リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。 作:ゼラチナマスター
「ミッション報酬のスモークグレネードか!」
真っ黒に染まるモニターを睨み、愛機グフ・カスタムのコクピットでクランプは呟く。
仕切り直しには強力な効果だ。ミノフスキー粒子の効果で600秒間通信とレーダーの使用が不可になり、60秒間煙幕により、効果内互いに目視が不可能となる。
「すまん、クランプ!」>クランプ
「良くやった。後は任せろ!」>コズン
個人メッセージで仲間のコズンから謝罪が届く。
コズンは良くやった。むしろ相手のエニルが上手だったと言うしかない。
火器を失ったコズンを誘い込み、恐らくステージギミックを使って隙をついたのだろう。
「仇討ち頼んだぜ!」>クランプ
「火器なしの相手に、私のグフは負けんよ」
そう言い残してコズンが黙り込む。
クランプはグフ・カスタムを静かに歩行移動させながら、エニルのジェガンの出方を伺う。
火器を失ったエニルは、サーベルでの格闘を挑んでくるはずだ。それも恐らく、死角からの奇襲。
右と左のウェポントリガーに指をかけ、スモークの効果切れを待つ。
正面からならば、間違いなくこちらが勝つ。
「一応、コンテナを抑えておくか……」
撃墜の完全勝利が望ましいが、最悪でも物資獲得の勝利でも構うまい。
マップのオブジェクト配置を思い出そうとして、クランプは降って来た閃きに思わず目を見開いた。
「それが貴様の策か、エニル・エル!」
物資確保の勝利条件を達成しようとすれば、クランプのグフ・カスタムはコンテナに近寄る動きを見せる
先ほど巧みに誘いを見せたエニルなら、そこを奇襲してくるに違いない。クランプは確信した。
「ならば、それを逆手にとる!」
スモークグレネードの黒煙が晴れる。レーダーはまだ死んだままだ。
クランプの視界にジェガンの姿はない。それを確認し、クランプはグフ・カスタムをコンテナ目掛けて駆けさせる。
コンテナまでの距離があっという間に縮まる。あと300m、200m、あと100m。
ここだ!心中叫び、クランプはグフ・カスタムを鋭く背後に振り返らせる。
そこにジェガンがいた。コンテナを狙う位置からすればほぼ背後、コンテナを背負う位置で180度振り返ったグフ・カスタムのちょうど真正面、低い建物オブジェクトからジェガンが跳ね起きる。ジェガンの足でスラスター光が輝く。
「とったぞ、エニル・エル!」
突進するジェガンへ狙い定め、右のウェポントリガーをクランプは引き絞る。
ワイヤーが飛び、狙い外さずジェガンを絡め取る。激しいショート音と電光が閃き、ジェガンが墜落する。
ヒート・ワイヤー。命中した敵ガンプラをショートさせ数秒間スタン状態に陥らせる、グフ・カスタムの奥の手だ。
強敵だった。電撃と激しい地面の激突に耐え、なお原型をとどめるジェガンを眺め、クランプは息を吐く。
だが勝ったのは自分だ。余裕をもってガドリングシールドの狙いを定め、クランプは快哉を叫ぶ。
「……いい勝負だった。互いに、な!」
その視界が、真っ赤なダメージアラートで埋め尽くされた。
爆発音が響き、激しい衝撃にコクピットを揺らす。
オートジャイロすら働かず、クランプのグフ・カスタムはもんどりうって地面へ倒れ込む。
「馬鹿な、背後など!?」
ダメージアラートは背面の激しい損傷を伝えていた。
困惑しながらグフ・カスタムを断たせようとするクランプの目に、モノアイカメラがとらえた背後の映像が映る。
クランプは目を剥き、思わず叫ぶ。
そこにあるのは、ジェガンがおろした物資満載のコンテナ……では、なかった。
「輸送コンテナが、サポートメカだとぉ!?」
足回りに小型のキャタピラを履き、開いたコンテナからは三連装のミサイルポッドが覗く。
機動力も火力も子供だましだが、それは間違いなく戦闘力をもったサポートメカだった。
クランプの驚愕はわずか一瞬、だがそれが致命的だった。
●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説
・サポートメカ
Gアーマー、Gディフェンサー、Gファルコン、ビルドブースター、対MS用歩兵輸送車両など、
ガンプラと離れて独立行動できるパーツの事をサポートメカと総称する。
一人乗りの場合はAIが操ってくれるし、二人乗りの場合は片方の操縦者に操って貰う事も可能。
操縦権の交代には10秒ほどのラグが発生するが、サポートメカに自分が映り、ガンプラをAIに任せて奇襲なども出来る。
サポートメカとして申請し、システムに認識してもらうにはガンプラの完成度が必要で、難易度が高い。
エニルの自走コンテナタンクはセイ君のビルドブースターよりだいぶ完成度が劣るため、
平地の自走とミサイルの発射と、内部の生活空間によるキャンピングカーごっこぐらいしか出来ない。