リアルではモブなわたしは、GBNでずっと暮らしたい。   作:ゼラチナマスター

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4/4 クランプの非戦闘時台詞を丁寧語に修正


ミッション1-11 あの人の期待に、こたえよう。

 今だ。今しかない!

 モニターがブラックアウトしたまま、ロウジは操縦桿をがむしゃらに動かす。

 コクピットが激しく揺れ、モニターが点灯する。

 

「うわああああああああ!」

 

 一人になったコクピットに、ロウジの叫びがこだまする。

 ジェガン・Cがばね仕掛けのように跳ね起き、スラスターで突進する。

 膝立ちのグフ・カスタムへ目掛け、右肩から突っ込む。シールドへ斜め下から全重量を叩きつけ、かちあげる。

 ガドリングシールドを跳ね上げ、もつれあってそのまま倒れ込む。

 腰の後ろのラックからのビームサーベルを引き抜き、振り下ろす。

 

「……ごめんなさいっ!」

 

 グフ・カスタムのコクピットへ、無惨にビームサーベルが突き刺さる。

 モノアイが消え、グフ・カスタムはワイヤー射出装置を開きかけたまま、機能を停止した。

 

「……やったな、ロウジ!」

『Battle ended WINNER! ……エニル&ロウジ!』

 

 満面の笑顔のエニルが通信モニターに映り、勝利メッセージが高らかに流れる。

 勝ったのか。初勝利の実感がじんわりとロウジに染み込む。

 ただひたすらに息を吸って吐く。全身から力が抜けきってしまったかのようだ。喉がからからだ。心臓の音だけが聞こえる。

 勝ったぞと高らかに叫びたいのに、声が出てこない。

 その代わりにと、ジェガン・Cの動く左腕を高々と突き上げ、ロウジは控えめに勝利の喜びを叫んだ。

 もう、輸送ミッションのクリアを阻む障害など、あるはずはなかった。

 

 

 

 

「伍長……うふふ、うへへへへ」

 

 輸送ミッションをクリアし、ロウジは再びGBNのロビーに戻っていた。

 ゆるんだ顔で、ロウジはパラメータの階級章を誇らしげに眺める。

 

「ニュービー脱出おめでとう、ロウジ」

「全部、エニルさんのおかげです!」

 

 エニルの言葉に、ロウジは満面の笑顔で応える。

 周りの景色も、まるで違って見える。

 

 GBNのロビーはまるでスペースコロニーの宇宙港。

 都会の大空港を思い出させる明るく天井の高い空間に、様々な電光掲示板や大きなモニターがある。

 周りには、知らないキャラと見覚えあるキャラのダイバー達がいる。

 つい数時間前に見たはずの景色なのに、あの時ロウジが感じた疎外感はもうない。

 ここにいるのはロウジと同じ、ガンダムを愛し、GBNを楽しむ同士なのだ。

 

「やぁ。いい勝負でした。エニルさん、ロウジくん」

「クランプさん!」

 

 後ろから聞こえた優しげな男の声に、ロウジは慌てて振り返る。

 ジオン公国軍服姿の男性が、ゆっくりとロウジ達の方へと歩いてくる。

 

「無事だったんですね! 火傷とかしてません!?」

「……確かに、見事なコクピット狙いだったな、ロウジ」

「心配ご無用! 我がジオン公国のガンプラはセーフティシャッターを標準装備だ!

 ……と言ったところでどうでしょう?」

「良かったぁ……」

 

 安堵のセリフは、割と本心だった。

 ロールプレイを混ぜておどけるクランプを前に、深く息を吐き出す。

 ガンプラの爆発もコクピット狙いの機能停止もゲームの演出だとロウジにも判っている。

 それでもやはり、初めての撃墜はなかなかに刺激的だった。

 

「まさかとは思いましたが、その新鮮な反応から考えるに

 ロウジくんはやはり本当にニュービーさんだったんですね……」

「スモークの後は、ジェガンを全部任せている。

 ロウジは末恐ろしいだろう、クランプ?」

 

 自分はそんなに凄いことをしたのだろうか。

 クランプとエニルに二人がかりで褒められ、ロウジは照れ臭そうにうつむく。

 

「つまり私はロウジくんに初戦果をプレゼントしてしまった訳ですか」

「えと……はい。ごちそうさまです」

 

 丁寧語で自虐するクランプに、ロウジは申し訳なさそうに両手を合わせる。

 クランプが笑ってロウジの背中を叩き、エニルへと向き直った。

 

「さて、種明かしをお願いしますよ、エニル少佐。

 スモークの効果中にエニル少佐がサポートメカの操縦へと移り、

 ロウジ君にジェガンを任せた。そう言う事なんですね?」

「正解だ、クランプ。サポートメカとしての実戦仕様はぶっつけ本番だったよ」

「二人乗りガンプラの強みですね。まさしく君達”二人“の勝利だった訳です」

 

 二人の会話で、ロウジは戦闘の展開をようやく把握した。

 やっぱりエニルさんはすごい!それを理解できるクランプさんもすごい!

 素晴らしいガンプラバトルを目撃出来た。体験出来た。ロウジはその感謝を胸に、改めてクランプに頭を下げる。

 

「対戦、ありがとうございました、クランプさん」

「こちらこそ、楽しかったですよ。ロウジくん。そして、エニル・エル少佐。

 噂の”ガンプラ商人”の腕、しかと味合わせてもらいました」

「ガンプラ……商人?」

 

 聞いたことのない単語に、ロウジは思わずクランプとエニルの顔を見比べた。

 エニルが親指をエニルの胸元へ向け、堂々とロウジへ告げる。

 

「Yes I'm ガンプラ Dealer

 ……すまない。流れで言いそびれていたね」

「腕自慢のガンプラビルダー達はガンプラバトルで愛機の性能を披露したがるのですが、

 ガンプラ商人は、自作ガンプラによるGBN内を商業活動を目的としたダイバー達なのです」

「合言葉は”ガンプラ、売るよ!”だね」

 

 思わずロウジは噴き出す。ガンダムXの次回予告で聞いた事あるセリフだ。

 

「さて、失礼する前にコズンから伝言です、エニル少佐。

 ”タネは割れた。次は落とす”だそうで」

「判った。”次のを仕込んでおく”と伝えてくれ。クランプ中尉」

 

 クランプとエニルが別れの挨拶を交わしあう。

 穏やかにこちらに向き直るクランプへ、ロウジは元気よく頭を下げた。

 

「僕も……次また、勝負させてください。楽しみにしてます!」

「ええ、こちらこそ、楽しみにさせてもらいます。

 ”次は、君の自慢のガンプラと勝負させてもらおう!”です。ロウジくん」

 

 頭を下げた姿勢で、ロウジは固まった。

 ロールプレイの詰まった最後のセリフは、ロウジへの期待と称賛がつまったものだ。

 クランプに悪気があるはずないのはわかっている。

 それでもロウジは、クランプの立ち去る足音が聞こえなくなってもまだ、顔を上げることが出来なかった。

 

「……あの、エニルさん」>エニル

「どうした、ロウジ?」>ロウジ

 

 ゆっくり顔を上げ、声を絞り出す。表情は自然だったろうか。声は震えていなかったろうか。

 エニルはクールな顔で、個別メッセージで返してくれた。

 

「僕に……ガンプラを売ってもらえませんか?」

「……ひとまず、場所を変えようか」

 

 どうやらエニルには動揺などお見通しだったらしい。

 エニルの手がそっとロウジの肩に置かれ、優しくうながされる。

 ロウジは言葉少なく、首を縦に振った。

 

●読み飛ばしても構わない巻末プチ解説

 

・GBNの階級に関する独自設定

 

 ガンダム世界にならい、下記の階級が設定されている。

 新兵(ニュービー)→上等兵→伍長→軍曹→曹長

 →少尉→中尉→大尉 →少佐→中佐→大佐 →少将→中将→大将→元帥

 ミッションを達成する、PVPで勝利する、プレイヤーイベントを開催するなどで功績値がたまり、自動的に昇進していく。

 響きの格好良さで、低い階級を名乗る事も可能だが、基本的には階級=GBN歴の長さとして扱う。

 階級が低いうちは撃墜ペナルティがなく、優遇されている。

 基本的に階級が高い相手を撃墜するほど昇進しやすい。

 ロウジはクランプの撃墜とミッションクリアによって二階級特進したが、

 逆にクランプは大尉→中尉への降格ペナルティを受けてたりする。がんばれクランプ!

 

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