リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
かくて、物語は冒頭の交戦映像へとつながる。
「エニルさん! 後ろのドム・トローペンが接近中です!」
「前門のグフ、後方のドムか……」
モニター画面とレーダーを眺め、エニルは冷静に状況を分析する。
敵数は2、無傷のグフとバズーカを失い、小破したドム。
こちらも小破だが、牽制に多用したライフルとハンドグレネードの弾数はだいぶ心もとない。
それでもエニルは不敵に笑みを浮かべてみせた。
「ようやく、出て来てくれたな、クランプ」
「さ、作戦通りなんですね、エニルさん!?」
「安心しろ。最悪とは程遠い!」
ドムとの交戦中の奇襲が、もっともエニルが避けたい展開だった。
崖を滑り降りたグフ・タイプが、離脱エリアへの道へ飛び降り、堂々と仁王立ちする。
敵のベース機体を見れば、敵の性能や手札はおおよそにでも把握できる。
クランプの愛機グフ・タイプは同じ青でもエニルのジェガンと違い、淡い水色に近いカラー、
ライフルを弾く丁寧な塗りのシールドには火砲が接続され、一目で機体名は明らかだ。
「MS-07B3 グフ・カスタム、グフの中距離化力を強化した陸の王者……!」
畏怖と共にその名を呼び、エニルはジェガン・Cのスラスターを全開に吹かす。
モニターに映るグフ・カスタムが、その代名詞たるガトリングシールドを構えていた。
猛烈な銃弾の雨を、ジェガン・Cは全力の回避機動で辛うじて回避する。
凄まじい弾幕は、CPU機の豆鉄砲とは比べ物にならない。
まずは距離を取る。グフ・カスタムの間合いを外さねば、まともに戦闘するどころではない。
「え、エニルさん、後ろーっ!」
「来たか、ドム!」
そして下がったところで、安全圏でもない。
後方モニターに映るドム・トローペンが、みるみるうちに大きくなる。
ホバー移動の猛烈な速度そのまま、ドムが大上段に構えたヒートソードを縦一文字に振り下ろす。
操縦桿を切り返し、大きなステップで鋭い切込みを辛うじてかわす。
同時にライフルをグフ・カスタムへと打ち込み、ガドリングシールドの追撃を牽制する。
振り返りざまのドムの鼻先にライフルを撃ちこみ、出鼻をくじく。
前後からの挟撃を何とか回避し、エニルは細い脇道へとジェガン・Cを滑り込ませる。
火砲の射線を切り、ようやく一息。そう思った瞬間、エニルの後ろでロウジが盛大に深呼吸した。
「じ、地獄のような連携でしたね……!」
「自分のガンプラの強みを押し付ける。強者の戦いぶりだな」
「か、勝つつもりなんですよね……?」
「そのためにキミに、あのオブジェクトを探してもらったんだ」
エニルの操縦で、ジェガン・Cは細い脇道を出来る限りの速度で駆け抜ける。
やがてモニターに、ほどほどに広けた盆地が映し出される。
バルチャーが野営でもした跡と言う設定か、木箱やコンテナ、朽ちかけた戦闘車両の残骸など、背の低いオブジェクトが点在する。
火砲を防げそうな背の高い遮蔽はなく、外に出る通路は入り口の他にない。
「……よし。予定通り、ここが最終決戦場だ」
こちらは全速力で抜けたが、相手は罠や策を警戒して速度を落とすだろう。
稼いだ時間で、エニルは勝利を手繰り寄せるための準備を進める。
バルチャー野営地の真ん中で、エニルはジェガン・Cが背負ったコンテナを下ろす。
「まずはドム・トローペンを落とす」
「いけますか? あのドム、めちゃめちゃ装甲厚そうですよ」
「ハンドグレネードをまともに踏ませてやって、五体満足だからな」
ロウジへ説明を行いながら、エニルは自分の手札を確認する。
火器はビームライフルの残弾が3、ハンドグレネードが1。あとはサーベルと、隠し玉のミッション報酬のみ。
「……まともにやったら、火力が足りないな」
「だから、アレを使うんですね?」
「そう。ドムの強みはその速度、だが弱みもその速度故の直線的な動きだ」
その時、ガンプラの音響センサーが特徴的なホバー音と重厚な足音を拾い上げた。
「エニルさん……来ます!」
「ドムを排除したならば……頼むぞ、ロウジ」
「……やってみます!!」
いよいよだ。盆地の入口に狙いを定め、エニルはエリア全域に声を張り上げる。
「物資はコンテナの中だ。欲しければ奪っていくが良い。クランプ!」
「貴様をやってからそうさせてもらう。エニル・エル!」
会話と同時、盆地入口に機影が現れた。
ジェガンが撃ち込んだビームが、先頭の敵ガンプラが構えたシールドに吸い込まれて霧散する。
シールドを構えたグフ・カスタムの影からドム・トローペンが飛び出してきた。
「そう来ると……思っていた!」
サブウェポントリガーを引き絞り、山なりにハンドグレネードを投擲する。
盾を構えた姿勢ではガドリングの迎撃が間に合うまい。エニルの読み通りグフ・カスタムはシールドで構え、足を止める。
だがドム・トローペンは爆煙の中を構わず猛進する。
グフとドムの間が空き、その刹那、グフからはジェガンがドムの背に隠れる。
「この一瞬が、欲しかったんだ!」
ドム・トローペンの思わぬ突進に慌てた風に姿勢を崩し、ジェガンはスラスターで後方へ低空を跳ぶ。
瞬間、エニル操るコクピットが大きく揺れ、ダメージアラートでモニターが真っ赤に染まる。
右手首ごと千切れ飛んだライフルが、大地に虚しく落下する。
「……ち、やるっ!!」
エニルは舌打ち混じりに敵を称賛した。
低空でホバリング。ダメージでぐらつくガンプラの姿勢を何とか立て直す。
敵機の格闘の踏み込みの間合いは十分に計算しきったはずだった。だがドムは縦斬りよりもさらに半歩踏み込み、全身でヒートソードを大きく突きこんできたのだ。
勝利を確信したのか、火器と右手を喪失したジェガン・C目掛け、ドムがまっすぐ全速で迫る。
「やられるっ!?」
ロウジの悲鳴と同時、ドムが真下からの激しい爆発に消える。その真横には朽ちかけた戦闘車両の残骸。
それは、エリアに仕掛けられたステージギミック。
「アフターウォー名物、対MS地雷の味はどうだ!」
爆炎の中よろめくドム・トローペンのシルエットへ、ジェガン・Cが逆手に握ったビームの刃を横薙ぎに叩き付ける。
ビームの刃と重装甲の拮抗は一瞬。敵機の胴体は上下に分断される。
上半身だけで突きこまれたヒートソードを右腕の肘から先を犠牲に払いとばし、頭部モノアイ目掛けてビームサーベルを突き返す。
引き抜くサーベルに確かな手応え。さしものドム・トローペンも完全に動きを止めた。
「コズンをよくも!」
「ロウジ、今だ!」
「はいっ!」
ロウジが使った隠し玉で、モニターが真っ黒い煙で埋め尽くされる。
叫ぶクランプの通信画像が乱れ、消えた。
エニルは操縦桿を離し、冷静にダイバーギアに特殊コマンドを入力する。
さぁ、いよいよクライマックスだ。
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・ステージギミック 対MS地雷
グランドキャニオン(アフターウォー)の各地に仕掛けられたステージギミック。
バルチャーが獲物を狙うために仕掛けたという設定のため、うっかり踏むとそのままCPU戦が始まる。
他のエリアにも、サイド6のサンタバルーンや、08小隊ステージの急なスコールなど細かい仕掛けがある事が多い。
クランプとコズンはグランドキャニオン(UC)が主戦場だったために逆に罠にかかりやすくなってしまっていた。
爆発はやたら派手だが、ギミックで一発退場だとクソゲーすぎるので、機体ダメージは低めに抑えられている。
ただし、非常にびっくりする上に、ガンプラのよろけを誘発してしまうため、大きな隙をさらす。
もちろん、対MS地雷が本当にアフターウォー名物かは定かではない。