賭博師身辺警護人   作:しらべ

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ギャンブルの勝ち方 その2

 

 

 

 「何とか、間に合ったわね」

 

 道中にトラブルが起きたが、裏カジノに到着すると広い個室に案内され待たされた。

 

 「神代は本当に来るんでしょうか?」

 

 柏木が初音に質問する。

 

 「私の調べだと神代は毎週ここに、この時間に来ている」

 

 部屋には長方形の机と向かい合う様に装飾の施された椅子が置かれている。

 

 椅子は二つずつ、計四つ。

 

 「ん~座れって事でしょうかね?」

 

 首を傾げながら槞彁が机を回り込み、奥の椅子に手を掛けると、背後から声がかかる。

 

 「そっちは、()座だ、どきなさい」

 

 二人が振り返ると、白い袈裟を着た老人と、スーツを着た男、いかにもディーラー風のベストを着用した笑顔の男の三人が部屋に入ってきた。

 

 白杖で地面を叩きながら、老人と男が初音の目の前に立つ。

 

 「お前が今週の献金者か」

 

 その老人は閉じていた目を開き、初音の目を見る。

 

 初音も、老人の黒い目を睨みつける。

 

 「……」

 

 「チッ、ゴミクズが……金だけおいてこの世から消え去れ」

 

 「神代源楽ね、その潰れた目で本当に人を測れると思っているのかしら」

 

 「物を知らん小娘が、もう少し人の立場に立って物事を考えろ」

 

 源楽が初音から目線を逸らした所で、ディーラーから声がかかる。

 

 「いやーひゃっひゃ!! お二人ともバチバチでいいですねぇ!! 今日はいいゲームになりそうです、あ、申し遅れました、わたくしディーラーを務めさせていただきます、武田(たけだ)圭太(けいた)と申します、以後お見知りおきを!!」

 

 ケタケタと笑う武田、その場にいた五人の視線が集まる。

 

 「わたくし、今日のゲームでなんと担当したゲームの数が二ケタに到達するんですよ! え、どうでもいいって? 場も温まってきた所で、早速ゲームのルール説明を行いたいと思います!!」

 

 とりあえず、槞彁は神座とやらから離れて、初音と柏木がいる側に戻る。 神代とそのボディーガードは反対側へ。

 

 「今回皆さんにやっていただくゲームはその名も『じゃんけんポイポイ』!! え、そのまんまだろって? 思い付きませんでした!! あっひゃっひゃ!!」

 

 あれウケねえなと思いながら武田は懐からカードを取り出し、机の中央に置く。

 

 「この白いカードをご覧ください! 各プレイヤーには『グー』『チョキ』『パー』の三種類のカードが二枚ずつ計六枚のカードが配られます!」

 

 こんな感じでーす、と言いながらカードをスプレッドすると、更に同じものを三デッキ、机に置く。

 

 「ゲーム名通り、みなさんにはこのカードを使ってじゃんけんポイポイを行って頂きます!! やって見せたほうが分かりやすいかと思うので今回もう一デッキ用意しました!!」

 

 武田はまず手札からカードを一枚表向きに目の前に置いた。

 

 「『グー』を置きました! この一枚目のカードは皆さん同時に出してもらいます! そして二枚目のカードですが……相手の出した手を皆さん確認されてから今度は()()()で再び同時に場に出してもらいます!!」

 

 二枚目も机に置くが、裏向きなので当然何が出されたかは分からない。

 

 「じゃんけんはこの状態で行います!! そして手元の押しボタンを押し、自分が出すカードを決めて頂くと、わたくしの宣言によってじゃんけんスタートという訳です!! あっひゃっひゃ!! ちょっと分かりづらいですかね!?」

 

 その場の五人が机の縁を見ると、確かに二つボタンが着いており、下に『一枚目』、『二枚目』、と記載されている。

 

 武田のケタケタと笑う声が聞こえなくなると同時に、部屋に奇妙な音が響き始める。

 

 ギ、ギギギ───

 

 「例えばわたくしが二枚目のボタンを押した場合、勝負する手は裏向きに出したカードという事になります」

 

 武田がカードを裏返すと『パー』が出てきた。

 

 「とまあ、簡単にいえば、じゃんけんポイポイカード版、二枚目隠す版と考えてもらえればモーマンタイです!! あ、一度場に出たカードはわたくしが回収いたしますので悪しからず」

 

 「ゲームのルールは分かった、ゴミクズとやるには少々手間だが…」 

 

 源楽が椅子に近付くと、すかさずボディーガードが椅子を引き、源楽を座らせる。

 

 「それで、賭金の説明は?」

 

 「ひゃっひゃ! これは失礼初めにお話しするべきでした!! 賭金についてですが……まずこの小切手用紙に各々自身の賭ける金額を書いて頂き、わたくしに手渡して頂きます! 但し、賭金は9ケタから10ケタまでにして下さい! つまり最高金額は99億!! あまり小さな額でちまちま勝負されても面白くありませんしね!! そしてそれを踏まえてわたくしが皆さんに10枚のチップをお渡しします、チップ一枚の価値は皆さんの賭金の10分の1です!! じゃんけん一戦につきご自身のチップを最低一枚、最高二枚賭けて頂きます!! ゲットした他人のチップは使えません!! 前それやられてむかついたので!! 10枚のチップが尽きたらその段階でゲーム終了です!! なお、ゲーム中のチップ一枚の価値は全て同じですから注意してくださいね!!」

 

 どこから出したのか4種類のチップを10枚ずつ机に積む武田。

 

 「ここで朗報です! こんなの小さい金額を書いたもの勝ちじゃないかと皆さん思っていませんか? 安心して下さい、この中で最も賭金の多かった方には、相手チームの二人からチップを2枚づつ初めから貰う事が出来ます!」

 

 武田の言っていた9ケタとはつまり一億の事である。それの10分の2を二人から、最低でも4000万は始めの段階で手に入るという事である。

 

 ギギギ、と首を鳴らしながら傾いていく槞彁、その笑みは角度に比例するように邪悪になっていく。

 

 「さあルール説明も大詰め!! この部屋に入った段階で皆さんお気付きだと思いますが、このゲームは四人で行って頂きます!! 2対2のタッグマッチです!! ただし四人でじゃんけんしてしまうとあいこだけになってつまらないので勝負は1対1で行います、神代様のチームと小野様のチームに分かれて頂き、攻撃側、防御側を交代交代で行い、攻撃チームの方々はそれぞれ別の人に勝負を挑んで頂きます!! 一ゲーム三勝負でカードが尽きるので、攻防の順番を変更し二ゲーム目を行います、なお遅延行為を防ぐ為に、攻撃チームは先にボタンを押してくださいね!! 最後に二ゲーム終了時点で清算に入りますので悪しからず! めんどくさいので獲得金額は一纏めにして代表者様、今回ですと、小野様と神代様に全額お渡しします、お引きの方は後で相談でもして下さい!!」

 

 武田の笑い声と共に槞彁の首が直角に曲がり終わる。

 

 「成程、大体呑み込めたわ」

 

 初音も神代の前の椅子へと座った。

 

 武田はケタケタ笑いながら、残りの三人に声をかける。

 

 「あっひゃっひゃ!! 面白いゲームになりそうですねぇ!! それで……誰が座ります?」

 

 神代のボディーガードはちらりと柏木と槞彁を見ると、無言で神代の隣の椅子に腰かけた。

 

 (……? いやいや待て待て、何自然に座ってるんだこいつら、今の説明でルールが分かったのか? 序盤は着いて行けたが付属ルールが多すぎて頭こんがらがってきたぞ)

 

 柏木はもう一度武田の話したルールを頭の中でまとめる。

 

 (一個一個整理しよう、まずは賭金からだ……)

 

 ①賭金は99億まで

 ②賭金は全額チップ十枚に還元される

 ③最も賭金の多かったプレイヤーは相手チームの2人それぞれからチップを2枚ずつ貰える

 ④ゲーム中のチップは賭金に関係なく一枚は一枚として認識される

 ⑤賭けられるチップは配られた10枚の自分のチップのみ

 

 (こんな所か、次はゲームの進行の仕方か)

 

 ⑥ゲームは4人で行い、2人1組でチームを作る

 ⑦それぞれ攻撃チーム、防御チームになり、攻撃チームはゲームの対戦相手を相手チームから選べる、但し二人同じ相手に勝負は挑めない

 ⑧一勝負ごとに攻防は交代し、三勝負終われば二ゲーム目に突入する

 ⑨二ゲーム目では一ゲームで攻撃から始まったチームは防御から始まる

 ⑩一勝負につき、チップを最低一枚、最高二枚を賭ける

 ⑪ゲームは二ゲームで終了

 

 (最後はゲーム内容だな)

 

 ⑫やるゲームは、カードを使ったじゃんけんポイポイで、『グー』『チョキ』『パー』の三種類のカードがそれぞれ二枚ずつ配られる

 ⑬一枚目のカードは表向きにし、全員同時に場に出す

 ⑭二枚目のカードは裏向きにし、全員同時に場に出す

 ⑮相手と勝負する際は攻撃側から先に手元のボタンで出す手を決める

 ⑯一度場に出したカードは武田が回収する

 ⑰自分のチップが尽きた段階でゲームセット

 

 (長々と話してたが……まとめると意外と単純だな…要はチップを賭けてじゃんけんするだけか)

 

 柏木は脳内でルールをまとめるのに2秒ほど費やし、更にその内容を吟味する。

 

 と、同時に余った脳の領域で会社で行われたゲームについて思い返していた。

 

 「───あ」

 

 思わず声を漏らし、柏木は再び武田の言葉をよく思い出す。

 

 (このディーラーそこまで考えてこのルールにしているのか? だとしたら……)

 

 柏木が横に目を向けると、ケタケタと笑っている武田と目が合った。

 

 「よし、槞彁お前に任せた、俺は部屋を出て待ってる」

 

 「え~良いんですか、柏木先輩?」

 

 ぐりんと首を回転させ、槞彁は柏木に笑顔を向ける。

 

 「俺はギャンブルとかそういうの苦手なんだよ、まあお前なら勝てるだろ」

 

 「初仕事、頑張りますね」

 

 「早めに終わらせろよ」

 

 肩越しに手をひらひらと振り柏木は部屋を後にした。

 

 槞彁は溢れんばかりの笑みを零しながら初音の隣に座る。

 

 「初音様、同席させて頂きますね」

 

 「足を引っ張らなければ、誰でもいいわ」

 

 全員が着席したのを確認した武田はゲーム開始の宣言を始める。

 

 「ひゃっひゃ!! 最後に()()は絶対に、確実に行われますが、よろしいですね?」

 

 四人全員が同時に頷く。

 

 「Pacta(パクタ) sunt(スント) servanda(セルヴァンダ)、合意は拘束する───当然ですが、お忘れなきよう、それでは『じゃんけんポイポイ』スタートですッ!!」

 

 

 





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