賭博師身辺警護人   作:しらべ

6 / 8
ギャンブルの勝ち方 その5

 

 

 

 「それでは!! 次は膳藤様と中坪様の勝負です!!」

 

 ディーラーの武田が早くカードを選択しろと目で促す。

 

 「好きにやりなさい、膳藤槞彁、あの泡を食ったような顔が見れただけで私は満足よ」

 

 カードを全て裏返しに机に置く初音。

 

 「いえ、初音様……恐らくこれからもっと面白いものが見えますよ」

 

 それが心底楽しみで仕方がないと言った顔で槞彁は笑う。

 

 そして神代はと言えば、先ほどの初音への怒りを今度は槞彁へと向けていた。

 

 (こいつ…、儂を見る目が変わったな……路傍の石を見る目となんら変わらん…!! 許せん、何故ゴミクズを()()()()?)

 

 槞彁の視界にもはや神代の姿は映っておらず、初音には熱烈な視線を向けている。

 

 その扱いの差に神代は、神は激怒した。

 

 (神を蔑むとは言語同断、人の立場であれば、神を下に見るなどあってはならない……)

 

 その時、槞彁が動いた。

 

 能力を使って視界を共有していたからこそ見えた。

 

 配られたカードから『グー』と『チョキ』を抜き取り、その手の中で片方のカードを裏返し、場に出す。

 

 表に出されたカードは『グー』だった。

 

 視界には残りのカードが全て映っており、それらが確かに場に出たカードはグーチョキだという事を表している。

 

 (中坪、一枚目はパー、二枚目はグーを選択しろ)

 

 一度は初音に不覚を取った神代だが、中坪は疑うことなく彼の命令に従う。

 

 それは盲信か、忠誠心ゆえか。

 

 カチッとボタンを押す音が部屋に響いた。

 

 そして5枚のチップが動く。

 

 「オールイン、さあ、ボクはボタンを押し終わりました、中坪さんアナタの番ですよ、この勝負受けますか?」

 

 「……」

 

 中坪は何も言わない、全ては神のまにまに。

 

 (ゴミクズが押したボタンは一枚目、つまり『グー』だ、こちらは『パー』を出せばいいが、()()がある)

 

 「ディーラー、こいつは今同時にカードを出したが、一枚目のボタンで選択されるカードは()()()のカードで違いないな?」

 

 言葉尻を捕らえたようなつまらない小細工をされないように釘を刺す。

 

 「ひゃっひゃ!! 細かいところを気にしますねぇ!! ええ勿論です、順番が違えど表向きのカードが一枚目のカードとなります!!!」

 

 「では先の様に表向きであれど裏向きであれど、カードに小細工をするのをルールで禁止しろ、表示されたカード以外が出ればゲームが崩壊するだろう」

 

 神代の言う通り、段々とカードが開示され、残りの手札を予測するのがこのゲームの攻略法である。

 

 好きにカードが捏造できてしまえばゲームが成り立たない。

 

 武田が初音チームを見ると、どうでもいいと言った風の初音の隣で槞彁が頷いた。

 

 「問題ありませんよ、ボクはカードに何も細工していませんしね」

 

 「……ひゃっひゃ、全員の合意が取れたので、カードに細工をすることをこのゲームより禁止します!!」

 

 武田の宣言により、神代の懸念点が消える。

 

 (これで奴が出すカードは間違いなく一枚目の『グー』、ゴミクズは所詮ゴミクズか、知恵を絞ったところで神には勝てん)

 

 槞彁との勝負に勝った際の神代チームの合計獲得チップは、29億と、初音チップ2枚分の8千万。

 

 対する初音チームは、神代チップ9枚と、中坪チップ2枚の合計27億2千万。

 

 差し引き2億6千万の勝ちである。

 

 (予定より少なくなったが、致し方あるまい)

 

 神代は中坪に勝負を受け、一枚目のボタン、『パー』を出すよう命令する。

 

 

 しかしその時、神は見た。

 

 

 中坪の視界を通して槞彁が場に出したカードを見ると、表向きに出ていたカードは『チョキ』だった。

 

 中坪の指がボタンに触れる直前、神代は咄嗟に二枚目のボタンを横から押す。

 

 反射的に押したため、後から思考が追い付いてくる。

 

 (何故、一枚目が『チョキ』なんだ? という事は『グー』は裏向きで置かれている? 負けると思い直前で押すボタンを変えたが我々の二枚目のカードは?)

 

 数秒の間にあらゆる思考が脳内を駆け巡る。

 

 そして結論。

 

 (こいつは、一枚目の表面を透過、二枚目の裏面を透過して視ていたのか?)

 

 神代の能力は相手の視界を共有する能力である。

 

 故に相手が見ている物しか見る事が出来ない。

 

 相手が透視能力者であれば、透視された世界しか見る事が出来ない。

 

 判断に、思考が追い付いた。

 

 「カッ…………ハッハッハ! おいディーラーよ、早く勝負を終わらせろ」

 

 乾いた笑い声が部屋に鳴る。

 

 「あっひゃっひゃっひゃ!! 他人のボタンを押したのは今回に限って見逃しますよ!! それでは~本日5度目のォ~~!! じゃんけんポイポイどっち出すの!! こっち出すの!!」

 

 中坪の出したカードは二枚目である『グー』、対して、槞彁の出したカードは一枚目。

 

 

 

 中坪『グー』 VS 槞彁『チョキ』

 

 

 

 「な、なななんと!!!! 膳藤様が負けてしまったァ~!!! そして膳藤様はオールインをしているため、残りチップは全て中坪様に渡されます!! 更に!! 膳藤様のチップ枚数が0枚になってしまった為、途中ですが、ゲーム『じゃんけんポイポイ』はこれにて終了です!!!」

 

 

 

 

 最終戦、終了結果

 

 判明したカードの使用状況、残りチップ枚数

 

 神代『チョキ』、1枚

 中坪『グー』『パー』、8枚

 初音『パー』 、8枚

 槞彁『チョキ』、0枚

 

 

 

 

 部屋に武田の終了宣言が轟く。

 

 だが、静かに、そして確実に、鳴る音があった。

 

 ギギギ……ギ、と骨が軋むような音が。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。