンツァに渡す。ようやくラーメンにありつけたラヴェンツァは、満足そうに呟いた。

 

「この濃厚な味…悪くないですね。いつか主にも食べさせてあげたいです」

 

 ゲテモノを出していたところを見てしまった時はどうなるかと思ったが、普通のメニューの味は美味い方だ。次に来た時はあのようなゲテモノを食べることになるので、今のうちにこの味を噛み締めておこうと思う蓮。

 ラーメンを食べ終わり、ラヴェンツァをベルベットルームまで送り届けると、蓮もそのまま五反田家に帰ったのだった。

 




ラーメンくらいしとたけしくんは文字ってるだけでペルソナ2に出てきたのとまんまです。
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