事故って記憶喪失した系オリ主vs東雲絵名 作:村岡です
二徹目の夜に勢いで書き上げたので多分文章バグりまくってます。
パチリ、目が覚めた。
「知らない天井だ……」
はいノルマ達成。反射的に口から出ちまったけど、碇シンジはこんな気持ちだったのか。
さて、ここはどこだ。
寝ぼけ眼をよく凝らす。
白いベッドに白い天井。となると、おそらく、病院。
「いっつ……」
鋭い頭痛に顔を顰め、額を抑えながらもゆっくりと身体を起こす。部屋中を見回すように視点を左から右、窓側から扉の方へと滑らせる。
首を可動域いっぱいの寸前まで動かしたところで、一人の少女が、驚いたような表情でこちらを見つめていることに気が付いた。ばっちり目があった。
どこかの高校の制服と思しき物を着ている少女。茶髪のボブカット、毛先が長めで、内巻きになっている。
いかにもオシャレ女子って感じ。言い方は悪いが、量産型ってやつだ。
だからだろうか、初めてお目にかかるはずのこの少女に、妙な既視感を覚えたのは。
「え……あ……」
そんな今時少女は、髪の色と同じブラウンの瞳をこれでもかと見開いて、口をパクパクと、開いては、ちょっと閉めて、開いては、ちょっと閉めて、という上下運動を繰り返していた。
「あのー……」
なんと声をかければ良いか分からず、とりあえず口を開いてみたが続く言葉が出てこない。
「っ!先生呼んでくる!」
「あっ……」
今時少女はハッとしたように座っていた丸椅子から立ち上がり、部屋を飛び出して行ってしまった。
「行っちった……」
シンと、静まり返る。
今時少女が去り、白い箱の中には、俺一人。静寂が訪れる。
病室に一人きりって、なんかすごく不安になるよね。え?ならない?そう……
まぁ、少女は先生を呼んでくると言っていたから、少ししたら戻ってくるだろう。
それじゃあ今時少女を待つ間に、今の状況整理でもするとしようか。
さしあたっては、俺は今、何故病院のベッドに居るのか、ということから考えよう。
「ふむ……」
……起き上がった時の鋭い痛みと、目を覚ました俺を見た今時少女のあの反応。
おそらくだが俺は、何らかの理由で大怪我を負ったのだろう。そして俺は怪我のショックで意識を失い救急搬送。病院に運ばれた俺の様態は意識不明のまま、ベッドに寝かされていた訳だが、たった今、俺は昏睡状態から覚醒した。といったところだろうか。
うむ、寝起きにしてはまぁまぁ回る脳みそだ。
だがしかし、これはただの俺の推論に過ぎない。この推論を確かなものへと昇華させるためには、俺が大きな怪我をした証拠が必要になる。
今この場で、証拠になり得るもの、それは端的に言うと、記憶だ。
俺がこの病院で目を覚ます前の、最後の記憶。そこにきっと、俺がこの病室のベットで寝転される羽目になった理由があるはずだ。
思い出すんだ。
「……」
思い出せ。俺。
「……」
思い出せ。
「……」
思い、出せ。
「……くそ」
だめだ、なーんも思い出せねぇ。
パズルの完成に必要なピースが一欠片か二欠片分、欠けてしまっているみたいだ。
……これ、あれ?記憶喪失ってやつ。
「……
自分の名前は、大丈夫、分かる。こんな厨二くっせぇ名前忘れるわけがない。
となると、部分的に記憶が抜け落ちていることになるのか。
まだ確定したわけじゃないが、しかしこれは……
「もしかして、かなり厄介なことになってないか……?」
もしかしなくともかなり厄介なことになってるよなぁ。
「明ッ!」
「うわぁ!?」
バン!と勢いよく開かれた扉。そこには、走ってきたのか、肩で息をしながら片膝に手をついている今時少女が居た。
「先生!早くしてください!」
「ちょちょ、そんな急かさないでよ〜東雲さん」
今時少女に腕を引っ張られて出てきたのは白衣を纏った間抜けヅラの男性。なんというか、見るだけで気の抜ける顔面をしている。
「お〜、ほんとに起きてる。おはよー明くん。体調どう?身体に変なところは無い?」
「えっと……」
「ああ、そっか。意識のある明くんは僕とはじめましてか。どうも、僕はあなたの主治医の田中です。君、車に撥ねられて割と死にかけてたんだよぉ?」
「……まじっすか」
やっぱ俺、事故に遭ってたみたいだ。しかも結構生死の境彷徨うレベルのやつだった。
「まじまじ。明くん、今何月か分かる?」
「えー……8月くらい?」
事故の直前の記憶は無いが、その少し前、夏休みが始まったという記憶はある。クソ暑い体育館の中で修業式をやったことを、しっかりと覚えている。
「……11月よ」
今時少女さんそれまじっすか?え、まじっすか?
「……まじっすか」
「まじまじ」
再放送か?いやでも俺の驚きの表現の最上級がこれだから仕方ないんだよ。……俺は一体誰に向かって言い訳してるんだ?
「てことは俺、3ヶ月くらい眠ってたってことになるのか……」
「そうなるねぇ。いやーホント、一時はどうなることかと思ったけど、目が覚めて本当によかったよ」
まじかぁ……。
「全く、寝すぎよ。ばか」
今時少女がはぁ、とため息をつく。
それは多分、呆れだとか失望だとかそういうのからくるやつではなく、どちらかというと、安堵の感情の現れなんだと思う。
なんだか、たくさん心配かけさせてしまっていたみたいで、少し申し訳ない。
と、同時に、先程から疑問に思っていたことがどんどんと膨れ上がっていくのを感じる。
……聞いてみるか。
「あの……さっきからずっと気になってたんだけど。えーと、その……きみ───誰?」
「……は?」
「……これは、これは」
あっけにとられる今時少女と、すごく深刻そうな顔をする田中さんを見て、なんとなく察した。
もしかして俺、また何かやっちゃいました?
「ぃや、いやいやいや!何言ってるの?私よ!絵名よ!は?いや、え?そんな、おかしいわよ……」
「えー、と。あの、お医者さん。これはどういう……」
「……黎君落ち着いて聞いてほしい。君はおそらく、今までの記憶を断片的に失っている」
お医者さんに公認もらっちゃったよ。記憶喪失確定な、俺。
「あーやっぱり……」
「あれ、思ったより冷静だね」
「今の状況的になんとなーく、そんな感じがしてたんですよ」
「ほう、良い観察眼だ。やはり、君は変わらないね」
いやはや、それほどでも……。……っと、さて、俺の眼の前で思考を停止させているこの少女、どうしたものか。てか、俺と彼女、マジでどういう関係性なんだ。
「えーっと、えな…?さん。俺とあなたは一体どういう関係だったんですかね?……高校の同級生?それともご近所さん?はたまた───「恋人よ」……え?」
瞬間、時が止まった。
……ような気がしているだけで、実際は俺の思考回路がショートしただけだ。
少し頬を赤らめた少女。先程の焦燥しきった表情とは打って変わって、彼女の顔つきは、まるで何か覚悟を決めたあとのように引き締まっていた。
この少女、恋人と申したか?この俺の?恋人?彼女だと?この、可愛らしいイマドキな少女が?
「マジで?」
「マジよ。嘘なんてつかないわ」
マジかー……え?ってことは俺、恋人のこと忘れちゃったってこと?なにそれもう最低じゃーん。なんでそんな大事な人のこと忘れちゃうのかなー。出来の悪い脳みそめー。
「いいかしら?よく聞きなさい?」
「はいっ」
少女は俺の前に仁王立ちし。腕を組んで強い語気で言った。思わず敬語で返事をしてしまった。
「私の名前は東雲 絵名。17歳。あんたの同級生で、恋人よ」
凛とした表情で少女───絵名はそう言い切った。
「あ……えーっと、黎 明。16歳、です」
「知ってるわ。恋人だもの。……じゃ、私帰るから。早く元気になってよね」
そう言い残して、絵名は病室を後にした。
「行っちゃった……」
何だったんだ……。てか、俺彼女とか居たんだ……意外。
「明くん、彼女いたんだね……意外」
「ね、やっぱそうですよね」
◆
病室のスライドドアをことなげに締める。ドアに背を向けてそのままその場に立ち尽くす。
(言っちゃった……!)
少女、東雲絵名の鼓動は限りなく高鳴っていた。顔は赤面し、耳まで赤くなっている。
(言っちゃった言っちゃた言っちゃった……!恋人って、嘘ついちゃった……!)
実は彼女、明に対して恋人を名乗っていたが、それは全くの嘘であった。元々の二人の関係は親密ではあったが、決して付き合ってるとかそういう仲では無かったのだ。
(……私最低だ。明の記憶がなくなってるのをいいことに……明はきっと大変な思いをしているだろうに、それを都合よく利用して……)
絵名は一瞬、自己嫌悪に陥った。
(いや、そもそもアイツがいつまでたっても告白してこなかったのが悪いんじゃないの?ええ、ええ、そうよ。あんだけアピールしておいて気付かない鈍感野郎、そうそういないわ……!)
絵名は、明に対する怒りを募り始めた。理不尽である。
(……でも、もうどうでもいいわねそんなこと。だっていま、明は私の彼氏で、私は明の彼女なんだから)
「ふふっ」
絵名は、この先の生活の希望を胸に、病院を後にした。
どうも、今まで一つも作品を完結させることができていない作者です。続きはないです。思いついたらあります。