ペルソナ5 The My Star   作:アカトンボ

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全国模試1位の明智ってもしかしてアクアやあかねより成績が良いってことなのか…?


第九話 改心

 4月17日、月曜日。

 怪盗団の予告状が陽東高校の掲示板に貼られていた出来事から四日が経過した。流石に四日も経過すれば騒ぎから落ち着くだろうと先生達は思っていたが……そんなことはなく、さらに事態は大きくなっていた。

 

 その理由は朝から急に、この陽東の教頭である反谷孝志が全校集会を開くと先生方に言い出したのだ。

 そして陽東の全生徒と先生方を集めた途端、反谷は文字通り、涙を浮かべながら今まで自分のやってきたことを自白したのである。自分が気に入らない生徒には初めから推薦の話をなかったことにしたり、言うことを聞かないと退学にする、自分の通じている大学や大手の事務所に悪い評判を流す等、教師として最低なことをしてきた事を心から反省して全生徒の前で鴨志田のように床に頭をつけて土下座をしたのだ。当然、罪を告白した反谷には生徒達から「最低のクズ」「ゴミ教頭」といった罵詈雑言の言葉がかけられたが、自業自得だろう。

 

 その後、改心されて良心の叱責に耐えられなくなった反谷は自分で警察を呼び、脅迫罪と名誉毀損で逮捕された。彼は留置場の中で、自分のしてきたことを一生後悔し続けるだろう。

 突然の反谷の告白に先生達は、わけも分からず、何故急に自白なんてどうしたのかと不思議がっていたが、一つだけ心辺りがあった。それは、先日に起こった心の怪盗団『ザ・ファントム』による予告状騒ぎである。心を盗む――本当にそんなことが起こり得るのだろうか。生徒達の間では、「これ、例の予告状通りじゃない?」とあちこちで噂を立てている。

 

「どうやら上手くいったみたいだね」

「ああ、この世界での怪盗団の初仕事、無事成功だ!」

 

 昼休み。

 蓮、明智、モルガナの2人と1匹は学校の屋上で集まっていた。明智も校内の怪盗団騒ぎのおかげで、上手く撒いてクラスメイトの女子に捕まらず、こうして蓮達と昼休みに過ごせている。

 反谷教頭の改心が上手くいき、廃人化になる最悪の事態は防げた。これは文句無しの達成だろう。モルガナも作戦成功に尻尾を振りながら喜んでいる。

 

「早速打ち上げしようぜ! ワガハイは寿司が良い!」

「打ち上げって…僕達の目的忘れてるわけじゃないよね? 早いとこ、こんな世界から元の世界に戻れるようメメントスを探らないと。今なら少し進めるんじゃないかな?」

 

 元の世界と同じ理屈なら、大衆に認知されてきたこのタイミングで、メメントスのエリアが拡張されるはずである。ならば、今にでもメメントスの様子を見てこようとしている明智に、モルガナは慎重な意見を言った。

 

「確かにアケチの言うことは正しいかもしれんが、休むことも大切だぞ。ワガハイ達はこの土日で休めたが、オマエはどうなんだ?」

 

 蓮は蓮で昨日色々あったが、明智はこの土日に今ガチのメディア用のPVを収録があって十分に休めていないはずだ。そう思い、蓮は息抜きも必要だと明智に言った。

 

「…今更だけどホントに蓮って自由人だよね。まあでも、焦ったところで今すぐ戻れるわけでもないし、誰かさんみたいに呑気に構えるのも必要かもしれない」

 

 >誰が呑気だ

 

「別に君のことだって一言も言ってないだろ? あ、それとも自分は呑気だって自覚あるのかい?」

 

 にこにこと笑顔で毒を吐く明智に、蓮もまるでアルセーヌのような不敵な笑みを浮かべる。2人の表情は笑っているはずだが、モルガナには蓮と明智の間でバチバチと目でやりあっている風に見えた。このままだと異世界でもないのに、学校の屋上でリアルファイトしかねない雰囲気である。

 モルガナはそんな流れを回避すべく、さっきの話に戻すことにした。

 

「ていうか、ワガハイ達は打ち上げの話してたんだろ!? 寿司にしようぜ寿司!」

「寿司…寿司ね」

 

 モルガナの提案に乗り気じゃない明智に、蓮は「何か問題でも?」と訊くと、明智は少し間を置いてから答えた。

 

「実はこの1週間で2回食べに行ってさ。だから僕は違う物がいいな」

「なんだと!? もしかして…銀座の高級寿司店か…?」

「もちろん、それも行ったよ。仕事付き合いでね」

「ずるいぞアケチ! オマエだけ良い思いしやがって!」

「…そ、そこまで言うほどのことかな?」

 

 モルガナの本心から叫びに、明智は思わず困惑してしまう。それもそのはず、モルガナはこの世界でだけでなく、元の世界だった時にも一度も高級寿司にありつけていないのだ。金城を改心させた時の打ち上げの土産の寿司折も結局は惣治郎の家に持っていってしまったし、惣治郎と双葉の3人で行った時も、惣治郎の金が足りずにモルガナの土産の寿司折が買えなかったのだ。まあ、後者に至っては蓮も金を出してやればモルガナも中トロや大トロにありつけたかもしれないが。

 あの時の事を思い出したのか、モルガナは癇癪を起こすを超えて哀愁が漂っていた。

 

「なんでオマエばっかり…どうせワガハイは誰にも寿司を食べさせてもらえないのさ…」

「…じゃあ今度行った時に寿司折買ってくるから…それでいいかい?」

「話が分かるじゃねえかアケチ! オマエのこと見直したぜ!」

 

 さっきとは打って変わって元気を取り戻すモルガナ。一方で明智はハァとため息をついているが、蓮はその様子を見て思わず笑みがこぼれた。

 

「寿司はアケチに任せるとして、アケチは何が食べたいんだ? 寿司以外が良いんだろ?」

「うーん、そうだな…久しぶりにルブランのコーヒーでも飲みたい気分だけど、この世界にはあの店が無い…」

 

 そう言いながら、明智は蓮の方を見ると何かを思い付いたように言った。

 

「蓮の淹れるコーヒーが飲みたいかな。前に飲ませて貰った時、悪くなかったし、君ならマスターの味を再現出来るんじゃない?」

 

 完璧にとは言えないが、コーヒーに関しては何度も試行錯誤して惣治郎に美味いと言わせたほどだ。最近はこの世界に迷い込んでから色々とあったのでやっていなかったが、多分なんとかなりそうだ。問題は五反田家にサイフォンがあるかどうかだが。

 蓮はとりあえず、構わないと明智に言った。

 

「ありがとう、そろそろルブランのコーヒーが恋しくてね」

「それじゃあ早速学校終わったら校門前で待ち合わせな。ワガハイ達が住んでる所に案内してやる」

 

 モルガナがそう言ったところで、予鈴のチャイムが鳴る。蓮達は急いでそれぞれの教室に戻り、放課後になるまで授業を乗り越えるのだった。

 

 

 

 それから放課後になり、蓮は教室を出て早足で下駄箱に向かい、上履きから靴に履き替えるとドアの前で体操服姿の竜司を見かける。きっと部活前だろうと思い、竜司も蓮に気がつくと、近寄りながら声をかけた。

 

「うっす」

 

 >また待ち伏せ?

 

「だから人聞きの悪いこと言うんじゃねえって…ちょっといいか?」

「おい、明智と校門前で待ち合わせしてんだから短めに済ませろよ?」

 

 モルガナの言うことにうなづく。蓮は「急いでるから短めに頼む」と返事をすると、竜司は申し訳なさそうにまわりには聞こえないような小声で言った。

 

「わ、わりぃ…あのさ、あのハンニャの予告状ってもしかして…お前だったりする?」

「なっ!?」

 

 モルガナとは対照的に、何故そう思う?と蓮は怪しまれないよう表情を変えずに逆に質問をする。すると、竜司はしばらく沈黙したのちに答えた。

 

「だってよ、俺があいつに陸上部辞めさせられそうになった時にあの予告状だろ? タイミング的にも良かったし…」

「リュージにしては頭が回るじゃねえか…蓮、どうする?」

 

 今の竜司に声が聞こえないのをいいことに失礼な事を言うモルガナ。きっと元の世界の竜司だったら今頃言い合いになっていたことだろう。

 蓮はどう誤魔化そうかと考えていると、竜司が突然笑って言った。

 

「なんてな、俺そろそろ行くわ! 引き止めて悪かったな!」

 

 竜司は勢いよくグラウンドのある場所へと向かっていった。蓮も竜司の後ろ姿を見届けると、校門前に急いだのだった。

 

…さんきゅな、雨宮

 

 

 

 

 校門前まで行くと明智の姿は見えず、まだ来ていないみたいだった。またクラスの女子達に捕まってるのかと思い、しばらく待とうとしていた瞬間、明智が小さく息を切らせながらやってきた。

 すると、モルガナが鞄からひょこっと顔を出して言った。

 

「どうしたんだ、アケチ?」

「ちょっとね…さあ行こうか」

 

 何があったのかはわからないが、触れてほしくなさそうなので蓮は特に訊かないことにした。大方、クラスメイト達から反谷の改心のことでも訊かれていたのだろう。この世界でも明智は探偵なので、今朝色々と起こったことを訊かれるのは無理もない。

 

「あ! 雨宮くんと明智さん!」

 

 と、そこにちょうど下校途中のルビーに声をかけられる。ルビーの隣には寿みなみもおり、どうやらこれから一緒に帰ろうとしていたのが伺える。

 すると、明智は一瞬面倒そうな顔をしていたが、ルビーの方に向く時には愛想の良さそうな表情をしながら言った。

 

「君は星野くんの妹さんのルビーさんだったかな?」

「はい! 明智さん覚えててくれてたんだ〜」

「そっちの君は…えっと」

「ルビーちゃんと同じクラスの、こ、寿みなみ言いますっ!」

 

 そう言いながら、ぺこりとお辞儀をして自己紹介するみなみに対して明智は探偵王子スマイルを見せる。

 

「そんな畏まらなくていいよ。僕もこの高校に転校してきたばかりだし、ルビーさんみたいに気楽に声を掛けてくれて構わないから」

「あれ? もしかして私、失礼な子と思われてる?」

 

 ルビーは蓮と明智を交互に見ると、まるで頭上にはてなマークを浮かべているような感じで言った。

 

「前にも思ったけど、雨宮くんと明智さんって友達なの?」

 

 ルビーの質問に、蓮はライバルだと答えると明智もそれに続いた。

 

「そうだね、負けたくない相手ってところかな。これでも蓮は負けず嫌いだから困るよ」

「ふぅん…雨宮くんってそうは見えへんけど意外やねぇ」

 

 なんだか自分が一方的に負けず嫌いということにされてしまっているが、明智の方が負けず嫌いだろうと思う蓮。手袋を渡しながら「君を倒すのは必ずこの僕だ」と宣言したあの時のことを忘れたのかと明智に言いたかったが、それはルビーとみなみがいない間に問い詰めることにしようと思う蓮だった。

 人通りが多くなってきたのに気付いた明智は、申し訳なさそうにルビーとみなみに言った。

 

「そろそろ僕達は行くとするよ。最近は物騒な事件も起こってるし、2人も気を付けて帰ってね」

 

 蓮も明智に続いて、それじゃあまた明日と言ってルビー達と別れる。

 明智の言っていた事件というのは、おそらく廃人化のことだろう。この世界での廃人化事件は芸能人ばかり狙われており、芸能科であるルビーとみなみも危ないかもしれない。蓮達がこの世界に囚われた元凶を倒すことも大事だが、怪盗団として廃人化の被害者が増え続ける前に、犯人を特定してこんな事をやめさせないといけない。

 そんなことを考えながら五反田の家に帰る道中、蓮は向こうから歩いてきた男性と肩がぶつかった。

 

「…おっと、ごめんね。ちょっと考え方してたから」

 

 蓮もすみませんと言って頭を軽く下げる。男性はスーツを着用しており、金髪のよく似合う顔立ちをしていた。身長は蓮より少し高く、明智と同じくらいだ。なんとなくだが、どこか…アクアと雰囲気が似ているような気がする。

 すると、男性は蓮の隣にいた明智に気付く。

 

「おや? もしかして君は…美食探偵王子の明智君かな?」

 

 男性に話しかけられた明智は訝しみながら返事をした。

 

「僕のことご存知なんですね」

「むしろ君のことを知らない人は少ないと思うけどね。今は廃人化事件を追っているそうじゃないか」

「……ええ、まあ」

「僕も応援しているよ。頑張ってね」

 

 

 

 五反田家に帰る道中まで色々な人と会ったが、なんとか無事に帰宅する。今まで鞄の中に入っていたモルガナも鞄から出て、伸びをしているところを見ていると、いつものように貴美子が迎えてくれた。

 

「蓮くん、おかえりなさ……あらまぁ! 明智くんじゃないの!」

 

 どうやら貴美子も明智のことを知っていたようだ。美食探偵王子の名は伊達ではないみたいで、貴美子も有名人に会えて嬉しそうにしている。

 

「突然お邪魔してしまってすみません。彼とは仲良くさせてもらってます」

「ちょっと待ってて! 今から腕によりをかけてご飯のおかずを増やしてくるわ!」

「あ、いえ、お構いなく――」

 

 明智が言い終わる前に、貴美子は台所のキッチンに早足で行ってしまった。いつもテンションが高い貴美子だが、あんなに張り切っているところを見たのは初めてかもしれない。蓮と明智も手洗いとうがいをして、蓮の部屋に向かうことにした。蓮が自分の部屋の扉を開けたところで、あることを思い出す。

 

「どうかしたかい?」

 

 蓮は隣の五反田の部屋の方を見て、明智とモルガナに先に入っててと促す。コーヒーを淹れるためのサイフォンを五反田が持っているかを訊かないといけないと思い、蓮は五反田の部屋のドアをノックする。玄関で五反田の靴があったので、今はいるはずである。すると、少し遅れてからドアが開いた。

 

「おう。蓮、どうしたんだ?」

 

 サイフォンを持っているか?と五反田に訊く。

 

「サイフォンってコーヒー淹れるやつだよな? んなもん持って……待てよ? そういえば確か…ちょっと待っててくれ」

 

 そう言うと五反田はドアを閉めて、何やらガサゴソと部屋の中を漁っている音が聞こえてくる。しばらくするとドアが開いて部屋から出てきた五反田が、サイフォンの写真が載っている箱を持っていた。そこそこの値段がしそうな品物だ。

 

「これだろ? 俺も本格的なコーヒー淹れるのに憧れて、半年前くらいに買ってはみたんだが、結局使わずにいたんだよな……使った後で洗うの面倒そうだったしよ」

 

 しみじみと語っている五反田。買ったのはいいが自分でするのが面倒だと言うのは実に五反田らしい。それに対して蓮は惣治郎にこき使われ――手伝っていたので、サイフォンを洗うのも慣れている。

 

「もしかして蓮がコーヒー淹れてくれるって言うのか?」

 

 五反田の言う事にうなずく蓮。正確には明智が飲みたいと言ったからだがそれは言う必要がないと思い黙っておく。この世界に来てからコーヒーを淹れて無かったが、腕は鈍っていないはずだ。

 

「まさか蓮がコーヒー淹れれるなんて知らなかったな。あの美味いカレーといい、ひょっとして喫茶店のマスターにでもなるつもりじゃないだろうな」

 

 冗談めいた笑いをしながらそう言われて、惣治郎に「この店、継いでみるか?」と言われたことを思い出してしまった。蓮もまさかと言って苦笑いをしながら五反田からサイフォンの入った箱を受け取るのだった。

 

「コーヒー豆は確かキッチンの棚にあったはずだ。好きに使っていいぞ」

 

 五反田にありがとうと言ってから蓮は自分の部屋に戻る。すると、モルガナが近寄りながら言った。

 

「お? どうやらルブランで使ってたようなもんがあったみたいだな」

 

 箱には出した形跡がなくまさに新品である。おそらく、五反田は説明書だけを読んで、作るのが面倒になってそれから放置していたのだろう。

 

「あ、そうだ。なんかアケチがワガハイ達に話したいことがあるみたいだぜ?」

「うん、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」

 

 神妙な面持ちでそう言う明智に蓮達は真剣に話を聞く事にした。明智も一呼吸を終えてから、隣の部屋にいる五反田には聞こえないような声で話し出す。

 

「今この世界で廃人化事件を起こしてる犯人についてだけど、その犯人も僕と同じで統制の神と同じような存在に力を与えられたと思ってる」

 

 以前、自分がそうだったので今回も同じと明智は思っているようだ。となると…またヤルダバオトが復活して、メメントスの奥――今度は最上部にいて人間達を観察しているのだろうか?

 

「その可能性も無くはないね。あくまで推測だけど、黒幕は犯人に力を与えて何か企んでいるんじゃないかな」

「なるほどな。つまりワガハイ達の出番ってわけだな。このまま怪盗団の活動を続けていれば、いずれは犯人に接触できるかもしれねえ」

「ああ、こうなったら犯人を捕まえて洗いざらい喋ってもらわないとね。それまでは僕達も出来るだけ鍛えて――」

 

 これからの事について真剣に話していると、勢いよくバンッと部屋のドアが開く。明智と一緒に振り向くと、おたまを持った貴美子の姿があった。

 

「蓮くん、明智くん! ご飯出来たから降りてらっしゃい!!」

 

 それだけ言うと、貴美子は次は五反田の部屋に入っていった。次の瞬間、『ノックくらいしろよ!』『冷めちゃうから早く来なさい!』といつもの流れが始まり、思わず明智も戸惑っているみたいだ。

 

「…今度の君の居候先は随分と賑やかだね。それよりさっきの会話聞かれてないよな…?」

「心配するな。ゴタンダのカーチャンは聞き耳を立てるより先に、いつも急に部屋に入ってくるからな」

「やれやれ…プライバシーも何もあったものじゃないね」

 

 早く行かないと何回も入ってくるのをわかっているので、蓮達はおとなしく部屋から出てリビングに向かう。すると、テーブルには春巻きに唐揚げ、ポテトサラダがあった。モルガナにはいつもの猫缶とミルクがテーブル近くの床に置いてある。

 蓮達は五反田と貴美子が来るのを待ち、椅子に座ることにした。すると、唐揚げの匂いにつられてモルガナが近寄ってきた。

 

「美味そうな匂いがするぜ。なあ、ワガハイにも少し――」

「おいおい、猫に唐揚げなんてやるなよ?」

 

 遅れてリビング来た五反田がそう注意する。普通の猫ならいけない物でも、モルガナは平気だと思うがあげるのはやめておくことにした。

 

「ん? お前は…」

 

 五反田の視線に明智は気付くと、椅子から立って挨拶をする。

 

「どうも、陽東高校2年の明智吾郎です。蓮とは偶然知り合って仲良くさせてもらってます」

「あー、思い出した。最近話題になってる美食探偵王子だな――って、マジかよ!?」

 

 ここに明智がいることに五反田は驚く。その反応から見るに、五反田も明智を知っていたようだ。

 

「蓮、もしかして前に言ってた友達が出来たって探偵王子のことだったのか? お前の人間関係すげぇな…」

「明智くん、遠慮せずに食べちゃってね〜」

「はは…ありがとうございます。いただきます」

 

〜〜〜

 

 夕食を食べ終わり、五反田達は一息入れる中、蓮はサイフォンを使ってコーヒーを作っていた。いつもは食べ終わると自室に戻る五反田も蓮のコーヒーが出来るのを待っている。そしてついに出来上がり、ルブランでやっていた手順で人数分のコーヒーを淹れると、テーブルにカップを置いていく。

 すると、五反田親子と明智は蓮の淹れたコーヒーの入ったカップを口に運んだ。

 

「こ、こりゃ美味いな…蓮にこんな特技があったなんて俺知らなかったぞ」

「本当にすごいわねぇ! 私でも飲めるわ!」

 

 ちなみに使ったコーヒー豆はジャマイカ産のブルーマウンテンだ。蓮がルブランで初めて淹れたコーヒーもブルーマウンテンだったのだが、その時はまだ素人で、惣治郎に豆が泣いてるぞと言われてしまった。五反田親子には好評のようで何よりである。一方で明智はというと、何も言うことなく「ふぅ」とカップをテーブルに置くと蓮にだけ聞こえるな声で呟いた。

 

「うん、まだ腕が落ちてなくて安心したよ。でもまだマスターのコーヒーの方が美味しいかな」

 

 最後の一言はいらないと蓮は明智に言う。蓮も惣治郎が淹れたコーヒーの方が美味いのは分かっているので、これからも精進しようと思う蓮だった。

 




ハンニャが改心されて次のターゲットなのですが…どうしようかどういう設定にしようか絶賛悩み中にございます。
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